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JOKERS  作者: 花札と鏡
第一章 鎌女
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第六話 来

とてもみじかい

鎌を投げて、3日経った。

学校では特に変わったこともなく、近藤も普通に元気だった。

「やっぱ鎌女なんて嘘っぱちなんだよ。見ろ俺のこの元気な姿を!」

「よかったな。でももしかしたら今日家に帰ってからかもしれないぞ。油断すんなよ」

「は?何真面目になってんだよ。いるわけないって」

近藤は呆れたような声を出した。

だけど俺は妙な胸騒ぎがして落ち着かなかった。

「まあ、とにかく気をつけとけよ?鎌で頭切り取られても知らねえからな」

俺は捨てるようにそう言った。


授業も終わり、さあ帰ろうと帰る用意をしていたら、後ろから方を掴まれたので振り返ると青い顔をした近藤がいた。

「どうしたんだよ」

俺が尋ねると震えた声で訴えるように俺に頼み込んで来た。

「あ、あのさ、今日俺の家に泊まっていけよ…。さっきいろいろ詳しい奴が嫌がらせなのか心配なのかで俺にいらない情報を押し込んで来やがったんだ。だからさ、頼むよ」

俺の方からそれを頼もうかと思っていたが、手間が省けたので助かった。

「ああ、別にいいぜ。てか親はいいのかよ」

「俺の親は二人とも今旅行に行ってんだよ…、一週間くらい。だから怖いんだよ」

なるほど、そういうことか。

俺は頷き、神田に事情を説明することにした。

「えー、んぅぅ…。今日特製のスパゲティにしようと思ってたんだけど、しょうがないね。なんかあったら私とハシ呼んでね。飛んで行くから」

「おう、ありがとう。また今度作ってくれよ。神田特製のスパゲティ」

そう言うと神田は照れたように歯を見せて笑った。

「おうよ!任せなさい!その代わり、しっかり近藤君を守ってあげなさいよ?」

お前は近藤と俺の恋を応援するいいやつかよ。恋してないけども。

そんな言葉を飲み込んで近藤と405号室に俺の荷物を取りに行った。


泊まる分の荷物を持って部屋を出ようとすると、

「なになにー帰っちゃうの〜?さみしいよー」

と茜さんがわざとらしい声で呼びかけてきた。

「帰りませんよ、ただこいつの家に泊まるだけですよ。明日には戻ってきますよ」

「なんだー、よかったよかった〜」

と安心した茜さんはまたいつものように枝豆を食べ始めた。


「ど、どういうご家庭?」

エントランスを出て少しすると近藤がたずねてきた。

「まあ、いろいろあるんだよ。そんなに深い意味はないけどさ」

「余計気になるし。教えてよ」

「ちょ…っと教えられないかなぁ…」

「なんだよ〜」

近藤はふてくされながらコンビニに入って行き、アイスを買って戻ってきた。

「おれの分は?」

「教えてくれたら買ってきてやるよ」

むかつくやつだな。絶対教えたくなくなった。

「いーよべつに。自分で買うし」

「じょーだんだって、買ってきたから、ほら」

そう言って近藤は俺にアイスバーを投げてきた。

その袋を開けて溶けかけているアイスを食べ始めた。

「あー、垂れてる垂れてる、拭けよ」

とかバカップルみたいなことをしながら近藤の家に到着した。


「ちょっと汚いな、わりい。片付けるわ」

家の中は言うほど汚くなく、むしろとても片付いている方だった。

しかもおれの元の家より2倍くらいはあるんじゃねえか?って思うくらいの外観だった。

「あ、荷物その辺にてきと〜に置いておいて。てかさー、夜飯どうする?ユキちゃんに作ってもらった方が良かったかなあ…」

「まああいつの飯やばいほどうまいもんな」

「え?そうなの?」

「知らなかったのかよ」

そういうと近藤は驚いた!という顔になりがっついてきた。

「え⁉︎え、え⁉︎なに?どういうこと?なんでユキちゃんの手料理たべたことあんの?」

「いや、なんでもなにも、俺神田とかと一緒に住んでる」

「はぁぁ⁉︎なにそれ!おまえ……ずるいぞ…」

そんな憎しみのこもった目で見られても俺は困るだけだ。

しばらく睨まれて、気が済んだのか「はあ、」と言い立ち上がった。

「じゃ、夕飯の買い出しに行きますか。なに作る?」

意外と家庭的なのか、カップ麺や出前で済ませるという考えはないらしい。

「野菜炒めとか?」

「じゃ、肉と人参とか買いにいくか。財布持て〜」

財布には明月さんからもらった五千円がはいっていた。


七時の空は明るくて、夜と言うにはまだ早かった。

近藤の家の近くにあるスーパーで野菜炒めに入れる野菜等と、適当にジュースを買い、家に戻った。

「結構値下げされてて良かったな、五百円って中学生からしたらかなり大きいもんな」

「だな〜。じゃあ作ろうぜ!」

張り切っている近藤の表情の奥には恐怖の色が見え隠れしていた。

時刻は20:23。すこし遅めの夜飯だが自分で作ったのが初めてなので達成感がはんぱない。

「おー、結構いい感じになったな」

「初めて作ったにしては上出来じゃね?」

「俺からみたら下手くそだけどな」

「うざっ」

「まあまあ、食べよーぜ。いただきます」

「いただきます」

初めて作った自分の料理を口に運ぼうとした、その瞬間。

「ガチャガチャガチャガチャ」

それは乱暴で怒りに満ちた手つきでドアを開けようとしていた。

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