暗闇のキス
『キャー』
『なになに?』
「実丸何やってんだよ!?」
妃乃瑠の顔に実丸の顔を隠す忍服の布を被せスッポリ妃乃瑠の顔と肩が隠れて
潜り込んだ実丸の顔が布の中に消えた
「これって」
飛奈が俺を見上げた
「実丸…」
バサッと布が取れそのまま実丸は顔に巻き付けながら食堂を出ていった
「////////////」
顔を真っ赤にして目を見開いた妃乃瑠を残して
「綺麗になってる」
飛奈の声に妃乃瑠はハッとして目元を触る
「本当だ」
「呪い移しか」
俺が言えば生徒達が口々に騒ぎ出した
「実丸さん…」
『妃乃瑠』
実丸さんの声と触れた唇を思い出した
「////////…無理…」
ズドンッと妃乃瑠が顔を赤くして椅子から後ろへ倒れ落ちた
「妃乃瑠!!」
目をクルクル回して
実丸さんのカッコよさに耐えられなかったんだと察した
「またからかわれるだろうな」
「そうですね」
「女子達が盛り上がってる」
飛奈と未来弥とそう言えば
実丸のトレーを片付けた
__________
「おー男前
どうした呪い貰うなんて珍しいじゃねぇか」
藩登様がそう声をかけてくる
「藩登様」
「あれ?妃乃瑠の気がするな
貰ってやったのか?」
「解ってるなら口に出さないでください」
「あんだけ戦闘して、
治癒して傷一つないの気づいてないよな。
妃乃瑠…」
笑う藩登様に目を瞑った
「何回内緒で口移ししたんだよ?」
「人聞き悪い言い方やめてください」
「お前が呪いを受けてる時はいつも妃乃瑠だからな」
「支障はないからいいでしょ」
「見誤ったな」
藩登様がそう言いながら廊下から青空を見上げ伸びをした
「見誤った…ですか?」
「舎羅登はただの当て馬で結局妃乃瑠はお前を好きになっちゃうんだもんな…って話」
「…それは」
「お前しかも前より優しくしてどーすんだよ」
「優しくしてるつもりはないです」
「…はあ…無自覚か」
「会う機会も減ったし、俺を好きになる理由がわかりません」
そう言えば藩登様は笑いながら
「まあいいよ
お前の事は特に心配はしてない
妃乃瑠もまだ飛奈や未来弥が居るからいいが
紅月は少し気をつけておけ」
「…輪廻回廊の話聞きましたか?」
「ああ、お前らの寮前のやり取りを爺教官が見ててな
特別クラスへの拍車の為に抽選にしたんだが、少し早まったな」
「あれをどうやってかけたと思いますか?
あの術韻は院生が簡単にかけれるとは思いません」
「ああ…
最近街のハズレにある花畑に闇売が出ると聞く」
「…時沙の時の話でも梓様が闇売から買ったと聞きました」
「そうだ
闇売が式神にその韻を込めて売ったかもしれない」
「でも…お金は?」
「1人じゃないのかもな…」
「でも丸北皐月の時の感じでは、そんな事するようには見えませんでしたけど」
「心の闇は人には見えないもんだ」
「……そうですね」
「とにかく気をつけておけ」
「はい」
__________
トントン
「はーい」
扉が開けば妃乃瑠がお薬処に入ってくる
「問題児、どうした?」
優しく笑う舎羅登さんの横に座る
「ごめんなさい…」
「何?いきなり」
タバコに火をつけて書類に目を落としてる舎羅登さんを見つめた
「私がお願いしたんだって思います。
記憶の事…」
「…ん」
「舎羅登さんを好きって頭も記憶も思ってます
でも心だけ違って」
そう言えば舎羅登さんと視線がぶつかる
「…実丸が好きか?」
「舎羅登さん…」
涙を溜める妃乃瑠の頭をクシャクシャにして撫でる
「女は鋭いな」
「え?」
「飛奈にも莉心ちゃんにも言われたよ
好きだった気持ちを侮るなって…」
「舎羅登さん…」
「俺さ、人をそんなに必死に好きになって何があるんだ?って思ってた。
妃乃瑠が泣いて泣いて、それでも実丸を求めて八雲剥がすほど正常な判断できなくて…
また八雲剥がすかもしれないって思い詰めた顔で言われたら…助けたくなったよ」
「…私最低ですね…
何も見えてなかったし…見ようとしてなかった」
「俺にしとけば泣かなくて済むのに」
「舎羅登さん…」
「でも術韻かけられてもまた好きになるって珍しいケースだな。本当に…
俺が振られたみたいじゃん」
タバコの煙を吐き出し灰皿に押し付けながら項垂れる舎羅登さんをゆっくり抱きしめた
「ありがとう…舎羅登さん」
「今頭の中グチャグチャだろ?
解きたいか?術韻…」
「え?解けるんですか?」
「ああ。
でもやっぱり教えてやんない」
「…?」
「探してみろよ
解くために必要な事
それ位の意地悪はしていいだろ
第一今すぐは多分無理だからな」
「…解りました
舎羅登さんにこれ以上迷惑かけないように頑張ります」
そう笑った妃乃瑠に笑みが溢れる
「しかし、実丸の何処がいいんだよ?
顔は男前だけど性格難ありすぎだろ?
冷たいし優しくねぇし」
笑いながら言う舎羅登さんに
「優しいですよ
距離を感じる時もあります
冷たく感じる事も…
でも一つ一つの小さな事が怖いくらい嬉しくて
どこに居ても目が探してるんです」
その妃乃瑠の顔は2人が高専で出会った時のような純真に包まれるようなそんな顔をしていた
「記憶消した所でダメだったて事だな」
「……そうですね」
「お前自身も解ってなかったんだよな
自分が実丸をどれだけ好きってことか…」
「恥ずかしい話です」
「ってかさ、輪廻回廊かけられてたんだって?」
「そうみたいです
よく分からないんですけど
…どこでそんな事されたんだろ…」
「ちょっと見せてみろ」
額の痣は薄くなり輪廻回廊は消えていた
「大丈夫そうだな」
そう言いながら痣に手をかざしてくれる舎羅登さん
熱い気を感じる
「これで大丈夫だ」
「色々ありがとうございました」
「また何かあったら遠慮せずおいで」
「はい」
出ていく妃乃瑠を見送り
タバコにまた火をつけた
「誰だ、あんな術使うやつ」




