第1章 現実世界より
葉原 莉心もうすぐ18歳になります
私は基本的に目に見えるものだけを信じるタイプで、占いや迷信なんかにはあまり興味が無いタイプです
それって気持ち次第じゃない?って思う事の方が多くて…
でも今日は違った。
「私信じないから」
赤信号に足を止めてため息をついた
まだ春とはいえ夕刻になると肌寒く感じる
日は伸びたけど夕焼けを見れば一日の疲れが押し寄せる刹那的な気持ち
「そ、そうだよね。あんなの信じなくていいよ」
少し気を使い心配そうに私の顔を覗いたのは
小学校からの幼なじみ
佐々倉 夏夕
少し茶色がかった柔らかい髪を肩まで伸ばし小さくて目が大きくて、如何にも可愛い女子って感じで昔からモテる
でもそれを飾らずに人に優しい夏夕の事が私は本当に好き。
「ごめんね。せっかく誘ってくれたのに」
「ううん、あの占い師きっとインチキだよ!
そうでなきゃ…」
「大丈夫。私気にしないから、安心して」
「はぁ…良かった
私があんな事言われたら怖すぎて外に出れないよ」
「青だよ?」
って言いながら横断歩道を渡り出す
振り向いてる先に居る莉心は夕日を見つめ少し瞳が揺れてるみたいだった
綺麗で落ち着いてて、大人っぽい莉心
人の気持ちに寄り添って考えてくれる素敵な子
優しすぎるのがたまに傷
自分を抑えちゃうところも…
ずっと生まれた時から一緒に居てるから
これからも、この先も
何も変わらないと思っていた
「大丈夫…うん。」
点滅しだす信号を見て、小さく頷いて夏夕の後を追った
事の発端は夏夕のことを好きな男の子がくれた人気占い師のチケットだった
―――――――――
遡ること五時間前。
「ねぇねぇ莉心!行こうよぉー!」
「その男の子と行っておいでよ」
「やだっ。あいつ下心見え見えなんだもん」
「下心って」
お願いっと両手を合わせ私の目の前に突き付ける
お昼休憩のチャイムがなり購買に行く人や、食堂に行く人。お弁当を広げて仲のいい子達で食べる子、それぞれが慌ただしくなる中、私の席の前に腰を椅子に沈めチラチラあわした手の間から私を見てる夏夕にため息をついた
「だいたい、占いって苦手なんだけどなぁ」
「知ってるよ、莉心が嫌いな事。でも気になるの!!」
手足をジタバタさせる夏夕の顔は少しにやけているように見えた
「そういうこと?どうせ私と龍斗のことを占おうとしたんでしょ?」
「えっ?バレた」
「顔に書いてる」
そう言って机に突っ伏して夏夕を見上げた
「私と龍斗は幼なじみで何も無い!わかった?」
「わかっ…りません!だってだって龍斗ってあんなにカッコイイのに浮いた噂がないんだよ!?おかしくない?学校中が言ってるよ
龍斗の本命は莉心だ!って」
またニヤける夏夕から顔を逸らし冷たい机にホッぺをつけた
幼なじみの零恩志 龍斗は生まれた時からの幼馴染で日に日にかっこよくなっていく
小さい頃から運動神経が良くて、いつも傍に居てくれた
それは今でも変わらない
だけど…
いつも何かが…
「おーい。莉心さーんフリーズしてますよ」
「えっ?あっ…」
この時私が感じてた龍斗への違和感の正体は後々気づくことになる
「龍斗ってさ不思議だよね。なんかよくわからないけど、そう思うんだ」
夏夕はそう言いながらお弁当を食べはじめた
「うん。解るよ…なんとなく。
夏夕が言いたいこと」
私もお弁当を開けばお母さんが朝から手間をかけたのが分かる可愛いお弁当が目に入る
「やっぱり?何だろうな?上手く言葉に出来ないんだけどね。
何考えてるかわからない。って言葉がピッタリかな」
「そうだね。それは思う」
「莉心のお弁当今日も美味しそう」
「お母さん、得意なんだって」
「いいなー。また莉心ママのオムライス食べたい」
「じゃあ次オムライスする時声かけてって言っておく」
「やったー
本当に莉心のママとパパって美男美女!
羨ましいよ」
「……」
少し戸惑った顔をした莉心
「莉心?」
「ん?あっ、ありがとう」
違和感を感じてる…それは龍斗だけにではない。
最近より感じる自分の周りへの違和感
「やっぱり行こうかな。占い」
「え?へ?本当に!!?」
「うん。たまにはいいかなって」
「やったー!約束だよ!?
あっついでに占い屋さんの向かいに出来たクレープも食べたいかも」
夏夕の提案に頷いて私も再びお弁当に手をつける
違和感も嫌な予感も
気にしない性格だったのに、
何故かこの時は聞いてみたくなった。
私が感じてるこの感情の答えがあるような気がしたから