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愛しき姫は異世界に  作者: janky
第8章
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第8章 断髪

「うん、異常なし

痣も1枚だけ色付いたくらいだな」


「ありがとうございます」


莉心ちゃんはそう言いながら襦袢を正す


「他に体の異変は無さそうだし、体重も来た時位に戻ってきてるから安心だな

俺的にはもう少しお肉ついてる方が好みなんだけどな」


冗談混じりにそう言えば莉心ちゃんは真剣な眼差しで俺を見つめて居た


「何か言いたそうな顔だな?」

「舎羅登さんは…

実丸が嫌い?」

「どうして?」

「意地悪してるから」

「誰が?」

「舎羅登さんが」

「誰に?」

「実丸に!」


プンって怒った顔をして再び俺の横に腰を下ろした莉心ちゃん


「誤解だよ、俺何も悪いことしてないから」

「じゃあ実丸に妃乃瑠ちゃん返してあげてよ」

「おいおい、妃乃瑠は物じゃねぇぞ」

「解ってるけど…

実丸がね、最近思い詰めてるって言うか…

怖いって言うか…」


よく見てるな…って感心した

まあ、そりゃそうか実丸も妃乃瑠も莉心ちゃんには特別な存在だからな…


「妃乃瑠の方じゃなくて実丸がヤバいって事?」

「うん、ボーッとして何か思い出してるみたいに見えるし、それに紅月ちゃんもいい子だけど、実丸がいる時と居ない時の態度が違いすぎて苦手なの


妃乃瑠ちゃんはどんな時も私に対して一緒だったし…」


「あいつらにはこの時間が必要だと思うよ、俺は。

大切なものはなくして初めて気づくっていうだろ?」

「なくす前に気付かないと、なくしてしまったら終わりなんじゃないの?

ドラマとか漫画とかそんな世界ならわかるけど…」

「そうだな

莉心ちゃんはさ、龍を好きにはならないの?似てるんだろ、中界の好きな人に」

「え?まあ似てると言えば外見で、中身は全然違います

龍斗はいつも優しくて、私が困ってたら助けてくれて…

龍斗が居てくれればそれだけで幸せだなって思えました」


「龍は違うの?」


「だって…」


どうして意地悪な事を聞くのかな?

私はこのままだと…


「消えてしまうから?」

「え?」

「消えてしまうから好きにならないの?」

「…」


ハッとした

私は龍様を好きにはならない理由を消えてしまうからって思ってた

消えてしまうから好きになっても辛いだけって…


「うわー自覚した、その顔」

「////ち、違います」

「だって、あの谷田川の事件の後から龍、変わっただろ?甘甘っつか、優しすぎというか」


確かにあの事件の後、龍様はとても優しくなった

私を知ろうとしてくれて、

龍様の事も少しずつ教えてくれるようになった


「龍の中でも気づいたんだろ、

あの時居なくなった莉心ちゃんを必死に探す龍は見物だったな

無くしかけて気づくんだよ、莉心ちゃんはもっと素直に生きればいい

消えるとか消えないとか…

正直どうにでもなる」


「え?どうにでもなるって…」


「事実、龍は違う方法を探してるし、

莉心ちゃんを消す事を望んでる人は居ない」


「……それって、信じていいですか?」


悲しい瞳はあの日のように

俺たちが追い詰めた時と同じ瞳をしていた


「大丈夫

言いきれるよ…

実丸にも妃乃瑠にも莉心ちゃんが必要だ」


「必要ですかね?」

「まあ、実丸の傍に居てあげて。

俺は妃乃瑠を見守るから」


「はい

そう言えば舎羅登さんは本命は居ないんですか?」


無垢で悪気のない問いは俺を揺らす

全身から伝わりそうな汚れた感情をグッと押し込む


「居ないよ」


「そうですか、じゃあやっちゃいます?」


ニコニコ何かを企む莉心ちゃんはハサミを手に取りチョキチョキと数回動かして俺を見つめた


「いや、いい」

「えー私凄く上手なんですよ?

将来は美容師になれるってお墨付きだったんですから」

「いいんだ、これで」

少し悲しそうな舎羅登さんの顔を覗いた


「カッコイイのに勿体ないです!

