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Salvation!  作者: フォルネウス
第二章 学園の頂点を目指して! 
10/10

2話 絆祭が意味するもの

 

 放課後…

 飛鳥は地獄のトレーニング&地獄の組み手を終えた後…一枚の紙とにらめっこをしていた

 それは来栖事件が起こる前に千尋に渡された一枚の紙

 提出期限まで一週間あるが、飛鳥は未だに悩んでいた

 流れでアキラには参加すると言ったのだが、実際に参加するとなると度胸がいる

 学園でチームを組んでいる猛者たちがこれから相手となると、飛鳥は自分が足を引っ張り、みんなに恥をかかせてしまうのではないかと少ししり込みをしてしまうのだ

 

「はぁ…どうしたら…」

 

 飛鳥はため息をつきながら、後ろに倒れこむ

 天井を眺めつつ、大きく深呼吸をする…

 去年参加すらしなかった飛鳥は、まったく絆祭の内容を知らなかった…

 絆祭は自由参加形式

 自由参加ではあるが、その後の進路にも絡んでくるため、よほどのことがない限り、一日目の普通のどこの学校でも行われている体育際のようなイベントには必ず参加する

 二日目・三日目のシングルサバイバルや4日目・5日目のチーム戦はその後の進路や内申点が一日目のイベントよりも稼げるが、危険度も上がり、参加する人間はよほど真剣に進路を考えている人間や戦闘狂、自分の腕試しなどなど…よほどの目的がない限り参加はしない

 ちなみに、アキラのチーム【Evolution】は全員参加で全日程に参加するとのこと…

 飛鳥自身…二日目三日目のシングルサバイバルには何があっても参加しないでおこうと誓った瞬間でもあった

 勇やその妹の楓から、あまりいい感情を抱かれていないらしく、真っ先に狙われるということを飛鳥は理解していたからだ

 勇はいつものことだが、楓にいたっては、この前ご飯をご馳走したら、無言でにらまれたのである

 

「ふぅ…どうしたらいいのやら…」

 

 それに参加するとなると自分だけの問題ではなくなるのである…

 チームを組んでいない人間は、参加した場合、他のシングル参加の人間とチームを組まされることになる…なぜなら絆祭はチームで得点を競い合うことになるのだ

 つまり、絆祭に優勝するということはそのチームが学園の頂点に立つということになる

 それをきっかけにチームを組んだという事例もあるくらいである

 だからこそ、チームを組んでいる人間はおのずと自分のチームで参加することとなるのだ

 ただ、参加表明の場合、自分のチームメイト全員の署名が必要となる

 それがすべて集まってから、参加が認められ、参加することとなる

 ちなみにSalvationのもらった書類には既に、軌条唯、白銀玲羅、カイル・フォールデン、白銀茜と署名は集まっている…

 つまり、チーム戦に参加するという過程なら、どこからか、助っ人を募集する以外では、渋っているのは飛鳥のみということになるのだ…

 

「はぁ…迷っているのは結局僕だけか…」

 

 飛鳥は迷った気持ちで参加をしても他のメンバーに迷惑をかけるだけだと思い、飛鳥は今月出たチーム費によって買った、執務用デスク、飛鳥、カイル兼用分の引き出しの中にしまうと、部屋を出て、トレーニングルームへと向かう

 

 

 

 

 

 飛鳥は地下のトレーニングルームに到着すると大きく深呼吸をし、真っ白なトレーニングルーム部屋の中で…

 

「動体視力メニュー水樹飛鳥仕様 レベル10」

 

 飛鳥は一人そう口にした瞬間、床から出てきたコードによって繋がれた枷が出てくると、飛鳥の両腕、両足を拘束する

 拘束されはしたが、動ける分のコードの長さは用意してある

 そして、全方位の壁からは砲門が現れ、いたるところから光の球体が放たれる

 速度にして80キロ…飛鳥はギリギリまで待って回避する

 目の前…視界に入り、ものの0.5秒…光の弾と飛鳥の顔との間は数センチ

 だが…

 

「ぐっ!!!!!」

 

 飛鳥は回避した瞬間、体に電流が流れ、飛鳥の動きが鈍る

 その途端、光の弾がいくつも直撃し、室内は赤く発光し、訓練は強制終了となる

 レベル9まではクリアした飛鳥だが、レベル10になった途端、一瞬で強制終了となる…

 Salvationの中でスピードタイプでもある唯はこのレベル10を肩慣らしでしていた

 しかも100発すべて被弾なしでクリアを飛鳥の目の前でしたのである

 それを見てからだと、飛鳥は自分の才能のなさに打ちひしがれるのである

 部屋の中心に座り込むと、同時に飛鳥を拘束していた枷は外され、飛鳥は自由の身となる

 

「少しは成長したと思ったんだけどな…」

 

 飛鳥はエミリアと対峙したときの異能の開放感…

 それがまったくなく、まるで何かに制御されているような感覚が今残っていた

 あの時はまるで無尽蔵のように溢れ出る異能力に感動すら覚えた…もう無力じゃない…誰かを守れる力を手に入れたんだと…

 ただ、そこまで考えて、飛鳥は冷静になる…

 

「何も反省してないな僕…」

 

 力だけを求めたとき…また茜の時のように傷つける可能性が生まれることを思い出す

 自分にはわからないがその可能性を秘めている…血のように赤く変化する眼…その状態になった瞬間、飛鳥は破壊行動に囚われる…

 そう考えると自分は今の力がない状態で何とかしなければならない…

 

「はぁ…動体視力メニュー!!水樹飛鳥仕様 レベル10!!!」

 

 飛鳥は立ち上がり、叫ぶと再び動体視力強化訓練を始めた

 学園の強制下校時間になるまで、飛鳥は訓練を続けるのだった

 

 

 

 

「まったく…お前は無茶をする…」

 

 その結果、トレーニングルームで倒れているところを千尋に発見され、マンションまで車で送ってもらう事となった

 呆れる千尋に飛鳥は苦笑いを浮かべることしか出来なかった

 ちなみに千尋はお金の節約のため、電車通勤から、車通勤に変更…そのため、現在飛鳥を送るということも出来る…これも千尋の目的の一つでもある…これで飛鳥の護衛なども出来るわけである

 

「で…何を悩んでいるんだ飛鳥?」

 

 千尋の問いかけに飛鳥は思わずビクッと肩を震わせる

 千尋はその瞬間、ため息をつき…

 

「話してみろ飛鳥」

 

 千尋の言葉を聞き、飛鳥は俯き、悩む…だけど…

 

「わかりました…話しますよ」

 

 千尋も仲間…隠し事をして、エミリア事件の時のようにばらばらになるのはごめんだ…

 だからこそ飛鳥は隠すこともなく話すことを決意する

 

「本当に僕は絆祭に参加していいのか迷ってます…力がなければ足を引っ張る…でも僕にはわけのわからない破壊衝動がある…だから、力がない状態で何とかできないかなって考えたけど、やっぱりどうにもならなくて…僕にはみんなに匹敵する身体能力もない…みんなに匹敵する異能もない…想いの力だけではみんなを守れない…足を引っ張るばかりだから…」

 

 素直に千尋に答えると、信号で止まると同時に、千尋は飛鳥を真剣な表情で見据える

 

「自分の力を信じられないなら出るな…」

 

 そして、はっきりと千尋は飛鳥に言放つ

 飛鳥はその千尋の言葉を聞いた瞬間、ズキッと心が痛む

 

「信じられるわけがない!!!だって僕の力は茜の足を奪った!!!僕の力は唯を襲った!!!!僕は…僕は!!!!!」

 

 千尋に叫ぶ必要はなかった…だが、我慢できなくなり、自分に対しての苛立ちを千尋にぶつけてしまった

 罪悪感から、千尋から視線を合わせることが出来なくなる…

 千尋はそんな飛鳥の心を察して、飛鳥の頭に手を乗せ、優しく撫でる

 

「構わない…私こそすまなかった…お前にとって力を信じられるか信じられないか…過去のことを考えると当然のことだったな…」

「いえ…」

 

 ただ、千尋の言っていることは間違っていないと飛鳥は思った

 自分の力を信じているからこそ、自分の真価を発揮できる

 だが、信じられなければ結局疑うばかりで何も出来ない…

 飛鳥はそれをちゃんと理解している

 だからこそ、飛鳥は、唯たちには悪いとは思ったが、参加しないことにしようと考えた

 だが…

 

「少し提案がある、明日明後日、他のチームのトレーニングに参加しないか、飛鳥?」

「え?」

 

 千尋からの提案に飛鳥は首を傾げることしか出来なかった

 千尋が何を考えているのか、飛鳥にはわからなかった

 自分の力を信じられなければ出るなという言葉、それと180度違う、まるで自分に自信を持てるようにセッティングするような他のチームとトレーニング

 飛鳥は戸惑いながらもコクリと頷く

 頷く飛鳥を見ると、千尋は満足げに頷き、信号が青になると同時に、マンションに向けて帰路に着いた

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 翌日の放課後…

 

「さぁ!トレーニングに行くよ飛鳥くん!」

 

 飛鳥は千尋に誰のトレーニングに行くかどうか言われなかった

 ただ言われたのは放課後迎えにきてからのお楽しみというもの

 トレーニングに行くということは、了承した…しました…

 だが、迎えに来たのが、2学年のプリンス 閃条アキラと2学年の絶対零度 朝霧勇の2人となれば話は別である

 飛鳥は2人が来た瞬間、千尋のことを恨んだ…

 これじゃあ自信をつけるどころか、どんどん自信を無くす一方である…

 なんせ異能を扱う技術、戦闘技術のナンバー1とナンバー2なのだから…

 アキラが唯一この学園で引き分けた相手はカイル・フォールデンで、朝霧勇が引き分けたのは同じ2学年のデュアルスキル持ち相手にしたときである

 全校生徒の中ですら、二人はトップクラスに入る実力を持っているのだ

 

「美琴の頼みだから仕方なしだ…ちっ…めんどくせぇ…」

 

 飛鳥は満面の笑みを浮かべるアキラに背中を押され、アキラと勇と共に、飛鳥はミッションメイト校舎へと向う

 飛鳥がいたアキラと勇に対してキャーキャー言っていた女子達のいる教室から出る

 そうしていると…

 

「飛鳥?」

 

 廊下に出ると唯と玲羅が飛鳥の状況を首を傾げながら、見ていた

 状況からして、飛鳥とミッションメイト校舎へ向かおうとしていたところなのだろう…

 だが…

 

「ごめん唯、玲羅!僕今日アキラくんと朝霧くんたちのチームの見学に行くから、今日いけないんだ!」

 

 飛鳥は千尋の面目を立て、さらに千尋の飛鳥へ何を伝えたいのかという目的もしりたいということから、アキラと勇のチームに行くと唯と玲羅に伝える

 それを聞いた唯と玲羅は立ち止まり、驚いた表情のまま、飛鳥と、さわやかな笑顔で手を振り、飛鳥の背中を押すアキラの姿、めんどくさそうに視線を合わせようともしない勇の三人を見送ることしか出来なかった

 

「何か知っているとしたら…」

「千尋先生ですね…」

 

 そして、唯と玲羅の2人はため息をつき、飛鳥の後を追うこともなく、職員校舎へと向かうことにした

 

 

 

 

 

「どうぞ♪ここがEvolutionの私室だよ♪」

 

 飛鳥はアキラに案内されて入ったのは2001号室

 チーム【Evolution】に与えられた私室

 室内は同じ間取りではあるが、内装はぜんぜん違った

 壁にはホワイトボードが設置されており、ミッションの打ち合わせをするのに使用しているのだろう…使い古されているのが理解できる

 中央にはまるで会社で良く見るようなデスクを六つを合わせた状態で配置してあり、まるで会議室を思わせるような私室だった

 ただ、それと相反するように壁際にはいくつかシェルフが設置されており、娯楽用品がいくつか置いてあった

 主にゲーム機やノートパソコン、観葉植物などが配置されている

 勿論シェルフの中央には40インチの液晶テレビが配置されている

 

