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愛しき姫は異世界に  作者: janky
第7章
64/220

この温もりは知ってる

「お前ら逃げろ!」


和兎が生徒達を演習室から出そうとするが風が強くて扉も窓も開かない



「私が術韻をかけるわ、和兎、未来弥、飛奈、妃乃瑠は生徒の前にたって私を入れて五分割の位置に立って」


阿兎さんが術韻を唱えると光の壁が私たちの後ろに引かれていく


5人で実丸さんを囲む形で立つけど

風に光の壁に張り付くほど追いやられる


光の壁の中で

生徒達が口々に


『頑張れ先生!』

『実丸さんどうしたの?』


そう言ってて


「頑張って大人しくそこに居てね」


光の壁越しに言えば頷く生徒


『先生前見て!』


その声に振り返れば一瞬で実丸さんに光の壁に肩を手で押さえ込まれる


『先生!』

『実丸さん…目が赤い』

『やばそうだよ?』

『先生気をつけて』


生徒達の声を背後で受け止め


「実丸…さ…ん?」


呼びかけてみた


『「誰だ?」』


実丸さんの声じゃない

これは皇我?


「え?あの…」


グッと人差し指で私の左の首筋を押す


「え?へ?」


訳が分からず実丸さんの問に戸惑ってると


『先生、キスマークついてるよ!?』


左後ろから生徒達がそう言ってるのが聞こえる


「キスマーク?」


そう言えば


『「誰だ?」』


また聞こえる声に

顔を振れば赤い目をした実丸さんと視線がぶつかった


「キャッ」


グッと実丸さんの左手で顔を右に押さえ込まれる


その瞬間


「ンッ///」


チクッと首元に温もりと痛みが走る


「え、さ、実丸さん!」


クチュと音が鳴り

その音に顔が赤くなる


ツーッと舌が首をなぞる感覚に

体が熱くなる


どうして?


どうして…


この熱は知ってる


『え///』

『ちょっとやばいだろ//』


生徒達が見てる事を忘れてて

その声にグッと実丸さんを押し返そうとするけど力が強すぎてビクともしない


「実丸さん、本当にダメっ…です」


首元を何回も甘噛みしてくる実丸さんの頭を必死に離そうとする


『「こないだ言った事忘れたのか?」』


また聞こえた声に


バッと顔を向けられ今度は見つめ合う形になった


「本当に…ヤバイです///

実丸さん」


『「妃乃瑠、約束を忘れたか?

玉清(たまきよ)との契りを」』


玉清って私のおじいちゃんだった人の事だよね?


