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JOKERS  作者: 花札と鏡
プロローグ
4/9

第二話 霊

さてどうなるのか

「神田。あいつあのままだとやべえぞ。ゴーストどもに狙われる。うしろから着いていけ」


そんな会話は俺の耳には入ってこなかった。

それもそうだ。その会話は別の空間で行われていたことだった。


「夏帆、帰ってきてたなら三木くんに挨拶しなきゃ」

「いきなり現れたらびっくりされるからいやです」

「それはそうと三木くんは体質が異質よね。私たちとも違う。いろんなものを引き付ける。そんな体質」

「に…人気や運……。そ…そして…ゴースト…」


ゴースト。俺はまだ聞いたこともないものだった。


そいつが今、目の前にいる。


目の前というか、頭上。

大口を開けて笑みを浮かべながら頭から落ちてくる。

俺を目指して一直線。

一秒が三十秒くらいに感じた。

白い髪に真っ黒な顔。

体は首から下はタコの足ような形だった。


勢い良く落ちてくるそれは俺の頭を食いちぎろうとしているらしい。

確信はないが、直感がそう言っている。


かなり頭に近づいてきた。


「危ないっ…!」


食われる。


ドクン。とはっきり音が聞こえた。

心臓の音だ。

血液が流れる音だ。

生きていることを証明する音。

ふと右手を見ると血管が異様なほど浮き出ていた。


俺の右手はいつの間にかそいつの頭をつかんでいた。そして無意識に頭部を潰していた。

黒い血のようなものが飛び散り、俺の顔に付着した。

それを左手で拭って、見てみると左手の中でぐちゃぐちゃとうごいている。

指が顔にめり込んで、柔らかい感触が指に直接伝わる。

骨のようなものに指が触れているのがわかる。

脳はなにも命令してないのに勝手に手に力が入っていく。

ぐちょぐちょと嫌な音が目の前から聞こえる。

黒いゼリー状のものが地面に落ちて水たまりのようになって広がっていく。


ついに指と手のひらがくっついた。完全に手を握っていた。




目の前が白くなってくる。

やばい。倒れ……。


下でぐちゃぐちゃ動いている黒いものを見ながら俺は口元に笑みを浮かべていた。


ドサっ。





「あ…!起きた!」

「あれ…?おれ、今…?」

「よかった〜。やっと目が覚めた…。三木くん一週間も気失ってたんだよ?あ、そうだ。目が覚めたって学校に連絡しなきゃ」

そうか、俺一週間も気失ってたのか。

どうりで腹が減ってると思っ…

え…?

「ええええええっ⁉︎おれ一週間も寝てたの⁉︎ずっと⁉︎」

「うん。すごい心配したんだからね?」

「ここは…病院…?」

「そうだよ。三木くんのお母さんここで働いてるんだね」

「てか、神田がここまで運んだのか?」

「運んだのは私じゃなくて山城くんだよ。私力ないから」

神田は照れながらそう言った。

「三木くん、すごいね。あの力」

「え…?」

その時。俺の頭にあの時の映像が流れた。

「あ、あ、あ…」

おれはあれを殺した…?

殺し…た………?

「ああ…あああああ…ああああああああああああ」

「三木くん⁉︎三木くん⁉︎」

殺した…。殺した。殺した殺した殺した殺した殺した。

「俺は、あの黒い奴を殺したのか…?壊したのか?あいつはなんなんだ…?」

「あ、あれは、GHOST(ゴースト)っていって、この世界にいちゃいけない有害な霊なの。ほら、ハシが言ってたでしょ?いろんなものを引き付けるって」

冗談じゃ…なかったのか……。

「霊なのにさわれるのか…?あと、俺はあの時異様に力が強くなった気がしたんだけど、気のせいか?」

「あの害のある霊は人間を襲うの。襲うためには人間界にいなきゃいけないの。だから霊だの人間だの関係なしにさわれるの。あの力については、マンションに帰ってから山城くんから話すって言ってた」

「そうか…。わかった。で、もう帰ってもいいのか?」

「ちょっと検査したらもう帰れるみたいだよ」

俺は適当に医師の言う通りにして検査を終えた。

俺と神田とハシの三人で病院を出た。

「ユキ、透は俺らと一緒に住むってことにしといた」

「うん、ありがと」

「え?俺はいいんだけど、母さんに許可もらわないとさすがにまずいよ」

「大丈夫、ハシが誤魔化しといたから」

「あー、そうなんだ。まああの人ゆるいからな」


そんなこんなで家に着き、いろいろと必要な荷物を三人で持ってマンションへ歩いて行った。


〜マンション

「よぉ、やっと起きたかこのねぼすけ。どんだけ寝たら気がすむんだよ」

405号室に入ると山城さんにそんな言葉で歓迎された。

「うわー、重そうだねーそのダンボールたち」

茜さんが山盛りの枝豆を食べながら感心した様子で「ほぉー」と声を出している。


「早速なんだが、お前の先週のことについて話したいと思う」

俺は息を飲んだ。

自分の体が明らかにおかしかった。

知りたいと思ってもいるけど知るのが怖いとも思っていた。

「あれは簡単に言うと超能力だ。超能力ってのは生まれた時から持ってるものと、ある日いきなり目覚めるものがあるんだ。お前の場合、二つとも持ってるよな。いろんなものを引き付ける力とあの異様な握力。俺らはこれを(アビリティー)って呼んでる。俺が持ってる(アビリティー)は生まれた時から持ってる、「(アビリティー)を開花させる」っていう能力だ。俺の周りにいるだけで才が開かれるんだ」

「まじか…。それって超能力者がどんどん増えてくじゃん…」

「そう。茜が最初の犠牲者っていうか、俺の所為で(アビリティー)が開花したんだ。俺は能力の抑え方を茜と一緒に研究した。でもなかなかわかんなくてな、茜を入れて十人も犠牲者を出しちまった」

「その中に俺は入ってるのか?」

「お前の場合はGHOST(ゴースト)に襲われそうになったからな、それで目覚めたんだ。俺の能力じゃねえ」

「なるほど、そういうことか。わかんないけどわかった」

「あと、俺らはいつもは怪奇現象の謎を解いたり、都市伝説を確かめたりしてる。失踪した人を探したりもしてるかな。まあそんな感じでゆるくやってるから緊張すんなよ」

「わかった」

「で、お前が住むことになった部屋は405なんだが、よかったか?ここだと6時くらいから406のやつらがくるから狭くなるけどいいか?」

「ここで大丈夫」

「んじゃ、お前はあそこの洋室だからな。中にあるものは適当に捨てていいし、位置を変えてもいい」

山城さんはドアを指差しながらそう言った。


早速俺は自分の部屋を作った。

机にパソコンを置いて元からあったベッドの位置を少し変えたりして自分の部屋が完成した。


今日からこの人たちと仲良くやっていけるかという不安はあまりなかった。

どちらかというと楽しみだった。



俺たちの日常は俺がGHOST(ゴースト)に出会ったあの日から、崩れ始めた。


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