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愛しき姫は異世界に  作者: janky
第5章
43/220

過去~11


バンッと

部屋の中に入り妃乃瑠の手を離す


「お前さ、虚しくないの?」


そう俺が聞けば

念を緩め襦袢姿になる妃乃瑠


『虚しい?

もうずっと虚しいわよ

私は愛されながら行きたいの、あの世に…

だから』


「俺は愛してないけど、お前の事

それって矛盾してない?」


『あんたには解んないわよ』


「なら、どうしてか聞かせろ」


実丸はそう言いながら腰を布団へ落とした


『聞いてどうするの?

聞いたって何も変わらない』


「それはお前が決めることじゃない

俺が決めることだから」


実丸の目はこの子の五感全てを支配していく


『そうね』


小雪はゆっくり近くにある椅子に腰を降ろした



『昔ね、

私の住んでた村にある男が流れ着いたの

格好よくて、田舎とは違う雰囲気にすぐ恋に落ちた


身を焦がすほどの恋って本当にあるんだって思ってた


数ヶ月すればそれは本気になり、

その人が村の中心に居るようになったの

お父さんやお母さんには街の方の人は良くないって言われたけど、怖いくらい好きで


そしてある夜、言われたの

君を連れて街に帰りたいって…』



思い出すように窓から見える空を見つめ

落ち着いて話す小雪を見つめる



『反対されるのは解ってたから…

内緒で深夜、村を抜け出したの。

待ち合わせにしてた川まで全力で走った


そこへたどり着ければ私は幸せになるんだって思ってた。

でも実際は違ったの

村の若い女の子達が縛られ小さい木の船に乗せられてどんどん流されてたの

私も捕まって数人まとめて船で流されて

気づいた時には知らない場所に寝かされてた

檻の中みたいな所で

色んな男が私達を見ていたわ

まるで品定めのように…


そして気づいたの。

私売られたんだって…

儲けるためにその人は私達を騙して連れ去った

それから毎日…知らない人と夜を過ごして

心も体もすり切れていった


初めての人は、

好きな人で…

優しく幸せいっぱいで

私を抱いてくれるんだって夢見てたから

だけど現実は

心が痛くて苦しくて…

私はただ本気であの人を好きになっただけなのに…

どうしてこんな目にあったんだろうって後悔ばっかりしてた

街ですれ違う人達は、

好きな人の温もりにあんなにも身を焦がして、綺麗で…

それなのに私は…って』



涙を流す小雪から視線を逸らした

見てられないほど悲しい気が流れる


『半年が過ぎた頃にその人に再会したの

泣きながら詰め寄ったら、誰?って笑われて…

悔しくて…惨めで…もうやめたかったの。

だから自分で川に身を投げた…

そしたらその川に縛られることになってしまって…地縛霊みたいになってて


川に来る男の人達に声をかけたの

どんなに抱き合っても、力を吸っても満たされなくて

底なし沼みたいに…欲しくて…欲しくて…

本気の愛が…気づいたら淫魔になってた


普通の私に戻るためには本気の愛が必要って聞いて…

手に入らないなら探そうって思ったの

成仏させに来たお寺の人が川との念を断ち切ってくれた瞬間に逃げて

すぐ、その人を捜し出した…

昔と雰囲気の違う私に騙されて…

でも違ったの。

抱き合っても苦しくて

倒れるその人を見ても虚しくて…

どうしていいかもう、解らなくなった


そしたら黄泉の死者のあの男に言われたの

自分と来れば本気の愛が見つかるって

だから淫魔になってしまった私でもまだ、

まだ…出会えるって…


それから何人者人を喰らい、力を吸いとって。

そしたら黄泉の死者はあんなに慣れ果てた

おぞましい、恐ろしい

ただの化物になったの

また囚われて私は一生この虚しさと苦しさを抱えて生きなきゃいけないんだって思った


そしてこの子と波長が合って絶式に入った時

本当はそのままあなた達に封印されるつもりだったの…

だけど、あなたの声を聞いた瞬間この瞳が宿した熱情に手を伸ばしてしまったの…


この子はどんな愛され方をして

こんな熱情を宿すんだろう…って


バカよね…


虚しいだけって解ってるのに…やめられないの、ううん、やめ方が解らない


本当の愛に触れれば黄泉の死者の念からもこの悲しい呪縛からも離れることが出来るって』



涙をさらに流しながら話す小雪



「妃乃瑠はなんて言ってる?」


『え?』


「今の話、聞いてんだろ?」


『助けてあげたいって』


涙を流し俺を見つめる小雪の向こうに妃乃瑠が見えた気がした


小雪の前に移動して視線をあわせた



