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愛しき姫は異世界に  作者: janky
第9章
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やや~過去編8

夜風が吹き抜ける廊下で月を見上げた


「はあ…」


今日1日のことを思い出せばまた涙が溢れてくる

襦袢では肌寒いくらいで


私は清女として役目を果たすことが出来た

そして零恩志としても確り役目を果たせた


だけど何一つ嬉しい感情は出てこない



「風邪ひくぞ」

「舎羅登さん…」

「宴会だっけ?」


ののが解放された祝にお父様が1階で宴会をしていた

ガヤガヤする声も耳に入らないほど今日の私は病んでた


「ほら、着とけ」


甚平の上をかけてくれた舎羅登さんは

中界のTシャツを着ていた


「変なの…」

「このカッコよさが解らないなんてまだまだ子供だな」

「子供で居たい…居れるなら」

「まだ泣いてんのか?」


柵に持たれ私の顔を覗いた

「見なくていいよ」

「俺さ、いつも思う事あるんだ」


舎羅登さんはそう言いながらタバコを出して火をつけた


今立ってる方とは逆の方に腰を下ろした

風が吹いてその優しさに気づく


「どうして…

俺は花屋敷に生まれてこんな風に傷を負ってるのか

…って

術韻を詠めて解けて…動けるんだろう…ってな」

「舎羅登さん…」

「もう何回も見てきた

色んな家族の形があって俺らがとやかく言う筋合いもない…それでも色んな送り方をしてきた


こう…なんて言うか…

心が擦り切れそうになる」


初めて見た時の印象とは違う

真面目に何かに向き合ってきたその横顔に胸がキューっとなった


「昇って行く人は本当に幸せなのか?

目の前で昇って行く人を見てる人は幸せなのか?

来る日も来る日も自分に問いかける

昨日の術韻をかけた奴は

本当は俺らみたいにこんな生活が待ってたのかもしれない…


助けてやれたのかもしれない…

キリないだろ…考えても」


「………でも。

考えちゃう…」


立ち上がって横に再びもたれた舎羅登さんは


「俺らは、そういう運命なんだ

誰かの為に何かをする

だけどしたいと思っててもできない人も居る


俺はこの世界を救いたい

大切な人と引き裂かれる事は

2度とその未来を望むことはできないって事だ

そんな悲しい人を1人でも救いたい」


「…欲張り」


ややの横顔を見れば涙が目元で揺れていた


「まあ、お前はニコニコしてればいいんじゃない」

「え?」

「たまーに真顔も見たいけど」

「何それ…」


笑うややにホッとした

清女になりぶつかる一番の問題

それは心。メンタルの部分

肌で感じる、対象の気持ちが体中を駆け巡る

悲しい

辛い

苦しい


そんな気持ちばっかりが清女を覆う


「舎羅登さんって…

凄い人だったんだね。ちゃんと実感したよ」

「そうか?普通だぞ…」

「ののと邪念の間に躊躇なく踏み込めるのなんか、舎羅登さんか実丸くらいしか居ないって先生達が言ってたよ」

「…そうだな、あれはオススメしない

実丸くらい自分をコントロール出来るならいいけど」

「近づいただけで凄く熱くて苦しかったよ

でもあれに触れるなんて…」

「っそうか、ややは念を纏ってたもんな

直接な訳じゃないのか…」

「うん」


少し落ち着いたのか心が落ち着いてややの周りの気流が優しくなる


「ねぇ舎羅登さん…

大好きな人が居ることっていい事なのかな?」

「…さあな」

「私思うんだ。

実丸って妃乃瑠ちゃんの為なら飛び抜けて強くなるけど

妃乃瑠ちゃんの事になると弱くなる…

大切にしたい気持ちとそれを失いたくない気持ちの中でずっと揺れてるの…」

「それは解るよ

その子を守りたい

笑顔も全部俺が…守ってやりたいって…

でも弱点にもなるよ」


舎羅登さんは思い出したような切ない顔に


「でも私は好きで居たいな

その人の為ならこの身を捧げてもいいくらい

好きで居たい」


「若いな」


笑う舎羅登さんに向き直り見上げた


「バカにしないでよ?

人を好きな気持ちは何より強いんだからね!」


笑いながらややは突然走り出した


「おい」

「お腹空いちゃった。

何か食べよう!?」


階段を降りてくその音に目を瞑った



「強くなんかねぇよ…そんなもの…」


暗張りの空に俺の声は溶けていく




___________




「ねぇねぇどうしたのあれ?」


「さあな。さっぱり」


阿兎と俺は演習中の間式神を練習してるややと舎羅登さんの仲良さに目を疑っていた


「でもこの間のは誰でも好きになっちゃうよ…舎羅登さんのこと」

「確かに男の俺でも惚れそうだったよ」

「あの時、舎羅登さんの顔見た?」

「見た、ややが歌ってる時泣きそうな顔してさ」

「時間の問題かな?」

「でも舎羅登さんの女の噂って聞かねぇよな」

「確かに…」

「謎だな」


そう言いながら2人を見つめた



「だからそこで、ほら、今!今だよ!」

「え?へっ?んーー!っ無理!

何その教え方…全然解んないよ?」

「はあ…これだからガキは」

「ちょっと」


言い合う2人の後ろにあるドアが開いた


「舎羅登さん、藩登様が授業が終わったら長室へ来てくれって」

「実丸!」

舎羅登さんはうんうんっと頷きながら

実丸を教室に招き入れる


「なんすか?俺忙しいんすけど」

「実丸、お前誰に式神教えてもらった?」

「え?」

「だ・れ・に、教えてもらった?」

「舎羅登さんですけど」


そう言えば得意げにややを見る

「それがどうしたんすか?」

「実丸、本当にあんな教え方で解ったの?」

「…まあ」

「えー…もう難しいよ」


「なら実丸に見せてもらったら?」

阿兎がそう言えば

面倒くさそうな顔をした実丸に

クラス全員が見たいと騒ぎ出した


「って訳だ」

「っじゃないっしょ。

1回しかしねぇからな、やや見とけよ」


生意気な実丸は気を集めだす


「練習用に、この式神使えよ

念を込めたのは戦闘に置いとけ」


舎羅登さんが言えば5体の式神を実丸が預かった


「じゃあ実丸先生、お願いします」



舎羅登さんの声にみんなが笑った

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