「ふん…」

 

 歓迎してくれるアキラとは対照的に、勇は飛鳥を無視し、私室の中へと入っていく

 飛鳥も、アキラに招かれるまま室内に入ると、楓、エイジ、紗江、美鈴の四人の視線が飛鳥に集まる

 飛鳥はその瞬間、後退りそうになったが、ぐっと堪え、引きつった表情のまま…

 

「今日は…よろしくお願いします…」

 

 ペコっと頭をさげる

 そんな飛鳥を見たエイジは恥ずかしそうにペコっと頭をさげ、楓は無表情のまま頭をさげ、紗江と美鈴は笑顔で向かえる

 

「飛鳥くんはそこに座って?僕の席だから気にする必要はないよ♪」

 

 飛鳥は心の中で『いや、気にするよアキラくん…』と思いながら、向かいから楓に睨まれつつ、隣から勇に睨まれつつ、まるで拷問のようなそんな地獄を堪えることになった

 

 アキラはホワイトボードの前に立つと専用の黒マジックのキャップを外し、何かを書き始める

 アキラがでかでかとホワイトボードに書いた言葉に飛鳥は戦慄した…

 

【全員と飛鳥歓迎組手】

「全員と総当たり戦!!飛鳥くんは僕達と組手をして鍛えるよ!!」

 

 そして…

 

「よかったなぁ…水樹…」

 

 今まで見たことがない明らかに飛鳥を合法的にボコれることに歓喜している勇から肩をポンポンと叩かれ、飛鳥はまるで小動物のように震え始める

 そんな飛鳥にアキラは満面の笑みを浮かべ…

 

「大丈夫♪トレーニングルームじゃ狭すぎるから、異能デュエルスタジアムの使用許可もらってるから」

 

 的外れなことを言ってくる

 飛鳥はため息をつき、そんなアキラにツッコム気力もなく、机の上に突っ伏す

 そんな飛鳥の状況をつまらなそうに見つめる勇、無関心な楓、苦笑いを浮かべるエイジと紗江、我冠せずな美鈴、そんなすべてを温かく見守るアキラ…飛鳥は誰からも助け舟を出されることはなく、アキラが提案したEvolution vs水樹飛鳥が滞りなく行われることになった

 

「あぁ…生きて帰れるかな…」

 

 飛鳥は不安を抱きつつ、アキラたちと共に、異能デュエルスタジアムへと向かった

 

 

 

 

 

 

 飛鳥は異能デュエルスタジアムの更衣室にて、アンダーシャツにジャージの長ズボンに着替え、同じく着替え終わったアキラたちと共に、各々の武器を持ち、会場…武舞台に繋がる通路を真っ直ぐ進み、武舞台に出る

 すると…

 

「Evolutionをやっつけろ飛鳥~♪」

「頑張れ!!!!飛鳥~!!!」

 

 などなど無人のはずなのに声援が飛んでくる

 飛鳥、アキラ、勇、エイジは声がするほうに視線を向けると、視線の先には声援を飛ばす茜とカイルの姿、こちらに手を振る唯、見守るように見据えてくる千尋、スルーした状態で一人小説を読み耽っている玲羅の姿が視界に入ってきた

 

「もう!!!!これで逃げられないじゃないか!!!!!!」

 

 なんとか逃げるためにやり過ごそうと飛鳥は考えていたのだが、チームメイトが見ているということになれば、そうも行かない…

 

「仲間達にいいところを見せないとね♪」

 

 飛鳥の肩をポンポンと叩き、ニコッと笑みを浮かべ、武舞台に上がるアキラ

 

「ハッ…関係ねぇなぁ…」

 

 不敵な笑みを浮かべ、武舞台に上がる勇

 

「お手柔らかに…」

 

 オドオドとペコっと頭をさげ、武舞台に上がるエイジ

 

 飛鳥は武舞台に上がった三人を見て、苦笑いを浮かべながら、今自分が見下ろされている状況…この状況が正しい状況なんだろうなぁ…と飛鳥は思いつつ、武舞台へと上がる

 

「さて、まずは準備運動だね♪」

 

 ここに到着するまでに女性陣はいつも少し時間が掛かるということらしく、先に始めるということになっているとアキラから説明を受けた

 だからこそ、飛鳥は先に準備運動ということで、飛鳥は軽い体操をしようとしたのだが…

 

「ハッ!!!!!」

「ふん!!!」

 

 アキラが鞘に収めた状態の刀を腰元に構え、居合いの態勢をとった瞬間、鋭い一撃を勇に向けて放ち、それに対抗するように勇は起用に二本の小太刀を鞘から抜き、小太刀をクロスさせることでアキラの一撃を防御する

 勿論それを見た飛鳥は呆然と立ち尽くす…

 確かに2人が振りかざしているのは本物と重さを似せた模造刀…つまり本物の刀ではないのだが、2人の表情は真剣な本気の目…あれ?準備運動ではないのですか~?と飛鳥は心の中で思う…

 飛鳥がそんなことを考えているのに気付いたのか苦笑いを浮かべたエイジが…

 

「驚きますよね…アキラさんと勇さんはいつもこうなんです、こうすることによって戦いの感覚を多少身につけられるし、軽い組手で使う筋肉を効率よく肩慣らしできるということなので…」

 

 説明をしてくれる

 ただ、理にかなっているし、否定などする気はないのだが、飛鳥としては少し勘弁してもらいたい準備運動である…

 

「ほら!エイジと飛鳥くんも!!」

「「ふぇっ!!!!?」」

 

 そして、飛鳥とエイジは立ち尽くしていると、アキラからとんでもない一言が飛んでくる

 

「そんなやつ倒しなさい飛鳥!!!!」

 

 さらに、小説に読み耽っていたはずの玲羅からの思わぬ一言…

 飛鳥は「そんなやつ」という言葉を聞いて落ち込むエイジを慰めようと近づくと…

 

「エイジ!!!落ち込む暇があったらそんな女男伸しちゃいなさい!!!!私が許す!!!」

 

 武舞台の飛鳥たちが出て来たところとは反対側にある出入り口から出てきた美鈴の「そんな女男」という言葉に、今度は飛鳥がへこんでしまう

 そして、観客席の方と出入り口にいる玲羅と美鈴のにらみ合いが始まった

 当事者でもないに関わらず、仲間により、飛鳥とエイジはアキラ式準備運動をする羽目となった

 

「行きますよ…水樹先輩…」

「うん…エイジくん…」

 

 2人はため息をつき、少しだけ気合を入れなおすと、エイジは模造クナイを一本手に取り、もう片方の手で忍刀の模造刀を構え、飛鳥は模造刀のガンブレードを構える

 そして…

 

「っ!!!!?」

 

 飛鳥は驚愕する…

 自分と性格は近い人物だと思っていたから、少し油断していたのだろう

 だが、戦闘能力は明らかに異質だった…

 通常の一般生徒とは違い明らかに群を抜いている…簡単に言えば社会に出て戦闘ミッションをしても充分に通用するレベル…

 気付くと距離を詰められ、クナイによる攻撃が飛鳥の顔面目掛け迫っている…

 

「うっ!!!?ハッ!!!!!」

 

 動体視力を鍛えていなければ、攻撃を見抜き、回避することなんて出来なかっただろう

 飛鳥は完全に気を引き締め、ガンブレードを両手で握るとそのまま横薙ぎにエイジに斬りかかる

 だが…

 

「…………」

 

 エイジは跳躍し、軽々とそんな飛鳥の攻撃を回避し、飛鳥の背後に回りこむ

 そして…

 

「くっ!!!うあっ!!!!?」

「詰みです水樹先輩…」

 

 後ろから首元に模造忍刀を突きつけられ、背中のちょうど脊髄辺りにクナイを突きつけられることで、飛鳥の完全な負けを突きつけられる

 いつもの唯やカイル、千尋との組手のように下級生に完膚なきまでの負けを突きつけられた瞬間だった…

 

「さすがEvolution…」

 

 飛鳥は苦笑いを浮かべつつ、Evolutionの噂通りの実力に感服するしかなかった

 なにせ、異能を使わない状態でのこの練度の高さだ…両方ない飛鳥にとっては感服するしかなかった

 

「いや…お前が弱いだけだカス…」

「ΣΣプギュルプ!!!!?」

 

 だが、次に飛んできた勇の言葉に飛鳥はあまりのことに変な声をあげてしまうほど、落ち込み、地面にヘタレこみ、半泣きになることしか出来なかった

 

「まぁまぁ勇?でも確かに飛鳥くんは実力が足らないかな?エイジは優しいから、僕や勇とやるときより手を抜いてるし、社会にでてミッションをすれば、これくらいの体術を繰り出す人間はたくさんいるよ?」

 

 アキラの言っていることは間違いない

 本気の彼らの体術という意味ならば話は別になるだろうが、今の手加減している状態の彼らの実力ならば、飛鳥が考えている以上に多いだろう


「おいアキラ、そこのカスは見学でいいんじゃねぇの?正直邪魔だ…」

「うっ…」

 

 飛鳥は思わずへこみそうになるが、観客席の方から…

 

「アイツ殺す…」

「手伝うわ玲羅…」

 

 などという白銀姉妹の姿が視界に入り、飛鳥は無理矢理笑顔を作り

 

「そうだね、朝霧くんの言うとおりだし、僕は見てるよアキラくん♪っへ!!?」

 

 飛鳥は早々に武舞台から降りようとする

 しかし、アキラは飛鳥の首根っこを掴むと真剣な表情を浮かべたまま、勇を見据える

 

「勇、そのくらいにね?僕は飛鳥くんを過小評価しない…飛鳥くんは軌条先輩を助け、君の大好きなASUを助け、Sランク危険人物でもあるエミリア・A・トラウムの部隊から生き残った…君の言うカスがそんなことできるわけがない…それに…」

 

 アキラは最後に何かを言いかけ、首を横に振ると勇とすれ違い、武舞台の中央に立つ

 

「さて、始めるよ?今飛鳥くんは僕達Evolutionの一員と僕は考えている、だからたとえ勇でも飛鳥くんをのけ者にすることは僕が許さないよ?」

 

 そして、アキラは最後まで自分の考えを言い切る

 飛鳥は思わず、アキラの姿に見入ってしまった

 これが本当のリーダーなんだ…と飛鳥は思った

 勿論、アキラの言葉を聞いた勇はため息をつき、武舞台から降りる

 それを見たアキラは笑顔を浮かべ、武舞台から降りる

 そして、飛鳥も降りようと考えたが、エイジが降りたところで…

 

「第一回戦、かえちゃんvs飛鳥くん♪」

 

 アキラの掛け声と同時に、武舞台に楓が上がってくる

 飛鳥は固まっていると、500mlの水の入ったペットボトルを楓は蓋を開けるとボトボトと武舞台へとこぼしていく

 観客席で見ていた唯たちも、楓のやっていることが不思議に感じた…だが…

 

「水樹先輩…勝ったら、毎晩アキラたちの舌を唸らせてる貴方の献立教えて…」

「へっ!!!?いや…それくらいなら…いつでも…いぃっ!!!?」

 

 暢気なことを言っているようで、楓が作り出したのは水を自在に操り作り出した大鎌…

 飛鳥は、返事をしようとした瞬間、楓のあまりの威圧感に驚愕し、後退る

 まるで、飛鳥から献立を教わることに命を懸けているかのような…

 

「約束、絶対に負けない…アキラに一生美味しいご飯を食べてもらうためにも…」

「ん?」

 

 楓は首をかしげているアキラを余所に、両手で持った大鎌を後ろにそらし、低い態勢のまま、飛鳥と距離を詰めるために駆ける

 飛鳥は素早く銃形態に変形させ、訓練弾を楓に向けて放つ

 だが…

 

