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愛しき姫は異世界に  作者: janky
第1章
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両親の過去


夜の(とばり)が深まり月が存在感を放ち

昼の疲れが私を夢の世界に追い詰めようとしていた


その時


ガンっと大きな音が1階から響いた


『莉心!!』


お母さんが私を呼ぶ声に


「お母さん?」


階段を降りるとお父さんがかすり傷をいっぱいつけて座り込んでいた


「お父さん、大丈夫?」

「ああ。莉心、すぐに動きやすい服に着替えて」

「え?」

「お父さんがついてるから大丈夫」


訳も分からないまま服を着替えると車に乗せられた


「お母さん、莉心。今から昔住んでいた村へ行く」

「あなた。あそこは…」

「莉心を守るんだ」


お父さんとお母さんの表情を見て悟った

只事じゃない事と私はなにか危険に(さら)されてることに


「莉心。少し時間かかるから目を閉じて休みなさい」

「…無理だよ…何が起きてるの?私…どうにかなっちゃうの?」


後部座席からそう聞けば

振り向いたお母さんと目が合う


「大丈夫よ莉心。

お母さんもお父さんも居るから」

「じゃあ教えて。どうしてそんなに怯えてるの?」

そう聞けばお父さんが

「莉心、これは」

話だそうとした

でもそれをお母さんが(さえぎ)


「あなた、私が話します」


お母さんはゆっくり話し出してくれた

私の知らなかった過去を…


「お母さんとお父さんが昔住んでた村はね、

屋敷村(やしきむら)って言って(やく)払いで有名なお寺がある村だったの

だけど、昔からある風習があった

年のはじめに産まれた女の子を村のお寺に捧げる」


「捧げる?」


その言葉に息を呑む


「その命を生贄にする事で村は繁栄しているって思ってたの。みんな。

今じゃおかしいって思うけどあの時はそれが普通だって思ってたの。

あなたを授かるまでは」


涙声に変わるお母さんに心配したお父さんが背中を(さす)


「お父さんも、莉心を授かって気持ちが揺らいだ。このままじゃ莉心が年のはじめに産まれてしまい生贄にされると…

それにお母さんはそのお寺の末裔(まつえい)

厄払いを商売に儲けることしか頭になかった親戚たちは本家の血を引く生贄に毎晩、毎晩手を合わせに来たよ」


「それがすごく嫌だったの。

莉心を産みたいけどその後のことを考えると怖くて苦しかった

だから。3人で逃げたの莉心を産んだその夜に」


「……」


言葉が出なかった。

今のこの平和な私の世界からは想像つかない


「追手が来ないように遠い所へ逃げたんだ

莉心とお母さんが頑張ってくれたから。

それなのにどうして…」


「お父さん、その人達が私を狙ってるってこと?」

「いや」

「莉心、違うの。話には続きがあってね。

私達が逃げてからしばらくして生贄にされた女の子達が実はみんな生きてて巫女になってお寺で地下生活してたみたいなんだけど。

お寺の人達が監禁したってなって捕まったのよ」


「それなら…」

「俺たちが逃げたことでこの事が発覚したんだけど、厄払いや、人の念を供養(くよう)したりする事がより多くの人に知られる事になって、そこの本当の巫女だった女の子が1人で全てをこなすハメになったんだ」

「巫女だった子は自分の家を守るため必死に厄払いして神前(しんぜん)で祈りを捧げ続けたの

そして祈りを捧げたまま亡くなったの

その人は巫女(みこ)白姫(はくひめ)って名付けられて(まつ)られたんだけど沢山の人の念を体に入れてたせいか黄泉(よみ)の死者となって屋敷村に住んでた人たちの前に現れたの」


「黄泉の死者って?」

「死してもなお、生きようとする者よ

それで、困った村の人達が1度私を探して見つけられたことがあったの

封印出来るのは本家だけと言われて頼まれたわ

それで封印したの。

封印することで逃げた罪悪感から逃れれる気がしたから…」


「……」


「だけどその封印された(ほこら)が壊されていたんだ」

「え?」

「誰かが何かをしようとしてる。

莉心が消えかかってる理由も、反対に時を刻む時計の意味もわからない

だけど何か嫌な予感がするんだ」


「だから屋敷村に行って調べようと思うの

もう怖い人達は居ないから大丈夫よ」


「どうして私なの?」


「…それは」

口ごもるお父さんとお母さんにもどかしくて胸が苦しくなる


突然聞かされた事に頭はついて行かない

もちろん心なんて置き去りだよ


キーーーッ


と勢いよく止まった車にシートベルトがくい込む



「なに…?」




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