第七話 狂
「ガチャガチャガチャガチャ」
反応せずにいると弱まるどころかさらに激しくドアをいじくりまわしている音が聞こえてくる。
「やばいやばいやばいやばい来た来た来た来た」
隣には恐怖のあまりうずくまりぶつぶつつぶやいている近藤がいる。
何かあったら神田と橋本を呼べと言っていたが、どう呼べばいいんだ?
そういえばあいつらの連絡先なんか知らないし、マンションの電話番号もうろ覚えだ。
「どうしようか…」
携帯電話で電話帳の番号を確認しようとしたが、さっきまで満タンだった電源がなぜかなくなってしまっていた。
ドアは開けない方がいいのだろうか。開けたらはいってきそうだからな。
「ドアを……開けてくれ……。オカルトマニアに聞いた話だと…………開けると……、あけ…、開けると…奴は入ってきて俺だけを狙ってくるから……、そこでできたスキを狙ってぶっ殺してくれ…。、も、もし…開ける前に開けられたら………」
「バギッ」という音が近藤の声をかき消した。
「開けられたらどうなるんだ?それだけ教えてくれ」
「そ、その家の中にいる全員の首が鎌で刈り取られるんだ!」
「そりゃあ物騒だな」
かっこつけたが、なにも案はない。右手にかけてみるしかないのか…。
俺はあの時のように右手に力を入れ、鎌女に突っ込んでいった。
が。
俺の右手にはなんの変化もなく、ただ鎌女の首をつかんでいただけだった。
「君だぁれ?私の首に何かついてるの?」
「っ…」
やばい……。怖くて力が入らず、超能力の力どころか普通に力を入れたときの力も入らない。
「だから、私の首に何かついてんのかって聞いてんだよ」
ブンッという音ともに俺は首元から投げ飛ばされ、ソファに倒れこんだ。
「クッソ……」
どうしよう……。ハシ…、神田……、助けてくれ………。
届くはずも無いが、必死に届けと祈り続けた。
「あーあ、もうくたばっちゃうの?あたしの家に鎌を投げるなんておバカさんなことする子も最近じゃ力の強い子が多かったから、すこし期待したのになあ」
勝手な期待しやがって。そんなこと知るかよ…。
「ま、いっか。またおバカちゃんたちがあたしを楽しませてくれるだろうからね〜。君はもういらないよ」
そう言うと女は俺の頭を目指して鎌を振り下ろした。
あ、死ぬ。
死んだらどうなる?
知らない。
誰も。生きてる人は誰も知るわけが無い。
じゃあなぜ恐怖する?
恐怖する意味なんてない。
死なんて怖くない。
「っ……ふっ………ふふふふふは、あは、あははははははははははははははははははは」
そうだ、怖くなんか無いんだ。
俺はいつの間にか、血でまみれた玄関に立って居た。
狂っちゃった(´・ω・`)




