やや~過去編3
「それで舎羅登が庇ったのか?」
「そうなんですよ、この子がそんな事出来るなんて
羅生もビックリでしょ?」
舎羅登さんのお父様も帰ってきて4人で食卓を囲んだ
うちの家は忙しくてそういう事が無かったから
少し嬉しかった
釈愛様はこの世界で一番綺麗だって言われてる
羅生様も貴族階級は一つ下だけど実力で釈愛様の胸を射止めたってみんな大絶賛していた
「舎羅登が怪我してくれて良かったよ
これがややちゃんだと、気が気じゃなかったよ」
そう笑うおじ様に
「俺の事はいいのかよ」
っと笑う舎羅登さん
私も笑顔になる
「おっ笑った」
すると舎羅登さんが私の顔を覗き込んだ
「私だって笑うよ?」
「いつも笑顔で居りゃ可愛いのに、こいついつもムクムクむくれてんだよ」
「舎羅登!こいつって誰に向かって言ってるの?」
「いや…」
「ややちゃんごめんな
俺達が甘く育てたせいで」
「だから違うって…」
「アハハ…もう面白すぎです
全然大丈夫ですよ
とっても楽しいです」
「やっぱり娘、産んどけば良かったわ
可愛くてたまらない」
「釈愛…」
おば様の言葉を聞いた舎羅登さんとおじ様は切なそうな顔をした
「私のこと娘みたいに思ってくれますか?」
そう言えば
「もちろんよ
毎日でも会いに来てね」
っと綺麗な瞳から目が離せず頷いた
「これくらいしか出来ないけどややちゃんならいつでも大歓迎だよ」
おじ様にも頷いた
「凄く嬉しいです」
ややが笑えば母さんも親父も笑顔になる
「ギャップありすぎだろ」
小声で言えばややの事をもう少し知りたいと思えた
それからご飯を食べ終え
夜も遅くになっていた
「舎羅登、ややちゃん送ってくれる?」
「おば様、大丈夫です
すぐそこなので」
「ダメよ、遅い時間に何かあってからじゃ心配よ」
「分かった
送るから母さんと親父は片付けてて」
「今日はこっちで寝るでしょ?」
「おう、そのつもり」
玄関で草履を履く舎羅登さんの横で私も草履を履く
「おば様、おじ様ありがとうございました」
「また来てね
ややちゃん何かあったらすぐ私達を頼ってね」
「ありがとうございます」
「またね、待ってるよ」
おじ様にも頭を下げて玄関を出る
夜風が吹き抜ければ夏が始まるそんな香りに包まれた
「悪かったな、母さん強引だろ?」
「ううん楽しかったよ?
あんなに笑ったの久しぶり」
うーんっと伸びをしてニコニコ笑ったややは
数歩先を歩き夜空に輝く星や月を見あげた
「転けるぞ?」
「大丈夫だよ」
「お前さ、何で高専じゃツンってしてんの?」
「え?」
「そうやって八重歯見せて笑ってる方が可愛いよ」
舎羅登さんの言葉を受け止める
「……私、存在してるだけで嫌われてるから」
ややはそう言いながら石ころを蹴飛ばした
「阿兎や和兎が仲良くしてくれて、
実丸とも仲良くて…
弟は天才の龍君で…
アンタ自身は何なの?ってたまに聞こえるように悪口言われたりするの
だから相手してないよって凛としてる」
「そうか…
今日みたいな事よくあるのか?」
「ああ言うのは初めてだったよ
多分舎羅登さんが私に付きっきりだったから…」
「俺だぞ?別に興味無いだろ」
「阿兎と和兎が言ってましたよ?
舎羅登さんはこの世界の凄い人だって」
「俺は贔屓してるつもりは無いけど?」
「周りにはそう見えるんです
もう慣れましたけど」
足を止める舎羅登さんに私も足を止めた
「慣れるなよ、そんな事」
「え?」
「っつか嫌なら嫌って言え
やめて欲しいなら、そう伝えろよ
何もかも解った振りしてるから何時までもされるんだろ」
「舎羅登さん…」
「阿兎も和兎も実丸も零恩志なんか関係なしに、お前が好きだと思うよ
お前が思うよりみんな本気で友達になろうとしてんじゃねぇのか?」
「………私だってみんなと友達になりたいよ
でも立場が違うじゃん?」
涙をこらえるように下を向いたやや
「私は術韻も少ししか掛けられない、ましてや式神一つ作れないんだよ?
こんな私があの人達に釣り合うことなんか何も無い」
我慢しきれない涙が溢れてややの頬を辿った
「お前は存在自体が凄いだろ?」
「こんな、地位なんかいらない」
「違ぇよ」
そう言いながら舎羅登さんが私の一つにくくってた髪を解いた
「清女部ってその身で人の念を浄化できるんだろ?」
「…でもした事ないです」
「したこと無くてもできる事が凄いよ
俺や阿兎達はどんなにしたくても術韻が無ければ対象に何も出来ない」
「……」
黙り込むややはまだ苦しそうだった
「ったく、ほら」
グッと手を引き寄せられ舎羅登さんの胸の中に閉じ込められる
「え?舎羅登さん?」
「本当は今日も辛かったんだろ?
あいつらの前では平気な振りしてたけど」
「……」
「俺の前だけ素直になれば?」
「舎羅登さん」
グッと腰にまわしてきて泣きじゃくるややを優しく宥めた
「泣け泣け…」
「ッッグスッ…」
「大丈夫か?」
背中をさすれば
「最悪…」
っと声が聞こえた
「はあ?」
「見られたくない人に見られた」
そう言うややを離せば
「お前可愛くねぇな」
っと笑った
「私だって好きな人の前じゃ可愛いもん」
「そりゃ悪かったな」
「でも…ありがとう」
泣きながらそう言うややの頭を撫でた
「どういたしまして」
そう言えば
「舎羅登さんっていくつなの?」
っと涙を拭いて寄ってくるややに
「いくつに見える?」
と聞けば
「前髪ある時は30歳くらい」
「お前酷くね?
じゃあ、ない時は?」
「オールバックの時は25歳くらいかな」
「どっちも外れ」
「えー、もしかしてまだそれより若いとか言わないよね?」
「23歳の年、まだ22歳だけどな
早生まれの3月だから同い年より若い時間長く味わえる得なやつだ」
「それ、地雷」
「むくれた…」
「私4月だもん」
「じゃあもう20歳だな」
「3歳も変わらないなんて詐欺だよ」
「お前失礼だぞ
これでも昔はモテモテだったんだからな」
「アハハ
絶対嘘だよ
今全然モテてないじゃん」
「言ったな。今度証明してやるよ
じゃあもし俺が本当にモテてたらどうする?」
「どうしようかな〜
お薬処の雑用係してあげようか?」
「おっいいね、掃除、洗濯、3食ご飯、出張のお供に、背中流し!約束だぞ」
「背中流しは嫌」
「うわー、そこ初心振るんだ」
「当たり前でしょ?
私は婚礼するまで清い体で居なきゃいけないの
私の殿方になられる人が、こんな人の背中流してたなんて知ったら破談にされるわ」
「お前、本当に酷いやつだな
じゃあ、それ以外な」
「うん、約束ね」
そう話してる間に零恩志の屋敷に着いた
「じゃあ明後日学校でな」
「はい
ありがとう舎羅登さん」
ニコっと笑って屋敷に入っていくややを見送った
零恩志家の門にもたれてタバコに火をつけた
「コロコロ表情変えて、忙しい奴だな…」
一番苦手なタイプだ
それが俺の第一印象だった…




