やや~過去編6
その瞬間、悍ましい姿の女の人の中から
姿を見せた誠の部分が出てくる
「爛華!!」
突然後ろにいた分家の親戚が叫べば
邪念をかけた男も泣き崩れた
「誠に申し訳ありません」
「どうかお許しください」
頭を下げる男の人と女の人へ
「どうして謝るんだよ!
こいつらのせいで爛華は死んだんだぞ!」
「陽斗、いい加減にしなさい」
「そうよ、こんな事をしてどれだけの重罪か分かってるのか?」
陽斗と呼ばれた人は私達より少し年上に見えた
謝る両親らしき人も私たちの親と変わらない世代
『お兄様、私は大丈夫です』
「爛華…どうしてだよ!?
こいつらはお前を囮にして黄泉の死者をおびき出したんだぞ」
「……あの娘は」
お父様が思い出したように爛華ちゃんに視線を向けた
「龍の奥方になりたいと申し出てくれた子だ」
「爛華?」
陽斗君は驚き爛華ちゃんを見つめた
『私が申し出たんです
龍様の奥方になりたいと。
でも成績もない分家筋との約束はできないと断られたので…黄泉の死者が出たと聞いてその場へ力もないのに行ってしまいました』
「じゃあ…囮では無かったのか?」
『そうです
攻撃され意識が朦朧としてる中
黄泉の死者に吸い込まれそうな私を源様は助けてくれました
でも魂は離れ最後にお別れを言いたくて家に戻る最中兄様の念に入ってしまいました』
「そんな…じゃあ…俺が爛華をそんな姿に…」
「陽斗…お前はなんて事を…」
『私はもうこの邪念に取り込まれ黄泉の死者になれ果てます
どうか躊躇なさらず眠らせて下さい』
「爛華…爛華!!」
泣き叫ぶ陽斗
「阿兎、和兎、
陽斗を連れて下がれ」
お父様が臨戦態勢に入れば
黄泉の死者になれ果てていく爛華に
舎羅登さんとののが引き込まれそうになる
それを舎羅登さんが必死に止めていた
「ッッのの、大丈夫か!?」
「大丈夫です」
「絶対助けてやるからしっかり俺を握っておけ」
「はい」
風と念が蠢くその術韻室が物々しい雰囲気に包まれる
「黄泉の死者になれ果てたら浄土へは行けないわ」
阿兎の声にそこに居た全員が覚悟を決める
泣き叫ぶ陽斗と両親を他の分家が宥める姿が目に入った
「やや!そこを退け」
お父様の声に黄泉の死者になれ果てた爛華に向き合った
「触るなやや!呪いを貰う」
舎羅登さんの声に目を瞑った
「猶予う初心な音魂の誠よ
誘い迎え入れし浄土の神よ
其方の悲しき哀れな色盛りの魂
迷い悩みなれ果てるその心を
我の中で浄化したまえ」
そう言えばややが邪念と爛華を念ごと抱きしめた
「やや!離れろ」
舎羅登さんの声も少しずつ聞こえなくなる
「聞こえますか爛華…?
弟を思い行動してくれた事
こんな結末になったけど、誰かを強く思える事は素敵なことです
その心がどうか悪に染まる前に浄土へ行けるように私の声に耳を傾けて
決して悪の声に耳を済まさず
私の声だけを聞いていて」
みんなが私を見守っているのを肌で感じた
「やや…」
舎羅登さんと視線が合えば
ゆっくりと頷いた
「姉様は何をする気ですか?」
「きっと浄土へ送るつもりだ」
父様と母様は心配そうに姉様を見つめていた
姉様が爛華から離れソッと目を閉じ
胸の前で手を合わせ握る
すると姉様の手に神楽鈴が現れた
「爛華よ…浄土へ送ります」
ブワッと風が優しくどこからとも無く吹き始めややの綺麗な髪を靡かせた
「慈しみ愛でる魂の主
ようよう沈む夕陽に送り出す唄よ」
歌いだして舞を踊る姉様に全員が息を呑んだ
「悲しみに沈み迷う日の最中
泣く泣くに想う懐かしき日々よ
眠れや眠れ
全てを忘れることはなく
想いや想い
忘れられることも無く」
そうすれば天から光が差し込む
姉様の歌声に何人もの人が涙を流していた
「皆さんも強く願ってください
爛華がまた生まれ変わりこの世に生きれることを…」
ややの声に全員が目を瞑りその歌に念を乗せた
「紫雲が連れし綻びの笑みよ
しんしんと広がる静寂の切なさ
影向が迎えし幼目の姿
恋恋と惹かれてく純真の御霊
眠れや眠れ
恐れることは何もなく
願いや願い
安らかに眠りたまえ」
歌い終われば
ののちゃんから念が外れ
顔色が良くなっていく
『ありがとう…やや様
お父様、お母様、お兄様…さよなら…』
天の光と消えてい爛華を見送った
「良かっ……た…」
後ろへ倒れ込むややの手を引き抱き寄せた
「やや大丈夫か!?」
「舎羅登…さん…ののは?」
「大丈夫、眠ってるよ」
「良かった」
フッと目を閉じたややに不安がよぎるが
力を使い果たし疲れたのか眠りについていた
「舎羅登!ややちゃんは?」
父さんの声に
「大丈夫だ」
と言えばその声に全員が拍手を送った
「やや…凄いね」
「ああ」
和兎と感心した
「陽斗よ」
源様の声に全員が張り詰める
「はい」
「お主のした事は重罪だ」
「申し訳ございません」
両親と陽斗が頭を下げる
「爛華の事は悲しい事件だったな
ののもややも舎羅登も元気だ
2度と悪に心を染めぬと約束できるか?」
「源様…」
陽斗の瞳が大きく揺れ
両親も泣き崩れた
「はい、零恩志の為、爛華の為精進します」
「其方を爛華の為にお咎めなしとする
異論はないな!?」
そこに居た全員が再び拍手した
「舎羅登…ののを助けてくれてありがとう」
泣きながら俺に寄ってくるおばさん
「いえ、それより本領発揮しましたね」
抱き上げたややを見つめた後源様に視線を送る
「ああ。上出来だったな」
「あんな歌どこで習ったんでしょう?」
「あれは習う歌では無いですよ」
おばさんにそう言えば驚いた顔をしていた
「自分で神楽鈴を呼び覚ました清女のみに歌える天から授かった鎮魂歌です」
舎羅登の言葉に全員が驚いた
「凄いわ」
おばさんは優しくややの頭を撫でた
「舎羅登君は大丈夫?」
「ありがとうございます」
「釈愛も思い出してないかな?」
不安な顔をするおばさんに
「大丈夫ですよ、父さんがしっかり術韻かけてるんで、ややは少しお薬処でゆっくりさせますね」
舎羅登さんがややを連れて術韻室を出ていく
「阿兎、和兎助かったよ」
「いえ、お役に立てて光栄です」
「ご無事で何よりです」
源様に頭を下げる
物々しい空気は晴れ
夕刻を告げるように廊下に明かりが灯された




