目の前に現れたのは
バンッと大きな稲妻の音と
見えない速さで通り抜けた何かで装束の人達が吹き飛び
白姫さえ仰け反り跪いた
崩れ落ちる私をグッと誰かが引き寄せてくれた
恐る恐る顔を上げる
そこには確かに龍斗に似た金髪の人がいた
「誰?」
そう問えば
「敵ではない」
龍斗と同じ声が私に届いた
その人は真っ白な袴を着て傘なんてさしていないのに雨に濡れないでいた
そっと上を見上げてその訳を知った
「あれ…竜…?」
とぐろを巻いて私達を見下ろすその生き物のようなものに息を飲んだ
「お前は零恩志家の使いか?」
叔父さんはそう声をあげた
「使い?笑わすな
俺を誰だか知らないお前自身を恨め」
そう言いながら
龍斗に似てる人は龍斗と同じ声で
お父さんが言っていた難しい言葉を続けた
「左に流れる蒼き涙
右に流れし紅き血よ
我、神の名の元に
タツノミコトコハク」
その言葉に装束の人達が後ずさりする
「タツノミコトコハクだと…」
「そんなバカな」
「伝説の竜をあんな若僧が契ったのか」
口々に聞こえる声を無視して
その人は続けた
「ミコト、コハク
殺れ」
とぐろが解かれて2匹の竜が天へ昇っていく
「莉心。もう大丈夫だ」
優しい声と
その言葉に全身の力が抜けていく気がした
舞い降りて来る2匹の竜を最後に
私は意識を手放した