プロローグ
世の中には異能が溢れている
年を重ねていくうちに、異能を持つ人間が、現在世界人口の70%を超えた
だが特殊な力を持った人間が走る行動はいくつかに分かれる
誰かの役に立てればと考える人
誰かを屈服させたいと願う人など
前者の人間は数少なく、基本的に後者の人間がほとんどを占めている
今までおとなしかった者も力を持って性格が変わり残虐になったという例もある
だからこそ世界中のトップたちは会議を開き、一つのことを決めた
異能者を教育する場を世界中に設けようと
そして、世界によって校風ややり方は違うも、世界は異能者の教育の場を設けたおかげで犯罪率は減少した
それでもまだ…異能犯罪者は消えたわけではない…
むしろ、教育が必ずしもいい方向に進むわけではないという可能性もある
だからこそ、犯罪者の質が向上した分、性質が悪くなっている部分もある
だがそれでも教育で犯罪者と戦う人間もいる
そんな人物が増えると信じて、世界は異能者たちの教育をやめたりはしない
そして物語は日本の異能者を育てる専門学校へと移っていく
水色の長い髪をした少女のような見た目の少年 水樹飛鳥はお世辞でも出来がいいとは言えない
中学を卒業して、行く高校を決めかねていたところ、勝手に決められ行くことになった5年制の高等専門学校 スキルネイチャースクール
入試は運良く合格し、通うことになり、少しずつでもあるが校風にも慣れた…
そして、1年が過ぎ、2学年となった
他の学校と違うところは、学校の教育方針は、思いやりある人助けができる学生を教育を育てるというところ…通常の学業カリキュラムもあるが、基本的にこの学校は、異能者の戦闘訓練、学校に舞い込んで来るミッションを解決する課外活動が主となっている…
だが…
飛鳥は…
「うああああああああああああああっ!!!」
「水樹!!!!お前は何故そうすぐにテンパるんだ…」
戦闘訓練ではテンパって、毎回何もできず、同じクラスの生徒からは笑われ、教官からは説教
「あの…シングルミッションを……」
「君のランクというか…君の実力じゃ任せられないよ…たとえ普通のミッションでもね…」
思い切ってシングルミッションを受けに行こうと思ったりもしたが、教師から任せられないと拒否
いわば、学園内の落ちこぼれなのだ
この学園ではミッション形式の課外活動があるということなので、学生内でチームを組むことができるのだが…かといって飛鳥ほどの落ちこぼれと組みたいという物好きなんていない
だからこそ、飛鳥は、気づくとクラスで一人でいることが多い
そんな生活を1年続け、今に至る…
飛鳥は大学のような講義室に似た教室の1番後ろの席で顔を伏せ、絶望の縁にたっていた…
教室では楽しそうに笑うクラスメイトたちを余所に飛鳥は一人でいた
「なんで…僕ここにいるんだろ…」
親に言われたから?
まぁ…それが大半ではあるが、中学でも落ちこぼれだった飛鳥は、少しは変われるかな?と想い、進学したものの、何も変わらず相変わらず落ちこぼれのまま…
気づくとため息ばかりがもれる…
休憩時間、教室内にいるのも息苦しく…居辛い…そう思い、飛鳥は立ちあがると教室から出て行く
すると、隣の教室に人だかりができているのが視界に入る
その人だかりの正体はわかる
2学年にして、上級生の実力に匹敵する人物たちがそのクラスにはいるから…どうやらチームも作り、すでに戦闘ミッション、通常ミッションに関わらず、ランク別されているS・A・B・C・Dのランクのうち2学年なのに、既にAランクを受けているということらしい…
自分との天と地の差にまたため息が漏れ、飛鳥はその場から去る
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
結局…避難した先にも人がいっぱいいて、居心地が悪いと飛鳥は思い、結局動き回るだけ動き回って教室に戻るというまるでリストラされたサラリーマンのようなことをして、時間は経過し、放課後となる…
いつもなら、幼馴染の白銀玲羅に誘われ、帰ったりするが、今日はいろいろ予習をしたいからということで玲羅は学校に居残りするとのこと…
だから、落ちこぼれのでマイナス思考な飛鳥は…
「僕が何をしても進歩はないし…帰ろう…」
そう思い、飛鳥は学校から出る
たまにするのだが、スキルネイチャースクールの最寄り駅でもある赤城駅から一駅しか変わらない距離に家があるため、たまに歩いて帰ることがある
考え事したい時は大概歩いて帰る
考えたいこととは簡単なこと…この学校ではやっていけない…
確かに異能は持っているがランクの低いものであり、誇れるものではない飛鳥
戦闘能力もテンパってすぐにやられてしまうほど…だからこそチームなんてものは組めないし、誰も組もうとは考えない…
玲羅が組もうといってくれたが、さすがに落ちこぼれの自分と組んでもらうわけにはいかない…
