悲しい別れに
「皐月…違うよ
先生は皐月を助けるために下界に運命の輪を繋げたんだよ!」
紅月がそう言えば皐月は俺を見つめた
『「先生…その首は呪いなんですか?」』
「そんな事くらい何てない」
『「下界に繋げるなんて…重罪なのに…」』
「先生…失格だろ?
お前が目の前で…
それで正気を失うなんて…」
『「…先生…」』
ゆっくり皐月を抱きしめた
「出来ることは限られるけど少し一緒に居よう」
『「先生…」』
「お前の気がそれで晴れるなら…」
重なる視線を割くように重たい気流が俺たちを包む
「実丸さん…待って」
妃乃瑠の横に降り立つ実丸の怒りが伝わってくる
「妃乃瑠大丈夫か?」
「大丈夫です
だから今はダメです
お願いします…あの子を」
「悪い、それは聞けない」
実丸さんはそのまま前に進み出す生徒達は実丸さんの気に腰を抜かして道を開けていた
「実丸さん!お願いします」
紅月ちゃんの声も視線でうけ流した
「実丸さんダメです
その子は莉心様の中に居てるから」
妃乃瑠の声にも反応せず俺たちに近づいてくる
『「実丸さん…」』
「一番厄介なのが来たな
丸北…隠れて」
背中に丸北を隠せば実丸は俺を強く睨む
「そいつと莉心様、
どっちが大切かお前なら解るだろ?」
「解ってる
けど今はこの子の願いを叶えないと絶式は解けないだろ?」
「莉心様は妃乃瑠とは違う
短時間でも意識を持ってかれる
魂さえ戻らないかもしれないんだぞ」
「解ってる」
「解ってねぇよ
もう絶式に入って何分経った?
心の闇は広がる
そいつも黄泉の死者にするつもりか?」
「……実丸」
「助けるなら早くしろ
まだ浄土に行ける」
「……」
俺の忍服を掴む丸北はゆっくり俺を見上げた
『「もう…大丈夫です」』
「丸北…」
『「先生…わがまま言ってごめんなさい」』
「俺こそごめん
助けられなくて」
涙を流す丸北は
ゆっくり莉心様を前へ突き飛ばし
姿を現し出てきた
「莉心様!」
「実丸、紅月ちゃん大丈夫だよ…」
不気味な視線を感じて皐月の方へ顔を向けた
『「ううん、願いは叶えるよ」』
バッと目が血走る丸北が念事自分を紅月に向けて飛びかかる
「ダメっ!!!」
バンっと紅月ちゃんを突き飛ばし
莉心様が丸北を全身で受け止めた
「莉心様!」
実丸が駆け寄る
「莉心…様…」
紅月は訳が分からない顔で莉心様を見つめていた
浮かび上がった丸北はどんどん念を纏っていく
「だめだ、丸北!
気持ちをしっかり持て」
「…黄泉の死者に…なれ果てる」
妃乃瑠の声にみんなが丸北を見つめた
「莉心様!」
「…大丈夫…」
「大丈夫じゃないでしょ
見せてください」
「待って、先にあの子を」
実丸を掴んで立ち上がりその念を纏う皐月に声をかける
「ダメだよ皐月ちゃん…
…見たよ…そして感じたあなたの気持ち」
『ううぅ』
頭を抱える皐月ちゃんに声を届ける
「好きだったんだね?
そばに居たかったんだよね…
本当は紅月ちゃんのことも大好きで
助かった紅月ちゃんを見て良かったって気持ちと届かなかった手が寂しかったんだよね…」
1本の念が莉心様に伸びてくる
「触っちゃダメだ」
九楼先生の声に笑顔を向けて念に触れる
手は赤く爛れていく
「けど傷つけちゃダメだよ…
その好きって気持ちを悪になんか染めないで!」
「莉心様!もう聞こえてません」
実丸が近づこうとするのを念が邪魔する
「皐月ちゃんに会えてみんな幸せだったよ
みんなの心の中の可愛い笑顔の皐月ちゃんを消したりしないで…」
『うぐぅぅ』
グッと念を手繰り寄せ念に絡まる皐月を抱きしめた
「大丈夫だよ…
痛かったね
頑張ったね…
みんながちゃんと送るから…
また生まれ変わって会いに来て
それまで忘れないから…」
『莉心様…』
皐月ちゃんに絡まる念が消えて
いつも笑顔がいっぱいだった皐月ちゃんに戻る
ゆっくり抱きしめれば泣き出す皐月ちゃん
私の横に九楼先生が来ればソッと皐月ちゃんを強く抱きしめた
それを皮切りに生徒達が泣きながら囲み抱きしめた
「忘れないよ丸北…」
「皐月…ごめんね…ごめん」
『紅月ごめんね』
「皐月ちゃん」
「絶対戻ってこいよ」
生徒達の声を聞きながら
廊下に倒れ込む莉心様に駆け寄る
「実丸…ごめん
言うこと聞かなくて」
「良いですよ…
ありがとうございました」
「無事で良かったです」
妃乃瑠ちゃんがそう抱きしめてくれた
実丸と妃乃瑠ちゃんと九楼先生が浄土への韻を詠み出せば光り輝く道が皐月ちゃんを照らした
それを見上げる私は涙が止まらなかった
皐月ちゃんの気持ちが溢れてくる
走馬灯のように…
愛して愛されて
求めて求められて
必然とこの世界を生きてきた
突然奪われた未来は幸せに描かれている
大好きな人が居て
そこで笑う自分が居る
明日からそれは普通じゃなくて
意味も持たなくて
考えるだけで怖くなる
足元から崩れていくような不安
残された方は
いつもこの空虚感を抱えて生きていくの
そして
置いていく方は
いつもこの胸がいっぱいで苦しい気持ちを抱えていくんだ
「莉心様…」
悲しい瞳から涙を流す莉心様を見つめた
「妃乃瑠ちゃん…
どうして…連れ去られたのが私だったのかな…?」
「………」
「実丸と妃乃瑠ちゃんに出会って
龍様を好きになって…
これが運命なの?」
「自然の理に逆らえない事だって思うしかないのかもしれないですね。それを運命って呼ぶ人もいます」
「あの子が何時かまた笑顔で生きられる日が来ればいいね」
「はい」
涙が止まる頃には皐月ちゃんは雲の中に消えていった
生きて居れる事に
私達はあぐらをかいて
命という大切なものと向き合わなきゃいけないんだって…
強く思った瞬間だった…




