占いの結果
「あの…」
夏夕がその張り詰めた空気を割いてくれる
「莉心どこが悪いんですか?!」
夏夕の大きな声に、目の前の人は首を振った
今雑誌でも人気の占い師
如月 美琴
その人は私を見て
「どういう事なの。
うーん…葉原さんあなたの半分が透けて見えるの」
「え?私が透けて見える?」
「何それ?どういう事ですか?」
夏夕と私は顔を見合わせた
突然の言葉に正直、疑いの方が強くて今にも少し笑ってしまいそうだった
でもそれが出来ないほど、真剣な目をした如月さんに強がって抑えた不安が広がる
「あなたの半分が透けているの
その中に反対に時を刻む時計が見えるわ
金色の大きな掛け時計…
あとお経みたいな言葉が部屋中を埋め尽くしてるような…何か心当たりあるかしら?」
その問に即答した
「ありません。反対に時を刻むって、そんな時計ありますか?」
「信じたくないかもしれないけど、今私も驚いてるの。こんなハッキリあなたが消えかけてることに」
「あの!」
ガタッと席を立って一瞬心臓が止まる気がした
立ち上がった先にある窓ガラスが私を映してる
右半分が無い私を。
ドンッと力なく座って震えそうな体をギュッと腕で抱きしめた
「莉心?大丈夫…」
大きな瞳は優しく揺れている
「大丈夫だよ。
あの…続き聞かせてください」
「そうね。お墓参りには行ってる?」
「いえ。産まれてから1度も行ってません」
「それはどうして?」
「父と母から行かないように言われてるんです。私、貰いやすい体質らしくって」
「…魂が呼ばれてるわ。あなたの名前を誰かが、、、呼び続けてる」
「私を?」
バカじゃないって言って帰ることは簡単に出来るはずなのに。
それが出来ないほど私の不安は広がる
「それは、近くで姿を変えているかもしれない。暗闇に光る左目が青と右目が赤の瞳が見えるわ
これは敵じゃない。あなたを守ろうとしてる」
「………青と赤」
莉心がそう呟いた
「莉心、心当たりでもあるの?」
夏夕の声に
「えっ?ううん。無いよ」
首を振ったら、夏夕の瞳が揺れてる気がした
「夏夕?」
「あのさ…」
言いかけた夏夕は
「やっぱり何でもない」
っと苦笑いして何かを誤魔化した
「はあ…」
如月さんは少し息を吐き私を見据えた
「雨でびしょ濡れになって泥まみれのあなたが見える。
怖い気持ちが溢れる出来事があるかもしれない」
如月さんの手が震えていた
「怖い気持ち…って」
「そう。だけど…大丈夫。きっと。」
その言葉を聞いてやっぱり占いなんかに答えを求めた自分がダメだったんだと思った
大丈夫。
きっと?
きっと。って何?
不確かで不透明な気持ち悪い言葉でしかない
「解りました。じゃあ帰ります」
席を立ち上がって再び窓ガラスの自分と視線がぶつかった
ほら。占いなんか当てにならない
そこにはちゃんと私が居る
「莉心、待って!
失礼します」
「あっちょっと待って!お墓参りに行くのよ!絶対。御先祖様があなたを守ってくれるはずだから!」
その如月さんの声は微かに届いた
「負けちゃダメよ…
あなたは私達の…」
だけどそれ以上はもう聞きたくなくてお店から飛び出して冒頭に戻る