暗闇の秘め事6
『妃乃瑠よく聞け
心の八雲は必ず守ってくれる
信じるんだ…』
夢の中で誰かにそう言われてる私
顔は全然分からない
真っ赤に染まる見たことの無い町
逃げ惑う人
炎と煙の中から現れた血だらけの少年にその人は沢山の念を繋ぎその町に祀られていた大きな黒い狼の絵を空へ投げた
その少年は銀髪に変わり赤い目をこちらに向けた
『我の命と共にお前に名高き……』
何かを言ってるけど聞こえない
誰なの…あなた達は…
頭が痛くなって崩れ落ちれば…悲しい残酷な世界が視界に映り込む
『妃乃瑠…』
突然暗闇に変わり私をゆっくり起こしてくれたのは人型へ具現化した八雲だった…
「八雲…?」
少しクラクラする頭で微かにわかる八雲の存在に少し胸を撫で下ろす
『満月だからちゃんと術韻かけるんだよって言わなきゃって思ってたのに忘れちゃってた』
薄暗い湖の中で微かな光が八雲と私を照らしてる
ここはいつも私の意識の奥にある場所だと思ってる
眠りについた日や舎羅登さんが八雲の存在を確認する場所
薄い桃色の胸まで伸ばしたロングヘア
色は白く目は大きく少しタレ目で黒目の下に泣きぼくろがある
笑うと片方にだけエクボができて妖艶で何人もの男の人を魅了してきたって噂は本当だと思う
身長は同じくらいで華奢な八雲が私を抱きしめた
『実丸酷いよね
私も妃乃瑠もちゃんとした気持ちで好きなのに』
膝枕をしてくれ髪を撫でててくれる八雲に心地よくて目をつぶった
「八雲…」
『実丸も妃乃瑠ももう少し憑依型について知った方がいいわ…最近実丸と妃乃瑠が交わることで皇我の力が直接私に流れて来てるの
だから今までは何年に1回しか出来なかった人型にもなれるようになったわ』
私の言葉を聞きながら顔を真っ赤にする妃乃瑠
「もう少しオブラートでお願いします……
って八雲の力が増してるの?」
『ええ、私は妃乃瑠を乗っ取ったり皇我みたいな事はしないけど私の力が増すって事は妃乃瑠への負担が増える
嬉しい気持ちが2倍なら悲しい気持ちも2倍みたいに』
「前に体調壊した時みたいな?」
そういえば八雲は顔を横に振った
『あの時よりもっと力は増してるわ
私たちの繋がりももっと強くなってる』
「…うん…気をつける」
『実丸は私に任せて』
「え?」
『頭固いのよ、本当に昔から』
「………八雲には弱いんだよね?」
笑う妃乃瑠に私も笑った
『こんな事本当はしたくないけど事を急がなきゃ妃乃瑠の病んだ感情と私の感情がまた壊れるほどになったら大変だからね』
「…八雲…あの…ごめんね。前に剥がそうとしちゃって…怖かったよね…」
『うん、悲しかった…もう要らないんだって…私の事…ねぇ妃乃瑠は私の事好き?』
「…うん…大好き」
ゆっくり八雲を抱き寄せれば涙が溢れてくる
『私も…好きよ、死ぬ時は一緒…』
ゆっくり抱きしめた手に力を入れる
「うん…一緒…」
『妃乃瑠…実丸のことも好き…?』
そういえば頷く妃乃瑠…
『私も皇我が好き…
きっと妃乃瑠が実丸を好きなくらい』
「うん…知ってる
ねぇ皇我の具現化した姿見たい」
『こんな事言ったら怒られるけど実丸に凄くそっくりなのよ』
「そうなの…絶対かっこいいね」
笑う妃乃瑠の頭を優しく数回撫でれば目を閉じて眠りについた
「…んっ」
目を開ければいつも通りの自室が目に入る
起き上がり鏡を見れば胸まで伸びたほんのり桃色の髪と目の下に浮かび上がる泣きぼくろ
「…うん完璧」
笑えば右側にえくぼが出来る
「はぁー」
っと伸びをして自室の扉を開ければ綺麗な満月が大きな空で光り輝いていた
「覚悟しなさい!実丸!
私の妃乃瑠を傷つけたの許さないんだから」
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「海士…」
「おう…駿太」
娯楽処の裏にある俺の部屋に駿太が顔をだした
「今日俺の家に莉心様が来たらしいんだ」
座布団に座る駿太に酒を出せばその言葉に駿太の顔を2度見した
「あのバカ姫また何か企んでんのか?」
笑う海士に俺は泣きそうな気持ちを堪えた
「ややちゃんとか光愛ちゃんとか…奇跡を見たんだ…」
駿太は震える瞳を隠すように下を向いた
「志音のこと期待してるんだろ?」
「……あの子は不思議で…もしかしたらって」
「確かにな
式神を修得しちまった時は驚いた
こないだまで中界に生きてた子がだぞ?
1階生や2階生でもまだできない子も居るのに」
海士は酒をコップに注ぎ俺に差し出した
受け取り1口飲んで素直な気持ちが溢れる
「だから…期待してしまう
志音は優しかったから俺が真知家の呪いもちで生まれた事をずっと気に病んでた
俺が弱かったから」
泣きそうな駿太の頭をゆっくり数回ポンポンと撫でれば瞳が俺を向いた
「悪かったな志音のこと黙ってて…海士が好きなの知ってたのに」
「俺は志音も大切だけど駿太も大切だった
だからこれで駿太がどうにかなってる立場だっても…それは…それで…」
「何照れてんの?」
笑う駿太のおでこを軽くついた
「は?心配してやってるのになんだそれ」
「…ハハッ ありがとな」
「とりあえず明日も仕事だろ?」
「…明日は実家に帰るよ
莉心様が志音に会うみたいだから」
「俺も行く」
「え?」
「俺も行って見届けるよ一緒に」
海士の言葉に頷けば
『兄様ー?!』
っと海士を呼ぶ声に娯楽処へ海士が向かう
俺はゆっくり畳に寝転がれば天井を見つめた
「海士はやっぱり志音が好きだったんだな」
俺の知ることの無い中界任務
海士と志音を思えば強く目を瞑った
『駿太も大切だった…』
海士の言葉を忘れるように起き上がり酒を飲み干す
この気持ちは志音の忘れ物…
そう思って何度も酒を飲みほした




