妃乃瑠と実丸
「失礼しました」
妃乃瑠と莉心様の部屋を出て
俺達が住む部屋に帰る途中
「ねぇ、実丸…
私、ちゃんと笑えてたかな?」
そう足を止めて振り返った妃乃瑠は
笑顔が売りなのに今にも泣きそうな酷い顔をしていた
「ダメだな
顔にも声にも出てる」
「…だよね」
「俺達が本当にしなきゃいけないことは
雇い主である花屋敷の長、
藩登様の命を遂行する事だ。
可哀想や、同情は今ここで…
俺の前で捨てろ」
そう言えば苦しい顔をして、目を閉じる妃乃瑠が居た
「…無理だよ…そんな事、だって」
「なら護衛を他のやつに渡せ
何万と居るんだ。そこに居たい奴らが」
そう言えば
「酷い。実丸なんか大っ嫌い」
今度は怒った顔を向けた妃乃瑠。
走って暗闇に消えていくのを見つめていた
「お前さ」
「わっ!」
突然かけられた声に驚き振り向く
「珍しいのな、驚くお前」
っと大声で笑う舎羅登さんが居た
「突然こんな夜中にやめて下さい」
「はあ…妃乃瑠が可哀想だな。いろんな意味で」
「なんですか?俺はただ任務を」
「解ってる。んな事…
けどよ、優しくしてやれよ
妃乃瑠は妃乃瑠なりに、お前の横に居れるように毎日必死に修行してんだぞ?」
「………」
「健気だろ?周りに反対されないように、お前が言う何万の人が狙うそこに妃乃瑠は居たいんだよ。必死でな」
「なら、要らない感情を捨てればいいだけでしょ」
「要らない感情なのか?あの子を思う事は」
「………はい」
「よく首席で卒業出来たな。心を読み取る授業、本当に満点だったのか?」
「満点っすよ。オール」
「嫌なやつだな。」
「あと、飛び級の首席なんで」
「うわあー最悪。
そっか、だから和兎と阿兎はお前に劣等感抱えてるんだな」
「それ言います?」
「地雷だろ?知ってる
だから余計に大事にしろよ。妃乃瑠の事」
「してますよ。舎羅登さんには解らない部分で」
そう生意気な眼差しを俺に向けてきた
「ならいいけど。
覚悟しておけよ、
今回のこの騒動はきっと今までで1番大きいだろうから」
「……はい」
俺にもまだ予想出来なかった。
妃乃瑠の気持ちも舎羅登さんの予想も
俺の本音も…
全部闇に飲み込まれて行くこと
悲しい。
哀しい。
深い闇に…




