夏夕の見たものは
「クレープ食べるの忘れたよね」
無理に笑う莉心に
「莉心さ、泊まりに来る?」
「え?」
「なんか、
暗いままバイバイなんて嫌だなって思って」
「アハハ。もー夏夕優しい」
ギュッと抱きしめて、
触れ合う体温に胸を撫で下ろした
怖かった気持ちは少し楽になる
「大丈夫。ありがとう」
「莉心」
夏夕の表情は曇ったままだった
「私、莉心が居なくなったら嫌だからね」
「大丈夫だって、
あの人もお仕事だからね。
いろいろ言うんだよ、
だから気にしない」
「そうだよね。大丈夫莉心なら!」
「じゃあまた明日ね」
夏夕に手を振って歩き出した
「莉心!!」
「またね」
「莉心…」
遠くなっていく莉心は角を曲がった
すごく怖かった。莉心が消えるって聞いたからだけじゃない
トントンっと肩をいきなり叩かれ飛び上がった
「ひゃっ!龍斗!?」
「驚きすぎだろ。莉心は?」
「二言目には莉心ですか?今別れたよ。走れば追いつくんじゃない」
「そうか。どうした?顔引きつってるぞ」
龍斗はそう言いながら顔を覗き込んで来た
「今日ね占い行ったの」
「あーなんか言ってたな昼終わりに」
「そこでね。莉心変なこといっぱい言われたんだよ。消えかけてるとか、反対に時を刻む時計が見えるとか…あとお墓参りがどうとか」
「消えかけてる?」
「うん。」
「何だそれ。痛い奴だったんじゃねぇの、そいつ」
呆れた顔した龍斗は自販機の前で止まりお金を入れだした
「だいたい、占いなんか信じるタイプか?あいつ」
「そうだけど…
莉心には言ってないんだけどね。
気になる事があるの」
「気になる事?っほら」
差し出された缶ジュースを受け取り龍斗を見つめた
「何?」
「あのね、信じられないかもしれないけど。
小学生の頃莉心が大怪我したの覚えてる?」
「あ〜。ジャングルジムから落ちたやつか?」
「うん、
あの日ね夕方心配になったから莉心の家に行ったの
チャイムを鳴らしても誰も出てこなくて、
帰ろうって思った時庭の方から声がしてコッソリ見に行ったんだ
そしたら声が聞こえた部屋のカーテンが少し開いてて覗いたの」
「覗いたのか?」
「だって居るのに出てくれないから」
「それで?」
「うん、莉心のお父さんとお母さんが眠ってる莉心に手をかざして、お経みたいなの唱えてたの」
「お経?」
「多分だけど、難しい言葉だったの
それで、目が…」
息を呑む夏夕は震える声で言った
「二人の目が赤色と青色だったの」
「は?」
「本当に!
お母さんが青色でお父さんが赤色だったの!
そしたら今日占いでその人が赤色と青色の瞳が莉心を守ってくれるって言ったから…きゃっ!」
話の途中なのに突然龍斗に手を強く握られた
「連れてけ」
「え?」
「その占い屋に連れていけ!」
「えっ、うん」
見たことなかった。こんな取り乱した龍斗の姿に漠然と不安が大きく私を包む気がした
「夏夕、俺から離れるなよ」
「え?何?どういう事?」
自転車を漕ぐ龍斗はそう言うと片手でポケットから白い人形の紙切れか何かを取り出した
「左に流れる蒼き涙
右に流れし紅き血よ。
我、神の名の元に
宿しき命に銘を与える
零恩志式神
追」
突然意味のわからない言葉を言い始める龍斗に訳が分からなくなる
「龍斗?何言って…」
「莉心を守れ!」
バッと掘り投げられた白い紙は鳥のような形になり飛び去った
「何?今の…」
「気にするな」
「気にするなって、無理だよ!
って龍斗そこ右」
角を曲がって止まった自転車から降りられなかった
「夏夕……」
「嘘…だってさっきまで」
そこには空き地が広がっていた
「そうか。やっぱりな」
「龍斗、嘘じゃないよ!さっきまでここに居たの。ここに…ここにあったんだよ…」
「夏夕」
振り返った龍斗は今までで一番優しい笑顔だった気がした
「解ったから。ありがとう教えてくれて」
「龍斗まで…」
「え?」
「龍斗まで変だよ。莉心も龍斗も今日はなんか変だよ…」
「ああ。そうだな
このままずっとなんて無理だった
解ってたのに気付かない振りしてたんだ」
「え?」
「夏夕、気をつけて帰れよ
あとこれ。何かあったら握って俺の名前を呼ぶんだぞ
零恩志式神
現 龍 だ」
自転車から降りてその紙を受け取った
「またな」
「えっちょっと待ってよ、龍斗!!」
その声に手を上げて答えた龍斗の
言葉の意味は聞けないまま
見送った。
「何が何なの?
…れい…おんじ?
訳わかんないよ」




