お披露目会
あれから1週間が経って
お披露目会の日を迎えた
「この娘が莉心ちゃん?」
慣れない上界の化粧をしてもらい
花屋敷家の家紋が入った代々伝わる赤いベースに白や金で刺繍された睡蓮の花があしらわれた大振袖を着せてもらった
花屋敷家は独身最後を華やかに練り歩く為に大振袖が代々着られていると教えられた
髪を綺麗に結ってもらって龍様を待っていた私の元へ1人の綺麗な女の人が訪れた
「こんにちは…」
そう、不思議なことに私が代役を務めてるこの世界の莉子姫様はあまり公になることが無く貴族以外の方には初めてのお目見えになると説明を受けた
由緒正しき家系だそうで
みんな見るからに気品が溢れている
「大丈夫?舎羅登に聞いたわ
こっちに来て不安でしょ?
いつでも頼ってね」
「母さん、勝手に入んなって言っただろ」
舎羅登さんが面倒くさそうに欠伸しながらそう言えば
「いい大人が何ボサッてしてるの!
シャキッとしなさい」
っと持っていた扇子で舎羅登さんのおでこを数回叩いた
「分かってるって。
莉心ちゃんこの人、怪しい人じゃないから頼ってあげてね」
「本当は女の子が欲しかったんよ
よろしくね莉心ちゃん
私のことは釈愛おばちゃんって呼んでね」
「おばちゃんでいいだろ」
「別にいいでしょ」
「言い難いんだよ、しゃ、しゃー、しゃあー」
「母親の名前で遊ばないで」
言い合う二人を見てクスクスって声が出る
「仲良いんですね」
「やめてよ、莉心ちゃん
ちょっかい出すのが好きなんだよこの人」
「人聞きの悪い
面倒見が良いって言ってくれる?」
「よろしくお願いします
釈愛おばちゃん」
ニコッと笑う莉心ちゃんを今にも抱きしめたいとウズウズしてる母親を尻目に莉心ちゃんと話を進める
「今日結構な距離歩くから
屋敷の周辺だけだけど…大きいからね」
屋敷を中心に民家や食べ処、お宿も沢山あるし何より特殊技能高専と言う世界に通用する戦闘術や術韻を習う学校がある
今日は出店も出てるって妃乃瑠ちゃんから聞いた
「川の向こうには行かないんですよね?」
「そうだよ、川が一本真っ直ぐ通ってるんだけどそれより向こうはこことは違う
入るのはオススメしないよ
中界にもあったでしょ?治安が悪いとか、ヤンチャな子達が集まったりとか」
「うん、ありました」
「そんな感じ、女の子が行くところじゃないよ」
「解りました」
「もちろん、その地域にも人は住んで、村や街を作ってるんだけどね」
「…ここは、住む人が決められてるんですか?」
「そうよ、莉心ちゃん」
突然入ってきた母さんが図々しく莉心ちゃんの横の椅子に腰掛けた
「ここのお屋敷と少し離れた屋根に龍の像を乗せてる屋敷、零恩志家のだけど
その二つが今第一級貴族でこの世界を担っているの
その後に第五級貴族まであるんだけど、その人達や後は特殊技能高専に通ってる院生達の家族も住むことを許されてるの
院生達は、高専の中に寮があるんだけど…」
「母さん!
そんな事言っても訳わかんないだろ」
「あっごめんなさい
私ったらつい」
「いえ、凄く勉強になりました」
「もう、可愛い子」
また抱きしめたいとウズウズしてる母さんに莉心ちゃんと笑ってしまった
「じゃあそろそろ迎えが来ると思うから」
舎羅登さんと釈愛おばちゃんが部屋を出て
入れ替わるように妃乃瑠ちゃんが来てくれた
「莉心様、とても綺麗です」
「ありがとう
似合ってるかな…?」
「もちろんです
龍様も見惚れます」
『妃乃瑠、莉心様と門前へ
龍様が来られた』
実丸の声にソッと襖をあけた
「歩けますか?下駄をあちらで履いてください」
「ありがとう」
「手貸しますか?」
実丸君の差し出された手を握れば
廊下には沢山の使用人の方の列ができていた
『うわー綺麗』
『とってもお似合いです』
『奥様を思い出すわ』
っと口々に聞こえる
玄関の門前には龍の家紋が描かれた羽織を着て綺麗な白と水色の袴を着こなしている龍様が見えた
「お待たせしました」
頭を下げれば龍様は手を差し出してくれた
「とても似合ってる」
「ありがとうございます」
その笑顔は龍斗を酷く思い出させた
いつか私は、龍斗と幼なじみの仲を超えて
こうやって想い合う結果にどこか期待していた
「龍様も、とてもカッコイイです」
そう言えば少し笑って
「ありがとう」
と言ってくれた
歩いている間も色んなことを話した
小さい頃の龍様の思い出を聞いたり
妃乃瑠ちゃん達の院生時代のお友達
知らない何かを知る事は思ったより抵抗は無くて、こんなに良くしてもらえるなら頑張れるそう思っていた
お屋敷に戻り親族の方達が集まる中、
婚礼の儀の日取りなど
私には良く分からない事を淡々と藩登様が話していた
「莉心」
ふと小さな声で聞こえた龍様の声に顔を上げた
「はい」
「不便はないか?」
優しい声に優しい瞳
「大丈夫です
みんな良くしてくれて」
「それなら良かった
次に会えるのは婚礼の儀の日になると思う
何かあれば実丸や妃乃瑠を頼るといい」
「はい」
そう言えば優しく手を握ってくれた
視線が重なれば
「しばらく寂しい思いをさせるが、目移りはするなよ」
爽やかに笑う龍様に
「////」
顔が一瞬で赤くなる
「可愛い」
「あああの、やめてください」
そう言えば2人で
クスクスっと静かに笑った
「龍様デレデレじゃん」
「和兎、口を慎みなさい」
阿兎にそう言われ実丸の方に顔を向けた
「デレデレだよな?」
「知らん」
「……」
実丸の横で妃乃瑠は切ない表情をしていた
それはきっと莉心様には残酷で
龍様にとってはただの過程でしかないのかもしれない
「莉心様…」
妃乃瑠の思いが現実になる日は
そこまで来ていた