「甘い、まず銃弾を撃つなら立ったままでなく動いた方がいい…」

「っ!!!」

 

 元々水の大鎌は楓が大きく振ると同時に刃が伸び、楓を護るように広がり、銃弾を弾き返す

 飛鳥は帰ってきた銃弾を横に飛び退くことで回避をする

 転がり態勢を整えると同時に立ち上がると、もう懐には…

 

「回避する時は必ず追い討ちのことも考えて、先読みして動く」

「うあああああああああああああっ!!!!!!!」

 

 楓がいて、飛鳥の首元には水で形成された大鎌が突きつけられていた

 そんな事実を理解した飛鳥は情けなく驚愕し、尻餅をつく

 観客席の方からは千尋、玲羅の2人のため息が聞こえ、飛鳥は思わず恥ずかしくなり、顔を真っ赤にしたまま、俯く

 

「今日アキラの家に行くから、料理を教えて…」

「はい…」

 

 飛鳥はただ、能力でただの水に戻し、ペットボトルの中に入れる楓の後姿を見ながら、改めて、自分の実力とEvolutionの実力の差に驚愕するばかりだった

 唯や玲羅、カイル、茜なら…こんな情けない負けはしないんだろうな…と思いながら、また立ち上がる

 

「じゃあ私は何をしてもらおうかしら…」

「ふぇっ!!?」

 

 すると、次に紗江が楓と入れ違いで武舞台に上がってくる

 何故かいつの間にか戦いに負けたら何かをするというルールが出来ているらしく、飛鳥は驚愕するも、お姉さん気質溢れる清楚な笑みを浮かべる紗江に飛鳥はあたふたしていると

 

「私が勝ったら、ショッピングに付き合ってもらっても構わないかしら?」

「ΣΣうぇっ!!!!!?」

 

 飛鳥は紗江からのあまりの申し出に驚愕する

 そして、観客席の方から、唯の黒笑、玲羅のジトっとした視線、茜とカイルの期待するような視線が降り注ぎ、飛鳥は観客席をまったく見れなくなった

 

「さて、始めるわよ?」

「は…はい!!」

 

 飛鳥は観客席のことばかりに気をとられ、気付くと視線の先にはアキラと同じ居合いの構えをとる紗江の姿があった

 もちろん気を取り直し、飛鳥もガンブレードを両手で持ち、構える

 その瞬間…

 

「まずは異能なしからよ…」

「うっ!!!!?」

 

 一瞬、鞘に納まっていた刀の刃が少し見えた瞬間、気付くと紗江は動き始め、見る見るうちに近づいてくる、そして、数秒過ぎると、飛鳥の持つガンブレードと紗江の刀は互いに火花を散らしぶつかり合っていた

 決して飛鳥が意図して防御をしたわけではなく、紗江はわざと飛鳥の構えるガンブレードに目掛けて打ち込んできたのだ

 

「打ち込んできてもいいわよ?」

「っ!!!!」

 

 そして、紗江の挑発に飛鳥のプライドは少し刺激され、紗江を力任せに突き飛ばすと両手で持ったガンブレードを袈裟斬り、下段、上段、中段突きと次々に繰り出す

 だが、紗江は飛鳥の斬撃をものともせず、次々と回避する

 最後の突きを飛鳥が放つと同時に刀で器用に受け流し、そのまま…

 

「私の勝ちよ…攻撃を繰り出した後の防御もまだまだね?」

「うっ…」

 

 紗江の最後の言葉を聞いた瞬間、飛鳥はあっさりと気を失った

 

 

 

 

 

 

 飛鳥が意識を取り戻すと視界に入ってきたのは…

 

「お疲れ様です、飛鳥?」

 

 唯だった…

 そこは異能デュエルスタジアムの選手休憩スペース

 飛鳥はそのベンチのところに寝かされ、唯に膝枕をされているところだった

 

「えと…僕…」

「紗江と戦って気絶したんだよ飛鳥くん」

 

 飛鳥は体を起こすとスポーツドリンクの入ったペットボトルをちょうど飲み干し、こちらに笑顔を向けるアキラの姿が視界に入る

 それだけではなく、EvolutionのメンバーとSalvationのメンバーがちょうど集まっていた

 

「そっか…僕また負けたんだ…」

 

 飛鳥はため息をつきながら、アキラに言葉を返す

 負けるにしても、少しくらいは渡り合いたいと考えていたが、それほど甘くはない…さすがは2学年最強チームとして名高いだけはある

 

「水臭いよ飛鳥?女の子の前でかっこつけたいのはわかるが、私にくらい言ってくれてもいいんじゃないか?」

 

 そんなことを考えていると壁に持たれかかりながら、紙パックに入った冷えたイチゴオーレを投げてくるカイルに飛鳥は気付き、慌てて受け取る

 飛鳥は、カイルの言葉に顔を真っ赤にしながらぶんぶんと凄い勢いで首を横に振る

 

「違うよ!!!!僕なんかかっこつけても仕方ないし…僕こんな見た目だし結局かっこつかないし…」

 

 そして、どんどん飛鳥のテンションは下がり、最終的に俯き、へこみ始めた

 それを見た唯たちは飛鳥のそんな姿に苦笑いを浮かべてしまう

 いつものこととはいえ、こう何度もへこまれてはどう対処をしたらいいのか困るだろう

 で……

 

「大丈夫です♪飛鳥は可愛いですから♪ほらお姉ちゃんに甘えてください♪」

「まぁ可愛いのは同意…だけどくっつくことは許さない…」

 

 飛鳥がへこんでいるところに腕を組まれることにより、グレイトなお胸さまとハッピーなお胸さまの両腕に対しての攻撃に、顔を真っ赤にし、恥ずかしがる飛鳥を余所に両脇から視線の火花を散らす唯と玲羅…

 飛鳥は恥ずかしがったらいいのか、困惑したらいいのか困り、最終的にまたため息をつきへこむ始末…唯一の救いは腕に当たっている美人の胸だけだろう

 

「あぁ!!ずるいじゃあ私もん♪」

「あぅっ!!!!?」

 

 そして…最後のトドメに茜が後ろから飛鳥に抱きつき、後頭部にヤッフーッなお胸さまが全力攻撃を繰り出す…勿論慌てふためく飛鳥

 そんな様子をEvolutionの面々は…

 

「うわぁ…初めて見た…まさに水樹ハーレム…」

「くッだらねぇ…」

「アキラはあぁなっちゃ駄目…」

「愛されてるわね、水樹くんは」

「う…うらや」

「エイジ…今なんていおうとしたの?」

 

 それぞれ反応を示す…

 アキラの目隠しをする楓と目隠しをされても動じないアキラ

 即座にプイッとソッポを向く勇

 優しく見守る紗江

 羨ましいといおうとしたところを美鈴に睨まれるエイジなどなど…

 

「あはは!!僕ちょっと自主練習いってきまぁ~す!!!せっかくえと…あの異能デュエルスタジアムに入ったし!!」

 

 もちろんそんな状況で飛鳥が落ち着けるかといわれればNOである

 飛鳥は男ながらに少しだけ…大事なことだからもう一度言うが、少しだけ名残惜しいと思いながらも、少し強引にだが、飛鳥は三人からの【トライアングルハピネスアタック】から解放され、休憩室から出て行った

 

「ホント飛鳥はシャイだよね~普通の男の子なら、もっとって思う所なのに…」

 

 カイルが冗談めいた口調でそういうと、女性陣からの呆れた視線が降り注ぐ

 もちろん…

 

「「「「「最低…」」」」」

 

 という言葉を載せて…

 カイルは苦笑いを浮かべながら、スルーをし、カイルも部屋から出て行く

 それを千尋は見届けると、真剣な表情へと変わり、楓に寄り添われているアキラに視線を向ける

 

「で…飛鳥はどうだ?」

 

 千尋の問いかけにアキラは困ったように頬をポリポリとかき…

 

「ん~…とりあえず僕達と組手をしてたら、身体面は進歩はすると思うけど、やっぱり問題はメンタル面じゃないかな…と僕は思うよ?」

 

 千尋とアキラの掛け合いにさすがに唯と玲羅、茜の三人は首を傾げる

 何かしら今回の飛鳥が急にEvolutionのチーム訓練に参加するということに絡んでいることはわかるが、それ以上はわからない…何を聞いても千尋は話さないし、時間もなかったため、飛鳥に直接聞くということも出来ないでいる

 

「このままじゃ、本当に飛鳥は絆祭に参加しないつもりかもな…」

「えっ…」

 

 千尋の言葉に、唯と玲羅、茜の三人は驚愕する

 飛鳥が絆祭に参加をしない…

 つまりSalvationの参加は不可能となるということになる

 三人とも成績を考えているわけではない…飛鳥と参加できない絆祭を考えると驚きとショックで固まってしまう

 

「ありがとう閃条、本格的にメンタル面を鍛えるのは次の参加チームに任せるつもりだ、だから、ある程度和らげあと、閃条たちはとにかく飛鳥の身体面を鍛えてやってくれ」

「了解♪」

 

 アキラは千尋の言葉に笑顔で頷くと、勇たちと共に休憩室を後にする

 千尋も飛鳥を見届けようと部屋を出ようとしたとき…

 

「何故、飛鳥は絆祭に参加しようとしないの?」

 

 いつもとは違う無邪気な笑みが消えた茜の真剣な問いかけが千尋に降りかかる

 それを聞いた千尋の表情に一瞬戸惑いが浮かぶ…

 ただそれだけで茜は理解する…こういうときの茜の理解力はずば抜けている

 観察眼だけなら、周りを気にして生きてきた飛鳥やシンディ以上でもあるだろう

 

「自分には力がない…異能も私の足を焼いたその時から信じられない…自分の力が信じられない…でしょ?」

 

 茜の言葉に千尋は図星をつかれ、視線を逸らしてしまう

 そして、唯と玲羅も理解する

 今飛鳥の根本の迷い…力をつけようとする半面で自分の異能を信じられなく成長の妨げとなり、結果的に強くなる未来を想像できないでいることに…

 マイナス思考も絡んで、飛鳥は参加しようとしないことを…

 

「茜、絶対にアイツを立ち直らせる…だから気を落とすな…」

 

 千尋はそれだけ呟くと、休憩室から出て行く

 ただ、それを聞いても、暗くなった茜の表情は晴れない…

 友達に戻れた…でも、未だに飛鳥の心の中に古傷が巣食っている

 茜はそれを癒やしたいと思っても、飛鳥が傷つけた本人であるため、何を言っても逆効果になる可能性がある…だからこそ、何も出来ない…そう思い、一人休憩室から出て行った

 

「飛鳥たちを信じて待つ?唯…」

 

 取り残された玲羅と唯

 玲羅は真剣な表情で唯を見据えながら呟く

 それを聞いた唯は首を横に振り、真剣な表情で玲羅を見つめ返す

 

「いえ、そのつもりはありません、デリケートな問題といえど、私は飛鳥の姉代わりとして必ず支えます」

 

 そして、唯はしっかりとした口調で、玲羅に言う

 それを聞いた玲羅は満足げに微笑み、2人は休憩室をあとにした

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

「飛鳥!!!!回避行動の後、動きにムラがある!!!」

「っ!!!!!ぅああああああああ!!!!」

 

 武舞台の上では、カイルが放った衝撃波を何とか回避した後、再び立ち上がろうとすると再び衝撃波が直撃し、飛鳥は吹き飛ばされる

 

「さぁ…立つんだ飛鳥…」

「もちろん…はあああああああああああああああああっ!!!!」

 

