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愛しき姫は異世界に  作者: janky
第6章
53/220

私戦います

『キャー』

『みんな守の術韻を自分にかけて』

『先生!!』



悲鳴があがる演習室に入ろうとするが


「実丸、この術韻解いてくれ」


扉にかかる術韻に他の先生達も足を止めていた


「舎羅登さんは?」

「今日は零恩志の爺さんの様子見に行ってる」

「帰ってこいとは言えないな

下がって」


実丸から風が巻き上がる


「悲しき音の言霊 伝えし韻の(ことわり)

(ぜつ) (くう) (れん) (きょ)… 」



実丸が扉にかかる術韻を

一つずつ解いていく

術韻をかけた対象が心に思う念が

術韻を解く鍵になる

これを出来るのは

舎羅登さんと実丸以外居ない


阿兎さんと和兎さんも出来るが時間がかかるのでしないと言ってた


相手の念を読み解く力を見せつけられる


「我届けし想い聴き届けたり

葉月式 術韻 韻解(いんかい)


パリンと敗れた術韻に扉を開けた



『実丸さん!』

『九楼先生!!』


それぞれが自分を守り念から耐えていた

長けるものは弱い子を守り

動けるものは戦っていた


「やるな、お前ら」

「もう少し頑張るんだよ」



その対象は部屋中に髪の毛を伸ばしはりつけていた

髪の毛を浮き上がらせ

念を飛ばすが実丸には効かない


「どうしてこうなったんだ?」

「昨日、立ち入り禁止の山へ肝試しに行ったらしいんだ」

「花屋敷の裏手か?」

「そこでこの子、名木山(なきやま)に取り憑いたみたいで」

「名木山は強いか?」

「忍耐でいえば4かな」


10段評価の中の4は弱いほうだった


「意識持ってかれるかもな」

「だからお前を呼びに行ったんだよ」

「解った」



______



「ここかな…」


慌ただしく行き来する人を見ていたけど

突然透明の壁みたいなのが出来てみんなが外で待機してる

その壁の内側に入っていた私は

壊れた扉から部屋を覗いた


「え…」


そこには想像してた疲れたじゃなくて

恐ろしい程に黒い念を纏った男の子が憑かれていた


部屋を見回せば

自分を守る生徒達と念を解除していく実丸

援護する九楼先生の姿に息を飲んだ


「そっちの憑かれてて…なの?」


『いや…』


扉の近くに居た生徒の小さな声に顔を向けた


「これ…」


その女の子を守っていたはずの光の壁はなくなり

見上げたその子に真っ黒の念の塊が覆い被さる


『やだ…やだ…』


生徒の声に続き


『ママ……』


と念の声が聞こえた




____




「え?莉心様?」

和兎がそう言えば

阿兎も頷いた


壁の外に駆けつけてみれば居るはずのない莉心様の姿に驚いた


「早く壁の中に入りましょ」

「入るなよ、莉心様」

「何か見てる」


扉から覗く莉心様は

何かを一心に見つめていた


「ダメだぞ

入るなよ」


そう言いながら壁にかかる術韻を解いていく


「実丸が扉の術韻を解いて

より強くその元凶がかけたんだろうな」


「そうね。

急ぎましょ

あっ!莉心様!」



驚いた顔をして演習室に入る莉心様に和兎と目を合わせた


「龍様に知らせましょ

爺様の所に行ってくるわ

舎羅登さんも居るし」


「さすがに実丸もあの人数+莉心様になると不利だ」


「頼むよ和兎」


「ああ。気をつけろよ」




____





「ダメ!!!」


その子に抱きついて黒い念の塊から引きずって離そうとした



「莉心様!何してるんですか!?」


実丸の声に


「実丸!絶式だよ!」


っと声をかけた


1人の生徒に塊が覆い被さって

莉心様が助けようとしていた


「九楼、先にこっちだ」


2人の方へ駆け寄ろうとするが

髪の毛が壁のように立ちはだかる


「っクソ」


「実丸、早く!」

莉心様の声に髪の毛を切り駆け寄る



「九楼、莉心様を守っててくれ」

「解った」


黒い念に手を当てる

浄土へ送る術韻を読めばその塊が離れどこかへ隠れる



『実丸…さん…』


生徒は意識を戻して俺のことを呼んだ


『…怖かった』


震えるその子の背中をポンッと叩いて


「大丈夫だ

ここで待ってろ」


守りの韻をかける


向き合う元凶はより力を増していた


「莉心様何してるんですか、とにかくこの術の中から動かないでください」


「実丸、さっきよりあの気配強くなってないか?」


九楼の声に頷いた


「ああ。今最悪なことしか頭によぎってない」

「男じゃ無理かもな」

「あの元凶は男で女に怨みがある」

「阿兎さんや妃乃瑠ならまだしも

莉心様しか居ないなんて」

「九楼、生徒達にさせるわけにも、莉心様にさせるわけにもいかない」


実丸はそう言った


「実丸!私に出来るならやる」

「出来ないです」

「ちょっと、返事早すぎ」

「大人しくしててくだ…っ!何してるんすか!?」


莉心様は大振袖の着物を脱ぎ捨て襦袢姿になり裾をまくり上げて太もも辺りでくくる


「これで動けるよ」


っと笑った


「この状況でいい度胸してますね

莉心様は」


九楼がそう言えば

実丸も頷いた



「良いですか?

