やや~過去編10
「アハハ」
「笑い事じゃないよ!舎羅登さんのバカ」
「悪い悪い
…はあ、それで3時間集中の練習扱かれて、1時間正座で説教?
アハハ、やっぱり笑える」
「もう、実丸本気で怒ってたんだから
超ドS!」
「そりゃあ、妃乃瑠にトドメさしたややが悪い」
「でも意外ですね
実丸黒のレース好きだなんて」
「俺は妃乃瑠がそんな大人っぽいのを着けてたのに驚いたよ
サラシ姿しか見たことねぇし」
「あーあの2人からかうの、大好き
でも実丸の方は手加減しないと倍になって帰ってきちゃう」
あの後実丸に散々怒られた私は舎羅登さんの家に届け物ついでにご飯をまたお呼ばれする事になっていた
「そろそろ飯できそうだな」
「台所行く?」
「おう」
舎羅登さんが前に使ってた2階の部屋を出て
いつも気になる事がある
階段を上がって右側の廊下に舎羅登さんの大きな部屋がある
そして奥にも、1つ扉がある
だけどそこは誰かが使ってる雰囲気も
音も聞こえない
壁にぶら下がった部屋の表札の様な板はひっくり返っている
「ほら、行くぞ」
「うん」
階段を降りれば
おばさんやおじさんが笑顔で迎えてくれて美味しいご飯を4人とも笑顔で食べる
私にとって
どんどん居心地いい場所になっていく
私を可愛がってくれるのは
特別なのか…
ただの社交辞令なのか
幼い私には解らなかった。
「ねぇややちゃん」
舎羅登さんとおばさんが甘い物が食べたいと近所のお店に買いに行っておじさんと片付けをしていた
「どうしたんですか?」
食器を洗う私の横で食器を手拭きで拭く羅生さんは切なさそうな顔をしながら私を見つめた
「いつも来てくれてありがとう」
「え?お礼言うのは私ですよ」
「ううん、言わないのはずるいからおじさんから言うね」
そう言ったおじさんは手を止めて
首にかけていたネックレスを甚平の中から引っ張り出す
カチャっとロケットを開けて私に差し出す
「これ…」
そこには舎羅登さんとおじさん、おばさん、そしてもう1人知らない女の人が映っていた
「鈴って言ってね…
生きてたら舎羅登の一つ下だから22歳になるかな」
「生きてたら?」
「うん、ある事件でね
亡くなったんだ」
「……知らなかったです」
「うん、16歳の時にね
浄土へ送る途中に失敗して魂ごと黄泉の死者にもってかれてしまったんだ…」
その言葉を聞いて
あの日の舎羅登さんを思い出した
清女に詳しい舎羅登さんの理由は
「清女だったんですか?」
「そうだよ
15歳で清女になって、毎日頑張ってた
少しでも悲しくないように、苦しくないようにその人達を送りたいって
けど色んな不幸が重なって…」
「舎羅登さんが唄に詳しいって阿兎達が不思議がってた理由解りました…」
「可愛がってたんだ、舎羅登なりに。
鈴が消えてから舎羅登は中界へ逃げてね」
「中界へ?」
「ああ。そしてまた悲しい事件があって…
だから今舎羅登や釈愛があんなに笑って過ごせてることが嬉しくて」
下を向くややちゃんの肩が震えていた
「…ややちゃん?」
「私…何も知らなかった…」
「僕達もこの話はほとんどしないから」
「私ね、清女になれて良かったねっとか言われても嬉しくなかったの…
あんな悲しくて苦しいのなんかもう嫌だってちょっと思ってた…
情けないよね…
鈴ちゃんは私より5歳も若い時からそんな風な気持ちで臨んでたのに…」
ポンポンっと優しく肩を叩いて頭を撫でてくれる
「素直な方がいいよ
無理しなくていいんだ
俺達なんかより何倍も危険と隣り合わせなのが清女だから…」
「…おじさん…」
「釈愛も、僕も、舎羅登も。
もうややちゃんは家族同然だから、自分を傷つけたり危ないことをしたら容赦なく怒るからね」
「…はい
あの…鈴ちゃんにお線香あげたいです」
「ありがとう
優しいね。ややちゃんは…
だからこんな事を言ったらずるいのは解ってるんだけど…」
「え?」
「舎羅登をよろしく」
「…よろしく…ですか?」
「あいつね、ずっと胸に大きな過去って言うシコリ抱えてて…動けないでいるんだ
だから助けてあげてほしい」
「過去…」
「うん、ややちゃんにならできると思うんだ
久しぶりにあんなに心開いてる舎羅登を見たから」
「…お力になれるか解らないですけど
私も仲良くしてもらえて嬉しいですよ」
そう笑ってくれたややちゃん
「ただいま、あれ?手止まってんじゃん2人とも」
舎羅登が台所に入ってきて
慌てて2人で手を動かした
「何?怪しい」
「変なことしてないでしょうね」
おばさんの声に焦ったおじさんはより一層綺麗に食器をふきだした
みんなで笑えばその笑顔の大切さを身に染みた
涙をきっと沢山流したんだと思う
3人で乗り越えてきたんだと思う
ここに居ていいのかな?
ううん
ここに居たい
そしてこの笑顔を守っていきたい
そう思うようになってた…




