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愛しき姫は異世界に  作者: janky
第6章
56/220

消えた熱情

「…………」


無言のまま肩を落とし項垂れる実丸


「実丸…」


「俺を忘れてましたか?」


「いや、お前を好きだったって言う感情だけが無くなってる。」



「……」



トントン



「お邪魔します」

「目覚めたか?」


阿兎と和兎の声が聞こえた


「失礼します」

「っちわ」


飛奈と未来弥の声も聞こえた



「実丸?」


阿兎の声に顔を上げた


今にも泣きそうなこの気持ちが俺を苦しめる



「大丈夫か?」


和兎は驚きながら俺の横に駆け寄る


「頼む…妃乃瑠がどんなことを言っても

受け止めてやってくれ…」


「え?」

阿兎は心配そうな顔で俺を見つめた


「実丸さん…」

「どういう意味っすか?」

飛奈と未来弥も不安な顔をした



「んっ…」


その時、妃乃瑠がゆっくり目を開けた



「あ…れ…」


「目覚めたか?」


「和兎さん!」


「?」


和兎は目を見開き舎羅登さんの顔をみつめた


「和兎さんって…」


阿兎の声に顔を向けた妃乃瑠は



「阿兎さんも、飛奈も未来弥も…

私、また失敗したかな?」


「妃乃瑠…」


飛奈の声と同時に起き上がった妃乃瑠と実丸さんの瞳が重なった



「………」


「実丸さんまで…すみません」


普通の顔でそう言った妃乃瑠に

全員が悟った


「妃乃瑠、ちょっと目見せて」


舎羅登さんがそう言った時


「え、あの、ちょっと待ってください///」


熱い熱情を抱き

顔を赤らめて舎羅登さんを見つめた



「妃乃瑠…」


その瞳も声も反応も俺が一番よく知ってる

俺を好きだった妃乃瑠が

同じように舎羅登さんに向かってる



「妃乃瑠、どうしたの?」


駆け寄る飛奈の腕を実丸が掴んだ


「飛奈!」


「え?どうしたの?って…」


照れる妃乃瑠に飛奈は実丸の腕を振り払い

妃乃瑠の肩をつかみ向き合った


「妃乃瑠が好きなのは実丸さんでしょ!」


「え?」


解らない顔をした妃乃瑠が俺を見つめた


「実丸さんを好き?」


「飛奈やめろ」


止める実丸さんに向き合う


「どうしてですか!?

そうやって…諦めるんですか!!?

妃乃瑠は実丸さんをあんなにも愛してたのに!」


「おい、飛奈」


未来弥がそっと飛奈を抱き寄せる


「飛奈…あの…」


理解できないのかオロオロする妃乃瑠の髪を舎羅登さんが撫でる



「妃乃瑠は俺が好きなんだよ…

ずっと…」


「舎羅登さん//」


「「「!!!」」」


「舎羅登さん…」


実丸の声に視線をあわせれば驚いた顔をしていた


小さく唱えた術韻でトサッと再び目を閉じ眠る妃乃瑠を抱きしめた


「妃乃瑠が言ったんだ。

もう実丸を好きな自分は辛いって」


「舎羅登さん!

だからって妃乃瑠ちゃんに何をしたんですか?」


阿兎が珍しく怒りを表に出して舎羅登さんに詰め寄る


「実丸への想いを俺に移した

記憶の全ての実丸との大切な思い出を…」


「舎羅登さん…さっきはそんな事」


実丸の怒りが俺を捉えた


「お前はずるいよ

向き合うこともせず、

いつも妃乃瑠の気持ちを試して…

このままでいいとか言いながら、

妃乃瑠を求める

苦しめるだけって分かってるなら手を引けよ

見せるなよ優しさなんか!

愛しいって感情も

欲しいって感情も

隠せよ!」


「……舎羅登さん」



「目の前に居て、好きなやつがお前を求めてるのに、何他人に委ねようとしてんだよ?

護れるんだよ、その手で

抱きしめれるんだよ、手を伸ばせば!


出来るのに何故しない?

それなのに愛してて欲しい?

いい加減にしろよ………」



「だからって無理矢理記憶いじるなんて間違ってるだろ」


和兎の声に皆が頷いた


「お前らに解るか?

どんな顔で頼んできたと思う?