 だが、飛鳥は立ち上がり、ボロボロになりながらもカイルに向けて駆ける

 カイルは迎え撃つといわんばかりに飛鳥に向けて駆ける

 カイルの放つ鋭い突きが飛鳥に迫り、飛鳥は最近鍛えたことにより、カイルの刺突を見切り、余裕を持って回避をする

 そして、逆手で持ったガンブレードをカイルの腹部に向けて、斬撃を繰り出そうとしたが…

 

「攻撃が単調すぎる…もう少しフェイントを使うべきだ例えば…」

 

 カイルは片手をガンブレードに向けて動かすと同時に衝撃波を生み、飛鳥はガンブレードを弾かれ、態勢が崩れると同時にレイピアを横薙ぎに振ると同時に飛鳥は再び吹き飛ばされる

 つまり、最初の刺突は飛鳥を攻勢に移すためのフェイント…異能でガンブレードを弾き、異能で飛鳥に大ダメージを与える

 飛鳥は歯を食いしばり、再び立ち上がろうとする…

 すると…

 

「シングルサバイバルなら!!このときが1番危ないよ!!!飛鳥君!!!」

「なっ!!!?っ!!!!!」

 

 背後から声が聞こえ、飛鳥は背後を振り返ると、アキラの居合いによる斬撃をギリギリでガンブレードで防御をする

 

「アキラ!!?」

「アンタも隙だらけだぜ?」

 

 そんな飛鳥の状況に驚愕するカイルに対しても、背後から勇の鋭い二本の刀から繰り出される十字を模るように繰り出された斬撃を繰り出し、カイルはバックステップをすると同時に地面に向けて衝撃波を生み出し、勇から距離をとる

 四人はそれぞれ目の前の相手に集中しようとしたのだが…

 

「全員甘いわね!!!!私がいることを忘れないことね!!エヴォリューション・ヴォルケーノ!!!レベルフレイム!!!!」

 

 上空に片手を翳し巨大な炎の球体を生み出した美鈴が観客席の方から叫ぶと同時に、四人は視線をそこに向け、驚愕し、そして、放たれた

 それを見たアキラは三人の前に立ち…

 

「エヴォリューション・スカイ!!!!レベルガスト!!!!」

 

 強大な風を生み出し、全身で纏い、手を炎の球体に向けて翳す

 それと同時に炎と風がぶつかりあい、互いに相殺され、掻き消える

 

「今だ!!!」

 

 そんな強大な力と力のぶつかりあいに飛鳥は見入っていると、カイルの叫びに飛鳥はあたふたしていると、カイルはアキラに向けて刺突を放つ

 

「あめぇんだよ!!!!エヴォリューション・アイスバーグ!!!!レベルへイル!!!!」

 

 アキラは振り返り、カイルに対抗しようとしたが、カイルを囲むように地面を這う氷柱が生まれ、完全にカイルの攻撃はアキラに届くことはなかった

 そして、アキラは氷柱に囲まれ身動きが取れなくなったカイルを狙うため、カイルに向けて手をかざす

 勇も一番最初にカイルをダウンさせようと攻勢に移ろうとする

 

「カイル!!!!!っ…」

 

 飛鳥はカイルにの周りにある氷を溶かそうと異能を発動させようとした

 だが…脳裏によぎったのは操られているときに見た

 鏡に映ったあの姿…

 

「………っあああああああああああああああああああ!!!!」

 

 だからこそ、飛鳥はカイルの前にかばうように立ち、アキラの放ったエヴォリューション・スカイ レベルゲイルをただ受けることしかできなかった

 それを見たアキラは驚愕し…

 

「戦闘中断!!!!!勇!!!!カイルを開放して!!!」

 

 戦闘中断を命令し、飛鳥に駆け寄る

 飛鳥は氷柱に直撃し、額から血を流し気を失っていた

 アキラは飛鳥なら、異能を全力で開放すれば、相殺できるほどの風力には調節していた

 しかし、飛鳥は異能を発動することなく、ただ、カイルをかばうことしかしなかった

 

「飛鳥!!!」

 

 勇の異能から開放されたカイルは飛鳥の現状に驚愕し、飛鳥を抱えると…

 

「医療センターに向かう!軌条君たちが着たらそう伝えておいてくれ!!」

「わかったよ!!僕たちも後で向かう!!」

 

 医療センターにむかった

 アキラも飛鳥のことを気にしているのか、手分けして、唯たちを探すことにした

 

 

 

 

 

「ん…あれ?」

 

 飛鳥は気づくと最近見慣れていたベッドの上にいることに気づく

 医療センターの病室である

 頭には包帯が巻いてあり、どうやらカイルを庇った後、医療センターに運ばれたのだろう

 飛鳥は体を起こすと、真っ先に視界に入ってきたのは…

 

「気がついたみたいだね…」

 

 真剣な表情を浮かべるカイルの姿だった

 その他にも、心配そうな表情を浮かべる唯

 なきそうになっている玲羅

 安心する千尋と茜

 チームのメンバーが勢ぞろいだった

 

「みんな…飛鳥としばらく二人にしてくれないかな?」

 

 だが、飛鳥は全員と話す暇もなく、カイルが唯たちに飛鳥と二人で話したいという風に退室をお願いする

 それを聞いた飛鳥は首を傾げるも、ほかの全員は納得し、カイルと飛鳥を二人きりにする

 最後に出て行った唯は一度振り返り、飛鳥に視線を向けるが、自分が干渉できる問題ではないと考え、部屋から退室し、扉を閉める

 

「飛鳥…なぜ異能をつかわなかったんだい?」

「っ…」

 

 二人きりになると同時にカイルが飛鳥にぶつけたのは、【異能を使わなかった】という問題

 あの場合、飛鳥がカイルの氷を溶かしていれば、カイルは衝撃波でアキラの風を相殺するなり、勇を吹き飛ばすなりできただろう

 それだけではなく、飛鳥が庇って入ったとしても、異能を発動させたなら、アキラの風を相殺するか、もしくは緩和することもできただろう

 しかし、飛鳥は両方しなかった…

 つまり何らかの理由が引っかかり、飛鳥は異能を使わなかった

 

「私の目は節穴じゃない…飛鳥…自分の異能が…怖いのかい?」

「っ!!!!!!!!」


 飛鳥は完全に図星をつかれた

 飛鳥はうつむき、カイルの顔を直視できない

 カイルはため息をつき、飛鳥をしっかりと見据える

 

「君にとって私はそれくらいの存在なんだね…」

 

 そして、カイルの悲しげな声が飛鳥の耳に届く

 飛鳥はカイルにそんな言葉を言わせてしまい、胸に罪悪感が生まれる

 カイルのいっていることはわかる

 自分はそれほどまでに信じられていないのか?

 自分に背負わせてくれたのではないのか?エミリア・A・トラウムとの戦いのときに命を背負ってくれたのではないのか?

 なのに…今回はなぜ自分を信じてくれかったのか?

 飛鳥もわかっている

 

「ごめん…カイル…」

 

 だが、飛鳥は一言謝るとベッドから降りると、立っているカイルとすれ違い、部屋から出て行く

 カイルは自分の無力さに、壁に背中を預け、うつむく

 気づくと頬を伝い…何年ぶりに流したかわからない涙があふれ始めた

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

「ただいま…」

 

 飛鳥は家に帰ると自分の部屋に入り、ベッドの上に倒れこむ

 そして、その瞬間から自己嫌悪が始まる

 なぜあの時カイルに「そんなことない!!!僕にとって君は大切な友人なんだ!!!」といえなかったのか?

 なぜ、こんなにも臆病でマイナスなことばかりが頭の中をよぎるのか…

 近くにあったリスリーくんのぬいぐるみを手に持つと思い切り怒りに任せて投げ…

 

「………」

 

 ようとしたのだが、そこで飛鳥は気づいた…自分の部屋ではないということに…

 自分の部屋にはリスリーくん…かわいいリスのぬいぐるみを置いてなんかいない…

 むしろベッドの上においているのは目覚ましくらいでそのほかには何もおいていないはず…ということ…

 

「リスリーくんは投げないでくださいね?私の大切な宝物なのですから」

 

 そして、入り口の方から声が聞こえ、振り返るとそこには黒い笑みを浮かべる唯とため息をつく玲羅の姿、苦笑いを浮かべる茜、帰ってきたばかりで事態を理解できていないシンディの四人がいた…

 つまり…

 

「玲羅…」

 

 玲羅が異能を使い、飛鳥をアキラたちの家ではなく、千尋の家に誘導したということ

 つまり、千尋も了承済みの千尋直々のミッションということになる

 

「千尋先生から今日は泊まれとの命令…後で会長も来る…」

 

 玲羅は悪びれた様子もなく、自分の部屋にかばんを置くため、自分の部屋へと向かった

 そんな玲羅に状況を理解するためなのか、シンディは玲羅についていった

 いきなりのことに飛鳥は戸惑いを隠せないでいると…

 

「飛鳥?まずはゲームをしませんか?意外に千尋先生もゲームハードを持っていまして、飛鳥が好きなものもあるかもしれませんよ?」

「ほぅほぅ♪つまりはギャルゲですな?」

「へっ?」

 

 唯からのゲームをするという提案が出される

 ただ、飛鳥の好きなゲームといわれた瞬間、茜のギャルゲという言葉に、唯が固まってしまったというハプニングは起きたが…

 

「ギャルゲはないけど、飛鳥の好きな蒼穹の世界はあるの確認した…」

 

 デザイン半袖Tシャツにジーンズという姿の私服に着替えた玲羅が参入したことにより、多少緩和された

 蒼穹の世界というのはSFファンタジーの世界を主観とした格闘ゲームである

 ちなみに飛鳥が自分の家にみんなが泊まりにきたときにカイルとやっていた格闘ゲームがこの蒼穹の世界である

 

「ではそれをやりましょう飛鳥♪」

「いや…僕は…」

 

 飛鳥は断ろうとしたが、茜とシンディの二人が飛鳥に近づき、腕を組むと強引に部屋を移動

 

「ちょ…僕は今そんな気分じゃないから…」

「美女四人に囲まれてそれはないんじゃないかなぁ~飛鳥~?」

 

 それでも飛鳥は断ろうとしたが、茜たちが聞いてくれることもなかった

 そして、リビングに到着すると、玲羅はゲームハードの準備を始め、唯は飲み物の準備を始めた

 飛鳥は人のいうことをまったく聞かない四人に少しイラッとし…

 

「だから僕はキャゥッ!!!」

「うへへ…やっぱり飛鳥はいいお尻をしてますなぁ…うへへ…」

 

 なんとか家に戻ろうと考えたが、茜のセクハラ攻撃により飛鳥、拒絶失敗…

 最初は触るだけだった茜はそのまま、顔面を飛鳥のお尻に埋めるということまではじめる

 もちろん飛鳥は…

 

「茜!!!!!!!!!」

「ワキャッ!!!!!!?」

 

 セクハラをしていた茜の頭に拳骨一撃食らわし、茜は頭をさすりながら、退散

 そんな状況に唯とシンディは苦笑いを浮かべ、玲羅はため息をつき、自分の姉に対しあきれる

 

「馬鹿姉はほっといて対戦しよ?」

「そうだね…」

 

 飛鳥は玲羅からコントローラーを受け取るとテーブルを囲むように配置してある、壁際に配置してあるテレビと向かい合わせの三人掛けソファの真ん中にすわり、玲羅はその左隣に座る

 シンディは「失礼します」と言ってから、飛鳥の右隣に座り、茜はあぶれたことにより、キッチン側の三人掛けソファの真ん中に座る

 

「飛鳥は誰を使うの?」

「ん…とりあえず爽歌(そうか)かな…」

 

 ゲームを起動し、2P対戦を選択

 そして、キャラクター選択画面に移ると合計18人のキャラクターがテレビ画面には映し出された

 飛鳥が選んだのはその中の黒髪ショートヘアのおしとやかそうな二本の小太刀を持った少女を選択

 対して…

 

