過去~10
「淫魔ね…」
うーんと考えながら藩登様は
眠る妃乃瑠を見つめた
「実丸が一旦収めてくれんすけど」
「皆生達が無事で良かったよ、
しかし憑依型とは厄介だな…
妃乃瑠に憑いたのは幸か不幸か…だな」
「そうですね。
もう一度、術韻でやってみますけど
妃乃瑠が無事か保証はできないです」
「そうだな…
実丸を後で俺の部屋へ呼んでくれ」
タバコを灰皿に押し付け俺にそう言う伯父貴を見つめる
「伯父貴。
何企んでるんすか?」
「何も
しかし、憑依型は大体が願いを聞かない限りは天に召されないだろ」
俺を真っ直ぐ射抜く瞳の考えてる事を読み取る
「いやいや、願いって無理でしょ
あの類を成仏させるのは…大体は…」
言葉を濁せば伯父貴は笑い出した
「無理ではないだろ
実丸はもういい年だ」
伯父貴が考えてる事にため息をついた
「本気で実丸が気の毒っすよ
ましてや、妃乃瑠はまだ15ですよ?」
「青いな、棚からぼた餅、据え膳は食え
聞いたことないのか?」
「そりゃ俺ならそうしますけど」
「あいつは1人くらい身を焦がしてでも大切に思うやつが必要だ
オール主席で飛び級だったとしても、守るやつが居ない男は弱い
それにお前の母親は15の時にはもうお前を身ごもってたぞ」
「んだ、その持論は!母さんの事は昔の話でしょ
とにかく先に術韻でやってみますから」
また大笑いしながら
「頼んだぞ」
っと伯父貴は薬処を後にした
「あの人…本当にむちゃくちゃだな…」
伯父貴の想像に実丸に本気で同情した
実丸の過去を知ってるのは伯父貴くらいで
だからこそ言うのか?
「一思いに生きれたら良いのにな」
生きにくい時代の中で
どこまでやれる?
俺はもう…
タタタタ
廊下を凄い速さで走る音にドアを見つめた
「舎羅登様大変です、
妃乃瑠さんが居なくなりました」
「術韻は?」
「壊された形跡があります」
「これだから…優等生は嫌いなんだよ」
バッと式神を取り出し伝達の言葉を乗せ投げる
式神達がそれぞれに散らばる
_________
「…スースー」
眠る実丸の部屋に式神が届く
バンッと、大きな音に飛び起きた
「っ!!!」
『妃乃瑠が居なくなったぞー』
舎羅登さんの声にゆらり落ちる式神
「何やってんだよ」
バッと部屋を飛び出した
『きゃー』
『先生!!』
寮部屋の5階から下を覗けば
皆生達が逃げ惑う
シュッと飛び上がり下へ飛び降りる
逃げる皆生達と悲鳴の元凶の間に降り立てば皆生達が俺の後ろへ逃げ込んだ
「実丸先輩」
「きゃー」
「いいから下がれ」
逃げる皆生達の中に
「先輩、妃乃瑠が」
「飛奈か…」
飛奈の声に元凶が妃乃瑠だと解り見つめる
「みんなにあの念が伸びてきて」
「解った」
紫色の念を幾つも纏い
数人の皆生が倒れていた
『まだ足りない
私の心を満たす、若い力が』
バシュッと飛ぶ念に術韻をぶつける
「やめろ」
『お前は昨日の?
私の望みを叶えなかったから、見せしめだ
人をバカにしたお前への』
「やってみろ
全力で止める」
1度に数10本の念が浮かび上がる
バンッ
バシュッ
と防ぐが皆生達があちこちに居てるので追いつかなくなっていく
「っクソ」
バンッ
と上から術韻が飛んでくる
「おら、しっかりやれ実丸」
「戦闘バカなんでしょ?」
和兎と阿兎が加勢してくれた
「おー居た!」
舎羅登さんの声も聞こえた
「何やってんすか、舎羅登さん」
和兎がそう言うと
「しっかり術韻かけたんだけど壊された」
っと笑った
「観念しなさい!
妃乃瑠ちゃんに体を返して」
阿兎の声に妃乃瑠は大声で笑い出した
『アハハ、かえす?
貰うの。この体』
グッと小雪が妃乃瑠から出てくれば
妃乃瑠が跪く
「ハアハア…ゴホッ」
「妃乃瑠!」
俺の声に妃乃瑠が顔を向ける
「……さ……ね」
「しっかりして妃乃瑠ちゃん!」
「妃乃瑠大丈夫か!?」
阿兎や和兎もそう叫ぶ
小雪に術韻を飛ばすが触れることなく消滅する
念が彼女を纏っていた
「攻撃するな!