どんな気持ちで妃乃瑠は俺に頼んできたと思うんだよ?」



胸が熱くなる

重なったんだ


俺が愛してたあの娘に


妃乃瑠がダブって見えた


あの時救えなかった

あの時幼かった


あの時の俺は


実丸のようにただ後悔しかできなかった



「好きすぎて辛い…ってなんだよ…」



舎羅登さんはそう言ってベットに腰を下ろし頭を抱えた


「舎羅登さんお願いします

術韻をといてあげてください」


飛奈はそう言って俺の前で頭を下げた


「解けないよ」


舎羅登さんの言葉に耳を疑った


「これは解く術韻はないから、永久術韻だ」


「そんな……」


呆然とする飛奈の後ろから


「最低」


っと阿兎はそう言って部屋を飛び出した


「じゃあ妃乃瑠は実丸をもう」


和兎は頭をクシャクシャにしてしゃがみ込んだ



「それでいいです」


それを引き裂いたのは実丸さんの言葉だった


「何言ってるんですか?」


飛奈は実丸さんの胸ぐらに掴みかかった


「ごめん、飛奈…

俺はそれでいい」


「か、勝手だよ…

舎羅登さんも実丸さんも

妃乃瑠の気持ちは?過去は?

全部が変わっちゃうんだよ?


そんなの妃乃瑠じゃなくなる…」


押し黙る2人に涙が溢れた


「飛奈…」


未来弥に背中をさすられ余計に涙が流れる



「妃乃瑠、いつも言ってました

実丸さんが居ない人生なんて

考えられないって

その気持ちにずっと当てられて来たのに気づかないんすか?」


未来弥は俺を軽く睨む


「……」


「本当に必要としてるのは妃乃瑠じゃなくて、実丸さんだってこと。

どんだけ、我慢が出来てオール主席で天才でも、この感情を耐え抜くなんて…無理でしょ」


「未来弥…」


飛奈は未来弥を見つめてまた涙を流した



「好きって気持ちに理性が勝てるわけない

無くして気づけばいいんですよ

どんだけ自分が妃乃瑠の優しさに甘えて必要としてたか。

飛奈、また明日来よう。

今日はゆっくり休もうぜ」


飛奈の手を引き寮へ帰る2人



「俺はさ、妃乃瑠が必死に実丸ばっか追いかけてるの好きだったんだ。

見てて面白かった…まあ、こんな事言ったら阿兎に怒られるけど…


賢く手放なして、それが妃乃瑠の幸せだからって思ってんなら間違ってるぞ

俺からしたら、諦めてるようにしか見えねぇよ


妃乃瑠を無くすのが怖くて逃げてるようにしか…」


和兎はそう言いながら俺と視線をぶつけた


「妃乃瑠が誰に愛されても

ココ痛まねぇの?」


ドンッと胸を拳で突かれる


「実丸の前で違う男に笑って

名前呼んで

抱きしめられて


抱かれても痛まねぇのかよ?」


和兎の言葉に現実を想像していく


「惚れられてる強みって怖いよな。

俺を好きだと解れば心配な事なんか何もねぇから…


でももう妃乃瑠はお前じゃない、

舎羅登さんに気持ちを向けてる

あの人が抱きしめれば喜んで

その先を望めば」


「やめろ!」


大きな声を出した実丸は強く俺を睨んだ


「それでいい

あの笑顔も好きな気持ちも

俺が知ってればいい


俺を呼ぶ声も

抱いた温もりも

全部俺が覚えてればいい」


「実丸…」


「だからもう、妃乃瑠には何も言わないでやってくれ」


舎羅登さんと俺に頭を下げて

出ていく実丸に


もう何も声をかけれなかった


「阿兎…」


実丸が出ていき外で話を聞いてたのか阿兎は涙を流し入ってくる




「悪いな和兎…阿兎…」


「舎羅登さん、

本気ですか?」


「……空っぽになった心にもし闇が広がったら

妃乃瑠はまた別の事で苦しんでいく

ない部分を何かで埋める、それが良い何かなら問題は無いが…悪いものなら…

だから俺にしたんだ」


「……」


「俺なら護ってやれるから…」


「舎羅登さん…」


何かを隠す舎羅登さんと実丸は嫌でも分かる






それから妃乃瑠が目を覚ましたのは2日後だった


八雲を離した事がどれだけ体の負担になってたのか、また憑依し慣れるまでそれも負担になると舎羅登さんが言っていた



実丸もきっとそうなのに、隙をみせず

いつもと変わらず黙々と仕事をこなしていた



護衛付きと講師じゃ意図せず会うこともない


その距離が2人を

ドンドン引き離していってるようで…




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