「じゃあ私は火那美(かなみ)…」

 

 玲羅が選んだのはオドオドとしたいかにもマイナス思考そうな赤髪セミロングヘアのキャラクターを選択

 飛鳥は玲羅のキャラクター選択に疑問が浮かんだが、考える暇もなく、対戦の火蓋は切って落とされた

 飛鳥の操作する爽歌は軽快な動きとトリッキーな攻撃方法で、着実に火那美の体力を削っていく

 対して玲羅は堅実に防御をしながら、最小限のダメージに抑え、飛鳥の操作する爽歌の隙を縫って攻撃を繰り出す

 だが、玲羅の操作する火那美はこの蒼穹の世界の中でも最弱設定のキャラクターとされている

 そのため、もともとのパラメーターも低く、相当な上級者じゃない限り、勝ちを取れないという上級者向けのキャラクターなのだ

 対して飛鳥の操作する爽歌はスピードタイプを愛用するプレイヤーにはもってこいのスピードキャラ最強のキャラクター

 もちろんあっという間に飛鳥は一勝を手に入れることができた

 飛鳥は玲羅がなぜ火那美を選んだのか疑問を抱くまま、第二ラウンドが始まる

 

「飛鳥…これは私からのメッセージ…」

「え?」

 

 飛鳥は一瞬玲羅の言葉に気をとられ、隙を作ってしまい、飛鳥は何とか立て直そうとしたが、玲羅はそのまま、隙を突き着実にコンボをつなげていく…そして…

 

『っ…私は!!!!もう壊すためにこの力を使うんじゃない!!!守るため…大切な人を守るために使いたい!!!だから私はもう恐れない!!!!振り回されたりなんかしない!!!私が掌握する!!!』

 

 確実につなげたコンボから、超必殺技につなげ、火那美は獣のように変化した瞳を浮かべたまま、鋭い爪で爽歌に大ダメージを与え、一勝を飾る

 ただ…

 

「僕には…無理だ…」

 

 玲羅の言葉は届かず、飛鳥はコントローラーをテーブルの上に置くと、リビングから出、千尋の家を後にした

 それを見た玲羅は悲しげに視線を落とす

 

「まだまだこれからです!玲羅さん!!」

 

 そんな玲羅を見て、飛鳥の隣に座っていたシンディが玲羅の手を握り、元気付ける

 玲羅は優しく微笑みうなずくと、シンディの頭をなでる

 

「そのとおりですよ玲羅、あきらめたらそこで終わりです、私たちは飛鳥のチームメイトなんですから」

「うん…ありがとう、唯、シンディ…」

 

 玲羅はお礼を言うと笑みを浮かべ、唯が運んできたアイスコーヒーを受け取り、一口飲み、気持ちを整える

 

「よし、明日もがんばろう…」

「「はい!!」」

 

 そして、玲羅の掛け声とともに唯とシンディも満面の笑みで呼応する

 だが、一人茜だけは素直に笑えずにいた

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 結局、御泊り会はなくなり、カイルもアキラたちの家に帰ってきた

 ただ、飛鳥とカイルの中に会話はなく、飛鳥は一人部屋に引きこもり、カイルはリビングで生徒会の仕事をこなしていた

 

「飛鳥くんと喧嘩したんだって?カイル?」

「喧嘩じゃないさ…私がもう少し飛鳥の立場になって考えられたら起こらなかったこと…ただそれだけだ…あ…」

 

 テーブル席で向かいあうアキラとカイル

 それでも何かを忘れたいという風に書類の記入に集中するカイル

 そんなカイルの集中を途切れさせるようにアキラはひょいっとカイルの持つシャープペンを奪う

 あまりのことにカイルは呆然としているとアキラはやさしく笑みを浮かべ…

 

「僕にも経験あるよ…これは秘密にしてね?ばれると勇がすごく怒るから♪昔、小さいころに飛鳥くんとカイルみたいに勇と喧嘩したことがあってね?原因は僕が勇に信じてもらえなくて怒ったこと、勇が怖がって一人殻に篭った事…答えは二人で見つけないといけないからそのときどうしたかは教えないけど、僕はカイルと飛鳥くんに伝えたいのは、あきらめたら駄目ってこと…カイル?君は飛鳥くんに比べたらお兄さんなんだから、飛鳥くんをちゃんと支えないといけないよ?君が大切に思っているなら尚更ね?」

 

 それだけ言い残すと立ち上がり、リビングから出て行く

 カイルは頬杖をつき、まぶたを閉じ、思考をめぐらせる

 

「まったく…君たちよりも私はお兄さんなんだけどな…」

 

 カイルはため息をつくと、生徒会の書類を片付け、かばんの中にしまうと、飛鳥とカイルのために用意された部屋の扉を開く

 飛鳥はベッドの布団の中にもぐりこみ、自分の殻に閉じ篭っている状態

 

「飛鳥…聞いてなくてもかまわない…ただの私の決意表明だ、私は君のその殻を剥ぎ取ることをあきらめないよ…いつか、アキラと勇みたいな関係になれると私は信じている…おやすみ、いい夢を見て」

 

 カイルはそれだけつぶやくと、自分のベッドの中にもぐりこみ、眠りについた

 飛鳥の眠るベッドの方からすすり泣く声が聞こえる中…

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 翌日

 唯、玲羅、茜、カイル、シンディの五人は用事があるというメールと書置きがあり、飛鳥は一人登校した

 飛鳥は一人で登校した寂しさと昨日唯たちにかけた迷惑を考えると、朝から元気にというわけにもいかず、放課後までずっと上の空という状態で教室の自分の席に座っていた

 すると…

 

「水樹飛鳥ってどの子?」

 

 昨日のアキラたちと同じように飛鳥の名前を呼ぶ凛とした声が響き渡る

 そして、それと同時に男子からの殺意がこもった眼差しが、飛鳥に降り注ぐ

 飛鳥はその時点で女の子であるということを理解し、テンションの下がった状態で入り口の方へと視線を向ける

 するとそこには長い黒髪をポニーテールにしたグラマラスな体系の凛とした顔つきの少女が立っていた

 

「僕ですけど…」

「あら、うわさどおり冴えない顔してること」

「うぐっ!」

 

 そして、飛鳥との会話のキャッチボール第一球がこれである

 もちろん飛鳥はダメージを受けながらも、この呼び出しからして、明らかに千尋が選抜したチームで今日参加するチームであることは理解した

 だからこそ…

 

「今日はお願いします…」

 

 飛鳥は立ち上がると、その少女の近くまでいくと頭を下げる

 すると、少女はため息をつき

 

「嫌々だけど受けたからにはやるわ…」

 

 と本当に嫌そうに表情をゆがめ、飛鳥の手を握る

 そして、その瞬間…

 

「ふぇっ…」

 

 さっきまで教室にいたはずなのに、いつの間にかミッションメイト校舎の知らない部屋に移動していた

 そこはまるで誰かの部屋といわんばかりに、本棚がいくつも壁際にきれいに配置され、テーブル、テレビなどなど生活用品が配置されている部屋だった

 

「まだ誰もいないってことは…一年は授業が延びてるのかしら…待たせるとはいい度胸じゃない…」

 

 ただ…隣で凶悪な笑みを浮かべる少女に対して、飛鳥は今すぐ逃げ出したいという感情を隠すことはできなかった

 それを察してか、少女はため息をつき…

 

「私は深澄千佳(みすみちか)、今日一日貴方を預かることになったチーム【アストラルファミリー】のリーダーよ」

 

 普通に笑みを浮かべ、自己紹介をし、握手を求める

 飛鳥は何の抵抗もなく、千佳と握手をすると…

 

 

 

 

 

「ふぇっ!!!?」

 

 飛鳥の視界に入ってきたのは、自分の見知ったミッションメイト校舎の部屋…

 つまりはSalvationの私室になるのだが、ただいま、唯、茜、玲羅の三人が着替え中…

 グレイト・ヤッフーッ!・ハッピーの三種の双子山が白、ピンク、黒という色の下着に隠された状態であらわになっている

 もちろんどうしたかわからないが、突然飛鳥が現れたことにより、三人は固まってしまい、隠すことを忘れている

 飛鳥も突然のことに固まっていると…

 

「飛鳥…ラッキースケベもいい加減にしてください…」

「どうやって入ったかわからないけど許さない…」

 

 思考が回復してきた唯と玲羅が武器を構えた時点で飛鳥も思考を取り戻し…

 

「深澄さんの馬鹿ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!」

 

 飛鳥は叫びながら、部屋から逃走

 外で待機していたカイルは飛鳥が開け放った扉を回避し、飛鳥の逃げる後姿を見つめるまま首をかしげる

 

「なんで飛鳥…あぁ…なるほど…」

 

 そして、途中で飛鳥を回収する千佳を見つけ、カイルは納得する

 千佳の行き過ぎた悪戯だという事に…

 

 

 

 

 千佳の異能…テレポートにより、アストラルファミリーの部屋に戻ってきた

 

「僕を殺す気ですか!!!!」

「まぁそっちの方が楽になるわね…」

「肯定しないでください!!」

 

 当然飛鳥は乱れた呼吸を何とか整え、千佳に叫ぶ

 ただ、千佳は悪びれた様子もなく、飛鳥の言うことを肯定する

 飛鳥は千佳の美人とは反面の性格ブスさに絶望しながら、ため息をつき、今日一日生きてかれるかどうかに不安を感じるのであった

 

「うぃ~っす!あれ?もう来てたんだ、こんちわ♪」

「こんにちわ…」

 

 飛鳥が不安を感じていると、部屋の扉が開き、一人の青年が入ってきた

 明るい笑みを浮かべる金髪ショートヘアで横髪の跳ねた髪型をした青年

 

「俺は天宮(あまみや)シズル、えと先輩でしたっけ?よろしくお願いします♪」

 

 飛鳥はシズルから求められた握手に戸惑いを覚えてしまう

 なぜなら先ほど無警戒で千佳と握手をしたことにより、自分たちの私室に飛ばされ、ひどい目にあったばかりなのだから…

 

「あぁ…千佳姉と違いますから、俺の異能って普通の補助的異能ですし♪」

「う…うん…」

 

 シズルの言うことを信じ、飛鳥はシズルと握手をする

 そして、何も起こらないことに飛鳥は安心すると…

 

 

 

 

 

「ふぇっ!!?うぎゃっ!!!?」

「ぶるぎゃっ!!!?」

「ん?」

 

 気づくと、ミッションメイト校舎1階 ミッションコーディネーター用男子更衣室に飛ばされた飛鳥とシズル

 飛鳥とシズルの目の前で繰り広げられている光景は…

 

「お前たちこんなところで何してんだ?」

 

 黒のブーメランパンツのみという姿の王斬…

 すなわち筋骨隆々とした上半身を露にし、ブーメランパンツを穿いていながらも、ついたケツ筋がくっきりとわかるというなんとも男からすれば気持ち悪い光景が二人の目の前で繰り広げられているのだ

 もちろん、飛鳥とシズルは逆流しそうになる胃の内容物が戻らないよう、グッと堪え、そそくさと男子更衣室から出て行く

 

 もちろん出た先で千佳により回収された

 

「千佳姉…これ…先輩の歓迎になってねぇよ?」

「そう?いいじゃない私のデータでは水樹くんは尻フェチというデータになってるわよ?いいお尻見れたわね!」

 

 飛鳥とシズルは千佳の言葉にまた思い出してしまい、吐きそうになってしまう

 そして、飛鳥とシズルは耐え切れず、その後トイレに直行した

 

 

 

 

 

「さて、馬鹿二人が帰ってきたところで全員そろったし今日の方針を伝えるわ…」

 

 飛鳥とシズルは心の中で「誰のせいだ…」とつぶやきながらも、千佳から発表される方針を黙って聞くことにした

 ただ、飛鳥として落ち着かないのは…

 

