第5章 過去~1
「妃乃瑠ちゃんと実丸君は
どうしてあんな風になるのかな…」
ため息混じりにそう呟いた莉心様に
阿兎と俺は顔を見合わせた
妃乃瑠が休んでる今、
実丸は実戦に行く事が多くて俺と阿兎が代わりに護衛をする事が度々増えていた
龍様は正直俺達が居なくても強いから…
「どうしてですかね?
恋するって大変ですね」
そう笑う阿兎さん
「妃乃瑠って昔から実丸が好きって顔に出てたからな」
「あっ!色々事件があったって聞きました
それがキッカケで…せっかく縮んだ距離が開いたって聞いたんです…
そんなに、実丸君が避けるくらいの事を妃乃瑠ちゃんはしたんですか?」
「あーそれ。妃乃瑠から聞いたの?」
和兎さんが隣に腰を下ろしてそう聞いてくる
「はい
なんか…とっても切ない顔してて…」
「私たちもハッキリとした理由は知らないんだけど…」
そう言いながら阿兎さんは
ゆっくり話し出してくれた
2人の今日までを…
___________
今から5年前、特殊技能高専
「お前らいいか!
この世界はその手にかかっている。
あらゆる事から守り抜く
忍耐や機転、判断、
沢山あるが大切なのは何かわかるか!
守りたい、守り抜く心だ!
諦めるな決して。必ず道はある」
「話長いね、校長」
金色の髪に緩くウェーブをかけて気品が溢れる出で立ちとニコっと笑うと見える八重歯がチャームポイントのこの子は
零恩志 やや19歳になる
後の零恩志家当主龍様の姉君である
「黙って聞いてろ」
だるそうに伸びをしながら茶髪の髪にパーマをあて耳に掛けて大きいピアスを付けてる、
いかにもチャラチャラしてるこいつは後の零恩志家の護衛を任される 和兎19歳
「っていうか熱いのよいつも。
語り出すと止まらないものね」
黒髪を腰まで伸ばしクールなイメージは今も昔も変わらない
この頃から判断力は凄かった
後の零恩志家護衛 阿兎 19歳
「………」
そして何も変わらない実丸18歳
「実丸また優勝したんでしょ?」
「うるせぇよ、やや。」
「あなたね一つ年下の癖に生意気よ」
ややはそう言いながら実丸のほっぺたを押す
「やっぱり特待生は扱いが違うよな」
和兎は笑いながら嫌味を言っていた
「またそういう事言う
そんなんだから実演実丸に勝てないんだよ?」
「ねぇねぇ今年の新入生ってどうなの?」
ややは阿兎にそう聞けばみんなが阿兎の顔を見る
「可愛いのに強い子が居てるみたいよ」
『それでは在席生代表
皆伝生葉月 実丸』
「ハッ」
壇上へ登る実丸をみんなが見つめる
女子からの黄色い声も気にせず無表情のまま
「実丸、本当に凄いよな」
和兎もそう言いながら壇上の上にいる実丸を見つめた
「在席中の皆伝は実丸だけだもんね
卒業も早くなりそうだよ」
皆伝は、今まで数人しか取ったことがない
全ての授業、試験をクリアして実戦で成績を残したものに与えられる栄誉ある名前。
阿兎がそう分析しながら
ややを見つめた
「もう花屋敷の護衛で実戦っに参加するってこと?」
驚くややは
「実丸…やっぱりカッコイイよね」
そう目をハートにしていた
実丸の口上が終わり
噂の新入生の名前が呼ばれた
『新入生代表 鑑原 妃乃瑠』
「はい」
高く突き抜ける声に
全員がその声の方を向く
明るくて元気で健康的。
そう誰もが思った
「阿兎の言ってた可愛くて強い子?」
「そうそう。男の子を抑えて入試トップ」
「へぇー。すげぇな」
「再生術と、あと補助術韻が早いみたいだよ?」
「凄いね」
「補助と再生の術韻得意とかすげぇな」
「しかも私達の部のサポート対象」
「私よく分からないんだけど」
ややはそう言いながら阿兎を見つめた
ややは零恩志家の子だから
本当は高専などに通う必要はないんだけど
その由緒ある貴族家系に向けた特別な授業を後々始めたいと言うことで やや が学校に通うことになった
阿兎は紙を広げややに説明する
「ややは何も知らないんだっけ?」
「うーん、とにかく色々学ぶ所だってお父様が言ってたけど…」
「そうね、じゃあ後で教えてあげる」
式典が終わり今日の授業は無しの為に
