龍斗が...
「どうしてこんなことするんですか?」
お母さんの声に
装束の中の1人が前に出てきた
「花屋敷家の復活だよ。
それだけだ」
「こんな事して復活?ふざけんな
白姫の封印を解いたのはあんたか!?」
お父さんがポケットから白い紙切れを出し
何かを言い始めた
するとその紙切れはお父さんの様な形になり装束の人たちに飛びかかった
「今のうちに莉心を連れていけ」
「うん、莉心行くわよ」
「お父さんは?」
「大丈夫よ。すぐ来るから」
その言葉を遮るように強い風が吹き抜けた
ドサッと倒れるお父さんの横を黄泉の死者が通り過ぎる
「お母さん…」
「莉心。逃げるわよ、走って」
「だってお父さんが…」
足が全く動かなかった
お父さんの笑顔が声が体中を駆け巡る
「お父さん…お父さん!」
お母さんに手を強く引かれても
信じられない。
雨に打ち付けられてるお父さんに涙が溢れた
「何なの…
なんなのよ…」
「莉心お願い、逃げて」
「嫌だよ…お父さん
いや…」
空を見上げても暗くて冷たくて
分からなかった
どうして今その名前を呼んだのかも
「助けて…
龍斗…
助けてぇぇぇ」
ピシャンっと大きなイナズマが走ると同時に凄い風に全員が足を数歩後ろへ下げた
黄泉の死者以外。
その白姫はゆっくり私の頬に手を添えた
『…ちょ……だい……』
風で舞い上がった髪の毛の間から見えたその顔は悲しみと怒りに満ちているようだった
「離して、莉心!!」
お母さんを装束の人達が押さえつけている
「さあー、白姫様!この子と一つに」
叔父さんと呼ばれた人は笑いながら私を強く引っ張り白姫に近づけた
「いや…」
暗い闇に飲み込まれて行くような深くて怖い
孤独のような言いようのない空虚感に落ちていく
「り……こ…」
ぼーっとしていく意識の中に微かに聞こえた声
「莉心!」
バッと強く後ろにひかれて暖かい何かに包み込まれる
「ハァッハァッ」
息が上がり疲れが押し寄せる
「大丈夫だ。落ち着け」
その声に体中が反応する
ゆっくり顔をあげると
「龍斗…?」
愛しい顔が目に入る
「大丈夫だから莉心…」
シュッと私を包んでいた龍斗が消えて紙切れが舞い散った
「りゅ…と?」
私は冷たい地面に崩れ落ちた
もう…ダメなんだ…
「今の式神は零恩志式?」
叔父さんはそう言いながら紙切れを拾う
お母さんもお父さんも冷たい地面に倒れたまま雨に打たれ動かなくなっていた
装束の人達が紙切れを見てる今なら
そう思って後ろへ走り出した
「ハァッハァッ」
怖くて震える足を無理やり動かし
涙で前さえもう見えないくらい
いっぱいいっぱいで
私このまま…
このまま死んじゃうのかな?
『に…がさな…い』
グッと首に髪の毛が巻きついてくる
「いやっいや!」
「大人しくしろ」
装束の人たちの声に
精一杯声を出した
「いやぁぁぁぁ」