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愛しき姫は異世界に  作者: janky
第7章
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皇我に懐く八雲

「体を清める事は事前に何回かに分けて術韻をかけるだけじゃダメなんですか?」


藩登様は原因が分かるかもしれないと

影様の話を真剣に聞いていた


それと呼び出された舎羅登さん、俺

3人で話を聞く



「実丸にも聞いたんじゃが、術韻を体にかけても意味はない

花屋敷の昔の祠の奥にある泉はもう無いのか?」


「あそこへは今は誰も近寄りません

少し山手が崩れそうで」


「あの泉は焔様が三日三晩寝ずに術をかけた清水と大切にされてたんじゃ、アレがあれば話は早かったんだか」


「影様少し見て頂きたいんです」



藩登様は事の経緯を話

莉子姫様が眠る部屋へ通した



「これは…」


おぞましいものを見るような

恐れを抱いた影様が口を開いた



「この呪いは誰に出てる?」

「誰に出てる?って…」


実丸がそう聞けば


「これは…

自相呪縛(じそうじゅばく)の術じゃな」

「何ですかそれ?」


舎羅登さんが聞けば

藩登様の顔色が変わった


「莉子が誰かに呪いをかけたって事ですか?」


藩登様の声に舎羅登さんと俺は目を見開いた


「姫様が…?」

「おいおい、叔父貴」

「この痣が出てる子達は居るのか?」

影様の声に

「睡蓮の痣って龍様と莉心様に出てますよね?」

実丸がそう言えば

「待て、龍は解るけど、

なぜ他界で生きていた莉心にまで出るんだ?」


藩登様は訳が分からないと影様を見つめた


「少し調べよう、

ワシもここに泊まって力を貸す」

「お願いします」


藩登様に続いて頭を下げた


「明日にでも、莉心ちゃんにお清めの儀式をかけよう、使える奴らを集めて祠にも行った方がいいな」


影様の声に3人で頷き準備へ走った







「え?おばあちゃんしばらく泊まれるの?」

「そうじゃよ、

今日は美味しいご飯作ってあげるからね」

「わーい。龍様も呼んでいい?」

「いいよ」

「あっ。

じゃあ私を助けてくれた妃乃瑠ちゃんも呼ぶ!

ちょっと学校に行ってくるね」


莉心様ははしゃぎながら学校へ向かった


シュッと影がかけて来て


「永原さん、莉心様見ませんでした?」

「実丸君か?

莉心ちゃんね学校にお友達を迎えに行ったよ」

「学校っすか?

一人で?」

「そうじゃ」


頷く永原さんに頭を下げて莉心様の跡を追いかける



「また勝手に…」




___________




「私の家系は、

憑依型が多くてお腹に宿った時から毎日動物の神主(かみぬし)様と口上を唱えて誰を憑依させるか試すの」


「先生は犬憑きなんですよね?」

「そうだよ。

八雲って言います。」


術韻を唱えると



「ワン!」


っと八雲が現れる


「かわいい!」

「ちっさい」

「めっちゃ可愛い」


大人しく教壇の椅子に丸まり座る八雲は

生徒達を見つめ尻尾を振っていた


「犬憑きの特徴は忠誠心に長けてたり、

嗅覚も人より効くかな…

後は2人の相性だったりもあるけど」


「先生!

実丸さんは狼だって聞きました!」

「カッコイイよね」

「見たことあるんですか?」


生徒達が次々話し出す


「はい、静かにして!

皇我(おうが)って言って狼の中で1番強くて、その世界では覇王って呼ばれてる狼を実丸さんは憑けてるの」


そう言えば生徒達は目をキラキラさせていた


「えっ…でも先生とは家系が違いますよね?」

「うん、実丸さんがどういう経緯で憑依型になったかは知らないんだけど、狼を憑けてるのは私もついこの間知ったの、それも皇我を憑依させてる事…」


自分で話しながら色々矛盾に思うことがあって黙り込んでしまう


「先生?」


「どうして…狼憑きって知ったんだっけ…」


「先生!?」


「私が…犬憑きだって…いつ言ったのかな…」



「ワン!わん!」


突然八雲の鳴き声にハッとした

教室の後ろの扉に走り出した八雲を追いかけた





____________




「妃乃瑠ちゃんが先生してる」


教室の後ろの扉からコソコソ覗く


先生と呼ばれてる妃乃瑠ちゃんは

何故か知らない人に思えてくる


でもあの時より顔色も良く

笑顔が自然と出てる感じにホッとした



「莉心様」

「!」


後ろをゆっくり振り返ると

目が笑ってない実丸が居た


「1人でこんな所まで来たらダメだって言いましたよね?」


「ごめんなさい…つい」

「ついってなんですか?

