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愛しき姫は異世界に  作者: janky
第6章
49/220

残酷な現実

「…ね…まる」


んーッと伸びをして起き上がると

自分の部屋で眠っていた


『おはよう!

今日は休みでいいから起きて、風呂入ったらお薬処に来いよ 舎羅登 』


机の上の式神に触れると舎羅登さんからの伝達があった


「休み?」


そんな休み一度もなかったのに…

毎日が業務で休みたい時は希望する



「んー」


っと伸びをしてバッと鏡の中の自分と目が合って



昨日…


昨日…



「やばい/////」


首元や際どい所に色づく赤い(あと)

体が熱くなり耳まで赤くなってると思う

顔を覆い隠しもう一度布団に倒れ込んだ



『妃乃瑠…』


ずっと思ってた。

実丸の思いも声も体も

全部独り占めに出来たらいいのにって。


あの淫魔の事件の時、

みんなが何も触れなかった、

実丸さえ普通だった


だから(かす)かに残る断片(だんぺん)も忘れた振りをしていた…


ハッキリとは覚えてないけど、

時々偶然触れた手や箇所が実丸の熱を教えてくれる


だから昨日みたいに私のままを愛して

抱いてくれたことが嬉しかった


腕に包まれるだけで

辛かった心が満たされる

冷たく突き放されたり

怒られても


私を見つめた実丸にすぐ溺れてしまう


嫌いって思っても、

忘れたいって思っても。


たった小さな出来事が

私の世界を照らしてくれる



いろんな感情が私を埋め尽くす中

お風呂に入り

舎羅登さんのお薬処へ向かった


その時さえ一番は実丸の反応がどうなるかだった


怖いようで…

気になる…



「おはようございます」


ガラガラっと開けると

少し悲しい目をした舎羅登さんが居た


「おはよう。妃乃瑠…

調子はどうだ?」


「はい…大丈夫です…」


「妃乃瑠…

伯父貴が呼んでるから行こうか」

「えっ?

…はい」



私はただあの温もりに溺れてしまって

現実のいろんな小さなサインを

見落としてしまっていたのかもしれない…


想像だけじゃ足りなかった


手を伸ばせば触れれる温もりが

欲しかっただけ…



ただ



実丸の一番になりたかった。






「え?」

「今日限りで護衛付きを降りてもらう」



その言葉を理解するにはすごく時間がかかった


「藩登様…

どうしてですか?」


そう問えば


「護衛付きに関しては…

妃乃瑠よりいい素材が見つかったからだ」


「私より…?」


藩登様は私を優しく見つめていた


「今日から実丸と任務に付いてもらってる」

「待ってください!

私よりって…どういう事ですか?」

「実丸、阿兎、和兎と相談して決めたことだ

4人の連携が全然取れてないみたいじゃないか?

それじゃ困るんだよ」


その言葉に椅子に力なく座り込んだ


「連携って…

私のせいですか?」


「3人からはそう聞いてる」


「私じゃ…ダメなんだ…」


「妃乃瑠、考えすぎるなよ」


舎羅登さんが優しく肩を抱き寄せてくれた


「………」


「妃乃瑠、明日からは特殊高専の護衛部の担任として任務を遂行してもらう。いいな?」


溢れる涙が止まらなかった


この思いも

この考えも


この存在も


要らないと言われた


連携が取れないのは

私が居るからいけないんだ…って



バンっと部屋を靴も履かずに飛び出した


「おい妃乃瑠!

伯父貴…いくら何でも酷すぎだろ」


「約束だからな…仕方ない」


「実丸…

あいつ何考えてんだよ

それより妃乃瑠探してきます」



今日は特殊高専の授業が入っていたので

迷わずそこに向かった



休憩中の廊下を走り抜ける



『妃乃瑠さんだ』

『急いでるみたいだね』

『いつもと雰囲気違うね』


部屋を見ながら建物奥に広がる演習講堂に入る



「……妃乃瑠」


私を見つめた実丸

黙って下を向く和兎ちん

まっすぐ私を見る阿兎ちん


「…………」



言いたい事沢山あったの


なのに昨日の優しい実丸を思い出せば

涙が邪魔で実丸が見えなくなっていく



「授業始まるから、妃乃瑠ちゃん」


阿兎ちんが諭すように私に触れた


「触らないで!」


「……妃乃瑠ちゃん」


いつもの健康的で可愛いイメージの妃乃瑠ちゃんじゃなく、髪を下ろしもう実丸しか見えてない一途な女の子の部分がみんなを惹き付けていた


「どうして?

