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愛しき姫は異世界に  作者: janky
第8章
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安心の涙

「それで…」


お屋敷について皇我から降りれば

妃乃瑠ちゃんと実丸と視線を合わせた


「何がどうなってあんな事になるんすか?」



実丸は部屋の前の廊下の柵に持たれながら

そう問いかけてきた


「あの、違うの。違うよ?うん、違う」


何かを確かめて、考えて、言い切る莉心様


「ちょっと、莉心様

しばらく会わない間にそんな、キキキ」


顔を赤くしながら言葉に詰まる妃乃瑠


「おい、妃乃瑠」


「だって、だってあの龍様ですよ!?

何がどうなって…」


「そりゃあの状況じゃあな」


「違う!本当に違う…って言うか…

私もよく解らない」


そういった莉心様は何故か泣きそうな顔をしていた


「莉心様」


妃乃瑠がギュッと抱きしめれば突然張り詰めた糸が切れたように泣き出した


「ごめん…ね」


「大丈夫です」


落ち着くように妃乃瑠が背中を擦り

部屋に入る


「俺は待ってるよ」


実丸さんの言葉に頷いた


「落ち着いてください。

お水入れますね」


妃乃瑠ちゃんがお水を居れて私の隣に座ってくれた


「あのね…凄く色んな事が今日1日あって…

部屋に帰って来れて、

妃乃瑠ちゃんと実丸の顔を見れて凄くホッとしたの」


「うん」


「目の前で今まで経験したこともない、

もちろん見たことも無い事がどんどん起こって…

初めはね、夢見てるんだ…って思うようにしてたの…

でも全然夢で収まらないくらい感じる事が沢山あったの」


「うん」


「龍様の苦しそうな顔も

血だらけの服も…私の肌に感じる温もりも

これが今起こってる。

リアルな事なんだって思ったら凄く凄く怖くなった


みんな普通に傷を負って

私を守って、危ない目にあって…

これが普通の事って言われても

そうだね!…なんて言えない

どうしたらいいんだろう…って日に日に怖くなるよ」


「莉心様」


ギュッと妃乃瑠ちゃんが強く抱きしめてくれる


「落ち着いてください

大丈夫ですよ」


再び泣き始める莉心様の頭を優しく撫でた


「目の前で怖かったですよね…

私達も初めはそうでした

特に…」


その言葉を言って妃乃瑠ちゃんは何かを思い出していた


「妃乃瑠ちゃん?」

「大切な人が傷つくのは…辛いですよね」

「うん…辛い」

「どうにかしてでも助けたい

私なんか…どうなってもいいから…」

「うん」


莉心様をギュっと再び力を入れて抱きしめた


「莉心様は強いです」


離れた妃乃瑠ちゃんはそう言って優しく笑った


「強くなんかないよ…」

「私は…きっと耐えられなかったんです」

「妃乃瑠ちゃん…」

「明確には解らないけど。

自分にかかる術韻の種類は記憶を封印する術韻でした」


「実丸を忘れた事?」


そう聞けば瞳が揺れた


「あの…私は…実丸さんを好きでしたか?」

「え?」

「みんなは違うって…舎羅登さんだっていうんです

でも…頭は舎羅登さんを好きだって思うのに

心が実丸さんに惹かれて行くんです

会えば会うほど…」


「妃乃瑠ちゃん…苦しい?」

「はい…苦しいです」

「私も苦しい…

龍様を好きになって行ってる自分が苦しいよ…」


2人でそう言って泣きながら抱きしめ合った


妃乃瑠ちゃんとの心の距離は

永遠に変わらない


1番初めに心を開けた人だから…


「ごめんなさい

私まで泣いちゃって」

「ううん

一緒に泣いてくれてありがとう」

「莉心様が居てくれて良かった」

「私も、妃乃瑠ちゃんが居てくれてよかった…」

「ありがとうございます」

「…妃乃瑠ちゃん、忘れた過去ももちろん大切だと思うよ…でも、今も大切だよ。

気持ちに嘘つかないで…」


「はい

ではそろそろ帰りますね」

「ありがとう」


廊下に出れば律儀に待ってる実丸が私達に視線を向けた


「もういいのか?」

「はい」

「実丸ありがとうね」


月明かりを浴びて実丸は優しく笑った


「…じゃあ帰ります」

「実丸。妃乃瑠ちゃんの事送ってあげてよ

もうこっちに住んでないし、高専まで少し距離あるから…」

「だ、大丈夫です」

「解りました

行くぞ、妃乃瑠」


「じゃあね、実丸、妃乃瑠ちゃん」


実丸の後をゆっくりついて歩き出す妃乃瑠ちゃんが振り返った


「おやすみなさい」


「おやすみ」


泣いても状況は変わらないから

泣くことを我慢する事が増えていた

素直に泣くことでこんなにも強くなれるなんて思わなかったから…


きっと数ヶ月前の中界で生きる私が知ったら驚くだろうな…


目に見えるもの以外は信じられない

きっと…

とか

たぶん…

とか

そんな言葉が嫌いだった


でも、この世界に来て目に見えるものさえ不確かなものだと思った


いつ自分が…

いつ大切な人が…

居なくなるか解らない危険と隣合わせの毎日


曖昧な言葉にでもすがり付きたくなるような

そんな切ない気持ちを理解した


幸せだったんだ…


当たり前に生きることが

とっても、幸せなことだったんだ…




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