この世界のルール
「龍様お怪我はありませんか?」
「ああ、阿兎は大丈夫か?」
「ここは、花屋敷家の近くですね」
「そうだな。じゃあ行くか」
「はい。……えっ…」
阿兎は莉心の顔を見て息を飲んだ
震える唇に見開いた瞳がゆっくり俺を捉える
「…長様が頼んだ理由は…そういう事ですか?」
「ああ。」
阿兎は勘が鋭い
そういう事の裏に隠されるこの世界の色んなルールを当てはめた結果が阿兎を今不安へ誘おうとしてるんだろう
「………」
「言いたいことがあるなら言ってくれ
そんな顔されるくらいならそっちの方が楽だから」
「…いえ…
取り敢えずお薬処へ行きましょう」
「阿兎。俺の過ちだ
何があってもお前も、和兎も悪くない」
そう言うと阿兎はゆっくり視線を合わせた
「私は何があろうと、龍様の為にこの頭も心も身体もすべて捧げるつもりです
それが過ちだと言われても…」
「阿兎…」
「急ぎましょう…龍様」
阿兎に連れられてお薬所へ向かった
ここの医師はこの世界でたった5人しか居ない逸材だと言われてる
「失礼します。阿兎です」
阿兎がドアを開けて入っていくとカーテンの向こうから声がする
「あー阿兎か?ちょっと待てよ」
ガラガラの声で喉を鳴らし治そうとしながらカーテンを開けるその人は俺たちを見て頭をポリポリ掻き出す
「目覚め悪」
そう言い放ち近くの椅子に腰を下ろした
この人は花屋敷 舎羅登
今年で28歳になるらしい
ボリボリ鳥の巣のような頭を掻きながら欠伸をして肌襦袢とパンツだけを着てだらしなさが際立つ
「下、履いてもらえますか?」
阿兎がサラッと言うと
「つまんないよ。阿兎、そのリアクション
せっかく中界で手に入れたおしゃれなパンツなのに」
っと言いながら甚平を着始めた
「えっと…何しに来たの?」
舎羅登さんは俺を見ながらそう問いかけてきた
「この娘見てあげてください」
ゆっくり近くのベッドに降ろすと舎羅登さんの目つきが変わる
「お前…」
「異世界から連れてきたことについては、そっちの長に聞いてください」
「長だと?あのクソジジイ何企んでんだよ」
莉心の顔や腕を触ったあと頭に手を翳した
「龍も横に来い」
舎羅登さんに言われて横に座ると頭を掴まれた
「黄泉の死者に会ったのか?」
「はい」
「あの呪いに当てられると厄介だからな」
「…」
「助けて来たんだろ?この娘を黄泉の死者から」
「まあ…初めて見ました
あんな黒い闇はどれだけの念が詰まってるんだろう…って思いました」
「白姫だったっけ?…あの話は聞くだけで胸くそ悪ぃよ。大人になればなるほどな」
「向こうでは分家が色々してましたよ
花屋敷の」
「あ〜それもう血筋だよ
分家のね。何その目、俺も疑われてる?
確かに分家だけど無害の方」
「知ってます
ただ特殊技能高専で伝説の術韻師がこんな…」
「おい。こんなって何だ?」
頭を軽く叩かれあっち行けと手ではらわれる
「それにしても瓜二つだな。」
莉心の顔をジッーっと見つめる舎羅登さんは間違い探しのように確認していく
「そんな事ってあるんですか?」
黙ってた阿兎がそう聞けば舎羅登さんは首を傾げた
「無いだろ。どう考えても多少の誤差もないなんて」
「…声も似てるんだ」
「はあ…ったくまたややこしい問題そうだな」
舎羅登さんが翳していた手を戻すと俺たちに向き直った
「ところで龍。左肩見せろ」
「え…?」
「龍様?」
露骨に嫌な顔をした龍の袴から肩を無理やりだす
「きゃっ」
「…ひでぇな…」
そこには真っ赤に爛れ、睡蓮の花のアザが浮かび上がっていた
「これ、いつもらった?」
「……」
「龍。術韻を読み解く為だ教えてくれ」
「これは消さなくていい」
腕をはらい袴を正す
「龍様、どういうおつもりですか?」
心配そうな阿兎の頭を数回ポンポンっと優しく撫でる
「これは俺への戒めだから。あいつからの」
「あいつ?」
「許されなくていいんだ。
…舎羅登さんその娘頼みました
阿兎行くぞ」
「龍様!
舎羅登さん失礼します」
「…おう」
出ていく2人を見送りタバコに火をつけた
「戒め?そんなもんじゃ済まねぇだろ…あの大きさ」
ドンッ
大きな物音に驚いて手元が狂う
「うわっ!あちっ!んだよ、次から次に」