実丸…」


「どうして?」


呆れた声の実丸は昨日とは違う

いつもよりもっと冷たい目を向けた


「連携とれてないのは…私のせいなの?」


「俺や阿兎も和兎も割り切って任務をしてる

だけど、お前は違う」

「違うくない、私だって」

「妃乃瑠!」


冷たく少し張り上げた実丸の声にビクッとなる

騒ぎを聞きつけた皆生が集まる



「ちょっと妃乃瑠、

何してるの?大丈夫?」


裸足で、襦袢で

泣きじゃくる私を手で支えてくれたのは

飛奈だった


「飛奈…」


「とにかく授業始まるから

後で話そうね」


「私…

私…

護衛じゃなく…なって…」


「妃乃瑠…ちょっと落ち着いて」



こんな取り乱した妃乃瑠は今まで見たことなかった


「おい、大丈夫か?」


未来弥も駆けつけてくれて2人で妃乃瑠を(なだ)めようとした


「おい、授業の邪魔だ」


それを冷たく引き裂く実丸さんを

酷く憎く思った


誰のせいでこんなになってると思ってるの…

って言ってやりたかった



「失礼します」


私たちの横を花屋敷の家紋を付けた忍服を着る女の子が通り過ぎた


「実丸さん、これでいいですか?」


「ああ、似合ってるよ」


妃乃瑠が着てた忍服をその子が身につけて居た


「なんで…そんな…」


「妃乃瑠、向こうで俺と話そう」


流石にやり過ぎたと感じたのか

和兎さんがそう言えば妃乃瑠は首を振り

実丸さんの方へ足を向けた



「………」


それを受け止めたかのような

実丸さんは一瞬優しい顔をした気がした


けどすぐ冷たい視線を妃乃瑠に送る



「止めなくて大丈夫かな?」

「飛奈、ほっとけ。

あの人1回頭打てばいいのにな

あんな痕つけて何がしたいんだよ」


未来弥は怒りながら二人を見守った


襦袢越しでも解る昨日の2人の情事は私たちにまで届いてた。


勿論それは、実丸さんが暴れた時の対応として待機だったんだけど

あの様子じゃ2人は…



「実丸…

私そんなにダメだった?」


「………」


涙を流す瞳が俺を捉える


「そんなに私のこと嫌いなの?」


答えは揺らがず決まってる


「………」


けどそれを伝えることは

出来ない…


俺は妃乃瑠を傷つけることしか出来ない…


「ああ、そうだ」


その言葉に1粒、また1粒大きな涙が流れた


「昨日…のは?

嘘だったの…」



「あの行為に…意味は無い」


「…ッ」


目を強く瞑り拳を握り涙を流す妃乃瑠…


俺はただ、妃乃瑠に幸せになってほしかった

これが妃乃瑠の為だと思った


俺がこれからする事は

いずれ妃乃瑠を苦しめることになる


だからせめて…



俺を憎んで、

嫌いになって欲しかった




「そっか………」


ぶつかった妃乃瑠の瞳が青く光っていた

それは俺を助けてくれた時に見たあの瞳と一緒だった


『「じゃあ…もうこんな私要らないね」』


妃乃瑠と一緒に誰かの声が聞こえる




「妃乃瑠…と八雲か…?」


『「バイバイ」』


その言葉と同時に

両目の瞳孔が一気に開いた


「妃乃瑠!」


手を差し出す前に

凄まじい風が吹き上がる



「みんな外に逃げて」


飛奈や未来弥が生徒を誘導する


「どうなってるの?」


阿兎の声に和兎も


「舎羅登さん呼んでくる!」


駆け出していった



「妃乃瑠!!」


実丸が風の中に入ろうと試みるが押し出される



『「いやぁぁぁあああ」』



妃乃瑠の尋常じゃない叫び声に実丸の顔色が変わる



「妃乃瑠!

おい、妃乃瑠!!」



「音魂の(うたげ)(とうと)い魂と言霊

我が神の声を聞き届けり。

花屋敷術韻 時空烈波(じくうれっぱ)


舎羅登さんの術韻により

風にかかる術韻を時空で引き裂いた


それと同時に倒れ込む妃乃瑠を抱き起こした



「おい、どういう事だ?」

「いきなり瞳孔が開いて」


舎羅登さんが瞳を見て驚いた


「瞳孔が開いたまんまだ…」

「え?」

「まさか…

早く術韻室へ連れてけ」


和兎に妃乃瑠を渡した舎羅登さんは

行こうとする俺の腕を掴んだ


「お前まさか…傷つけてないよな?」


瞳が揺れる実丸は返事をしなかった


「………」


「妃乃瑠の扱い気をつけろよって言っただろ?」


「すみません。嫌いかって聞かれて、そうだって言いました」


「いい加減にしろ実丸!」


珍しく声を荒らげる舎羅登さんにみんなが息を飲んだ


「妃乃瑠は犬憑きだと言ったよな?

犬の性質も教えただろ!

死のうとしたんだよ、あれは」


「………死ぬ…って」


「忠誠心の塊なんだよ、お前に要らないって言われたからあいつは無理やり犬憑きを外そうとしやがった…

それを途中で止めた結果があれだ

お前を信じた俺がバカだったよ」


「待ってください、妃乃瑠はじゃあ」


「犬を今すぐ呼び戻す、けどもうお前達の知ってる妃乃瑠は居ないと思え

無茶した代償はどこに出るか解らない、声が出ないかもしれない、耳が聞こえないかもしれない、目が見えないかもしれない


記憶が全てないかもしれない…


これがお前が望んだ妃乃瑠の幸せか?

お前を好きだと言ったあいつの忍服をそいつに着せて、要らないって言ったお前は…



妃乃瑠を深く1番傷つけたんだぞ」



「……」


「実丸」


阿兎が俺たちを見つめる


「お前は来るな、実丸…」



「………」


「阿兎行くぞ、気を送ってくれ

飛奈、未来弥、お前らも来い、知ってる声の方が安心するだろ。

飛奈、妃乃瑠の犬の名前を知ってるか?」


「多分、八雲(やくも)だったと思います」


飛奈がそう言えば舎羅登さんは急いで術韻室に向かった



俺はただそれを見送るしか出来なかった


妃乃瑠にただ

護衛をやめて欲しかった


妃乃瑠にただ

安全な場所にいて欲しかっただけなのに


俺は何処で間違えたんだ…


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