封印された祠
顔を上げて再び
「何?」
っと声を出した
「お母さん、莉心を連れてお墓に行け。そこにきっと何かがあるはずだから」
お父さんの声を聞くなりお母さんは車を降りて後部座席のドアを開けた
「え?お父さんは!」
「莉心、いいから降りて
お父さんの言うことを聞いて」
お母さんの強い口調なんて初めて聞いた。
そして止まってしまった原因を知る
「あれ、何?」
足の先から闇が広がるような暗い気持ち
「莉心走るの、早く!」
「…うん!」
お母さんに引かれた手が痛む、それが現実を知らせる
それに振り向けなかった。
お父さんが居るのに
長い髪を引きずり巫女のような服は破れ傷だらけの女の人が私達の車の前に立っていた
怖くて冷たいような…
「お母さん、お父さんが」
そう言えばお母さんが
「大丈夫よ。お父さんは強いの」
そう返ってきた
「強いって…」
その時だった
ポタっと顔を濡らす1滴の雫にフラッシュバッグする記憶
『雨でびしょ濡れになり泥だらけになる』
ザーッザーッ
っと強く降り出した雨と墓地がどんどん水浸しになっていく
「お母さん!」
「莉心走って」
泥が跳ね上がりどんどん体や顔が汚れていく
言われたことが現実になっていくような
恐怖感に涙が溢れる
ガッと強く引っ張られたせいでお母さんにぶつかりそうになる
それを強く受け止めてくれたお母さんの顔を見て血の気が引いていく
「お母さん…目…」
「…大丈夫」
「大丈夫って!青く…なってるよ…」
「うん。」
そう言いながらお母さんは1点を見つめて固まっていた
お墓が掘り起こされ荒らされていた
「どうして…誰が」
お母さんの震える声に
ピチャと言う水溜りを踏む音にお母さんが私を後ろにして前を見据えた
「あなた達の仕業なの?」
白い装束に身を包む何人もの人
「莉心走るよ」
「え?うん」
今来た道を戻るとお父さんがむかえにきてくれた
「だめよ、お墓まで掘り返されてた。
叔父さんよきっと」
「分家か、っクソ
とにかく村の方へ」
お父さんとお母さんに手を引かれて
どんどん気がついていく事がある
私の知ってるお父さんとお母さんじゃないってこと
お父さんはどちらかと言うと頼りないし優しさが取り柄のような人で
お母さんもおっとりしてて、いつもニコニコしてて…
いつからだろう
もう随分前から
その違和感をずっと抱えていた
「あなた、次は私が戦うわ」
「ダメだ。」
「私だって戦える」
「俺を前に言えるか?」
こんな2人知らない
足を止めて手を振りほどいた
「莉心?」
「莉心どうしたの?」
暗闇で
雨でびしょ濡れで
私何やってるの…
「誰なの?」
2人は私の手を再び掴もうとするけど後ずさってしまう
「お父さんまで…何なの?その目…」
赤色に光る瞳にまたフラッシュバッグする
青色と赤色の瞳が私を守る
その言葉に体中から色んな気持ちが溢れそうになる
「何なの…意味わかんないよ!」
涙なのか雨なのか解らないけど
心が悲鳴をあげているようだった
「莉心。今はお父さんを信じてついてきてくれ」
「…お願い、莉心」
雨の音が響き渡る中、突然
ドォンっと大きな音に地面が揺れた気がした
そして音の方を3人で見上げると
大きな黒煙と火柱が立ち上がっていた
雨の勢いなんて関係ないかのように…
「村が燃えてるわ」
「嘘だろ…」
そして気づけば周りを白い装束の人達に囲まれていた