過去~6
「あー触れたか…?
おー触れたな、はっきり
痕跡は残ってる」
舎羅登さんが妃乃瑠の瞳を見つめそう言った
「とにかく一旦これ飲んで」
妃乃瑠は差し出された薬を飲んだ
「絶式防げなかったのか?
学年トップ1.2.3が着いてて」
治療を受ける俺や阿兎と和兎を見ながら舎羅登さんは面倒くさそうな顔をした
「妃乃瑠だったから良かったけど、
他のやつじゃ意識持ってかれてただろうな
阿兎が、気を送ってくれてて助かったな
眠いだろ?寝ていいよ」
「…は…はい…」
妃乃瑠は返事をしながらそのまま舎羅登さんにもたれかかった
「妃乃瑠?」
実丸が声をかけようとするのを止められる
「眠剤だから」
そう言いながらベットへ寝かす
「率直に言うと、
絶式でもややこしいのになってて。
なってて?というか、妃乃瑠の体質の問題だけど」
舎羅登さんは
書類が沢山の本棚から何かを探してる
「あーどれだ?
あった。
これだ」
そう言いながら俺らの前に1冊にくくられた書類を投げてくる
「絶式憑依型」
舎羅登さんの声に書類に3人で目を通した
「今から調べるけど
妃乃瑠の瞳から術韻をかけるといつも妃乃瑠を守る犬が居るんだ」
「犬憑きっすもんね」
舎羅登さんは和兎に頷けば
「ああ、けど今日はそこへたどり着けなかった。
その代わり見た事のねぇ女が居座ってたよ」
「女?」
実丸が聞きかえせば、
「実丸が声をかけた瞬間に入り込まれたんだろうな」
「俺のせいですか?」
「いや、そうじゃない
あと1歩遅かったら持ってかれてた
でも実丸がその瞬間妃乃瑠を連れ戻したまではいいが、封印されずに妃乃瑠の中に眠ってしまったんだ」
「俺のせいじゃないっすか」
眉間にシワを寄せる実丸に舎羅登さんは
「いや、声かけなかったら犬事連れてかれてたかもしれない
封印されず眠ってしまったのには何か理由があるはずだ
今からそれを何なのか調べるから付き合え」
「はい」
「和兎と実丸も来てくれ、人手が欲しい
阿兎はこの事を教官たちに伝えて」
舎羅登さんが珍しくキチンとした袴を纏い
花屋敷家を守るお清めの水を全身に塗りつけていた
適当な人だから、袴を着たり、お清めの水をつけることもほとんどないのに
不安だけが煽られていく
舎羅登さんが術を解読したり、封印したりする時に使う術韻室に俺達を連れていく
「実丸、妃乃瑠をそこの台に頭が泉に向くように寝かせてくれるか?」
「はい」
和兎は泉が気になるようで触ろうとした
「和兎、触るなよ
呪い貰うぞ」
「うわっ
危ねぇ!早く言ってくださいよ」
「冗談だっつーの」
そう言いながら綺麗に配置された
舎羅登さんの盛り塩や大幣
にどんどん緊張感が増していく
「これより、
鑑原妃乃瑠に憑依する女を引きずり出す
総出で援護を頼む」
「「承知!!」」
舎羅登さんの術韻に続いて何十もの術韻が駆け巡る
「眠りにつき悲しい怨歌に
重ね重ね綴る水面の鎮魂歌で迎え入れよう
我が神の名の元、願い聴き届けたり」
ゆっくり妃乃瑠の体から起き上がる
女の念を見つめた
「名は?」
『小雪にございます』
「何故、そこで眠る」
『抜け出し方が分かりません』
「黄泉の死者により連れてこられし、
元の場所へ案内しよう」
大幣を置き術韻を始めようとする舎羅登さんに
『あの…
願いを聴いて頂けますか?』
そう小雪が声を上げた
「聴けぬこともあるが、良いか?」
『はい、案内は夜にしていただきたいのです。
月を見るのが好きだったので』
「それは出来ぬ、お主がいるそこはたいそう居心地がいい。時間が経てば抜け出せなくなる」
『そんな…』
泣き出すその人を見ていると不思議な気持ちになっていく
「実丸…やばくないか?」
「ああ…なんだ…」
「……っクソ」
舎羅登さんやみんなの顔が苦痛に歪んでいく
『願いを聞いてください』
「…ッ」
バンッと強い風が吹き抜け
全員が倒れ込んだ
トントントン
ガチャっと扉を開けた
「舎羅登様!?
皆どうしたの!?」
私の声に教官達も駆け寄る
そこに居た6人程の人が倒れ
舎羅登様も和兎も実丸も倒れ込んでいた
「しまった」
目を開けた舎羅登さんは体を起こした
「よりによって全員が男だったとは」
そう言いながら再び眠る妃乃瑠に術韻を唱えるが
弾き返される
「舎羅登様どういう事ですか?」
阿兎の質問に目を覚ました和兎と実丸も頷いていた
「淫魔の類だな」
「淫魔?」
「男を誘惑して命を吸い取るんだ」
「その力に当てられたんすか?
俺たち?」
「ああ、男なら効果は何倍にもなる
とにかく夜まで妃乃瑠を拘束して置いて
、俺は出てきた時の対処を考えるよ」
そう言いながら術韻室を出て行った
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「大丈夫かよ?
妃乃瑠ちゃん」
夕刻和兎はそう言いながら
布団を講堂に引き続ける
淫魔が暴れた時用に
皆生の男子は学校へ泊まることになった
女子たちも階の違う講堂に泊まることになっていた
「さあな
淫魔って対峙した事ねぇよ」
実丸はそう言いながら阿兎を見つめる
「何?」
「調べたんだろ?」
「え?」
「性格的に調べてそうだなって」
「…調べたんだけど…
夜になると力が増して寝てる男を襲うんだって
魅力もあるし、淫魔の爪には興奮剤と同じ成分があって、大体の男は命取られて終わりね」
「うわー。厄介なパターンだな」
和兎はため息をつく
「それで男子をココに集めたんじゃない?」
阿兎が言えば
「それが狙いかもな舎羅登さん」
実丸も頷いた
「なるほど、男を沢山集めて
ここに来さすって戦法…
ってタダの囮じゃん」
「多分」
実丸は顔色変えず頷いた
「とにかく私たちも少し休みましょう
夜は長いわ…」




