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愛しき姫は異世界に  作者: janky
第8章
74/220

竜ノ美琴琥珀

ピシャン ピシャン


っと水の滴る音に龍様は唇を離した


その顔は私の知ってる龍様ではなく

竜使い。

この世界を仕切る零恩志家の跡取りの

張り詰めた顔をしていた


「莉心、少し待ってくれるか?」

「え?」

「邪魔が入った」


立ち上がり後ろを振り返った龍様

それに続いて龍様から顔を出した


「あれ…」


「黄泉の死者になりそうだな」


赤色の念をグルグルに巻いた私たちと同じくらいの女の子が居た


『くる…し…』


「龍様…」


「莉心、あれはもう心を持たない

俺たちを油断させる言葉だ


真に受けるな」


頷いた莉心は俺から少し離れる


「うん」


「今ミコトもコハクも居ない

俺の力もどこまで持つか分からない

だからこの術の中から絶対動くな」


真剣な龍様の視線に無言で頷いた


いつも優しい笑顔で話してくれる時とは違う

男らしくて力強い



その背中は


いつも何かから守ってくれた龍斗と何も変わらない


何も変わらないよ…




「左に流れし蒼き涙

右に流れし紅き血よ」



龍様の口上で体から風が巻き起こり

水面も揺れ出す


『かな…し…い』


「神の名の元に鎮めたまえ」


バシャン


バシャン


っと波が立ち上がる


『ねぇ…その()美味しそう』


ビュルビュルっと念が俺を超え莉心目掛け飛んでいく


術韻により弾き返されるがそれを見届ける頃には

黄泉の死者が俺に間合いを詰めていた



「っクソ」

『食べていい?』


怪しく笑った女は術韻を破り莉心を引きずり出した



「術韻が…」


疲れや怪我、ミコトとコハクが俺の中で回復してるせいか力が弱まっていた


「きゃぁぁぁ」



引きずられそのまま水面の中へ連れていかれる莉心



今俺に莉心を救うために残された力はない


もう…

迷ってる暇はないよな



はだけていた上の袴を脱ぎ捨て左胸に浮かんだ龍の紋章に手を当てた




静謐(せいひつ)を裂く無心な死者よ

朧月夜(おぼろづきよ)

眠りに迎え入れし東雲(しののめ)の空

解放されし我の中に眠る(いにしえ)の力

零恩志式 憑依 竜ノ美琴琥珀(タツノミコトコハク)



凄まじい風に水面が二つに別れて

沈んだ莉心が見えた


黄泉の死者の念は外れ黄泉の死者は俺の念の気流に後ずさりしていく



意識を失った莉心を抱き上げ

黄泉の死者に目を向けた



『早くしないと助からないよ』


莉心の顔を見れば青紫色になっていた


「お前」


『美味しいから取っちゃった』



黄泉の死者の右手には莉心の気を集めた念が持たれていた


「…返せ」


『腹いせよ

花屋敷への


私を捕まえてこんな所へ閉じ込めた罰』


「うるせぇ女だな

ごちゃごちゃ喋るな」


莉心を念に包み岩の上に降ろす


韻界(いんかい)第1」


そう唱えれば左目が蒼く輝いた


蒼龍裂破(そうりゅうれっぱ)



そう唱えれば

無理やりミコトとコハクを身体から離し

この洞窟のようなとこを突き破り水が衝撃波で飛び散った


莉心を念事引っ張り上げ宙に浮かぶ

黄泉の死者も逃げ惑いながら洞窟から出てくる


「コハク、莉心を安全な所へ

そこで守っていてくれ」


そう言えば莉心を背中で受け止め距離をとる


ミコトが顔を寄せてくる


「ミコト、案ずるなまだ俺は居る」


『っクソ…許さない』


「ああ。許さなくていい

その前にお前を消してやる」



ミコトが天に登っていく






_____




「あれは…龍様!!」


阿兎がそう叫べば

全員が空を見上げた



「何がどうなって韻界になってんだよ!」


和兎がそう言えば


「急がないと持ってかれる」


藩登様がスピードを上げ龍様の元へ向かった


「やっぱり黄泉の死者になれ果ててるな

俺と妃乃瑠は莉心様だ」


「うん」


「頼んだよ実丸、妃乃瑠ちゃん」


「行こう、阿兎」



『グアァァァァア』


響き渡る黄泉の死者の声に街の雰囲気がかわる


「やばいぞ、この気流龍様が暴走する」



和兎はそう言いながらコハクの気をつかむ


「実丸、莉心様はこっちだ」


コハクに包まれる莉心様は念を纏いひどい顔をしていた


「莉心様!」


「莉心様大丈夫ですか!?」


「ん…」


そこへミコトが飛んできて

一つの念の塊を莉心様の上に置いた


「…ハッ」


飛び起きた莉心様は俺達の顔を見て


「黄泉の死者が龍様と」


ゴォォォォっと地響きのような音に

龍様の周りを眩い光が包む

ミコトとコハクがその周りをグルグルと周り雲を集めていた


「ダメよ近づけないわ」


阿兎さんがそう言えば


全員で見上げるしか出来ないと悟る


「龍様どうしたの?」

「…多分ですが、力が弱まり戦うために封印してるミコトとコハクを憑依して力を解放したんだと思います」

「それって…危ない事じゃないんですか?」

妃乃瑠ちゃんの問に和兎は頷いた


「ミコトとコハクをもう一度封印しないといけない

でもあの力に飲み込まれ出してる」


「龍様…どうなっちゃうの?」

「莉心様…」


不穏な顔をした実丸達に不安がよぎる



「龍!聞こえるか!?

俺が力を送ってやる

韻を読めるか!!」


式神に跨り声をかける藩登様の声が響き渡る

だけど


「ダメだ聞こえてねぇ」


藩登様の声に


「このままじゃ龍様が…」


阿兎が頭を抱える


「実丸、お願いがあるの」


突然莉心様はそう言って俺にしがみついてくる



「どうしたんですか?」

「皇我を貸して」

「え?」

「皇我ならあの気流の中に入れない?!」

「それなら俺がやります」

「ダメ!私にやらせて」

「危ない目には合わせられません」

「私の声を届けたいの」


莉心様はそう言いながら俺を見つめた


「龍様がさっき言ってくれたの…

初めて守りたいって思えたって…」


「龍様が…」

阿兎さんの言葉に頷いた


「私も守りたいよ

守られてばっかりは嫌だから」

「…莉心様」


妃乃瑠ちゃんの方を向いて頷く


「危ないと判断したら直ぐにやめますよ」

「うん」


皇我を呼び出せば溜まった雲から雷雨が俺たちを迎え入れる



「皇我、莉心様を頼んだぞ」


『承知』


「ごめんね、皇我

ちょっと頑張ってね」


皇我に跨り空へ駆け上がった

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