「え?あの…

本当に覚えてなくて」


『「なら、思い出させてやる」』


グッと強く押さえつけられ


「んっ///」


荒々しく唇を塞がれて目を見開いた


「ンッ/ンッンッ」


私の好きな場所を的確に攻めてくる実丸さん


「あの…ンンッ///」


話そうとするがそれさえさせてくれず

とにかく生徒達が見てる事に早く辞めさせないと


「ンッ//」

「っッ」


グッ優しめに実丸さんの唇に噛み付いた


血が溢れ出し

それを拭う


その隙に


後ろ手に術韻を結んでいく


とにかく


どうにかしなくちゃ


術韻を実丸さんに当てようとした


けど


「キャッ」


グッと手を押さえられる






「妃乃瑠ちゃん!大丈夫!?」



激しい風が吹き荒れる中阿兎さんの声に


「実丸さんが皇我に!!」


必死にそう叫んだ


『先生がヤバイ』

『襲われてます!!』


生徒達が伝言するかのように阿兎さん達に伝えてくれる




「襲われてるって」


阿兎が和兎に目を向けた


「思ってたよりヤバイかもな」

「阿兎さん、和兎さん、この光の壁見えなく出来ますか!?」


妃乃瑠ちゃんの近くにいた未来弥がそう叫ぶ


「どうした?」


「実丸さんが妃乃瑠を抱きそうです」

「未来弥…何言ってるの?!」


飛奈が驚いて風に逆らい妃乃瑠の方へ向く


壁に押さえ付けられる妃乃瑠が見える


「阿兎出来るか?」


その様子を見た和兎さんも焦って阿兎さんに聞く


「出来るけど、止めないと」

「風はまだいいが、皇我を怒らせて気を打たれると俺たちじゃ何も出来ない」

「そうね、先に光の壁を濃くするわ」


「頼む」


阿兎が術韻を唱えると光の壁が濃くなっていく


「お前ら、そこを動くなよ!!」


生徒達に声をかける


その時


「きゃ!」


妃乃瑠の声に顔を向けた



『「妃乃瑠」』


また実丸さんと唇が触れるほどの距離に

顔が赤くなっていく


『「このまま抱いてやろうか?」』


「さ…ね…まるさ…ん」


『「何度重ねれば思い出す?」』


「あの…」


バッと着ていた袴と襦袢をはだけられ

血の気が少し引く


「ダメ」


グッと顔を埋められ必死に頭を掴む


「ンッ//」


声を我慢しようとするけど

実丸さんは容赦なく胸元に噛み付く


グッと背中に回された手が下着の留め具に触れた


「実丸さん、お願い」


胸元に触れてくる唇に声が震える


「お願い、皇我!」


バッと顔を上げた実丸さんが私を見つめる

グッと距離を詰め

再び唇を塞がれそうになり目をギュッと瞑る


だけど


『「グッ」』


痛々しい声に目を開けた


「妃乃瑠、逃げろ」


目を押さえ寄ろける実丸さんがそう言った


「実丸さん?」


「良いから早く行け!」


風が納まりかけみんなが助けに駆け寄ってくれた


「早く、頼むから」


必死に汗を流し耐える実丸さんに足が動かない


「妃乃瑠ちゃん急いで」


それを割いてくれたのは阿兎さんだった

グッ手を引っ張られ

扉まで走るだけど


バンっと衝撃波のような気流に足をとられ全身の力が抜けていく



そして

ダンっと凄い勢いで床に押さえ込まれた


「っクソ」


実丸さんが床にひれ伏せて

私に跨がるのは


「皇我…」


私を有に越すくらいの大きい漆黒の狼が私を押さえ込んでた


和兎さんが実丸さんを助けようとするけど

皇我の気流にみんなが当てられて行く



阿兎さんが皇我の気を受けたせいで光の壁が薄くなり生徒達が騒ぎ出す


「動いちゃダメよ

みんなジッとしてなさい!」


阿兎さんの声に僅かに残る光の壁の中で生徒達は身を寄せあった


しゃがみ込むみんなを見てる私に

皇我は


『答えろ、それを付けたのは誰だ?』


「これ?

