妃乃瑠の決意
ガシャン
「ハァハァ…っクソ」
「実丸、暴れるな」
術韻を何重にもかけ実丸が逃げれないように壁に後ろ手に張り付ける
舎羅登さんの術韻の詠む声に合わせ
耐える実丸は汗だくになり
握りしめた拳から血が滲んでいた
「実丸、耐えろ
必ず終わりが来る」
舎羅登さんと獄牢屋を後にする
「俺が見張ります」
和兎はそう言って牢屋から少し離れた入口の扉の前に座り込む
「付き合うよ。
あいつは1人じゃ止められないだろ」
「助かります」
「娯楽場も結局は無理だったな、あの様子じゃ」
「相手が無理でしょ」
「後は、中で眠るあいつが暴れないかだな」
「実丸の中に憑依してるやつですか?」
「そうだな…」
そんな俺達の前に
ズサッと砂をかむ音が響いた
薄暗い中、月の光を一心に浴びた妃乃瑠がいた
「妃乃瑠、今は実丸に会えないぞ」
「舎羅登さん、中に入れて下さい」
突拍子もない言葉に和兎が妃乃瑠に駆け寄る
「おいおい、妃乃瑠。
ここがどういうところか解ってんだろ?
ヤバイやつを入れるとこだぞ」
和兎が言えば妃乃瑠は頷いた
「実丸は私をかばってこんな事になったから」
「それでいいんだよ。
実丸がそう望んだんだから」
舎羅登さんは頑なに首を振った
「お願いします…」
「妃乃瑠、聞け」
和兎が妃乃瑠に近づきゆっくり諭す
「今行けば無理やり抱かれて、ボ
ロボロになっても傷ついてもやめてもらえないんだ。
もしかしたら殺されるかもしれない
理性なんか吹き飛んだタダの獣だぞ…
せめて明日にしろよ、な?」
「…それでいいの
ごめんね和兎」
シュッと和兎に睡眠の韻をかけ念を解き放った
「ひ…のる…」
ットサっと和兎を抱きとめ壁に持たれかけ座らせた
「本気か?妃乃瑠…」
「はい」
「犬が言ってるのか?」
「違います」
「健全な判断じゃねぇな」
「解ってます」
「妃乃瑠…」
見つめてくる舎羅登さんに目を逸らさず応える
「助けたいんです…
実丸を…」
「はあ、どいつもこいつも…
ったく解ったよ
付いて来い」
「はい」
実丸の温もりに包まれたあの瞬間
実丸の声が聞こえた瞬間
どんなことをしても
どんな事があっても
好きだって確信した
だけど実丸の中に私が居ないなら
今回で少し冷静になろうと思っていた
進めば進むほど
近くなれば近くなるほど
心は離れてく事…
気付かないふりをしていた