妃乃瑠と繋がったままだ」
舎羅登さんの言葉に妃乃瑠と小雪を見れば胸に1本の太い念で繋ぎあっていた
「フッンンッ」
首元を絞められ妃乃瑠の足が宙に浮く
「ッグゥ…」
「やめろ!」
実丸の声に
『お前。こいつが大事なのか?』
そう問いかけられる
「ああ。」
迷いもなく即答する実丸に全員が驚いた
『男なんて所詮、女を下に見て、物のようにしか思ってない…お前は結局はこいつを傷つける』
「なんだそれ
だから何だよ?」
「ちょっと実丸!」
「刺激してどうすんだよ!」
阿兎と和兎にそう言われる
『この私が纏う念は…悲しくて辛くて…男に裏切られた女達の不の塊…』
念が短刀へと形を変える
ドンッと妃乃瑠が床に落とされる
「ゴホッゴホッ」
『今にコイツもその1人になる』
振り上げた短刀は妃乃瑠目がけて振り下ろされる
「妃乃瑠ちゃん、逃げて!」
阿兎の声に妃乃瑠は顔を上げた
「えっ…」
ポタ…ポタ…っと血が目の前で流れてく
「実丸…さん」
短刀を手のひらで握り小雪と妃乃瑠の間に体を入れた実丸が居た
皆生達も一瞬の速さに呆気に取られていた
『おまえ…』
「小雪、願いはなんだ!」
それを割くように舎羅登さんはそう叫んだ
『願い?…願いは叶えて貰えなかった』
実丸を睨む小雪
短刀を離しもう1回別の念で短刀を作り出し
妃乃瑠と繋がる念に短刀を押し当てる
「待て!切るな!」
舎羅登さんの声に
『切ればこの子は私と消える』
「やめ…ろ」
実丸の声が微かに震えた気がした
「まだ叶えれる」
舎羅登さんの言葉に小雪は笑った
『そう言って封印するんだろ?
男はみんなそうだ、
いつもいつも人を騙して傷つけて
誰が私をこんなにした??
ずるい男達だ…』
憤る小雪は妃乃瑠と繋がる念を握りしめた
「ンンッ」
痛むのか妃乃瑠が実丸にもたれ掛かる
「妃乃瑠!」
『じゃあお前でいい』
舎羅登さんを指差し
『私の願いは抱かれることだ
本当の愛で包んでほしい』
その願いに
「解った」
驚きもせず舎羅登さんがそう答え
全員が舎羅登さんを見つめた
「俺で良かったら相手するよ」
優しく笑う舎羅登さん
『じゃあ』
実丸を念で吹き飛ばした小雪
「実丸!」
和兎が受け止める
小雪が妃乃瑠の体に戻ろうとした時
小雪が一瞬驚いた顔をした
「何考えてんすか舎羅登さん!」
その隙に
実丸が舎羅登さんに詰め寄る
「しょうがない。ご指名だから」
「じゃなくて、妃乃瑠は」
「実丸、助けるためだ。他の感情はない」
「…ッ」
押し黙る実丸はこの世界のルールに忠実だから
「それが問題だっつってんだよ!」
実丸の代わりに和兎が舎羅登さんに掴みかかろうとした
「っ!」
グイッと強く袖を何かに引っ張られ
実丸がバランスを崩す
「ひ…のる?」
その先には妃乃瑠が居た
「実丸さん…がイイ」
「は?」
「え?」
和兎と舎羅登さんに続き俺の顔もきっと驚いているだろう
「妃乃瑠…」
その空気を割いたのは
「実丸、抱いてやれ。
命令な」
藩登様の声だった
「藩登様…」
「できないのか?実丸」
「………」
「俺はお前に教えたはずだ
愛でる時を間違えるなって」
「………」
「守りたくても守れない奴が居る
その手に触れる距離で諦めればお前は一生弱いままだ
あの日の自分に負けたままだ
逃げるのか?運命から…」
真っ直ぐ藩登様を見つめた
「逃げません。
御意」
そう言えば妃乃瑠の手を握り
5階の部屋まで駆け上がっていく実丸
「えっと…俺なんか振られたじゃん」
笑いながらそう言う舎羅登さんに
「残念ですが…
和兎、今回は怒らないのね」
「無理だろ、最後のどう見ても…」
和兎の言葉に頷いた
「まあそれに気付いてなさそうだけどな実丸は」
舎羅登さんの言葉に
3人で笑えば皆生達も胸をなで下ろした
それを見つめた後5階に視線を向けた伯父貴は静かにその場を去っていった
「愛でる時ってどういう意味だろうな…」
和兎もそう言いながら5階を見つめた
「大丈夫よきっと…
1個だけちゃんと解ったのは、実丸にとっての妃乃瑠ちゃんは…大事な子ってことね」
私も5階を見上げた
「和兎、廊下に壁の術韻かけといて」
舎羅登さんの言葉に頷きみんなが入れないように廊下を塞いだ