「…………♪」

 

 目で口説いてくる髪の毛を逆立てたつり目の青年 金居孝也(かないたかや)の存在である

 そして、ジーッと見つめてくる中学生くらいに見える茶髪ショートヘアで前髪をヘアピンでそらした少女にしか見えない青年 御崎猛(みさきたける)の存在

 そんな二人のことを気にしないようにし、千佳の説明を聞く

 

「今日はゲームをするわ!」

 

 飛鳥はゲームをするという千佳の言葉に首をかしげる

 異能が絡むことは間違いないだろうが、ゲームをするということはどういうことなのだろうと飛鳥はシズルたちならわかるかと思い、視線をシズルに向けると…

 

「俺1抜けた!!!!」

「テメッ!!!!ずりぃぞシズル!!!」

「そうだよ!!!それなら私も抜ける!!!!」

 

 などなど…急にシズル、孝也、猛の三人が顔を真っ青にしながら、部屋を飛び出ようとする…のだが…

 

「シズル、あんた逃げたら伊座波校長の部屋に飛ばすわよ?」

「ヒィッ!!!!?それだけは勘弁して!!!」

 

 最初にシズルが千佳の脅しに陥落

 

「孝也…あんたは十六夜ちゃんが居眠りしているところに貧乳と耳元で連呼したことを言いつけるわよ?」

「ぅがっ!!!!」

 

 次に孝也陥落…

 

「猛…あんたは誰かさんを落とすために女装して鏡の前でポーズを決めてたことを言いふらすわよ?」

「千佳ちゃん!!!それだけは!!それだけは勘弁して!!!!」

 

 最後に猛陥落…

 飛鳥は床に崩れ落ち、ぶつぶつと何か言いながらもだえるシズルたちに何が起こるのかと恐怖に駆り立てられるが、逃げ出したい気持ちをグッと堪え、千佳の言うゲームというトレーニングに参加することを決意した…

 

「まぁ普通してらななんら問題はないで?」

「そう…シズルたちが馬鹿なだけだから…」

 

 そんな飛鳥に銀髪ツーサイドアップヘアの優しげに笑みを浮かべる少女 リリス・フォンデュランと暗めの茶髪ショートヘアをした眼鏡をかけたつり目気味の少女 高垣澪(たかがきれい)は何もしなければ問題ないと二人は飛鳥に言葉をかける

 飛鳥はそんな二人の言葉を信じ、千佳の言うゲームとやらに参加することにした

 だが…この時はまだ知らなかった…

 まさかあんなことになるなんて…

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 飛鳥たちが千佳の命令により集められたのはミッションメイト校舎中庭にあるオープンカフェ

 六人掛けの席に時計回りに飛鳥、シズル、猛、リリス、澪、孝也の順で座っている

 飛鳥の隣から、典型的なスケベ顔で飛鳥を見る孝也の存在があるのだが、飛鳥はそれよりももっと気になるものが中庭で発見することができた…

 それは、飛鳥の座る席のテーブルに広げられた人数分の焼きそばが原因であり、作った人物が気になるのである

 当たり前だ…なぜなら…

 

「なんで王斬が屋台やってるの…」

 

 そう…飛鳥のチーム【Salvation】のミッションコーディネーターであり、【Salvation】のおとん的存在でもある王斬が、副業として屋台を開いているのである

 しかも…

 

「普通においしい…」

 

 普通に美味しいのである…

 飛鳥とシズルは食事をしつつ、あのショッキングなブーメランパンツ親父がこんな美味しいものを作るとは…とあのショッキングな記憶が消えるほど気づけば、紙皿に盛り付けられた焼きそばを平らげていた

 

「しかしいいよなぁ…飛鳥先輩のチームは、メンバーも普通だし、この学園の貴公子と言われているフォールデン先輩…三年の指折りの美人である軌条先輩…2年の中でクールビューティーで有名な白銀先輩…白銀先輩のお姉さんも綺麗だし、先生が森嶋先生というのも羨ましい…それにこのかなり美味い焼きそば作るミッションコーディネーターだろ?至りにつくせりだよ先輩…」

 

 焼きそばを平らげたいつのまにか飛鳥と友情が生まれつつあるシズルは羨ましそうに飛鳥を見る

 飛鳥は苦笑いを浮かべながらこくりとうなずき…

 

「そうだよね…僕には勿体無いくらいにいい人たちだよ…」

「水樹先輩も負けてません!!!!あなたも本当に美しい!!!!」

「ふぇっ!!?」

 

 同意すると、突然隣にいる孝也から手を握られ、驚いてしまう

 孝也の目は爛々と輝き、まるで飛鳥を必死に口説き落とそうとするかのような様子をかもし出していた

 それを見ていたシズルはあきれ、ため息をつく

 そりゃそうだ…

 

「わりぃが孝也…水樹先輩男だぞ?」

 

 飛鳥は女の子にしか見えない見た目をしているが、完全に男なのだ…

 それを聞いた孝也は一瞬固まったが、そんなシズルの言葉を鼻で笑い…

 

「そんなわけねぇだろシズル…こ~んなびゅ~ちふぉ~でかわいい女の子を男とか、お前はだからモテねぇんだよシ・ズ・ルちゃん」

 

 まるでシズルを挑発するように…というか挑発する

 シズルは「はいはい…」と鼻で笑い、視線を順に猛、飛鳥と向ける

 その視線を追っていた孝也は一気に顔面蒼白となる…

 

「ま…まさか…」

「えと…御崎くんも僕と同じ境遇なんてびっくりしたけど、僕男だよ?」

 

 そして、苦笑いを浮かべる飛鳥に孝也はうな垂れながら、顔をテーブルに突っ伏す

 そんな孝也を見た澪とリリスは…

 

「昨日千佳からのメールであったわよ…猛と同じような子がくるって…」

「せやな、私のところにも来てたで?」

 

 千佳からのお知らせがあったということを暴露

 そんな二人の言葉に復活した孝也はガバッと顔を上げ…

 

「聞いてねぇよ!!!!!普通こんな美人いたら口説くって!!!普通こんなかわいい子いたらナデナデしたいし、もうハグハグしたいぜ!!!」

 

 とんでもないことをいい、その場にいたシズル、猛、澪、リリスの四人はドン引きし、飛鳥にいたっては身の危険を感じ、シズルと猛の間に避難…

 

「お前…ここが外だということを考えろよ変態…」

「僕のチームにも変態はいるけど…ここまでドン引きすることはなかったよ…」

 

 そして、シズルと飛鳥の言葉の剣が孝也の胸に刺さり、孝也は再び撃沈した

 そんなことをしていると…

 

『えぇ~緊急放送!!!チーム【アストラルファミリー】プラス【Salvationのヘタレ女たらし天然ジゴロヘッポコカス】に告ぐ』

「ハグッ!!!!?」

 

 飛鳥は校内放送による千佳からの攻撃により、孝也と同じように机にダウン…真っ白に燃え尽きた

 どうやらこれがゲームの始まりの合図らしいということを真っ白に燃え尽きた飛鳥は理解する

 そんな飛鳥に同情したシズルと猛は苦笑いを浮かべながら、飛鳥の肩をたたく

 

『お前たちの大切なものは学園内のどこかに隠した…隠したものはある人物が大切にしている小遣いをはたいて買った指輪…』

「あの性格ブス!!!!俺の1万近くした指輪!!!!!!」

 

 そして、さっきまで飛鳥をなぐさめていたシズルの様子も一変…悲鳴に近い声で叫ぶ

 それを聞いていたほかのメンバーもいやな予感がだんだんこみ上げてきた

 

『とある男子が傍目気にする様子もなくいつもどこでも読みふけっているあっち本』

「俺のエロ本がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!?」

 

 再び千佳の放送により復活した孝也が発狂し、再び机に突っ伏した

 

『いつもかばんにしまっているとある衣装…』

「わ…私のあれが…」

 

 慌てふためき始める猛

 

『とあるメガネクールビューティーがいつも読んでいる本の中でも気に入っている本』

「あれを隠すとはいい度胸ね千佳…」

 

 明らかに静かに怒りのオーラをかもし出し、立ち上がる澪

 

『とある人物に作ってもらった手作りのクマのぬいぐるみ』

「それはほんまに困ったなぁ~…」

 

 本当に困ったような表情を浮かべるのんきなリリス

 

『最後に…ラッピングされた小箱八つセット…』

「っ……」

 

 そして、一人みんなと明らかに様子が違い、真剣な表情となり立ち上がる飛鳥

 それを見たシズルたちは驚きながら…

 

「千佳姉のことだから、ふざけた場所に隠してないと………思うけどさ…まぁ…そんなに大切なもの?」

「うん…」

 

 飛鳥はそれだけつぶやくと一人、オープンカフェから出て、職員校舎にある放送室へと向かった

 そんな飛鳥の後姿を見たシズルはため息をつき…

 

「結局姉貴分の不始末は弟分にまわってくるんだよなぁ…」

 

 シズルは立ち上がると視線を全員に向けるとシズルの心中を察したのか、全員笑みを浮かべ、こくりとうなずく

 

「正式な依頼じゃないけど、とりあえずラッピングされた小箱…全員で探すぞ?」

「おう」

「うん」

「えぇ」

「うんうん♪」

 

 シズルの掛け声に孝也、猛、澪、リリスは返事を返し、飛鳥の後を追わず学園全体に散るように動き始めた

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ!!!はぁ!!!くそ…いない…」

 

 飛鳥は全速力で走り、千佳がいたであろう放送室に到着した

 確かに放送室は使った形跡があり、マイクが並んでいる棚に戻されることもなく、乱雑に機材の上に一本放置されている状態だった

 そして…

 

「っ!!!!」

 

 マイクではさんでいたメモ用紙を見た飛鳥は一瞬のうちにそのメモ用紙を燃やし尽くした

 メモ用紙には…

 

 大切なものも守れないようなあまちゃんがどこまでやれるかしら♪

 悔しかったら見つけてみなさいあまちゃん

                      深澄千佳

 

 と書かれていた

 飛鳥は大切にかばんの中にしまっていた小箱をとられたことが悔しくて、涙が頬を伝う

 何度もゴシゴシと涙を拭うが止まってくれない…

 飛鳥の心に怒りがこみ上げてくる…なんで…なんでこんなことを平気でできるんだ…と…

 その瞬間…

 

「っ!!!」

 

 放送室の鏡に映ったのは、血のように赤く染まった瞳…

 壊したい…僕をこんな目に合わせる深澄千佳を壊したい…そんな衝動がこみ上げてくる

 だが…

 

「ぐっ!!!!負けるな…負けるな僕…」

 

 そんな思考を振り払うように自分の額を殴りつける

 乱れる呼吸を整えるように何度も何度も深呼吸をし、もう一度鏡を見る

 すると、瞳は元の瞳へと戻っていた…だが、ひどい頭痛に襲われ、飛鳥はその場に座り込む…

 

「座り込んでいる暇なんてないんだ…早く…早く見つけないと…」

 

 飛鳥はなんとか立ち上がり、もう一度深呼吸をすると、自分の頬を何度かたたき、放送室から出て行く

 絶対になくしてはならない小箱だからこそ、飛鳥は必死に探す…真っ白になっている思考を必死にめぐらせ、千佳が隠しそうなところを考える

 それだけではなく…

 

「すみません!!!2学生の深澄千佳さんを見てませんか?何でもいいんです!!情報をください!!!!」

 

 廊下を歩く先生に尋ねては「知らない」と返されながらもあきらめず、探す

 少し離れたところから、千佳に観察されていることも知らずに…

 

 

 

 

 

「水樹先輩!!校長の部屋の近くで千佳姉を見たって情報つかんだぜ!!」

 

