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愛しき姫は異世界に  作者: janky
第7章
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第7章 離れた心



「妃乃瑠先生!

実丸さんってやっぱり凄かったんですか?!」


一人の生徒の問いかけに30人程いる生徒達が前のめりに私の答えを待ってる



「実丸さんは凄かったよ。

もちろん今も凄いけどね」


私は戦闘中に八雲と引き離され意識を失ってしまったと聞いた


憑依型にとって無理矢理離されることは死と直結するから…


それを同じ憑依型の実丸さんに救われた


燗裏(ただうら)地区殲滅戦とか凄いかっこよかったって先輩達が噂してました」


私は護衛付きを育てる講師として

今は2皆性、3皆生を教えてる


あの意識を無くしてから3ヶ月が経っていた


「燗裏の時はね、実丸さんが……」


あの時の実丸さん…


「先生?」

「妃乃瑠先生!」


「…っ」



思い出せなくて言葉が喉に引っかかる



「あっ!俺一番上のお兄ちゃんが妃乃瑠先生の一つ下ですげぇ面白い事件の話聞いたんだよ!」


突然男子生徒がそう言いながら

私をニヤニヤ見つめた



「妃乃瑠先生が絶式に入って淫魔に憑依された話」


「えー!」

「淫魔って本当に居るんだ」

「俺その話聞きたい」


「しかも、しかも、その淫魔を追い出したのが実丸さんなんだって!

知ってるか、淫魔って」


「やめて!」


私の声に男子生徒がビックリして言葉を止めた


自分でもどうしてそんな大きな声を出したのかも解らない


だけど私の記憶の中で

淫魔から助けようとしてくれてるのは


舎羅登さんだった



「あっごめんね、大きな声出して…

もうすぐ終了のチャイムがなるから

終わったら各自帰っていいよ」



そう言い残しそそくさと教室を飛び出して行った妃乃瑠先生に全員呆気に取られる




廊下を走り講師室に足早に入る


「どうしたの?」


飛奈の声に顔を横に振った


「ううん、何でもないよ」


未来弥も心配して私の席の隣腰を下ろし


「顔色悪いぞ」


そう言った


「そうかな?明日は休みだからゆっくり寝るね」


そう笑えば2人は頷いた


「ねぇ、私…淫魔に憑依された時…」


「え?」

「ん?」


「ううん、やっぱりいいや」

「何?気になる…」


飛奈が隣の席に座ってくる


「憑依された時…私を助けてくれたのは

舎羅登さんだよね?」

「…うん。そうだよ」

「良かった…生徒に聞かれたの

実丸さんが助けてくれたんだろ?って

まあ噂は何処かで間違って伝わることあるもんね

燗裏の殲滅の時も、屋敷の絡繰(からくり)にかかった時も守ってくれたのは舎羅登さんだよね?」


「…うん。」

「ああ、そうだよ」

「…みんな実丸さんの事ばっかり聞いてくるから」


そう笑う妃乃瑠は本当に実丸さんを好きじゃなくなっていた


熱く見つめるのも

愛しそうに笑うのも


舎羅登さんに向けられていた


「明日の資料教室に忘れた」


勢いよくまた飛び出して行く妃乃瑠を見つめた



「燗裏の事も舎羅登さんになってる…

あの時の実丸さんボロボロになって

傷だらけになって


それでもその絡繰から逃げれる場所が一つしかなくて迷わず妃乃瑠をそこへ隠したんだよ?

自分は毒針刺さって…

解毒剤効くまで苦しんで死にかけてたのに…」

「しょうがねぇだろ

全部、妃乃瑠が実丸さんを感じた思い出は…舎羅登さんに変わってんだから」

「……妃乃瑠が苦しそうだよ」


飛奈はそう言った


「苦しそう…

周りと自分の僅かなズレに

自分を疑ってる

記憶も確かめなきゃ解らないなんて…」

「妃乃瑠が選んだんだから俺達にはどう使用もないだろ…

あの術韻は解けることがないって言ってたけど俺解けると思うよ」


未来弥はそう言って私を見つめた


「どうするの?」

「実丸さんが妃乃瑠を求めればすぐ解けるよ」

「未来弥…?」

「塗り替えた思い出や気持ちなんか

本当の思いの前じゃ(もろ)いからさ」




________




「先生さようなら」

「妃乃瑠先生、バイバーイ」


「さようなら、気をつけてね」



「あっ紅月(あかつき)先輩だ」

「先輩!!」

生徒達が集まって行ったのは、私の後任で花屋敷の護衛付きをしてる5皆生の紅月ちゃんが校舎に来ていた



「みんな頑張ってる?」


黒い髪を一つにまとめ揺らすその子を生徒が囲んだ


「先輩、どうですか?」

「実丸さん凄いですか?」


「とっても優しいんだよ、ちょっと失敗したんだけど大丈夫って頭撫でてくれたし

それに実は付き合えそうなの」


「え//////」

「きゃ////」

「先輩すごい!!」

「どうしたらそうなるんですか?」

「っそれキスマーク?」


紅月ちゃんの忍服の胸元から少し見えた首元に咲く跡にギュッと胸が痛む


…痛む?


「痛い…って?」


口すれば矛盾する気持ちが私を埋めていく


「あっ妃乃瑠先生!

体調大丈夫ですか?」


胸元を隠し寄ってきた紅月ちゃんが私を見上げた


「私、実丸さんが好きなんで邪魔しないでくださいね」


それだけ告げたその子は実丸さんが待つ場所へ帰って行った



「邪魔しないで…って、

私が好きなのは舎羅登さんなのに…」


また不安が過ぎる

私は本当に…


「先生!さっきはごめんな」


クラスの男子生徒に声をかけられてその方を向いた


「あのあと女子にめちゃくちゃ怒られてさ、デリカシー無いって…」


「…淫魔の話?

