第10章 やや・舎羅登過去編
あれから四ヶ月が経ち
私達はほぼ卒業と言うイベントを残し、就活に専念を始める事になっていた
和兎と阿兎は零恩志家の護衛を勝ち取り
龍君の専属になる事が解った
実丸は莉子様の護衛を始めていた
私はと言うと…
「おい、こっち手伝って」
「…人使い荒すぎ」
「え?は?
雑用係が文句言うのか?」
詰め寄られ
目をそらした
「すみません」
「分かればよろしい、それ終わったら2階の個室掃除な」
「……」
嫌な顔をしてる私を見つめて
「返事は?」
っと笑う舎羅登さんに
「はい!」
っと勢いよく返事して舎羅登さんの後をついて行く
どうしてこんな事になってるかは
少し遡って話します
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二ヵ月前
演習・野外訓練
「それでは、各自最後の野外訓練、開始」
爺教官の声にそれぞれが演習を始めた
「舎羅登さん!最後に相手してくださいよ」
「和兎、本気か?」
笑う舎羅登さんに和兎が念を手に集め出す
「もちろんっす」
舎羅登さんも立ち上がり
「しゃーねぇな
大サービスだぞ」
言い終わると同時に舎羅登さんの気流が風として舞い上がれば全員が息を呑んだ
「来いよ、和兎」
「っしゃぁぁぁ!」
凄い速さでやり合う2人をみんなが目を輝かせみつめていた
もちろん私も…
『舎羅登先生かっこいい!』
『髪あげたら、雰囲気全然違う!』
『私好きかも』
『先生って独身だよね』
女子たちは口々に騒ぎ立てる
その声や言葉に私の胸も騒ぎ出してしまう
「私の舎羅登さんが…」
「ちょっと阿兎、アテレコしないで」
「ごめんごめん
あれから進展ないの?」
少し離れた木影に座るややの隣に腰を下ろした
「ないよ
近くもないし、遠くなったわけでもない」
「でも今日で少し焦らなきゃダメになるわね」
「本当に…
あの舎羅登さんは
私だけが知ってれば良かったのに…」
「ヤキモチ?」
「うん、かっこいいもん
本当の舎羅登さんは…」
無邪気に笑いながら草原を駆け回り戦う舎羅登さんと和兎を見てややは少しだけ笑顔を見せた
「好きって怖いね」
「やや?」
「何も見えなくなりそう」
「…うん」
「毎日思っても、叶うことないのに…
思う意味あるのかな…」
「意味のあるものにできるようにすれば良いんだよ」
「…出来るかな?
遠いの、心が。
言われなくても解る、
見えない一線が私たちの間にあるから」
「手強い人だもん
しょうがないよ」
「うん…」
「舎羅登さんってずるいから」
阿兎の言葉に視線を阿兎に向けた
「みんな平等に扱っててもその中の誰かをまるで特別な人みたいな扱いをするの」
「本当にそれだよ…阿兎…」
阿兎の肩にもたれかかりそのまま2人で後ろへ倒れ込んだ
「ねぇ阿兎、私達はずっと変わらないよね?」
「うん、変わらないよ
結婚して子供が出来ておばあちゃんになってもずっと友達」
「うん! それがいい
ずっと続けばいいな」
「私、絶対負けないよ
死んだりしない…」
「うん、絶対だよ」
見つめ合い笑えばこの夢は実現すると思った
叶えることが難しいことかもしれないけど1人よりも2人で信じた方が強くなれる
そう思った
「あー!
ギブアップ!」
大きな和兎の叫び声に2人で起き上がり視線を向ける
汗だくの2人を5皆生の女子たちが囲み騒ぎ出した
倒れ込む2人が囲む女の子達の足の隙間から見える
「和兎やるじゃねぇか
本気で疲れた」
「くそー、そろそろ息ぐらいあげてくれてもいいじゃないっすか…」
「まだまだだな」
『先生、これタオルです』
『和兎君、私のお茶飲む?』
『先生私とも手合わせしてぇ』
『和兎君はわたしたちだよ』
『先生早く』
口々に話す女子に愛想笑いをすれば
足の隙間から阿兎とややが見える
「いい眺めだぞ、和兎」
「本当っすね」
「あっそうだ」
舎羅登さんがいきなり立ち上がり女子達を掻き分ける
「こっち来る?」
ややがそう言えば
舎羅登さんは笑いながら走りよってきた
「やーや」
「何ですか?」
私の前で屈みこみ
視線を合わせた舎羅登さん
「半年前くらいの約束覚えてるか?」
「約束…ですか?」
「お前な、忘れるか普通…
俺がモテモテを証明したら」
そう言って笑う舎羅登さんに
「雑用…掃除、出張、3食ご飯…」
「正解!
あと背中流しな」
立ち上がり袴を正す舎羅登さんを再び女子達が群がってくる
『先生、私達でしょ?次』
『早く行こー』
「解った解った、ほらあっちでやるぞ」
舎羅登さんを睨めば
「頼んだぞ」
っとウィンクして去っていく
「背中流しはしない!」
そう叫べば手を上にあげヒラヒラと振る舎羅登さんに
「もう!信じられない」
っと怒る
「ねぇ何、雑用…って?」
「阿兎、あれはモテてるの?
まちがいじゃない?」
「うーん、モテてるかな」
「最悪、まさか本当にこんなになるなんて」
「何だかんだ言って仲良しじゃん」
「やめてよ…期待しちゃう」
「…あんな舎羅登さん初めてだよ」
阿兎の言葉を素直に受け止めることは出来なかった
他の女子生徒達と楽しそうに笑って話す舎羅登さんをただ見つめた
この気持ちを抑えることであの笑顔と隣を守れるなら隠すくらい大丈夫…
だってその笑顔を独占したいって気持ちを見せれば舎羅登さんは離れていくでしょ?
叶えることも
諦めることもできないなら…
一番近くで見守るしかないんだよ…