「怒られるかな…姉さんに…」
いつもの流れだと飛鳥は父親に相談しようとするのだが、それを聞いていた姉に姉の部屋まで連行されて、気づけば鉄拳制裁つきのお説教が始まる…
それが怖くてなかなか言い出せなかったが、飛鳥は今日こそ言おうと決心していた
そんな時…
「にゃ……にゃー……」
か細いがどこからか猫の鳴き声が聞こえてくる
飛鳥は周りを探してみるも、猫のような姿は見つからない
学校から出て並木道を歩いていた飛鳥は木の上にいるのかな?と思いつつ、木の上も見てみるも、猫のような姿は見つからない…
「にゃ…にゃぅ…」
飛鳥は歩みを進めているうちになんか猫の鳴き声が近づいてきているような気がした
並木道の中で十字路の分岐があり、左に行くと駅の方へ向かう並木道、真っ直ぐ行くと住宅街へと繋がる並木道、右に行くと公園がある
「なにやってるんだろ…探したって…僕に何かできるわけではないのに…」
そう…飛鳥の能力は低能力ではあるが戦闘専用能力…
助けるために利用できる能力ではないし、もし木などで降りられなくなって困っている猫だったら、飛鳥に助けられるための身体能力があるわけではない…
飛鳥は諦めて帰ろうとしていた…
「にゃあ…にゃ…にゃぁ!!!!」
必死に助けを求めるように叫び声をあげる猫の声
飛鳥はその声を聞いて立ち止まってしまう…
「僕にはできない…助けられないのに…」
飛鳥は気づくと猫の声がする方向…公園の方へと歩みを進める…
すると公園の方へ差し掛かった近くの木の上で…
「にゃ!!!にゃあ!!!にゃあ!!!!!!」
必死に飛鳥に助けを求めようとする猫の姿が視界に入ってくる
飛鳥は周りに誰かいないか確かめるが、誰もいない
なんとか頑張れば、掴むことができそうな木の枝が見える
飛鳥は木に近寄ると大きく深呼吸をしてから、少し跳躍し太めの木の枝を掴むと、幹の突起に足を掛ける…それによりなんとか、少し上ることができた
「できる…できるできるできるできる…僕…どうしよう…出来るかな…できるかな…うぅ…」
自分に何とか言い聞かせようとしながら、あと一メートルほどの高さの先にいる猫に視線を向ける
その後、飛鳥は大きく深呼吸を繰り返し、少しずつ太めの枝に足を掛けていき、時間をかけて上っていく…
「にゃあ…にゃあ!!!」
「もう少しだから…もう少しだから怖くないよ猫ちゃん…」
飛鳥はもう少し…もう少し…と呟きながら猫に向かって手を翳す…
すると、猫は意を決したのか、飛鳥の胸に向かって飛び降りる
「えっ!!!?うそ!!!!!!うああああああああああああああ!!!!」
飛鳥はテンパりながらも、飛鳥はなんとか、片手で猫を受け止め、片手で木の枝を掴み態勢を整える
テンパったせいで態勢を崩しかけたが、猫はなんとか無事…それに、自分も何とか体制を整えることもできた…これで安心…と飛鳥は思ったのだが
「あれ?…どうやって降りよう…」
飛鳥は肝心なこと…猫を持ったまま、降りるということができずにいた
猫は飛鳥の胸に頬擦りをしながら猫撫で声を上げる…だが、肝心の飛鳥は降りられないようになり、今にも泣きそうになっていた…
「もう…なんで僕は肝心な時にこうなるの!!!!?」
というより目尻にはもう既に涙が浮かんでいたりする
だがその時…
「大丈夫ですか?」
学園の指定の学生服、3学年を指す赤の上半身半分くらいのサイズのマントを羽織った黒髪ロングヘアの前髪がパッツン気味の優しげな眼差しの女子生徒がこちらを見ていた
自分の情けないところを見られていたという羞恥心から、見る見るうちに飛鳥の顔は赤く紅潮していく
「えと…その…あの…大丈…夫…じゃないです…」
そして、情けないことに飛鳥は大丈夫と言い切れずに、大丈夫じゃないと自己申告…
すると、飛鳥を見ていた黒髪の少女はニコッと笑みを浮かべ、木に近づくと跳躍する…のだが…
「うそ……」
飛鳥の視界には驚くべき出来事が起こっていた
黒髪の少女は最初の太めの枝に跳躍して移動すると見る見るうちに飛鳥の近くまで移動し…
「お預かりいたします」
「は…はい…」
ニコッと笑みを浮かべ、僕から猫を受け取り、そこから飛び降り、見事に地面に着地する
一瞬の出来事だった…飛鳥はあまりのことに見とれてしまい…
「え…あっ?あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
木の上から落ちてしまい、地面に尻餅をついてしまう…
また、情けないところを見せてしまう…そこまで高い場所ではなかったが、やはり木から落ちて尻餅をつくとやっぱり痛い…
「大丈夫ですか?」
飛鳥のそんな姿を見て黒髪の少女は、微笑みながら猫を抱えたまま、飛鳥に手を差し伸べる
飛鳥は優しげな黒髪の少女の優しさと思いながらも、自分の情けない姿に恥ずかしさを覚え、視線を合わせることができない