いいよ、全然

でも今ちょっと記憶が曖昧だから、

ちゃんと思い出したら説明するね

みんなにも絶式の怖さは伝えたいから」


「お兄ちゃんがさ、実丸さんと妃乃瑠先生にすげぇ憧れてて、先生の事いつも大切そうに守る実丸さんの姿見て下級生の男子達は大切な女は絶対ボロボロになっても守り抜こうって裏で結束してたらしいっすよ

…先生?」


瞳を揺らす先生は俺に


「ねぇ、

私が実丸さんの大切な女だって聞いたの?」

「お兄ちゃん達はそう言ってました」

「淫魔の時…も?」

「え?」

「あの時私を救ったのは…」


「おい」


低い声にビクッとなり2人で声の方に顔を向けた


「うわ!実丸さんだ!」


「実丸さん…」


「妃乃瑠、飛奈たちが探してたぞ」


「あっ資料忘れてたんだった

すみません…失礼します」


何故か近くに居ちゃダメだと思った

胸のあたりがザワザワする


教室に駆け込み資料を探す



『おい。名前は?』


『保、城前(しょうぜん) (たもつ)です』


『あー、(たすく)遊音(ゆん)(たける)の所の末っ子か?』


『そうです!丞兄ちゃんがめちゃくちゃ実丸さんのファンで』


『解った解った。

保に頼みがある』



実丸さんと城前君の声が途切れ

廊下を覗き込んだ


2人の姿はそこに無くて…


実丸さんの頼み事は何だったのか私は知ることが出来なかった



_______



「先生を護ってって

…どういう事ですか?」


「記憶はもう戻らない

妃乃瑠は犬憑きって言ってずっと体に犬を憑依させてるんだ、

それが戦闘中に剥がされて死にかけた

助かる代わりに記憶が曖昧になったんだ…

それが代償。

だから昔のことあんまり聞かないであげて、

それから色々攻撃してくる子達から護ってあげて」


「実丸さんの事聞くといつも瞳が揺れてる気がします」


観察眼(かんさつがん)が得意なんだっけ?

城前家は」


「はい、僅かですが息も浅くなります」


「凄いな。

第2級貴族御用達なの解るわ」


「俺は第1級狙ってます」


「来いよ。高みへ

その意気込みなら安心だ

妃乃瑠を頼んだ」


「はい!」


保と別れ屋敷に戻ろうとした



『舎羅登さん!』


愛しい声が俺じゃない人を呼ぶ声に視線を向けた


『妃乃瑠…どうだ、慣れたか?』


優しく妃乃瑠を包み込む舎羅登さんに胸が痛くなる


俺にはできないことをあんなにも簡単にしてしまえる舎羅登さんが、正直憎い


『慣れたのかな?

でも楽しいです』


そう言って舎羅登さんを見上げ笑う妃乃瑠の笑顔に押し殺そうとしてる感情が溢れそうになる


忘れるなんて

簡単じゃない事くらい解ってる


会わなくてもそれは同じで

今もそばに居るかのように体温が耳が視覚が俺の全身が妃乃瑠を覚えてる



『それはよかったな、生徒達も妃乃瑠に教われて嬉しいとか言ってたぞ』

『本当!?嬉しい!』

『あっ今日は飯どうすんだ?』

『飛奈と未来弥が行こうって言ってくれてて』

『じゃあその後部屋おいで』

『うん!』



俺は自分自身を見誤ってたんじゃないかと思う


こんなにも苦しいのは初めてだった


身が引き裂かれそうな

息も上手くできないような


行き場を失くした『好き』の感情を抱える事がこんなに…



ハッとして背後に振り返る



「バッカじゃない」

「阿兎…」

「後ろに立たれても気づかないくらいなんて、

相当応えてるんじゃないの?

あの手を離したこと…」

「……」


真っ直ぐ私の目を見つめる実丸


「未来弥の言った通りね。

苦しいのは実丸だって、

その感情は耐えれないって…

あの子的を得るからね」

「そんなんじゃねぇよ」

「ねぇ実丸…妃乃瑠ちゃんはあれで幸せなの?」

「どういう意味っすか?」

「私だったら嫌よ

好きな人とは違う人を好きでいる事なんか

抱かれたり、キスされたり…

妃乃瑠ちゃんが気づいたらどうするの?

記憶と今の違和感に…」


「あの術韻は解けない

墓場まで持ってけばいい、俺が全部」


そう言って視線をそらす実丸に


「独りよがりね」

と言えば少し怒った瞳になる

「何?」

「女の子を軽く見てたら痛い目に合うわよ?」

「意味解んねぇっつの」

「妃乃瑠ちゃんが愛した時間を(あなど)るなって事。」

「侮るも何も、

もう俺らは深く関わりあう事もねぇよ」


そう言い残し帰る実丸の背中に


「好きが顔に出てるって、言えばいいの?」


そう吐き捨てた


「……」


「墓場まで持ってくなら、その顔やめなよ?

選んだのは実丸なんでしょ!」



背中に受け止めた実丸は何も言わずそのまま足を進めた



「実丸が気づくわけないだろ、あんな()でた顔してるなんて」


後ろから和兎の声がして


「見てるこっちが疲れるわ」

「そりゃそうだけど、

舎羅登さんも満更じゃなさそうだし」

「……私達でどうにかできないかな?」

「阿兎ってそんなキャラだった?

ほっとけよ。」

「和兎…」


見てる方も辛いってこと私たちも覚悟出来てなかった


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