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愛しき姫は異世界に  作者: janky
第7章
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好きって怖い

「お清めの儀式は来週の金曜日の晩にする事になったので」

「来週に伸びたの?」

「先に屋敷の修復と白姫の侵入ルートを探します」


実丸はそう言いながら襦袢姿の私に

タオルケットを掛けてくれた


「部屋までお連れします」


グッと抱き上げられて

実丸を見上げる


こういう事を平気でしてしまう実丸なのに

どうして妃乃瑠ちゃんには無頓着なんだろ…


「実丸!」


呼びかけられ視線を向けると阿兎さんが居た


「明日高専で講習入ったから実丸も来てね」

「俺は」

「藩登様命令」

「…解った」


「莉心様体冷やさないように、

お部屋に帰ったらしっかりお風呂に浸かってくださいね

じゃあ頼んだよ実丸」


シュッと去っていく阿兎さんに実丸はため息をついた


「幸せ…逃げるよ?」

「何の迷信すか?」

「ため息つくと一緒に幸せが逃げてくの」

「逃げてく位の幸せなんか持ってないっす」

「贅沢だよね実丸は」

「あー。すみません」

「うわっ心こもってなさすぎ」

「いや、込めましたよ」

「アハハ、実丸冗談言えるの?」

「っだからみんなの俺ってどんな奴っすか?

俺だって普通に笑うし、冗談言いますよ」


「うん、うん!

実丸、絶対今の雰囲気の方がいいよ?

柔らかい…みたいな」

「いつも柔らかくないんすか?」

「うん、いつもはトゲトゲしてる」

「トゲトゲ?

自分じゃ分かりません」


「ねぇ実丸。

笑顔って幸せになれるんだよ?」


莉心様の言葉に胸がギュッとなった


『実丸!ありがとう』


妃乃瑠の笑顔…何時から見てないんだろう


『お兄ちゃん助けてくれてありがとう』


って泣きながら笑った小さい頃の妃乃瑠を守りたいと思った


「好きな人の笑顔見てたら、

なんかそれだけで幸せだよね?」


「…そうっすね」


「妃乃瑠ちゃんの事思い出した?」

「なっ…意地悪言わないでください」

「私結構人の事見てるからさ、妃乃瑠ちゃんが必死に実丸に歩み寄ろうってして失敗して落ち込んでるとこ何回も見たの…

でも、その分実丸の事も見てたんだよ」


「…俺のこと?」


「そう、肩落として帰る妃乃瑠ちゃんの背中を愛しそうに見つめてた

体調崩した時も部屋の前でずっと立って入ろうか悩んでたり」


「見すぎっしょ」

「だから不思議だった…

思って思い合って…

どうしてダメになるんだろうって…」


莉心様の切ない顔は俺を見つめた


「莉心様…」

「忘れたくないよ?

私なら

龍斗の顔も声もギュッてしてくれた温もりも、一緒に笑った日も、喧嘩した時のモヤモヤも、好きでいる事が辛くて泣いた日のことも…

忘れたくないな…」

「龍斗っていう人は龍様に似てますか?」

「うん、顔も声もソックリ

でも何か違うんだよ…?

喋り方や私の扱い方

頭を撫でる強さも笑い方も…」

「それって苦しくなりませんか?」

「うん、苦しい

だって、私は覚えてるのに、目の前の龍様は何も知らないの…

龍斗に会いたい。

もう会えないかもしれないっとか、

もう違う誰かを好きかもしれない…

そう思うと心臓が重くなって息もできなくなるくらい苦しい…

でも会いたいの」

「………」


黙る実丸にさらに続けた


「って顔、実丸もしてるよ?」

「え?」

「毎日、毎日、実丸もしてる」


そう言えば実丸はゆっくり私を降ろした


「俺…ダッセェ

隠せてないとか…」


悲しい瞳はいつだって妃乃瑠の事を思ってる


「二人の間に何があるのかとか、

この世界の事よく解んないけどね…

後悔してるように見える」


確信の言葉に、どうしてか胸が震えた

貫くと決めたのに…


「…俺、阿兎や和兎にも見抜かれてて

きっと舎羅登さんにも気づかれてると思う

妃乃瑠が俺を好きじゃなくなった事がこんなに(こた)えるなんて思ってなくて…

こないだ舎羅登さんに抱きしめられてる妃乃瑠を見て本気でどうにかなりそうで…

俺平気な振り…もう出来ないかもしれないって…」



弱々しい実丸の言葉は初めて聞いた


「あの術韻…ずっとだって聞いた」

「そうです。

でも俺がそれでいいって思わないと、

この気持ちどうすればいいんだよって…」


実丸の背中にそっと手を置いた


「大丈夫だよ。

確信なんてないけど妃乃瑠ちゃんのこないだの感じなら思い出せる

そう思った」


莉心様は優しく俺に笑ってくれた


「だって妃乃瑠ちゃんはいつだって実丸の事しか考えてなかったからね」

「莉心様…」

「ほら、元気だして!」

「すみません」

「誰にも言わないから、

あっ、私の龍斗の話も内緒だよ?」


切なく笑った実丸に胸が痛くなる


好きって感情は凄く怖い


時に自分に牙を向く


好きで好きで


苦しくて


おかしくなりそうになる


恋も愛も


楽しいだけじゃない


そんな事解ったつもりでいた


だけど悲しさの中に僅かな光が見えれば

もっと、もっとって思ってしまう…


だから好きって気持ちは


胸が苦しくなるくらい

しんどい…


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