こないだも簡単に攫われましたよね?」

「…ごめんなさい」

「とにかく妃乃瑠の授業が終わるまであっちの講師室で待ってましょう」


そう言われ扉から離れようとした時



『ワン!わん!』


っと鳴き声が聞こえ

扉をバンッと前足で開ける犬が実丸目掛け飛びついた


「ワン!ワン!」


実丸の顔中を舐め(たわむ)れるワンちゃんに教室から黄色い悲鳴が上がる


『実丸さんだ!』

『カッコイイ』

『うわあ、生だ…』

『初めて見たよ俺!』


「ちょっと、おい、くすぐったい」


グッと片手で八雲を離す


「ワン!」


「実丸さん…

莉心様?」


妃乃瑠が教室から顔を出した


「妃乃瑠ちゃん!

ごめんね

邪魔するつもりは無かったんだけど」


私が話すと

妃乃瑠ちゃんの後ろから生徒達が覗き込んでくる



『姫様だ!』

『可愛い!』


「こら、みんな教室に入って

それに八雲、戻って」


妃乃瑠の声に八雲は一瞬止まるが

また俺に向かって吠え出す

甘えた声で


「ごめんなさい、

憑依型の勉強してて八雲見せた方が早いと思って」


慌てて言う妃乃瑠は何も変わってない

怒られないようにしようとすればするほど

上手くいかない

そんな不器用な所が可愛かった


「八雲、落ち着いて

授業出来ないから」


甘える八雲を実丸さんから離そうと手を伸ばした時


ブワッと風が優しく舞った


「ワン!ワン!」


手からすり抜け実丸の横に現れた皇我に駆け寄る八雲


「実丸…さん」


「ほら、大人しくなったうちに授業しろよ」


綺麗な漆黒の毛並みの狼

皇我はゆっくり教室の後ろに入り床に伏せる

その懐に当たり前かのように入り込む八雲



全員が息を呑む

その後


『カッコイイ』

『狼初めて見た』


『凄い!』

『やばいな』


っと口々に話す生徒達に


「ほらお前らも、授業に集中しろ」


実丸さんの声に全員がキビキビと席についた

ふと私を見つめてくる視線と重なる


「ありがとうございます…」

「頑張れよ、先生」


そう言ってくれた実丸さんにどうしてか心が震えた


柔らかい笑顔は

どうしてかとても切なかった…



「妃乃瑠ちゃん頑張ってね

終わるの待ってるから」

「はい」


実丸さんと莉心様は近くの講師室に向かい

皇我と八雲が教室に居る中授業を続けた


八雲があんなに懐いて

八雲があんなに喜んで


全身で皇我を好きだと言ってる


私の忘れた曖昧な何かはとても大切なものだったんじゃないかなって思う


それはでも八雲を引き剥がしたせいではない

って薄々解り始めてた


額にうっすら浮かず術韻の痕は

きっと私が望んだんだと思う


八雲の求愛にも似た甘えを優しく受け止める皇我はまっすぐ私を見つめていた


あの目は


知ってる気がする…



「じゃあこれで授業を終わります」


教科書をまとめていると


「先生、実丸さん来る前に触ってもいいかな?」

「内緒にしてれば大丈夫じゃないかな?」


そう言いながら皇我の方に近づき

私が一番に皇我に手を伸ばした時


『実丸を忘れたか?』


皇我の声が聞こえる


周りの様子から私にだけ


皇我が語りかけてる


『思い出せ』


「え…?」


『我が番は1人だけだ』


バンッと大きな扉の音に実丸さんが慌ただしく入ってくる



「皇我、戻れ」


名残惜しそうに八雲が鼻をすり合わせ皇我の頬を舐める


「皇我!」


「実丸さん…」



皇我を体に戻し私に視線を合わせた実丸さん


「何か言ってたか?」


「いえ、何も…」


咄嗟に嘘をついた


「莉心様が話したいみたいだから」


実丸さんに頷き講師室に足を進めた



『我が番は1人だけだ』


その言葉が胸をくすぐる


我が…番は…


1人だけ?


それは、八雲と…私の事なの?



「妃乃瑠ちゃん!

あのね、今日みんなでご飯食べようって言ってて、妃乃瑠ちゃんも来て欲しいの」


「え?私も?」


「うん、阿兎さんも和兎さんも呼んで、龍様も呼んで、実丸も居るよ!」


チラッと実丸さんに視線を向けると

バッと逸らされる


「私は…」


「舎羅登さんも来るぞ」


実丸さんにそう言われ胸がギュッとなった


「うん、舎羅登さんも呼ぶつもり」


莉心様の声に


「じゃあ行きます」


って明るく答えた


頭はそれを求めていた


舎羅登さんの名前を聞いて

一緒に居れると解ったら喜ぶ

嬉しい、好き、楽しい

が頭を埋め尽くして行く


なのに


胸が痛い


ドンドン裏側から叩かれてるような

心が痛いと言ってるようだった


実丸さんが目を逸らしたから?

実丸さんから舎羅登さんの名前を聞いたから?


どうしてこんなにも胸が苦しいの?



「あの子も来るんですか?」


そう考えれば思いもよらない言葉を発してた


「あの子って?」

「え?あっいえ、何でもありません」

「そっか。待ってるね」


実丸さんには聞こえてなかったのがせめてもの救いだった


紅月って子を見る事がどうしても

怖いと思ってしまった

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