やや~過去編11
「父さん、鈴の事話してた?」
帰り道、舎羅登さんが突然そう聞いてきて驚いた
「ロケット甚平から出てたから、絶対出さないようにしてるからさ
ややには話したのかって…」
「聞かない方が良かった?」
ややは辛そうな瞳を俺に向けた
「ううん、それはややの方じゃねぇのか?」
「え?私…?」
「そう…
怖くなるんじゃないかって思って」
「…怖いよ…
それに私は鈴ちゃんみたいに清女を理解してなかったし、臨み方も違うな…って反省した」
「やや…」
「もう、嫌だなって思ってて…
メンタルが全部砕かれるくらい苦しくて悲しい
あんな思いしたくないって…」
そう言えば自分が情けなくなってくる
「それなのに私より若い時から清女になって
送られる人の気持ちを考えられるなんて…凄いよ…」
「お前はお前でいいよ」
足を止めた舎羅登さんに視線を向ける
「無理しなくていい
出来れば清女もしなくていい」
「舎羅登さん…」
「お前を失ったら、母さんはもう生きていけない」
「……」
「父さんも…
…俺も」
「舎羅登さん…」
「だから無理にしなくていい
俺が術韻でやるから」
「…それって私は鈴ちゃんの代わり?」
声にしてハッとした
「ごめんなさい」
舎羅登さんの顔を見れずに走り出した
私は鈴ちゃんとは違う
だから私が決めることでもあるのに…
心配してくれてたのは怖いくらい解るよ
でも私は私…
鈴ちゃんの代わりに生きてて欲しいって
言われてるように聞こえた
______________
「…やばい遅れる」
寝坊した私は阿兎や和兎が待つ教室へ足を進めた
だけど
ビシッといきなり念の塊が頭に当たり壁にぶつかる
「ねぇ清女になったんでしょ?」
それは阿兎のクラスの女の子3人によるものだった
「何?」
「また舎羅登さんに色目使う気?」
「それとも和兎?」
「実丸とも噂あるじゃん」
「違うよ。別に何も無い」
「なら自分の教室に帰りなよ」
リーダー格の子が私に詰め寄る
「嫌ならここに入っとけば」
っと言われ近くの扉を開けドンッと押し込まれて倒れ込む
ガチャガチャ
「いい気味」
「第1級貴族だからって調子乗るなよ」
「アハハ」
笑い声は遠くなり
扉には術韻が浮かび上がる
「開けて、ねぇ!」
ドンドン叩くが術韻により外へ響くことは無かった
「最悪」
昨日は胸がモヤモヤして
結局寝付いたのは朝方
起きたら始業時間の10分前
そして今に至る…
ガチャ
扉を開ける音が聞こえるがこの部屋ではないと気づく
ゆっくり部屋の奥の壁まで歩いていった
『舎羅登』
『伯父貴、どうしたんですか?
こんな所へ連れてきて』
『んー?
ほらっ』
バサバサっと何かが落ちる音が聞こえる
『伯父貴…』
『怖い顔するな』
『ならこんなの捨ててください』
『この子とかどうだ?可愛いぞ』
藩登様の声にその音の元凶がお見合い写真だと気づく
『……』
『もうあいつは居ないだろ?』
少し怒りを宿す藩登様の声に
『居ない?
消したんだろ』
『まだ言うか…』
『一生言ってやるよ』
『そんなに好きになるような女だったか?』
『何だと?』
『そんなに中界の女のどこが良かったんだ?』
『あいつ以上は居ねぇよ』
『けど花屋敷を捨ててまで愛した女はもう居ないだろ!』
『伯父貴や母さんがどんな気持ちでそうしたかは知らねぇけど、俺は本気であいつ以上は居ないって思ってる』
『まだ好きだっとか言う気か』
『ああ。あいつ以外興味もねぇよ』
ダンっと飛び出していく音に
壁から離れて座り込む
「……」
何故か解らないけど涙があふれる
「…舎羅登さん」
『やや』
「……」
『あいつ以外興味ねぇよ』
その言葉が頭をグルグル回っていた
口元を手で抑えて
こみ上げる涙が絶え間無く流れ落ちる
「…どうして…」
まるで、好きみたい…
こんなに泣いて…
私が舎羅登さんを好きみたい…じゃん…
「……ッッ」
初めは凄く嫌な印象しかなくて
絶対仲良くなることなんかないって思ってた
だけど過ごす日々の中で
自然と出る優しさに安心するようになっていた
私だけに見せる特別な家での姿も
高専で見せる先生の姿も
戦いで見せた術韻師の姿も
どんどん気になっていってたんだ
特別なのか
そうじゃないのか気にして
素直に甘えられず
強がってみたり…
自分でも驚く程認めてしまえば
体中から好きが溢れてくる
だけどそれと同時に
失恋することになるなんて…
「舎羅登さん…」
あの笑顔が胸を苦しくさせる
一緒に時間を重ねても
一緒に話しても
一緒に色んなものを見ても
舎羅登さんの心は私の所には無くて
舎羅登さんは違う人を思っていた
「何してるの…」
あんなふうに強く誰かを守ることが出来る舎羅登さんを素直にカッコイイって思える
生徒達に憧れられ慕われる舎羅登さんも素敵だと思う…
この好きに早く蓋をしないと
もう止めれなくなる
お母様が言ってた
身を焦がす人に出会う時がくるってそれが今なんだと胸に手を当てて実感した
「私…舎羅登さんが好き…」
これが勘違いなら良かったのに
全部で好きを伝えたくなるこんな私
静かに壁にもたれて
誰もいないこの部屋で自分と向き合う事にした