「俺はお前を抱くのは簡単だけど、

お前が心から欲しい物はやれない」

『心から欲しい物?』

「愛とか恋とかよくわかんねぇけど…

身を焦がしてでも欲しい熱情はお前じゃない」

『…知ってる。

私じゃなくていいの』

「だから抱いたとしても、

俺からそれを感じ取るのは無理だぞ

矛盾してるだろ…それじゃ」

『この子を好きなあなたの気持ちだけでいいの』

「…………」


『この子と繋がってる今、感情が真っ直ぐ私に流れてくれるから…

私が離れればこの事は全て忘れる

私がさっきもう一度憑依しようとした時

実丸にお願いしてって言われたの

それはこの子があなたを好きだからって思った

でも今』


泣きながら手を伸ばす小雪の手を握りしめる


『感じるよ

あなたがこの子を大切に思う感情

それだけでこんなに胸が苦しい』


「そうか…」


『好きって苦しいんだね』


そう泣く小雪の手を引っ張った


「来いよ…」


布団に押し倒して見つめ合う


『実丸…好きだよ』


求愛行動だと言われた爪を深くつける行為を素直に受け止める


俺は忍服の上を脱ぎ

優しく小雪の涙をぬぐい頭を撫でる


熱情はやらない

この行為に妃乃瑠との意味は無い


だけど、

どうかこの人がもう一度生まれ変わり、

愛しい人と来世を過ごせるように祈る


悲しい気持ちも

苦しい気持ちも


一つずつ解き放つ


『実丸、いっぱいキスして』


俺にとっては理性を保つ試練のような気にもなる


グッと抱き寄せて

妃乃瑠の体に触れていく


可愛い声に、

小さな刃先が付いた短刀を自分の体に当てようとした

『ダメ』

「離せ、大丈夫だ」

『我慢しないで…』

「おい」

『理性なんかいらないよ…

本気の愛が欲しいの』


妃乃瑠の顔で

妃乃瑠の声で

俺を全身で煽ってく


「……」


堪えるが触れた箇所から熱が放たれていく

気づけば無我夢中で妃乃瑠の体を愛撫して

赤く咲いていく印が妖艶に妃乃瑠を彩っていく



『実丸…』

「……」

『実丸…呼んで名前…妃乃瑠って』

「妃乃瑠でいいのかよ?」

『いいの

全部ちゃんと伝わってるから』


「妃乃瑠…」

『さねま…る』


涙を流し頷く妃乃瑠に唇をあてがう


『…さねまる…

さねまる…』


「妃乃瑠…」


優しくそう呼べば


『好き

好きだよ』


涙を流し俺を強く抱きしめる妃乃瑠


「ああ、知ってる」

『怖いよ…胸がいっぱいになる』

「そうか、

それはいい事だ」

『実丸…』

「ずっと俺の腕の中に居ればいい

他のやつに懐くくらいなら」

『実丸…

好きって言って…』



見つめ合えば一つになれるような切ない気持ちになっていく

この子が笑えば俺は幸せで居れる

この子が傍に居れば俺は生きていける



「……好きだ…妃乃瑠…」



『ありがとう…実丸。妃乃瑠。

ずっとあなた達の事忘れないから…』


「ああ、次は

幸せになれよ…」


頭を撫でて頬にキスを落とせば

満面の笑みに笑顔をつくる


『ありがとう…実丸。妃乃瑠。』


眩い光があたり1面を包み

妃乃瑠の体から出てきた小雪は繋がる念を愛しそうに撫でて離し笑顔のままシュッと消えた


『ありがとう…』


意識を失くした妃乃瑠に襦袢をかけ

抱きしめた



「ごめんな妃乃瑠…

本当にごめん」


そのまま抱き上げて

舎羅登さんの所へ運ぼうと部屋を出た


廊下の壁が消え


阿兎や和兎、飛奈に未来弥も居た


「実丸…」


阿兎が心配そうに声をかけてきた


「この事は妃乃瑠に言わないでくれ

頼む」


頭を下げればみんなが頷いた


「覚えてたならそれでいい

でももし忘れてるならそのまま忘れさせててあげて欲しいんだ」


「分かったよ」

和兎はそう言って肩をポンポンと叩く


「わかりました」

「了解です」

飛奈と未来弥の返事に胸をなで下ろした



「いいの?実丸はそれで」

「ああ、もちろん

それでいい」


阿兎は少し考えてから


「わかったわ」


っと返事をした



この世界には…小雪のように

悲しい念を抱いたまま亡くなった人たちが居て…


どうか次の世界では

幸せになって欲しい


何度見ても黄泉の死者や取り憑かれた人たちの悲しくて暗い闇には慣れることがない


こんな時代だからこそ

愛でる時を間違えちゃいけない


そう藩登様は俺に何度となく言ってきた


だけど妃乃瑠を愛でる事は

妃乃瑠を苦しめる



その現実を迎える日が怖くてたまらないんだ



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