痣と呪い
「え?」
私は今色んな事でパニックを起こす寸前だった
朝ご飯は少し残して
使用人の人達に連れられこの部屋に来た
木の机には沢山の書類が積まれ
埋もれるように妃乃瑠ちゃんが居た
その妃乃瑠ちゃんから飛び出した言葉に思わず聞き返した
「なので、龍様と婚礼の儀を行っていただきます」
笑う妃乃瑠ちゃんはそう私に告げた
「え、あのその婚礼の儀って何ですか?」
「えっと待ってね。赤い紙、赤い紙。
あった…あれこれ違うやつだ。ちょっと待ってね」
「はい…」
ガタン
「とにかく」
突然隣から聞こえた声にドキッとした
「実丸君!…おはようございます」
「はよ…」
実丸君は相変わらずマスクをつけたまま
「妃乃瑠、後は俺が説明するから」
赤い紙をヒラヒラさせながら実丸君がそう言えば
「……」
実丸君の言葉を無視して椅子に座り直した妃乃瑠ちゃんは黙々と書類を整理をしだした
そして何より
二人のぎこちなさが妙に伝わってくる気がした
「とにかく、龍様と婚礼の儀をして花屋敷家と零恩志家の橋渡しをする役目をしてもらう
姫様が目覚めれば問題ないんだか、婚礼の儀まで時間が無い
それまでの準備が大変なんだ」
「あの、婚礼の儀って結婚式の事ですか?」
「まあ、そんな所だ
でも姫様の体は術韻で守らないとダメでそれが色々と厄介なんだ」
「厄介?」
実丸君は近くの椅子に座ると私にも椅子を差し出した
机に広げたのは赤い難しい書物だった
「簡単に言えば強い術韻をかける為に色んな術を何回もかけるんだよ。今回は舎羅登さん…莉心様を治療してくれた人な?その人が居てるから1日で済むと思うけど…」
「よく解らないけど…頑張るね」
そう笑えば実丸君は少し驚いたような瞳を私に向けた
「俺らが全力でサポートするから、解らないことは遠慮せずに聞いて。
まずは1週間後のお披露目会として街を龍様と行進して頂きます」
「1週間?
えっ、お披露目会って…」
「街の人や使用人、あと高専の講師や院生にも顔を覚えてもらいます、何かあった時に守って頂くために」
「はい」
「少し重たい着物着るんで、体力つけてください。あとこれ…」
実丸君が差し出したシルバーのリングを受け取る
「これ?」
「何かあったり、助けが必要な時これを握って念じて」
「念じるの?」
「そう。実丸助けて。とか妃乃瑠助けてっとか…そしたら俺達のシルバーリングが光るから」
「ありがとう…大切にします」
それを嬉しそうに見つめる莉心様は自分の置かれてる状況があまり飲み込めてないようだった
「あと、この屋敷の周りを川が流れてるんだけどそれ以上向こうには勝手に行くな
莉心様が居た世界には想像出来ないくらいの変な奴らが居るから」
「うん。」
今日はやけに話してくれる実丸君を余所に妃乃瑠ちゃんは黙ったまま黙々と仕事をしていた
あの後泣いたのか腫れた瞳には私も実丸君も触れないでいた
「姫様が眠りについた事を知ってるのは俺と妃乃瑠。舎羅登さんと藩登様…あと昨日会った龍様と和兎と阿兎だけだから」
「はい」
「この資料出来るだけ覚えておいて。
でも心配ないと思うよ
顔も声も雰囲気も似てるからさ」
「そうですか…」
トントン
っとノックの音に皆が扉を見つめた
「邪魔するぞー
おっ居た居た」
ボサボサの髪をかき分けポリポリっと頭をかくその人は私の前で止まった
「この人が舎羅登さん」
実丸君が紹介してくれた
「え?」
「なんだその反応!」
「ごめんなさい。昨日は助けてくれてありがとうございました」
「どうも。それよりどうだ?変なとこないか?」
俺の問に少し口ごもった莉心ちゃん
「あの…今朝起きて下着着けようとしたんですけど…」
「言いにくいならいいよ。妃乃瑠の方がいいか?」
「だ、大丈夫です。なんか変なアザが胸の所に出来てて…」
「それは私が確認します」
舎羅登さんと実丸が背中を向けたので莉心様の胸元をはだけた
「これ…」
そこには睡蓮の花の様なアザが広がっていた
「これは!っ痛」
バンっと実丸君が舎羅登さんの頭を近くにあった本で殴る
「何見てるんすか?」
「俺は医者だぞ」
「莉心様ごめんなさい」
「大丈夫です。それより」
「花びらが1枚だけ色づいてるね」
舎羅登さんは真顔になり
「莉心ちゃんこれから毎日確認するんだ。そして色づくタイミングを見つけてほしい」
そう言った
「はい」
「痛みとかはない?」
「今の所無いです」
「なら大丈夫だよ。すぐ消えると思う」
「良かった…」
ホッとして襦袢と着物の直す2人にまた背を向けた
「それで舎羅登さん…何か解りましたか?」
小声で聞く実丸にそっと耳打ちをした
「龍と莉子姫にもあったよ
あれは呪いだ」
「?!呪い…」
「謎だらけだな」
「呪いって早く解かないと」
「莉子姫と龍のとは違う、アザがまだ未完成だ」
「何が原因か突き止めるってことですね」
「おう」
「解りました」