本当に知らなくて」


『皇我!』


っと私の中から八雲が飛び出す


だけど見たことも無い怖い顔で皇我は八雲も威嚇しだした


「お願い…」


それは狂気にも似た、恐ろしい顔と唸り声で


「殺さないで…」


八雲に必死に手を伸ばす


『なら答えろ』


「本当に知らないの」


その答えにグッと鼻を押し当ててきた



『素直に言えばまだ許してやろうと思ったが

番が違う相手を選ぶなら殺すまでだ』


グッと離れた皇我は

未来弥目掛けて襲いかかった


噛もうと開けた口を


「やめろ!」


実丸さんが抑え込む


「未来弥逃げろ」


「実丸さん…」


未来弥は恐怖で足が震えている


「誰でもいい、

未来弥を連れてけ!!」


『どけ、実丸

お前、邪魔するなら許さないぞ』


「落ち着けよ、頼むから」


『我が世界では、許されない行為だ』


「解ったから、でも今はやめろ」


ドンッと実丸さんが床に押さえつけられる


『俺が玉清と交わした口上を忘れたか?』


「ッ…」


グッと牙が手のひらに食い込んでくる


『八雲は我が番、他の雄にあんな跡などつけられやがって』


目が血走る皇我の気がもう1弾放たれる


「ッッ…」


直で食らうと気が遠くなるほどしんどい


「未来弥、動けるか?」


和兎さんの声に

首を振った


1歩でも動いたら俺を殺そうとする


その皇我の気持ちが嫌でも伝わる


「っ頼むから、皇我…

これ以上は流石に」


手がピクピクして押える力に限界がくる


『実丸さん!頑張って』

『実丸さん!』


「っクソ」


手が使えず術韻をかけることも出来ず

力が緩んだ僅かな隙を皇我が見逃すはずもなく


俺を顔で放りあげた


「っグッ」


ドンっと天井にぶつかって

床にめがけ落ちる

もう支える体力もない


バシャンっと水の中を通りゆっくり床に流れ着く

阿兎が息を切らし術韻で作ってくれていた


「悪い」

「実丸…

あれ、どうすればいいの?」

「もう1回抑え込む」


未来弥にゆっくり距離を縮める皇我は


『準備は出来たか?

浅はかな気持ちで我が番に手を出した事

死んで詫びろ』


グッと口角が上がり牙が見えた


「っ」


未来弥はグッと目を瞑る



「逃げて未来弥!」


飛奈の声も


「未来弥!」


阿兎さんの声も


「未来弥おい!」


和兎さんの声も


「皇我やめろ!」


実丸さんの声も


凄くゆっくり聞こえた



ドンッと壁に当たり目を開けた


「妃乃瑠!」

俺をかばうように皇我に抱きつき

牙を肩で受け止める妃乃瑠が居た



「ッッ…」


『妃乃瑠、この男をかばうのか!?』


「…違うよ…皇我が思うようなことじゃないの

私と未来弥は友達できっと何か理由があったの!

