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愛しき姫は異世界に  作者: janky
第5章
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過去~2




『妃乃瑠…いい?

八雲はね、これからずっと妃乃瑠を守ってくれるの…

だから大切にするんだよ?

八雲との約束覚えてる?』


それは、もう顔さえ思い出せない

母親らしき人の声とぼんやりした姿


定期的に見る夢だった


『覚えてるよ!

あのね、八雲がいいって言う人以外好きになっちゃダメ!だよね?』


幾つくらいだろう…

小さい頃の私であろう子供がそう言えば

お母さんらしき人は私を抱きしめた


『その人は妃乃瑠を守ってくれるから

八雲の事裏切っちゃダメだよ?

憑いてるのを離してもダメ…解った?』


『解った!』


【…ん……ら】


お母さんらしき人の温もりは少し想い出せる


【か…ば……】


私を育ててくれた人は…



「鑑原!!!!」


「はい!!!」


ガタガタっと席から飛び起きる


「いい度胸だな。

俺の授業で寝るなんて」


担任の

真知(まち) 駿太(しゅんた)先生

の大きい手が頭を数回優しく叩く


「あぐらかいてっと、すぐ抜かれるぞ」

「すみません」


「よし、じゃあ次は、術韻の流れをもう1回本を見ずにやってみるぞ」



入学から半年


先輩達は私達にはほとんど関わりはなく

日々の鍛錬やルールにみんなが慣れ始めた


実丸さんは特に、姿さえ見なかった。

実丸さん、阿兎さんや和兎さんは

私達一皆生にとれば生きる伝説みたいな人たちで

どうにか近づきたい

みんなそんな気持ちで練習、勉強をしていた


私達をサポートしてくれる部が阿兎さんと和兎さんの居る部だけどあの2人が実戦演習や課外演習に来てくれたことは無い


それは護衛術を卓越(たくえつ)し卒業と共に零恩志家の護衛が決まってる


学ぶ事はきっと私達より多い


実丸さんは今1番強いって先生達が口を揃えて言ってて、教わる事が終わり、全てを習得した人にだけ与えられる皆伝(かいでん)と言う最高位を手に入れた


その実丸さんが授業に参加するのは阿兎さんや和兎さんより無いと言われている


教室で授業を受けながらそう思いにふけていた


窓の外がどんどん慌ただしくなってるような気がした


行き交う人たち


「先生、おトイレいっていいですか?」

「今度はお手洗いか?

顔もついでに洗ってこい」

「はい」


みんなが笑う中小走りにトイレに向かう振りをして騒がしい中庭を除いた



『ヤバいぞ、5人共重症だ』

『相手は封印できたんだが、ここまで傷を負うとは…』

『入ってた情報とだいぶ違ったみたいで

あの子達がやられるなんて』


口々に話しながら手を動かすその人達


しばらくすると空間に丸い輪が浮き上がる


「あれが…運命の輪?」



「来るぞ!!