お昼をややと取るため食堂に向かう
「ここは特殊部高専って学校で、将来国の為に活躍したい子、長付きになりたい子、こういう学校の講師になりたい子…まあ色んな夢を持つ子が通う学校なのよ」
「普通の勉強はしないって聞いた」
「そうね、ある程度の基礎は勉強するけど
カリキュラムとしては実戦に役立つ物の方が多いわ
15歳から入学して5年色んな事を学ぶの
まあ5皆生になる頃には半分は辞めてたり、亡くなったり。
卒業しても、任務につける人は少ないわね」
「そうなんだ…今年の5皆生は80人も居てないもんね」
「そうそう。
私たちの同期も初めは150人くらいは居たんだけどね
今は50人くらいだよ」
「そんなに減ったの?」
「この年は特別」
そう言いながら
和兎とご飯を食べる実丸に視線を送る
「実丸が居るから…?」
「飛び級の主席。ましてや皆伝生
誰が張り合う気になる?」
「そうだね…」
「まあ、実丸はどれもそつ無くこなせるけど、ほぼ戦闘術韻だから。
私たちはその中でも人気の、術韻部」
「阿兎と和兎は二つに入ってるんだよね?」
「そうだよ。
普通は進級する中でどれか1本に絞るんだけど、自分で言うのもあれだけど、学年順位上位の10人までが好きな部をかけもちできるの」
「阿兎と和兎と実丸は?」
「私は治癒部。和兎は戦闘部と術韻部
実丸は例外。特待生にすぐなってもう何回も花屋敷の実戦に参加してるから部は特に持ってないよ
術韻をかけるだけじゃなく解く力もあるからね」
「やっぱりカッコイイ」
「もちろんモテるけど本人は全然興味ないみたい」
「そうなんだ…
真面目そうだもんね」
「真面目…いい言い方ね
部がそもそも、治癒部。術韻部。式神部。戦闘部。今年からややだけの為の清女部。そしてややの所の弟君のための竜使い部だからね
必要なものは全部実丸は受けたと思うよ」
「そうだ。
龍君は妃乃瑠ちゃんって子と同期なんだね」
「学年はね。でも弟君は全部免除でしょ?
しかもまだ14歳だし
入試受けてたら分かんなかったよきっと
どっちがトップか」
「身内の色目って言われるかもだけどね
龍君は天才だから」
「他人から見ても思うよ
龍様ならタツノミコトコハクと絶対、契れると思うもん」
「うん。私も応援してる」
「だから今この高専は凄い人の塊なわけ」
「だから校長あんなに気合入ってるの?」
「そうよ。
ややは、清女部だからほとんど授業じゃ会えないけど、和兎と一緒に会いに行くからね」
「うん、ありがとう」
_____
「君たち良かったよ!」
白髪の髪を一つにまとめ少し生えた顎髭を撫でながらその人は特待生の実丸さんに握手を求めていた
白髪の人は、この特殊技能高専の校長
七蔵 祠
「実丸!先程の演舞も良かった!
あの術韻がフワッとなってブワッとなるの
素晴らしい!!」
身振り手振りで言う校長を
信じられないくらい冷たい目で実丸さんが見ていた
「………ありがとうございます」
しかしテンションの高い校長はそれを気にせず私に向き直った
「そしてそして君!」
「はい」
「鑑原妃乃瑠ちゃん!」
「…はい」
グーッと手を握られる
「いやーいい挨拶だったよ!
可愛いし、声もハキハキしてて良かった
君は再生が得意なんだってね
将来はどの道を行くの?」
実丸さんの方をチラッと見れば興味ない顔をして前を見つめていた
私がここに入った理由
それはこの実丸さんに近づきたかったから
「花屋敷家の護衛です」
「!」
驚いて私を見るその人は鼻で笑った
「凄いよ、いいよ!
その意気込み
君なら行ける!」
「校長」
そのテンションを遮るように
実丸さんは頭を下げた
「失礼します」
「ああ!実丸君、実丸君!
明後日の実戦よろしくね」
「はっ」
ガチャンっと校長室の扉が閉まった
「クールだからね実丸君」
「そうみたいですね」
「鑑原の家系の子が来てくれるなんて嬉しいな」
「…あんまり記憶ないんですけどね」
「大丈夫。
君の再生術はこれからのこの世界には必ず必要だからね
期待してるよ」
「はい」
こうして特殊技能高専の生活が始まった