 という職員校舎を出たところでばったりと出くわしたシズルと飛鳥は再び職員校舎の中に入り、足早に五階校長室へと向かう…

 教員にばれないように見えないところで走り、あっという間に五階へとたどり着く

 五階には滅多に人は寄り付かない…

 なぜなら、五階は理事長室、校長室、統合学年主任室、会議室という風に近寄りがたい雰囲気をかもし出す部屋が勢ぞろいなのだ…だからこそ、教員もよっぽどのことがない限り寄り付かない

 気軽に生徒がお茶を飲みに来ましたぁ~というようなところではないのだ

 

 こんな場所に千佳は何かを隠したのかと思いつつ、飛鳥とシズルは階段から左に曲がり二つ目の部屋…理事長室と並ぶ校長室の前にたどり着く

 ただ…飛鳥はそこまで来て思い出す

 

「えと…天宮くん…ここに来たくなかったんじゃないの?」

 

 と小声でシズルに問いかける

 当然シズルは

 

「できれば来たくないさ…」

 

 と明らかに恐怖に震え、一向に校長室をノックする様子もない

 飛鳥はなぜ校長にここまで恐れるのかという疑問はあるが、シズルにはシズルの事情があると思い、聞かないことにした

 

「でも…姉貴分の不始末は弟分が取る…あんな性格ブスでも昔は可愛かったし大切な幼馴染だからさ…」

 

 シズルの言葉を聞き、飛鳥は驚き目を見開く

 シズルと千佳の間に確かな絆をみたと飛鳥は理解する

 

「校長!遊びに来ました!!」

 

 そして、シズルはノックをすることもなく、意を決した様子で、室内にいるであろう校長に話しかける

 すると…

 

「あぁん!!!シズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥルくん!!!!!!!」

「グボアッ!!!!?」

 

 明らかにオネエ系と思われるような声が室内から聞こえ、扉が開かれると同時に、いつも集会などでの演説ではしっかりとした口調でやさしげな話し方をするスキンヘッドで口元にひげを蓄えたメガネを掛けた筋骨隆々とした校長 伊座波雪成(いざなみゆきなり)が、光の速さでシズルを捕らえ、頬擦りをしながら、室内に入り、扉を閉める

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!水樹先輩助けて!!!!!!」

 

 そして、しばらくすると悲鳴が室内から聞こえ、飛鳥はあわてて扉を開くと…

 

「あら…あなたが御神理事長が言っていた水樹くんね?しばらく待って?熱いシズルくんとのチューを…」

「イギャアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!それだけは勘弁してください!!!!」

 

 熱烈なキスをされそうになっている場面が視界に入ってきたのだ

 飛鳥はあまりにも気持ち悪い状況に思わず吐きそうになるも、必死にこらえ…

 

「えと…伊座波校長、この部屋に深澄さんは来ていませんか?」

 

 飛鳥は雪成に千佳がこの部屋に来ていないかを問いかける

 すると、雪成は一度シズルを開放し…

 

「来たわよ?これを置いていったの…シズルくんから『I Love you myyukinari』ってメッセージを承ったっていってたわよ?」

「ぶっ!!!!?なんてことをしてんだ千佳姉!!!!しかもそれ俺のリング!!!」

 

 机の引き出しから大切そうにシンプルな装飾が施されたリングを取り出し、頬をポッと染めながら恥ずかしそうにいってくる

 飛鳥は少しげんなりしながらも、自分の探しているものじゃないと理解し…

 

「わかりました…ありがとうございます伊座波校長、天宮くん…幸せに…」

「それマジで洒落になってないから!!!本気で助けて水樹先輩!!!!」

 

 雪成とシズルのカップリングをスルーして出て行きたいと思ったが、あまりにも本気で泣きそうな顔をしているシズルに飛鳥はシズルと探し物をしないといけないという助け舟を出し、雪成にしぶしぶ納得してもらい、二人で校長室を後にした

 

 

 

 

 

 職員校舎でシズルと分かれた飛鳥はシズルと携帯番号を交換し、いつでも連絡が取れるようにし、分かれて探すことにした

 そして、飛鳥は一学生の校舎に差し掛かったとき…

 

「飛鳥ちゃん!!一学年校舎で千佳を見たって奴がいたんだ!!一緒にどうだい!!?」

 

 とまるでナンパ師のような口調で誘ってくる孝也に飛鳥はため息をつきながらも、一緒に一学年校舎を探すことにした

 千佳を見たといわれている場所は一学年校舎にある視聴覚室付近だということ…

 飛鳥と孝也は足早に一学年校舎三階に上がり、視聴覚室のある左奥にある教室に向かおうとした瞬間…

 

「金居ィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!!!!!!」

「げっ!!!?有馬ッ!!!?」

 

 視聴覚室の扉の前で阿修羅のように君臨していた有馬鉄夫統合学年主任が孝也を視認すると同時に廊下内に響き渡る大音量で咆哮を上げ、孝也目掛けて走り始める

 孝也は何が起こったのか理解できずに、反射的に逃げる態勢に入る

 つまりこういうことは日常茶飯事なのだろう…

 飛鳥の視線の先…鉄夫が持っている本を見るとそこにはあっち系の表紙が描かれていて、明らかに孝也が探していたものが鉄夫の手に握られているということに気づき、飛鳥はすれ違う鉄夫に

 

「お前はこんな真似をするなよ水樹?」

 

 と注意をされてから、走り去る鉄夫と孝也を見送ることしかできなかった

 もちろん、飛鳥はため息をつきほかの場所を探すことにした

 

 

 

 

 次に遭遇したのは…

 

「ミッションメイト校舎に千佳ちゃんが私たちがオープンカフェに移動したときに地下にいくエレベーターに乗ろうとしたって情報が入ったよ?」

 

 と猛に誘われ、飛鳥は一緒にミッションメイト校舎に移動していた

 並木道を抜け、ミッションメイト校舎にたどり着くと、二人は認証を終え、中に入る

 移動は自由なのだが、受付さんの監視の下、生徒がどこに移動したかというのは管理されている

 だからこそ…

 

「あの!深澄千佳さんが降りた場所ってわかりますか?時間帯は大体18時頃なんですけど」

 

 飛鳥は受付さんに尋ねると、いつもの営業スマイルのまま…

 

「ん~本当はいっちゃだめなんだけど、千佳ちゃんから許可もらってるし、地下二階のアイテム保管室に降りてるわよ?」

 

 飛鳥の問いかけに答える

 飛鳥は「ありがとうございます!!!!」といってから、猛と共に、エレベーターに乗り、地下二階に下りる

 地下二階はアイテム保管室となっており、研究者たちが開発したアイテムやミッションなどに着ていく服などのリペアが保管されている

 四つの区画があり、北に薬剤保管室、南にサポートアイテム保管室、西に戦闘服保管室、東に試着ルームという形で分かれている

 

「ひ…ひひひ……」

 

 すると東の試着ルームの方からなにやら、わずかに声が聞こえたような気がした二人は東の方に歩みを進める

 声は男子試着ルームの方から聞こえ、飛鳥と猛は恐る恐る中に入る

 そして…視界に入ってきたのは…

 

「勇さまのブロマイドに三千円!!!!」

「俺は五千円だ!!!!」

 

 なにやら男子生徒20名によるオークションが繰り広げられていた

 そして、飛鳥と猛の聞き間違い出なければ「勇」と聞こえたのは確かだろう…しかもブロマイド…

 あの勇がそんなものの販売を許すわけがないと飛鳥はわかっているため、非公式で盗撮ものなのだろうと思いつつ、わざわざスキャナーで取り込んだブロマイドをノートパソコンのモニターに映し出すという凝りよう…

 どうやらオープンカフェで一人居眠りをしている勇のブロマイドらしい…

 

「よし…勇様のブロマイドゲットしたぞぉ…俺の家宝だ…」

 

 どうやら買い取った学生にとっては家宝の価値があるらしい…

 飛鳥や猛にとってはどうでもいい話ではあるのだが…

 飛鳥と猛はあまりのショッキングな光景に話しかけるのを忘れていたため、話しかけようとしたのだが…

 

「次の商品はこちら!!深澄千佳さんによる提供!!われらがロリ男の娘!!!御崎猛たんの着用済み衣装だ!!!!!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」

 

 オークション司会者をする生徒の手に掲げられたものを見、まるでライブでアイドルが登場したときのように歓声をあげるお客(生徒)たちに飛鳥と猛は固まってしまう

 特に猛にいたってはワナワナと震えながら、言葉にならない様子で、飛鳥に視線を向け、自分の衣装を指差す

 

「みんなぁぁぁぁっっ!!!!!猛たんの衣装を頬ですりすりしたいかぁぁぁっ!!!!」

「オォォォォォォォォォォォッ!!!!!」

「この衣装を着て猛たんのぬくもりを感じたいかぁぁぁぁっ!!!!!」

「ウォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!」

「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

 そして、ついに猛は発狂してしまい、その場から逃げ出してしまった

 近くの男子をちょいちょいと肩を指でつつき、呼んでみると

 

「んだよ今猛たんの…………飛鳥ちゃま!!!!!!!!!?」

 

 その男子は一瞬鬱陶しそうな表情をしていたが、飛鳥の顔を視認すると同時に、発狂し、飛鳥に跪いた…

 そして、それに連動するように…「飛鳥ちゃまが光臨なされたァァァァァァァッ!!!!」と発狂と共にそこにいた20人の男子生徒は飛鳥に向かって跪いた

 その瞬間、飛鳥は理解したため…

 

「あ…もしもしアキラくん?図々しいお願いかもしれないけど…地下二階で朝霧君のブロマイドをオークションしている男子生徒たちがいてさ…うんうん…ありがとうって朝霧くんに伝えてて?うんそれじゃあ…」

 

 さすがの温厚でマイナス思考な飛鳥でもカチンときたらしく、アキラ経由で勇に連絡を入れた

 その結果、勇がすぐに来るということで、飛鳥はひとり部屋を出た…すると背後からぞろぞろとその部屋から逃げ出す男子生徒たちであふれかえったのであった

 結局飛鳥の探し物は見つかることもなく、無駄足となった…

 

 その後、ミッションメイト校舎入り口で繰り広げられた、アイシクルプリンス事件は後に語られることになるだろう…

 なんせ凍りついた男子生徒のオブジェクトがいくつも出来上がった大事件であるからして…

 

 

 

 

 

 

 結局…二時間近く探し続けたが、飛鳥は見つけることはできなかった…

 見つかったのはシズルたちのもので、飛鳥の物に関しては何の手がかりもなかった

 

「ごめん…水樹先輩…俺たちがもっと力になれたら…いや、今からでも千佳姉を説得してくる!」

 

 飛鳥は千佳を探しにいこうとしたシズルの手をつかみ、首を横に振る

 

「もういいんだ…僕には…その資格もないから…」

 

 飛鳥は流れそうになる涙をぐっとこらえ、こちらに振り返るシズルに笑いかける

 もうここまででいい…

 

「これは神様から言われてるのかもね…お前にはもったいない絆だ…お前はやはり一人でいるべきだって…僕は傷つけてばかりで、みんなに何も返せない…守るどころか壊してしまう…一度は命を背負う覚悟はしたはずなのに…でもやっぱり怖い…僕は…ぐっ!!!!!?」

 

 飛鳥はそう思い口走っていると気づくとシズルに殴られ、倒れていた

 飛鳥は視線を上げると、今まで飄々としたイメージを受けたシズルの表情に確かな怒りが浮かんでいた

 

「甘えてんじゃねぇぞ…アンタの過去に何があったかはしらねぇ…異能のことで悩んでいるっていうことも森嶋先生から聞いてる…だがな、あんたの言葉聞いてる限り、ただ仲間を言い訳にして逃げてるだけじゃねぇか?」

「そんなこと!!!」

 

 飛鳥は否定しようとしたが、シズルに胸倉をつかまれ、視線を無理矢理あわせられる

 シズルの真剣な表情に飛鳥はそれ以上否定することができなかった

 

