第3章 本当の意味
あれから数週間が経って
沢山の書類に目を通し
姫様の代わりを全うしようとしていた
実丸君や妃乃瑠ちゃんとの距離も縮まり
色んな話をできるようになった
実は妃乃瑠ちゃんは実丸君の事が好きで
色々事件があったんだよって妃乃瑠ちゃんから聞いた
ドキドキしながら2人をいつも見てしまったり
それは学校で過ごす時間と少しだけ似ていた気がする
ただ、なんて言うのかな
夢を見てる…
そんな感覚だった
今動いてる私はきっと私じゃない
深い眠りの中で見るリアルな夢
そんな感覚でいる
だから助けを求めたり
どこか騒ぎ立てたり
そんな事必要ないと思っていた
これはきっと長い夢で
明けない夜はないように
醒めない夢はないんだって…
だけどそれは脆くも崩れていく
「もうすぐ妃乃瑠ちゃん達がお昼に来るくらいかな」
時計を見ればお昼に差し掛かろうとしていた
龍様や和兎さん、阿兎さんにはしばらく会えないでいた。
妃乃瑠ちゃんによるとあの3人はこの世界を保つために必要な存在らしく
龍様はこの世界の宝だって言ってた
竜使いってよく解らないけど、とにかく悪や邪念、生きる人を脅かす全ての災いや事柄から守るのが龍様の役目だって…
しかも伝説の竜を2匹を従えた事で龍様の名前を知らない人は居ないっとも言ってた
「外気持ちよさそうだな…
少しならいいかな」
そっと襖を開けて階段を降りる
屋敷の庭に出れば気持ちよくって伸びをした
「んー。気持ちいー」
はあっと息を吐き大きく吸い込みまた息を吐いた
庭に生える芝の上に寝転べば晴天が目の前に広がる
お母さんやお父さんは順調に回復してるってこないだ実丸君が言ってた
また前みたいに落ち着いて過ごせる日は何日になるのかな…
龍斗や夏夕は元気なのかな
考えれば目頭が熱くなりうるっと視界が霞む
「会いたいな…」
口をついて出たのはそんな言葉だった
考えても、思っても
今は頭の中にいるその姿でしか会えない
『えー!』
突然聞こえた声にあたりを見回すと微かに人影が屋敷の廊下に見えた
『可哀想よね、その中界の子も』
『姫様が封印の術で助かる見込みがないのに』
『じゃあ何?
その中界の子を姫様にする気なの?』
『それは違うんじゃない?
前にもあったでしょ。
念を移す儀式みたいなの』
それ以上聞いちゃいけないって頭では解ってた
『じゃあ中界の子を姫様と入れ替えるってこと?』
『そうだと思うよ。じゃなきゃ禁忌を犯してまで中界から連れてくる?それで龍様、大きい呪い貰ったとか言ってたわよ』
『可哀想。あの子も…自分が消されるなんて思ってもみないでしょうね』
突然頭を殴られたようなそんな気持ちになる
「私が…消える?」
『痛々しいのよ。みんなであんなに優しくして』
その言葉が聞こえた時には走り出してた
ダダダダ
「ちょっと待って!」
その話をしてた人達を引き止める
花屋敷家に使える使用人たちだった
「姫様!」
「どうかされましたか?」
足を止めた3人は私を見つめた
「私って…消えるの?」
目を見開き私が聞いていたことを全て悟った3人は
「冗談ですよ」
「そうです、気になさらないでください」
必死に嘘を突き通そうとした
「教えて…教えてください」
「姫様、とにかくお部屋に戻ってください」
「私達も仕事がございますので…」
足早に去る3人の背中を見つめ廊下を曲がる
『みんなであんなに優しくして…』
ハッとしてその3人を追うけど
廊下にはもう、誰も居なかった
その言葉が何回も頭の中をグルグル回る
自然と足はある場所へと向かった
大きな本堂を抜けて
立ち入り禁止のテープが張られた廊下
ここに来る事は許されなかった
絶対近寄っては行けないと言われた場所に足を踏み入れた
一つだけ大きな両開きのドアがあり
そこには沢山の闇のような黒い玉が飛び交っていた
その中の廊下を歩く
「ここ…」
ギーッとゆっくりドアを開けて
私は全てを悟った
「嘘…」
記憶が蘇る
『逆さに時を刻む金の時計』
「………」
『無数のお経が部屋を埋め尽くしてる』
「あれが姫様…」
その真ん中のベッドに眠る私に似た姫様が居た
半分の体は消えかけていて
胸の真ん中は深い闇のような穴が空いていた
バッと強い風が私を部屋の中に押しやると
突然目の前に知らない人が現れた
『聞こえるか?』
「え?」
『時間が無い
莉心、いいか?
負けてはいけない』
「…え?あの…」
『真実は必ずここに眠る』
そう言いながら私の胸を指した
『闇は誰の心にも住み着く
本当の事まで飲み込むんだ
だから信じる
自分を強く強く信じるんだ』
長い髪を風になびかせた男の人は私の頬にそっと手を置いた
綺麗な袴に身を包んでいたその人は見惚れるくらいかっこよかった
ハッとしてあたりを見回すとその人は消えていた
「強く…
自分を信じる…
何それ」
色んな気持ちの線が勢いよく何本も切れたように涙が溢れた
『呪いを移して消える』
その言葉に全身が凍り付いていくように感じた
「…みんなの優しさは嘘だったの?」
廊下を走る音が近づいてきて
部屋のドアを開けた




