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愛しき姫は異世界に  作者: janky
第6章
48/220

月灯りの情事


「実丸…」


ゆっくり扉を開けて息を呑む

手を後ろで縛られ術韻で封印された実丸は壁に張付けにされていた


「……」


「っクソ、ハアハア」


ダンっと強く何回も足で壁を蹴り

体は前のめりになって苦しんでいるのがすぐにわかった


目隠しされた上、耳も耳栓により塞がれ

この熱情を1人耐え抜く意味をより理解した


「やめておけよ、妃乃瑠」


「舎羅登さん…」


「見てわかっただろ

好きな気持ちは解るけど、あれは本当にヤバイ

一応術韻も強くかけたけど壁穴空いてんじゃん」

「ヤバイんですか?」

「調べたけど興奮剤って名の媚薬でな、闇ルートのやつ。まあ売られてるやつの軽く3倍は効くだろうよ

中和剤2回打ってあれだぞ?」

「でも…このままじゃ実丸が…」

「あいつなら大丈夫だろ

忍耐力はお墨付きだし」

「…私…」

「付け入る隙はまだある

理性を失った男は危険だ

今じゃなくていいだろ?」

「付け入るとかそんなこと思ってないです…

ただ…私も助けられたから」

「私も?」

「だからお願いです

この事誰にも言わないで下さい」

「言わないけど。

あーあと、実丸は狼憑依型だ」

「え?狼?」

「だからそんな必死に好いてるんじゃねぇの?」

「知らなかったです…」

「狼は(つがい)には甘々だからな。

独占欲も何もかも…覚悟しておけよ」

「…番は、思いあってなるものなんで…

私には一生無理です。


舎羅登さん…お願いします」


頭を下げる妃乃瑠に


「もし、ちょっとでも外に悲鳴(ひめい)(まが)いの声が聞こえたら止めるから」


「…はい」


クシャっと頭を撫でられる


「本当に実丸が好きなんだな」


と優しく笑う舎羅登さんに頷いた


出ていく舎羅登さんを見送り鍵をかけた



「ハアハア…ッッッ」


苦しむ実丸の耳栓をとる


「…!?」


顔を上げたその両頬を掴む


声は出さない。絶対。


「やめろ…ハアハア」


ゆっくり唇を塞いだ


「ッンン」


「…」


パッと顔が離れ


「ハアハア…やめろ」


苦しそうで切なそうな声に

また唇を合わせようとした


一瞬驚いたように顔を離そうとした実丸の首に腕を回した


キスをすれば

深く深く心の奥まで

実丸を感じれて満たされる気がした


「ンッ…」


ゆっくり息をして離れると名残を惜しむように銀の糸が引く


恥ずかしくても

それさえも心地いい


実丸を好きな自分がもう悲鳴を上げてる


好きだよ


好きなの!


って…



「やめろ…次するなら…ハアハア

容赦しねぇぞ…」



苦しいのに必死に理性を守る実丸は

やっぱりかっこよかった


「やめろっ」


忠告は気にせず再び唇を合わせた


本能が暴れそうになれば理性がそれを止める


実丸の声が

熱が

存在が私を強く生かそうとしてくれる

いつの頃から…


実丸を慕い恋心を募らせていたんだろう…


「離せ…」


ソッと手を実丸の頬に添えた

その時

ガチャン


「花屋敷式 術韻 解縛(げばく)


ドンッ


「ひゃぁっ」


舎羅登さんの術韻が効いている

そう思って安心しきっていた


実丸相手に油断した


術韻と同時に

実丸を縛る全ての術韻が解ける


その瞬間突かれ引いていた布団に二人して倒れ込んだ


ガサガサっと目を縛る布を取り

熱い瞳が私を捉えた


「…妃乃瑠?ハアハア」

「実丸…あの」

「何やってんだよ!ハアハア

早く出てけ…」

「実丸聞いてよ」

立ち上がりよろけながら壁に背をつける実丸に近づこうとした


「いい加減にしろ!

こんな時くらい大人しく言う事聞けよ!」


肩で息をする実丸は苦しそうだった

私を捉える瞳は怒りに溢れている


でも負けない

私は決めたから


立ち上がりシュルッと襦袢を止める紐を解いた


「妃乃瑠!」


バサッと脱げば下着だけになる

恥ずかしくて

怖くて

震えてる


だけどそれ以上に

実丸の為に何かしたかった


「実丸…しよ?」


そう言って妃乃瑠は俺に近づこうとした


「来るな!」


ビクッと震えた妃乃瑠がまた足を前に出した


「おい」

「覚えてるよ?

私…」


俺の声を無視して妃乃瑠は

そう言った


「…覚えてる?ハアハア」


「うん。あの日の事…」


その言葉に過去がフラッシュバックする


「あの時ね、私があの人に頼んだの。

実丸にして…って」


「妃乃瑠…」


「実丸になら…

酷いことされてもいいよ…」



ブチっと理性が切れる音を俺は聞いた


妃乃瑠の所へ近づき視線が絡み合う


「どうなっても知らねぇぞ」

「実丸が居てくれるならいいよ」


切なくて

恋しかったのは妃乃瑠だけじゃない


牢獄の鉄格子から綺麗な月が俺達の情事を見守っているようだった…




この熱情は受け止めることも

投げ渡すこともできない


まっすぐ俺を見つめて

俺を全身で好きだと言う妃乃瑠が

愛しくて

愛しくて


この腕の中に閉じ込めておけるなら

そうしたいくらい


だけど、これ以上近くに居れば

お互いがダメになる


嫌なくらい解るから…



_______




ガチャ


術韻がかけた扉を開けて外へ出る

少し明るくなり始めた空を見上げた



「大丈夫か?動いて」

「はい」

「妃乃瑠は?」

「眠ってます…

すみませんでした」

「珍しいな

実丸にしては」


舎羅登さんはそう言いながら俺を見つめた

術韻のせいか眠りこける和兎を横目に

ちゃんと視線を合わした


「俺はもう、

妃乃瑠との距離を間違えるつもりはありません」

「あのさ…何が原因か知らねぇけど、

人を好きになったり、振られたり色々ある中で、ただ見守ることは1番苦しいぞ

忘れたりできるならそうしろよ…不憫だよ。

さすがに妃乃瑠が」

「………

妃乃瑠にはいい奴が居ます」

「お前だよ」

「……」

「っつか、いい奴とか関係ねぇだろ?

妃乃瑠は、お前がいいんだ。誰でもない、実丸、お前がいいんだよ

こうやって、何されてもあいつはお前を慕い続けるんだよ!」


少し悲しい表情をした実丸は


「すみません」

「なら…何で抱いた?」

「……」

「お前何も解ってねぇよ…

触れる事がどれだけの罪か…

あいつを傷つけてるか!」


「その罪は俺が背負い続けます」


頭を下げて歩いていく実丸…



「本当にめんどくせぇ奴らだな…」


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