姫様命令!!」

「なんだそれ」


優しく笑う舎羅登さんをお薬処の小さな庭に椅子を出しそこへ連れていく


「俺さ、甘いよな?」

「え?」

「莉心ちゃんのお願いには弱い気がする」

「じゃあお願いばっかりするね」


笑う莉心ちゃんに釣られて笑う


「それは困るけど。

じゃあよろしくな」


そう言いながら甚平の上を脱ぎ上半身裸になった舎羅登さんに言葉が詰まる


「莉心ちゃん?」

「あっ、はい」


目が泳ぎオロオロしてる莉心ちゃんに声をかける


「傷だらけだろ?」

「え…はい」

「この仕事の宿命ってとこかな」

「術韻を解くお仕事ですよね」


髪をとかしてハサミの音が響く


一際目立つ首の後ろの呪い…



「俺さ、本当は実丸とか和兎みたいに、

戦闘要員になりたかったんだ

どんな事があっても、どんな時でも

大切な奴をこの手で守りたいって思ってて…

けど、ある呪いをもらったせいで俺はもう術韻を結ぶことが出来ない」


「この呪い…ですか?」


「うん

でもそれは仕方の無い事だって思うようにしてる

それ以上に俺は大切な者を無くしたから」


「舎羅登さん…」


「若い時ってさ、

未来なんか全然想像出来ないから、

その前の全てに手を差し伸べてしまうんだよ

それが全部で、それが一番で

それ以外を知ろうとしない。


大人がいう言葉は全部頭と腹じゃ違って、もっと賢くならなきゃって思う頃には、こんなオッサンになってるんだよ」


「舎羅登さんは全然オッサンじゃないですよ

いつもみんなを気にかける優しいお兄ちゃんって感じです」


「うわー癒される

莉心ちゃん、最高だわ」


「何ですか突然?」


クスクス笑う莉心ちゃんを見て

少し救われた気がした


「やっぱりカッコイイ!」


短髪にして軽くセットすれば舎羅登さんが絶品へと姿を変えた


「髭も剃ろうかな」


「スイッチ入りました?」


「おう、サンキュ

けどスースーする、首元」


「絶対昔、モテましたよね?」

「おい、昔限定みたいな言い方するな

そりゃもうモテすぎてヤバかった」

「その当時の舎羅登さんに会いたいな

両手に花?状態だったのかな」

「両手じゃ足りねぇーって感じだった」


笑いながら伸びをした舎羅登さんは

私を見つめた


「舎羅登さん?」


「ん?俺に惚れねぇかなって思って」


「ちょっとからかわないで下さいよ」


「うそうそ、本当は前髪で少し視界隠してた

見たくないもんばっかり見てきたから…

柄にもなく逃げてたんだ」


そう言いながら庭の縁側に座る舎羅登さんの横に腰を下ろした


「俺。好きな子、2回も手放したんだ…」


「え?」


「そのうち1人は消えて。もう1人はずっと眠ってる」


「…私…何も知らなくて…ごめんなさい」

「謝んなくていいよ

少しだけ勇気出そうだ


全部俺が悪いから、正直会うのも怖いんだよ

真っ直ぐ俺ばっか愛してたその子に会うのが」


「……舎羅登さん」


「だから妃乃瑠を見てるとほっておけなくなる、ひたすらに実丸ばっか追いかけて傷ついて傷ついて、自分を苦しめていく

それ以上にまた好きが自分を覆ってく


そして潰れるんだ」


「………」


「好きで好きで苦しくて、自分が壊れる

自分が自分をコントロール出来なくて

引き戻せないところまで来てしまう」


「…舎羅登さんの好きな人もそうだったの?」


「…そうだ、2人とも

俺のことを好きだって言うのに

俺のことを考えてはくれない

自分の都合、気持ちばっかりで」


「……」


「2人目なんか最悪。

俺を助けたいって言った、

1人目を無くした悲しみから…

私を好きにさせてみせるとか、

私がずっと一緒に居るからって…」


「それなのにどうして最悪なの?」


「今あいつはここに居ない、

それが答えだろ」


今までとは比べられないくらい悲しい顔をした舎羅登さん


ソッと抱き寄せた


「莉心ちゃん?」

「ごめんなさい。

そんな悲しい顔、しないで…」

「大丈夫。ちょっと思いだしただけ

もう、引きずってないよ。安心して」


「嘘です!」

「莉心ちゃん…」


「だって、龍様が言ってた

呪いは時が来れば消えるって、でもその原因を引きずれば引きずるほど傷は残るって言ってた」

「そういう事は知ってるんだ」

「だから何も大丈夫じゃない」


よりギュッとしてくれた莉心ちゃんに寄りかかった


「ああ、そうだな。

何も大丈夫じゃないんだ

本当は潰れそうだよ…

進むことも戻ることも出来なくて

会いに行く勇気も

助ける勇気もない…」


「どうして…消えたの?

好きな人は…」


「……」


黙ってしまった舎羅登さんに


「…また話したくなったらでいいよ

無理には聞かない」


ギュッとまた抱きしめてくれた莉心ちゃんを素直に受け入れる



悲しい話をしたくない


思い出したくない


あんな痛みはもう要らない


俺を好きすぎたせいで人生が変わった2人の名前も声も温もりも必死に消してきた

しまい込んで溢れないようにギュッとしてた



『舎羅登!』



やめろ



『舎羅登さん!』



やめてくれ





「舎羅登さん!?」


「……莉心ちゃん」


「突然黙り込んだんでビックリしました」


「ごめん」


「変なこと聞いてごめんなさい

でも本当にカッコイイです」


「ありがとう」


「舎羅登さん、

いつか動き出せる日が来るといいですね」


「おう」


「舎羅登先生、患者さんです。

って、めっちゃサッパリしてる!カッコイイですよ」


ってお手伝いさんに騒がれる舎羅登さんは弱ったなって小声で言いながら部屋に入っていった


「舎羅登さんが楽になれる日が来るといいな」


そう思いながら伸びをした


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