「あんたは昔の俺によく似てるよ…異能っていう爆弾抱えて、いつ暴走するかわからない力だからこそ、仲間を遠ざけようとした…でもな!!そんなの仲間を悲しませるだけなんだよ!!ぐっ!!!!?」

「それでも!!!誰かを傷つけてしまってからでは遅いんだ!!!!!もう…あんなことはいやだ…もう誰の足を溶かしたりなんかしたくない…仲間の足を奪ったりなんかしたくないんだよ…」 

 

 飛鳥は気づくとシズルを殴り、泣きじゃくりながらシズルのことを見下ろしていた

 一度は仲間の命を背負うと決めた…

 だがやはり簡単にはトラウマを切り離すことはできない…茜の足を溶かしてしまったときの記憶が頭の中で張り付いている

 自分の暴走する力を知り、冷静になり考えることができるようになって、今回の絆祭参加申し込みを考えた時から、あの時のことがフラッシュバックした

 今回の絆祭でもし暴走したらどうなるか…飛鳥は仲間に迷惑を掛けるだけではなく、もしかすれば他の生徒たちにも被害を与えるかもしれない…

 暴走する力を信じることなんてできない…

 仲間と一緒にいたい…一緒に絆祭に参加してみたい…だけど…

 こんな爆弾を抱えている状態で参加なんて無理だ…

 怒りですぐに発現しそうになる力の暴走…それを感じてしまった以上一緒にいることもできない…飛鳥は千佳に隠された小箱を探しながら、考えていたことでもある

 

「痛っ…クソ…わかるぜ…その気持ち…俺だってもうあの時みたいに血まみれの人間なんて見たかねぇんだよ…やっぱ似てるよなぁ…その瞳…見ると俺も思い出してしまうぜ…」

 

 飛鳥は今自分の瞳が血のようにく染まっているということにシズルの言動から察し、手で覆い隠す

 

「だがな…千佳姉に会って強くならないといけないと思った…力じゃない…心だ!それにここにいる孝也や猛、リリスや澪のためにももっともっと俺は心を強く持たないといけないそう思えたんだ!!!あんたもそう思えないのか!!!?あきらめたらそこで終わりなんだよ!!!」

「うるさい!!!!うるさい!!!!!!!!!」

 

 飛鳥は覆い隠すことをやめ、両腕に炎を纏うとシズルに向けて殴りかかろうとする

 だが、シズルはまったく回避しようとしない…ただ飛鳥の目をしっかりと見据え、自分の意思を曲げない…そんな様子で…

 すると…

 

「飛鳥…私たちはあなたがどんな風になろうと離れるつもりも離すつもりもありません…私は…あの時あなたが命を背負ってくれると約束したときから、あなたの命を背負う覚悟をしていますから…」

 

 突然現れた唯に飛鳥は抱きしめられ、纏っていた炎は消え、目の色も元に戻る

 飛鳥は何が起こったのか理解できず周りを見ると、乱れた呼吸を整える千佳とその近くに佇む、玲羅、茜、カイル、千尋、王斬の姿があった

 

「私たちは友達に戻れた…でも、飛鳥の心の中で私の足を溶かしたことがいきづいているということはわかってた…だったら飛鳥には私の側にいて責任を取ってほしい…私の前からいなくなるんじゃない…私の側で昔みたいに馬鹿をして、何でも話せて、笑い会える仲でいてほしい…それが私に対しての責任…大好きなあっちゃんにずっと側にいてほしいから…うっ…うぅ…」

 

 そして、飛鳥の視界に入ってきたのは、涙が頬を伝い、子供のように泣き始める茜の姿

 

「でもやっぱり怖い…怒っただけで僕はまた感情に振り回されそうになる…だから…」

「それを支えるのが仲間である私たちの務め…だから、飛鳥も私たちが暴走しそうになったら止めて?」

 

 飛鳥の言葉をさえぎるように、玲羅は飛鳥の近くまで歩みを進めると手を握り、優しく微笑みかける

 それだけじゃない…

 

「怖いなら克服するべきだね?私が手伝おう…今回は天宮くんや軌条君にとられてしまったが、これからは私が受けよう…千尋先生、飛鳥のトレーニングメニューに暴走克服訓練を」

「わかった、それの際は私も手伝おう」

 

 カイルは勝手に飛鳥の訓練メニューに暴走克服を千尋と共に組み込んだのである

 飛鳥は当然勝手に決まったことに戸惑っていると視線の先にいるシズルはため息をつき、苦笑いを浮かべる

 

「俺たちがいなくてもできるじゃん…後は水樹先輩の心次第だぜ?まぁ、俺も昔、どこかのおせっかいに軌条先輩みたいに抱きしめられて説得させられたっけ?」

 

 そして、視線を頬をわずかに赤く染めた視線をそらす千佳に向ける

 そんな千佳の様子に満面の笑みを浮かべ、視線を再び飛鳥に向ける

 

「水樹先輩、ひとつだけ俺から…人間迷ってばかりで何度も同じことを繰り返すけど、やっぱりその度に大切な仲間が救ってくれる…それが絆ってもんだろうし、そのつながりは簡単に切れねぇよ…それこそ断ち切ることだって簡単じゃねぇんだ…特に昔の俺や今のあんたみたいに迷っているさびた刃じゃな…」

「クッサ!!!シズルクッサ!!!」

「ちゃかすな孝也!!!あぁ!!!クソ!!!結局かっこつかなかったじゃねぇか…」

 

 シズルはため息をつき、千佳に近づく、それを見たほかのメンバーも千佳の方に向かうと…

 

「まぁ俺、絆祭で飛鳥先輩と戦うこと…楽しみにしてるぜ?いや…Salvationの絆とアストラルファミリーの絆…どっちが強いか比べてみたい…仲間を大切にな?」

 

 シズルはそれだけ言い残すと千佳の異能により、全員はその場から消えた

 残されたのは飛鳥たちSalvationのみとなっていた

 

「さて…それでは飛鳥?私たちの下着姿を見たこと、今回のように悩んでいるのにお姉ちゃんに相談しなかったこと、すべて含めてお仕置きをしたいと思います」

「一番は私がいい…なんせ下着姿を見たとき唯と姉さんの見たとき頬を赤く染めていたのに、なんか私の見た瞬間、なんか一瞬冷静になったような気がしたからムカついた…」

 

 そして、気づくと飛鳥はズルズルと唯と玲羅に引きずられ、ミッションメイト校舎三階へと向かっていた

 もちろん飛鳥は完全に納得したわけではないのにいつの間にか強制お仕置きが執行されることとなり、満面の笑みを浮かべるカイルと涙を拭い笑みを浮かべる茜に見られながら、Salvationの私室へと向かった

 

 

 

 

 

 それから、玲羅からの玲羅を背中に乗せた状態で腕立て伏せ(もし玲羅を落としてしまったり、崩れてしまった場合、飛鳥の過去の恥ずかしい話をばらすという罰ゲーム)が執行

 もちろん、途中で崩れ、飛鳥が中学文化祭の時にメイド服を着た状態で男子からの20人連続告白という男としてはかなり恥ずかしいことを暴露された

 茜からは強制セクハラ攻撃(玲羅と罰ゲームに関して同上)が執行

 もちろん途中で茜の頭をはたいてしまい、茜により、小さいころに一緒にお風呂に入ったとき、「ぼくもいつかあかねちゃんみたいにきれいなおんなのこになるね!!」といっていたことを暴露された

 唯に関しては公開処刑…ずっと「唯おねえたん」と言わされるという鬼のような罰ゲームを下された…

 結果、唯は一人歓喜し、飛鳥を抱きしめまくったりなどしていたが、まわりで見ていた玲羅たちは少し引いている様子だった…

 

 そんなこんなで飛鳥のお仕置きが終わり、各々の席に座り、カイルの淹れた紅茶を飲みつつ、静かな時を過ごしていた

 

「本当にいいのみんな…」

 

 だが、いまだに迷っている飛鳥は全員に問いかけてしまう

 それを聞いた唯たちはため息をつき…

 

「当たり前ですよ…私たちはチームなんですから、それとも飛鳥は嫌なんですか?」

 

 唯が代表して、飛鳥の問いかけに答え、逆に飛鳥に問いかける

 もちろん飛鳥はいやなわけがない、むしろ自分の中でいてはいけないと解釈しているだけで、本当はずっとできる限り一緒にいたいと考えている

 

「嫌じゃない…みんなと一緒にいたいよ…」

 

 だからこそ、飛鳥は素直に答える

 それを聞いた唯たちは笑顔になり、うなずく

 

「だったら、私たちは一緒…」

「そうだね、私たちは一緒じゃないといけない、一人が欠けても機能はしないからね?どこかの誰かさんたちみたいにキャットファイトしかねない」

「あれはもう二度とごめんだな…見てて痛々しい…」

「あの…そのネタもうわすれませんか?」

「えぇ~!!私いなかったから聞きたい!!!!」

 

 そして、飛鳥の視界の中では楽しそうに談笑している仲間たちが映っていた

 Evolutionもそうだった…アストラルファミリーも…

 二つのチームに行ったが、どちらもどこか悪態をつきながらもチームは絆でつながっていた

 僕たちも…そうなのかな…飛鳥はそう思いながら、絆祭の意味を考える

 絆祭…なぜそう呼ばれているのだろう?

 つまりは絆をつむぐための祭り…だからこそこのスキルネイチャースクールではチームで体育祭を行うのだろう…個々の力で乗り切るものではない…チームの力で乗り切るもの

 助け合い、互いの欠点を庇い合う…それがチームというもの

 それを学ぶための祭りが絆祭…

 そういうことなのだろうかと飛鳥は心の中で考え、かばんの中から絆祭参加申し込み用紙を取り出そうとする…すると…

 

「……やってくれるよね…深澄さん…」

 

 飛鳥のかばんの中にはラッピングされた小箱が八個あった

 つまり、千佳の虚言であり、最初から飛鳥のかばんから取っていなかったのである

 もしかしたら、絆ということを考えさせるためにしたことなのかもしれない…飛鳥は珍しくプラスに考え、大きく深呼吸すると…

 

「えと…みんなに渡したいものがあるんだ…」

 

 飛鳥は今まで考えすぎて渡すことができなかった小箱を全員に渡す

 中には全員おそろいのシルバーのブレスレットが入っていた

 形にする必要はないのかもしれない…目に見えなくてもつながっている…それが絆なのだろう

 でも、ふとこのブレスレットを見たときに思い出せるように…たとえ離れても絆は確かにある…それを実感できるようにと飛鳥はこのブレスレットを買っていた

 

「僕はまた迷うかもしれない…でもこのブレスレットを見ると今日また思えたように僕たちに絆があるといつでも思い出せると思うんだ…今は弱い僕だけど、いつか異能にも負けないくらい強くなる…だから、今回の絆祭…迷惑を掛けるかもしれないけど僕もでていいかな…」

 

 飛鳥の問いかけに唯たちは

 

「是非参加してください、私たちにはあなたが必要です」

「私は飛鳥をサポートするためにいる…あなたが出ないなんて論外」

「最初からそのつもりさ?もう弱音は吐かせないよ?」

「よっし!!あっちゃんは大船に乗ったつもりで私たちをたよればいいさ!!」

「これで決定だな…」

「あぁ…千尋、これで絆祭に向けての特訓メニューが組めるな」

 

 納得し、飛鳥の参加を認める…というより、最初から参加させるつもりで動いていた

 飛鳥は、受け入れてくれたことに安心し、気づくと涙があふれていた

 そして、そんな嬉し涙を唯に拭いてもらいながら、その日の活動は絆をもっと深めるために楽しく談笑を続けた…早めに唯たちが登校して、準備していたパーティ料理を堪能する

 おそろいのブレスレットを腕につけて…

 

 

 


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