やや・舎羅登過去編3
「今日もいらないの?」
『いらない!』
「体調悪いなら舎羅登君に見てもらう?」
『やめて!一人にしてお願い』
「はあ…どうしたのかしら…」
「ややはまだ部屋にこもってるのか?」
「源…もう3日、お風呂以外はダメね」
「年頃はこれだから難しいな」
笑いながら支度をする源は
「やや、約束一つ守れない女は嫌われるぞ」
っと大きな声でそう言えば
『ほっといて!』
って声が聞こえた
「おうおう、荒れてんな」
「笑い事じゃないです…ご飯もろくに手をつけて無いですし…」
「心配しすぎだ」
「…もう」
「ほら、そろそろ約束の時間だ
今日は3軒程だから早く終わらせてたまにはみんなで外へ食べにでも行こう、龍にも式神を飛ばしておく」
「解りました」
「お母様、お父様…」
「のの、やや姉ちゃんは少し体調が悪いからソッとしといてあげてね
屋敷から出ちゃダメよ?」
「はい、解りました」
「行ってくる」
「気をつけてね」
ガラガラっと玄関を出ていく音が聞こえて布団から起き上がる
カーテンを開ければ目を細めた
「最悪だ…私」
手伝って居たお薬処の仕事も無断で休み続けてる
舎羅登さんは何も言ってこないって事はどうでもいいってことなのかな…
大嫌いっとか言っちゃったし…
会いづらいし…
色々考えながら洗面所に行き顔を洗う
「ひどい顔…」
疲れたようなむくんだ顔を鏡に映す
『おやめください!』
『お下がりください』
使用人の人たちの声に
「やや姉ちゃん」
ののが私に抱きついてくる
「どうしたの?」
ののを後ろに隠し廊下を覗くと
酷く怖い形相の女の人が使用人を振り払い駆け寄ってきた
「きゃっ」
グッと足元の襦袢を掴み抱きつかれる
「清女様…どうか息子をお助けください」
「え?あの…」
「息子が念に取り憑かれて」
その言葉の直ぐ後に
『キャー』
『おやめください!』
玄関の方で叫び声が聞こえた
「のの、いい?隠れてて」
「やや姉ちゃんは?」
「大丈夫だから」
ののが隠れるのを見て玄関に向かえば
使用人達が倒れていた
「これは?」
「息子が悪い念に操られてて」
その人の視線の先には少し念を纏った男の子が立っていた
「助けてください」
「あの、私…」
「息子を助けて!」
正気じゃなくなっていく女の人からも念が舞い上がる
「え…」
その念が私の首に巻きついた
「ンッ」
『助けて、助けて』
その女の人の背中には男の子から伸びた念がくっついていた
「ンンッ」
振り上げられ宙に浮く感覚と近くなる天井に血の気が引く
『助けて!』
一瞬で廊下に叩きつけられる
「ッッ」
直ぐに体制を立て直せば
同い年くらいの男の子が私の前に屈んでいた
『「お前が清女か?」』
グッと首を手で捕まれ引き寄せられる
『「美味そうな匂いだな」』
鼻を髪の毛に埋め息を吸う音に怖くなる
少し顔を離した男の子の目は黒目が広がり念に支配されていた
「……」
こんな時の術韻は…
頭の中で必死に思い出すけど焦る気持ちが思考回路を封鎖していく
「やや姉ちゃん」
声の方へ視線を向けると倒れた女の人の隣にののが立っていた
「のの!逃げて」
気をそらした男の子から逃げるようにのの の方へ足を向ける
「やや姉ちゃん!」
「のの」
抱き上げ振り向けば念が凄い速さで私にぶつかる
「きゃ!」
パリンっと窓ガラスを突き破りののを抱きかかえたまま庭に吹き飛んだ
「っ痛…
のの!大丈夫?」
「うん、怖いよやや姉ちゃん」
「のの、聞いて
ここは危ないから早く屋敷の外へ逃げるの!
高専まで走って龍を呼んできて」
「やや姉ちゃんは?」
「大丈夫よ!こう見えてお姉ちゃん強いんだから
さあ、アイツに気づかれる前に」
走って壁にある小さな扉から外へ逃げるののを見送れば
グッと首にまた念が巻き付く感覚に手で念をもつ
「グッンンッ」
さっきとは比べ物にならないくらい苦しい
『「小さいのは逃げたのか?」』
また宙に浮く感覚に全身に力を入れれば
地面に叩きつけられる
「…ンッ…ッ」
意識が遠のいて視界が赤くなっていく
『「清女、早く俺を送れ
出来るならな」』
「滋!」
倒れてた女の人が割れたガラスから体を起こしそう叫んだ
「清女様…どうかお助けください」
「…ハア…」
起き上がり意識もハッキリしないけど
胸の前で手を組む
集中して念じれば神楽鈴が現れ握りしめる
「滋君…今…助けるから」
だけど
シャリンっと手元に持っていた神楽鈴を念で叩き落とされる
「……そん…な」
距離を詰めた滋君は私の顎を掴み顔を寄せた
『「そんな踊りはいらねぇよ
もう一つあるだろ?いい送り方が」』
そう言われた瞬間グッと頭に念を繋がれる
『「その身を俺に捧げれば、俺はもっともっと強くなれるんだ」』
「…ンンッ」
より深く念が頭を支配していく
『「俺と契
その身のまま俺のものになれ」』
顎をより強く引き寄せられ唇が塞がれる瞬間
『「グッ」』
「ンンッ」
私の唇と滋君の唇が誰かの手に触れた
そのまま後ろに引き離されて滋君はその手から放たれた術韻で後ろへ飛ばされて倒れ込んだ
頭から念が離れグッと抱き締められて
助かったんだって実感した
「やや…大丈夫か?」
そしてその人が舎羅登さんだって分かって涙が溢れた
「大丈夫じゃない」
グッと抱きつけば
「よく頑張ったな」
そう抱きしめてくれた
「後は俺に任せろ」
離れた場所に移動し守の術韻をかけてくれた
『「お前、邪魔するな」』
「…邪魔?」
『「その清女を渡せ」』
「そんなに欲しいか?清女の清い血が」
『「そうだ
強くなるんだよ」』
「可哀想なやつだな
清女の血がないと強くなれないなんて」
『「何だと!?」』
「見せてやるよ
俺の本気」
そう言った舎羅登さんから風が巻き上がり衝撃波でまた窓ガラスがパリンっと数枚割る
滋君はその風の強さで膝をついて耐えていた
「音の言霊 離れき魂
我神の名の元に
花屋敷家術韻 覇道白炎」
そう唱えた術韻で
凄い速さで滋君の周りを舎羅登さんの緑色の念が囲む
それは白い炎のようになり覆い尽くした
『「グッ」』
「お前は下界に送ってやるよ」
『「貴様」』
「俺、大切なものを傷つけられるのが一番嫌いなんだよ」
舎羅登さんが手をかざせば炎の中に黒い大きな影が現れ滋君本体だけをその炎の中から引き剥がして念が姿を表した
『助けてくれ』
「言いたいことはそれだけか?」
『っクソ』
「俺を怒らせたお前が悪い」
『ぐあああ』
っと叫び声をあげたあとプツンっと時空の中へ消えていった