今渡した俺の式神が術韻を放つ役目をするので、その先をあの元凶の心臓を狙い続けてください

俺が莉心様の体を通して念を打ちます」


「うん」


実丸は私の横に立ち

2人で前を見据えた


九楼先生は私に何も無いように反対側に立ち

守ってくれる



「莉心様、念は…」

「知ってるよ

思いの強さでしょ?

あの子を助けたいって思えばいい?」

「…そうです」


正直驚いた。

この人はどんどん俺たちの普通を裏切っていく

強くて優しい


素敵な人だと思った


「悲しき音魂 姫が聴き届けし

その心に眠る邪念 邪心

我らが解き放つ」


グーッと体に実丸の念が流れる

信じられないくらい熱くて重たい


「莉心様式神向けてください」

「うん、頑張る」


バンっと念が放たれて後ろに飛びそうになるのを両側の2人に支えられる


『ぐあああ』


っとその元凶の肩をかすめる


その場所は修復出来ず

崩れ落ちていく


「よし、あれならいける」


九楼がそう言えば

私と実丸で頷いた


「莉心様、あと少し頑張ってください」

「任せて!」


再び実丸が術韻を唱え

それを解き放つ


『グッッ』


と胸に命中してその元凶が崩れさり

捕らわれていた名木山君の姿が見え倒れ込んだ


だけど


『ママー、ママー』


名木山君の意識は戻らず

体から小さな男の子が起き上がる


「まさかの絶式…」


九楼先生がそう言えば


「念が魂と絡み合ってる」


実丸もそう言ってため息をついた


「危ないの?」

「ああ、下手にできない」



『ママ、ママ』


と泣きじゃくる子を見てると胸が痛くなった

あの子はどうしてこんな所で1人

泣いていなくちゃ行けないんだろう…



そう思うと勝手に足が進んでいた


「莉心様!」


止めようと手を伸ばそうとしたが


「どういう事だよ」


九楼と視線を合わした

金縛りのように体が動かなくなっていた


「この気は…」

実丸はゆっくり辺りを見回す


「誰の術韻だ?」


九楼の声に小さく伝える


「夜摩登様だ…」


その名前に九楼は目を見開いた



莉心様がゆっくり倒れる名木山を跨いで

名木山から浮かび上がる泣きじゃくる男の子をゆっくり抱きしめた


「大丈夫だよ」

『ママがね、この男に、殺されたんだ』

「辛かったね」


名木山にとりついた元凶の男に囚われた小さな男の子の念だった


「黄泉の死者になりかけてたんだな」

「ああ…」


九楼の言葉に頷いた


「もう、大丈夫だよ

その男の人は居ないから

ママのところへ帰ろうね」


『うん、ママに会いたい』


「泣かなくて大丈夫だよ」


そう言えばその男の子から光が舞い上がる


「嘘だろ」

「あれは浄土の迎え…?」


実丸は俺の問いに頷いた


「術韻も読んでないのにどうして?」


九楼は意味がわからないと俺を見つめる


本当にこの人は中界で生きてた人なのか?

普通の子で、普通の運命を背負って生きるはずだったのか?


今目の前で起こる謎を俺達は目の当たりにした


「もう大丈夫。ほらママだよ」


莉心様の声に光はママへ姿を変えた


『ママ!』

『ごめんね…ごめん』


抱きしめ合う2人に涙を流す莉心様は

まるで…


女神の様だった


『許さない』


突然聞こえた声に顔を向ければ

僅かに残ってた念が漆黒の闇のように広がり

浄土に向かおうとしてる2人目がけ飛んでくる



「危ない!」


「莉心様!!」


俺たちの体が動かず莉心様が2人を守りその念を体に受ける


「ッッ」


バタンっと倒れる中天に上がって行く2人が目に見えた


心の中も視界も漆黒の闇に侵されていく



『莉心様!』


実丸の声も遠くなっていく



『お前を怨む』


その声に真っ暗闇の中で気配を感じる



『呪いだ』


その声にどんどん体が熱くなり

恐怖が体を包み込んだ




________





「実丸!」


阿兎が念を送ってくれ金縛りがとける


「おい、どういう事だ」


和兎が莉心様に駆け寄る


「絶式憑依型だ」

実丸の声に

龍様が顔色を変えて莉心様を抱き寄せる


「莉心!!」


「いやっ!!」


っと龍様の顔を押しのけ目を開ける莉心様


「龍…様?」

「大丈夫か?莉心…」


っと強く抱きしめられて戻ってこれたんだと安心した


だけど


「いたッ」


と顔を押さえる莉心、痛さに意識を失う


「……」


顔を覗けば酷い呪いを貰っていた




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