だから殺さないで…」


泣きながらそう言う妃乃瑠に

皇我は俺に視線を向けた


『理由は?』


「……妃乃瑠大丈夫だからあっちに行ってて」


「未来弥、でも」


「皇我に話したいから」


妃乃瑠は皇我を離し床に崩れ落ちる

気を当てられ立てずにいるのを

阿兎さんの念に引き寄せられ阿兎さんの腕の中まで引っ張られていく

血が出る場所を必死に押さえられていた


「妃乃瑠が記憶を忘れたから思い出さそうとした

実丸さんの中に眠る皇我と八雲はきっと番で…

実丸さんは妃乃瑠に忘れられても平気な顔してたから…

皇我を怒らせれば、気づいてくれるかな…って思って

実丸さんも妃乃瑠も上手くいくかなって…」


震える声に恐怖に上手く説明出来ずにいた


『それで妃乃瑠に?』


「そう、気づいてほしくて

皇我が八雲を思うように2人も…惹かれあってるのに…


でもこんなふうになるとは思わなかったけど」


クゥンっと悲しい鳴き声に下を向けば

皇我の足に体を擦り付ける八雲が居た


「手を出したのは…ごめんなさい」


そう言えば

皇我は八雲に顔を寄せた


パッと明るくなった八雲が

妃乃瑠に見えて切なくなった


『他意はないな?』


「もちろん。二人の幸せを願ってる」

そう言えば俺を見据えた


『すまなかった』



その言葉を残し八雲を体に乗せ実丸の元へ行く皇我を見送り腰を抜かした


息をあげ床に倒れ込んでる実丸さんが

辛そうな顔をする皇我を手で撫でた


ゆっくり妃乃瑠の元へ皇我と八雲は歩いていった



『妃乃瑠、すまない』


牙により傷ついた肩を皇我が舐め出す


「大丈夫だよ…ごめんね皇我…」


謝る妃乃瑠の頬をゆっくり舐めれば

八雲が肩をゆっくり舐めだした


「治ってる」


阿兎さんの声に

八雲と皇我を見つめた


「ありがとう」


『八雲、すまなかった

怯えさせてしまって』


『ううん』


八雲が話すことは体が小さく体力を消耗するから滅多にないけど

声を出したいほど八雲は皇我が好きなんだと解った


「とにかく生徒達を一旦教室に戻そう」


和兎さんの支持で飛奈と和兎さんと阿兎さんが生徒を誘導する


『先生、無事で良かった』

『ってかキス初めて見たよ俺』

『俺も俺も』


「はあ…またいじられる」


「妃乃瑠」


皇我と八雲が離れ実丸さんの声に

起き上がった


「悪かった」


私の横に腰を下ろしそう言って優しく頭を撫でる

実丸さんを見つめた


どうしてかな…

私は何か大切なものを失くした気がする



「血が出てます」


口の端から血が溢れてて

唇を切ったのか止まらずに垂れていく


「ああ、大丈夫だ」

「私が噛んだから?」

「違う、っ!!」


チュッと妃乃瑠が口の端を舐める


「おい」


すると血は止まり横にある鏡を見れば傷が癒えていた


「どういう事だよ…」

「手も貸してください」


グッと引き寄せられる


「妃乃瑠やめろ」


「どうしてですか?」


優しく傷口に唇を落とす妃乃瑠はそう言って俺を見つめた


「私の家系は、治癒力にも長けてました

高専の図書室で見た鑑原家の特徴に書いてました

こんな風に傷を消せるのは、

夫婦か体を重ね合った事がある人達だけです」


「!!」


「さっきもキスされて…

初めてじゃないって気持ちになりました

何回もキスした事あるみたいに」

「…妃乃瑠」

「だけど何も知らないのはどうしてですか?」

「勘違いだろ」

「実丸さん!

八雲があんなに懐いてて皇我が愛しそうにしてるのに…

私たちは違うんですか?」

「俺の場合は後憑きだから知らねぇよ」

「じゃあどうして…

どうしてこんなに苦しいんですか?」


震える妃乃瑠の声も瞳も

和兎が言った通りまた俺を好きになろうとしてる気がした


「妃乃瑠…」

「舎羅登さんが好きなはずなの、

頭では解ってる。

でも体は違う

舎羅登さんに抱きしめられたら強ばって

実丸さんに触れられたら全身が求めてる」


「妃乃瑠!」


実丸さんを見つめた


「お前が望んだんだ」

「え?」

「俺を忘れて生きるって」

「どういう意味?」

「俺がお前を傷つけて裏切った」

「でも」

「好きなやつが居るんだ。

俺…

そう言ってお前を振った」

「……」


信じられないって顔をする妃乃瑠


「けど皇我達は別だから

俺たちがどうこう関係ない。

だからもう、勘ぐるな」

「実丸さん…でも」


トントンっと扉が叩かれ音に顔を向けた


「邪魔したか?」


舎羅登さんの声に実丸さんは首を振った


「じゃあ俺は始末書書いてきます」


実丸さんが頭を下げて演習室を出ていく姿に涙が溢れた


「妃乃瑠…」


優しく名前を呼ぶ舎羅登さん


「…ごめんなさい」


最近自分でも分からなくなってた

舎羅登さんを好きなはずの私と

実丸さんを好きになりたい私…


どうしてこんなに悲しいのかはもう明確で

でもこの気持ちは実丸さんを困らせてると実感した



「私…」


きっとこの感情を消したのは

勝手な事なのに

また私は図々しく実丸さんを意識して

実丸さんを好きになろうとしている


そしてその気持ちを実丸さんに…


「私…」


涙が止まらない


どうして…


さっきまでの熱はまるで嘘のように消えていく



「妃乃瑠」


未来弥が私背中を(さす)ってくれた


「ごめんね」

「俺こそごめん」


泣きじゃくる私を暖かい温もりが包み込む


バッと顔を上げると皇我が私の背中を支えてくれていた


すっぽり皇我に包まれ

また涙が溢れた


知ってるよ


この温もり


知ってる


この体を埋め尽くす熱情


だけどそれは



何も意味を持たないと知った日だった

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