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愛しき姫は異世界に  作者: janky
第10章
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やや・舎羅登過去編5

「ずるいよな…」


タバコを吐き出しながら高専の講師室のソファに深くもたれかかる


「流石に、可哀想だわ

ややちゃん本気でどうにかなるって思ってるぞ」


昔からの腐れ縁の駿太(しゅんた)に相談した

今は術韻部の講師をしながら妃乃瑠の担任をしている


「…だよな」

「だいたい、その手癖悪いのどうにかしろよ

みんな誤解して傷ついて…

相手は零恩志だぞ」

「解ってるよ…あの雰囲気弱いんだよな

キスして欲しいって顔されると

「最悪だな、気の毒だ」

「好きとかもう無理

全部気持ち事あいつにやったよ」

「確かにあれはトラウマにも程があるよな」


短くなったフィルターを灰皿に押し付けて

小さな窓から外を見つめた


「今生きてたら俺と光愛ってどうなってたと思う?」

「そりゃそれなりに進展してたんじゃねぇの」

「……そんな事ばっかり考えてる最近

色んなことが重なる、嫌な思い出ばっかり」

「それって、ややちゃんだからじゃねぇの?」

「ん?」


分からない顔を俺に向ける舎羅登に


「今までそういう事があってもどっか割り切ってそんな事さえ言わなかっただろ?

だからややって舎羅登にとっては近い存在何だろうなってこと」

「駿太はどう思う?ややの事…」

「…聞く?俺に」

「おう」

「いいと思うよ

愛される幸せって愛した事ないやつには解らねぇと思うけど」

「…キツ…」

「ややちゃんはもう6人も断ってんだぞ

婚約の申し込み…

はっきりして、突き放してやれよ

相手が確信をつかないからって甘えるな」

「駿太、本気でSだな

ぐいぐい傷、(えぐ)るじゃん」

「他のやつはほいほいお前を許すからな」


そう笑った駿太に笑い返せば


「ほら、手伝えよ

飲みに行こうぜ」


書類を押し付けられた




___________




「龍君、講師室に用事じゃなかったの?」



講師室の扉の前で立ち尽くしていた龍君に声をかけた


「妃乃瑠か…

もう用はない」


怒りを宿したような顔を伏せて龍君は歩いて行った


「変なの…」


『ややには、ちゃんと言うよ』

『ズルズルするなよ』


すると講師室から舎羅登さんと真知先生の声が聞こえた


ややって、龍君のお姉ちゃん?

ここで2人の話を聞いていたのかもしれない



『でも、顔は可愛いからな

勿体ないだろ』


舎羅登さんの声に耳を疑った


『傷つけるなら早い方がいい

まだこれ以上好きになられる前に』


先生の言葉に返事をした舎羅登さん


これ以上耐えきれないって龍君は思ったのかもしれない



ソッと足を下げその場を離れた


食堂へ向かい気持ちを落ち着けようとする


「ひどい…」


舎羅登さんの印象がガラリと変わってしまう



「えー!?じゃあ舎羅登さんからキスしてきたの?」


食堂に入って後悔した

まさかややさん達が居るとは思わなかった


「しー!っっ聞こえた?」


私を見つめるややさんから視線を逸らした

高揚した頬も幸せを思い出すような瞳も、全身で好きを伝えるややさん…


「妃乃瑠こっちおいで!

やや、付き合うとか話にならなかった?」


阿兎さんが前のめり気味に(まく)し立てる

胸が痛い


あのややさんの表情は知ってる

恋をしてる人がする切ない表情だから…


「だって、聞けないよ?

はっきり断られるのも怖い

今の場所までなくなるなんて…怖いから」


真剣に考えるからこそ正しいとは限らない

白も黒も一瞬で色を変える

誰かに聞けばそれは揺れ動きそうなほど脆いと解ってる

だけど隠せずには居られなかった


「だからって、

ちょっと舎羅登さんも考えなさ過ぎるだろ」


和兎はため息をついて妃乃瑠ちゃんに視線を戻した


「妃乃瑠も座れば?」


その問に首を横に振った


「ごめんなさい、まだ練習中なので…」


耐えられず食堂を飛び出した


私が実丸さんを思うようにややさんは舎羅登さんを全身で好きって言ってる


だからこそ、この現実が告げる終わりがあまりにも悲しくて



廊下の角を曲がれば


ドンッと人にぶつかり後ろへ転けそうな私の手を掴んでくれた


「妃乃瑠?」


「実丸さん…」


張り詰めたように涙が溢れた

実丸さんがもしあんなことを思ってたなら私は立ち直れない

純粋に好きを向けるややさんと自分がどんどん重なっていく



「どうした?」


不安気に見つめる実丸さん

この優しさも全部、全部嘘だったら…?

そう考えると涙が止まらなかった


「実丸さん…私どうしたらいいですか?」


泣く妃乃瑠を抱き寄せて背中を摩る


「ほら、落ち着け」

「舎羅登さん…酷い…ややさんのこと遊びだって…」

「は?…それはないだろ

こないだもいい感じだったぞ」

「さっき講師室で真知先生と話してました

顔は可愛いから勿体ないって」

「……本当か?」

「はい

しかもその話を龍君も聞いてたみたいで怒った顔して帰っていったんです」

「解った

とにかく落ち着け」

「実丸さん…

舎羅登さんってもっと優しいイメージでややさんの事好きなんだって思ってました

しかもキスしたって今食堂で騒いでて…」

「……妃乃瑠

このことは俺たちで秘密にしよう

ややを必要以上に傷つけることは無い

内緒に出来るか?」


実丸さんを見上げれば

昔のような優しい瞳をして私を見ててくれた


「はい」


クシャっと髪を撫でられて

実丸さんから離れれば大胆な事をしてたんだって気づいた


「また何か聞いたら…」


実丸さんは少し何かを考えて



「俺に式神飛ばして、聞きに行くから」

「実丸さん…」

「舎羅登さんと話してみるよ」

「はい」

「じゃあな」


廊下を歩いてく実丸さんの背中を見つめた


ややさんはみんなの太陽みたいな人で

気を許した人達にとっては

その笑顔に何回も救われた事があると思う



だから舎羅登さんが好きな相手って知った時

みんながいい気しなかった雰囲気の意味がようやく解った


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