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愛しき姫は異世界に  作者: janky
第10章
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やや・舎羅登過去編2

「やや、昼から何人だった?」

「予約が9人で、駆け込みが8人です」

「うわ~聞くんじゃなかった」


お薬処の庭に置かれたベンチに腰掛けてお昼ご飯を2人で食べていた


「思ってたより大変…

こんなに流行ってたなんて思わなかった」

「腕が良いんだよ」


笑いながら私に腕を見せる舎羅登さん


「それ自分で言いますか?」

「お前は言ってくれないからな」

「そんな事ないよ

お手伝いするようになって前よりずっと見直した」


そう優しく笑うややに見惚れてしまった

その笑顔はあの日守ることが出来なかったあの子に凄く似ていて


「舎羅登さん?」


私を見つめる舎羅登さんはゆっくり私の右頬を左の掌で包み込む


「え?あの…」

「パン、ついてるぞ」


そう言ってほっぺたのパンくずをとってくれた舎羅登さんから顔をそらして赤らめた


「やや、ありがとうな助かってるよ」


「いえ…」


ふざけたり、からかったり、優しくなったり

それにいちいち振り回される自分が怖くなる

上がったり下がったりなんて当たり前


そばにいない方がいいんだって頭ではわかってる

でもやっぱり知ってたい

どんな舎羅登さんでも一番に知ってたい


そして知らず知らず欲は溜まって行ってしまう



「それと…

代わりじゃないから」


舎羅登さんは立ち上がり空に手を伸ばし

伸びをしながらそう言った


「舎羅登さん…」

「母さんは鈴のこと父さんの術韻で忘れてるけど、俺は覚えてる

もちろん、鈴のように辛い思いをする人が減ればいいなっとは思ってるけど…

鈴の代わりにややに優しくした覚えはない

いつだってお前は俺の中で

ややだから」


「…何それ…」


涙で前が見えなくなっていく

胸が苦しい


泣いたって苦しいの変わらない


でも涙が止まらなかった


代わりじゃないことが嬉しかった?

好きすぎて苦しい?



どれが理由か分からなかったけど

舎羅登さんを縛り付けるたくさんの悲しい過去を

少しでも救いたいって思った


私が私で居ていいなら…


「そんなに泣くなよ、悪かった」


優しく頭をクシャクシャってして撫でてくれる


「無理だよ」

「…やや」

「どうすれば舎羅登さんの悲しい過去癒せる?」

「え?」

「いつも優しくて人を思うくせに、自分は大切にしないんだね」


ややを俺を見上げてそう言った

不覚にも核心を突かれてややから視線を離す


「私は、迷惑じゃない?」

「…そう言ってるだろ…」

「私…」


ややがその先に何を言うのかを悟り


「ンッ!」

気づけば口を手で押さえてた


「俺は好きだとか助けたいとか一緒に居たいとか…

そう言うことを言うやつが一番嫌いだ」


「……」


震えるややの瞳も手から伝わるややの体温とかも

コロコロ変わるその表情も

純粋な所も…俺を見る熱を帯びたその視線も


俺を好きだと伝えてくる


「俺はもう誰かを愛したり愛されたりそういうのはするつもりも応えるつもりもない」


手を離せば行き場を失くした思いを抱えるややが目の前に居た


こうやって突き放せば

俺を好きにならずにすむ

まだ、引き返せる

もう特別は要らない



「…私は好きって言いたい

一緒に居たいし好きな人が悩んでたら助けてあげたい

だけどこんなのずるい…」



立ち上がりややは

怒った表情を俺に向けた



「そうやって過去ばっか引きずってれば!

勝手に私の気持ちまで決めつけて、最悪

大嫌いだよ、初めて会った日から大嫌い!」


涙を拭い走り出したやや…


「…はあ…」


ため息をついてベンチに寝そべり眩しい太陽に目を瞑った


「大嫌い…か…」


光愛(みあ)を失ってから初めてこんなに胸が熱くなった

計算のないややの態度や思いが素直に可愛いと思えた

笑ってるそばから、泣いてたり

泣いたと思えば怒ったり


俺にだけ見せる素のややを愛しく思う日もある


だけど

何かを求めれば必ず見返りがくる


光愛を苦しめて、寂しさも埋めれず

人生をめちゃくちゃにしてしまった


その光愛の為にも俺は1人で居るべきなんだ


幸せなんか望んじゃいけない



「大丈夫か?」


その声に起き上がり視線を向けた


「父さん」

「タイミング悪くて、見ちゃったよ」

「……そう」


横に座った父さんは


「前に進むのが怖いか?」


俺を見据えてそう聞いてくる


「怖いよ

どうでもいい子じゃないから余計に…」

「そうだな」

「ややを好きになれば忘れられる

自分でも簡単なくらい単純に解ってる

だけどそれは光愛に悪い」

「あの子の事はもっと最善を尽くせたはずなのに…父さんに力がなくて申し訳ない…」

「父さんが謝ることじゃない

俺がしっかりしてれば良かっただけの話だから

責任は俺、原因も俺…」


いつの頃からか舎羅登は前髪で目を隠すようになっていた

それが見たくないものを隠してたんだって最近分かるようになった


光愛ちゃんがいない世界を見たくないんだって事に…


「あの子が安らかに眠っていたとしても、その罪の気持ちは消えないのか?」

「光愛に『もういいよ』って言ってもらう以外は無理だな…これでも本気で好きだったから」

「そうか」

「あの女のどこが良かったんだっとか伯父貴に聞かれたよ…容赦ねぇの本当に」

「兄様が居なかったら、お前この世に居なかったんだぞ

、お前の掟破りを身に受けて下さったんだ」

「……俺は頼んでねぇよ

じゃあ、午後診(ごごしん)入ってるから行く」



父さんや母さんは伯父貴を尊敬してるけど

俺は内心あんまり好きじゃない


何が俺の為なんだ?


花屋敷の為のことしか考えてないだろ…


ややが居ない午後診は慌ただしく

考える暇など無くて助かった…









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