いいか、最優先は舎羅登様だぞ!」


そう叫ぶ声に

ブワンッと空間が歪み

次々と運ばれてくる人を見て足がすくんだ

おびただしい血を流し

戦闘の凄まじさを物語る



「誰か!早く、実丸が」


運命の輪から飛び出してきた実丸さんは

ポッカリとお腹に穴が開いていた


「私たちを守ってくれたから」


いつも冷静でクールな阿兎さんの嗚咽混じりの泣き声が学校に響き渡る


ザワザワとし出す校舎に

藩登様が光の壁をかけた


「誰も近づくな!」


藩登様の声にみんなが息を呑む


「叔父貴ごめん、

実丸が一番危ない」

「舎羅登、何があった?」

「壊れた(ほこら)を直しに行ったのはいいが、そこはもう黄泉の死者に支配されてて。

足を入れた瞬間、おぞましい念がおそいかかってきやがったんだ…

実丸と俺は無事よけれたけど、阿兎と和兎と九楼(くろ)(とら)われてそれを助けようと」

「黄泉の死者は封印出来たのか」

「ああ、実丸が腹と引換(ひきかえ)にな」


「治癒部総出で実丸を助けろ」

「藩登様…」


そっと長に耳打ちするのは当時治癒部講師で治癒に関しては一番の

阿久津(あくつ)先生だった


「これはもう…助からないです

今居る治癒部や専門の力でも無くした部分を戻す事は」


「俺が横で術韻を唱える

力は貸せる」


「いえ、再生する事が不可能です

その無くなった部分があれば…助けれるんですが…」

「舎羅登、無くした部分は?」

「ダメだ凄く細かく飛び散った」

「先生!実丸は…実丸は!」


阿兎さんが泣き崩れて

遠目からでも実丸さんが助からない事が解った


「実丸さん…」


『もう大丈夫だ』


「実丸さん…」


『何かあったらまた俺を呼べ

俺の名前は 実丸 だ』



遠い過去。

実丸さんは忘れたであろう小さな出来事

でも私にとっては

世界が変わった

生きる希望が出来た


「実丸さん!!」



気づけば光の壁の術韻を一部分だけ一瞬解除し駆け寄っていた



「鑑原!下がれ」

「何やってる!」


先生たちの声を無視して実丸さんに駆け寄った

横たわる実丸さんに涙が溢れる


「あれは?」

藩登様がそう聞けば

「今年の挨拶した子ですね」

そう舎羅登さんが返す


「鑑原!見るな!」


先生に腕を引かれるがそれを払う


「実丸さん」

「おま…え…」


私の顔を見て実丸さんが苦しそうにそう言った


その時どうしてか解らないけど

体中から色んな気持ちが駆け回り溢れそうになった


助けなきゃ…


私が…


「助けるから…

実丸さん」



バッと実丸さんを跨ぎ穴の空いた部分に右手をかざす


制服の袴の上を下ろし

晒しを巻いた胸の上に左手を置く


「我の言霊、神に届きし願い

音魂(おんたま)の声に耳を澄まし

聴き届けよ

我が宿しき八雲、参られよ!」


私の左手を傷口にかざし右手で私の目を隠し


「左に流れし蒼き涙」


口上と共に左目が瞳孔を開く

そうすれば瞳が青く輝き出す


右手を離し再び傷口に両手をかざす


「右に流れし紅き血よ」


右目も瞳孔を開いて青くなる



「これは…」

舎羅登さんが藩登様の前に立ち

妃乃瑠から舞い上がる風をよける


「犬憑きか?」


藩登様の声に首を振った


「解りません、

でもあの目…」


凄い風が舞い上がり

二人の姿が見えなくなる



「我神の名の元に銘を与える

鑑原式 妃乃瑠の命 時卷戻(じかんれい)の韻」


「ッッッ」


「頑張って実丸さん!」



ピシッピシッ

と無数の傷が妃乃瑠の体について行く


頬を切らし首元からも血が流れる


そして妃乃瑠の背中に大きい呪いが浮き上がる


バンッとより一層強く風が舞い上がり


巨大な風は消えていった


「おい、大丈夫か?」


ガバっと体を起こした実丸は

妃乃瑠に声をかけた


「…ハアハア…はい」


そう言った妃乃瑠はズドンっと後ろに倒れ込んだ


「誰かこの子を!」


そう言って運ばれる妃乃瑠を見送ると


実丸は自分のお腹を触り目を見開いた


「嘘だろこんなこと…」

「実丸…」


阿兎や和兎、そして舎羅登さんや藩登様も驚きを隠せないでいた


「治ってる…」


阿兎がそう言えば


「何者だよあの子!」


舎羅登さんは急いで運ばれたその子の所へ向かった



「凄い。凄いよ和兎!」

「ああ、初めて見る術韻だったな」



実丸が助かったことに3人で大はしゃぎした

そして阿兎と和兎と目をあわし

俺たちもあの子の元へ向かった





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