飛鳥は控えめに手を差し伸べると、しっかりと黒髪の少女に手をつかまれ、飛鳥は立ちあがる手助けをしてもらう…
「あ…ありがとうございます……」
「いえ、こちらこそ、ミッションの手助けをしてもらいましたので…」
黒髪の少女の言葉に、飛鳥は驚く…
あれだけ受けたかったミッションを手助けすることができたということに…
「えと…その…でも僕…ただ助けたはいいですけど、降りれませんでしたから…これは手助けできたっていうんでしょうか…」
「えぇ…私はそう考えていますよ。では行きましょうか?」
「えっ!!!あの!!!どこへ!!!?」
飛鳥は掴まれたままだった手を引っ張られながら、黒髪の少女に続いて歩き始める
黒髪の少女はそのまま歩きながら、優しげな声質のまま…
「学校へ戻りましょう!」
学校への帰還指令が下る…
飛鳥は何か反論しようとしていたが、校則を思い出す
第九条 協力者がいた場合、学校へと一緒に来てもらい恩賞を授与する
というものがある…
しかし、たいしたこともできていない飛鳥はそれが後ろめたくて…
「え…あの!!!!僕大したことも出来ていませんし!!!!」
「自己紹介がまだでしたね?」
飛鳥は反論して、逃げ出そうと考えたが、まったく黒髪の少女は話を聞いていない…
そして、彼女は立ち止まると振り返り、飛鳥をしっかりと見据え
「私は三学年の軌条唯と申します。貴方は?」
自己紹介をすると、飛鳥に自己紹介を求める…
「えと……あの……」
飛鳥は高レベルの美人でもある軌条唯に見つめられ、あまり直視できずにいた
高レベルの美人には見慣れていたと思っていた飛鳥だったが、そうでもないと自分でも自覚することになった…
直視できずにあたふたする飛鳥を見て、クスクスと唯は笑みを浮かべつつまた、飛鳥と手を繋いだまま歩き始める
「ゆっくりで構いません」
「はい…」
優しげな唯の声に、まるで優しいお姉さんに見守られているかのような気持ちに陥りながらも、飛鳥は大きく深呼吸をし…
「水樹…飛鳥です…よろしくお願いします…軌条先輩…」
「はい、水樹さん!」
俯きながらも、自己紹介を何とかすることができた
そんな飛鳥の声をきくと、唯はまた立ち止まり飛鳥をまた見て満面の笑みを浮かべる、飛鳥の名前を呼ぶ
誰も絡もうとしないのに…
落ちこぼれの自分に声をかけてくれた軌条唯
飛鳥は何かのドッキリじゃないか?と思うくらい今までの学園生活になかった色目気だったイベントに戸惑いつつ、流れに流され、学校に向かって歩みを進める
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
学園の先生に報告を終え、依頼を受けていた救出された猫は、無事飼い主へと届けられた
協力者の飛鳥の顔を見た教師たちは驚いていた
中にはあまりに驚きすぎて、椅子から落ちた人なんかもいた
そして、恩賞は一般人には金一封というのもあるが、学園内の生徒ということもあり、飛鳥にはい能力を増幅することができる栄養ドリンクをもらったりした
それから、学内にいても何もすることもなく、飛鳥はそこで、帰ろうかと思い、帰ろうとしたが、唯に呼び止められ、現在…
「お待たせいたしました!!苺パフェとアイスコーヒーです!!」
駅前近くにあるファミレス内にいた
ちなみに注文した方なのだが…苺パフェが飛鳥でアイスコーヒーが唯である
「それにしても驚きました。水樹さんではなくて、水樹くんだったんですね?」
ほんとに驚いた表情で唯は飛鳥を見据えていた
飛鳥は今まで小中と覚えている限りでも常に間違えられ続けていたため、苦笑いを浮かべつつ、受け流すこともできた
「よく間違えられます…どうやらそういう家系みたいなので…」
そう、水樹家の家系はどうやら男の娘家系なのだ
そのため、飛鳥も男でありながら、女の子のように可愛い容姿をしている
飛鳥は来た大き目のグラスの中に盛り付けられた苺パフェをスプーンで苺ムースのかかったバニラアイスをすくい、頬張る
あまりの美味しさに飛鳥の表情は幸せを感じつつ、キラキラ輝いていた
「確かに男子制服を着ていたのであれっとは思いましたが、何か事情があって男装をしているものだと思いましたから…」
「いやいや!!アニメとかじゃないんですから、ありえませんよ!!っあ…すいません…」
唯の何故か感じる天然ぷりに思わず飛鳥はもう一人の幼馴染にツッコミを入れるように思わずツッコミを入れてしまう…まぁただ、初対面の人にガッツリ突っ込んでいけるほど度胸もなく、つい謝ってしまう
そんな飛鳥の姿にまた唯は上品にクスクスと笑みを浮かべ
「構いませんよ、友達のように接してください。」
上品ながらも、どこかフレンドリーのような接し方をしてくる
飛鳥は、ほんとに学園内で今の今まで感じなかったこの温かい空間に戸惑いながら、恥ずかしそうにまた俯く
「あの…その…はい…」
飛鳥はなんとか返事をする
そして、唯はコーヒーをブラックのまま一口飲み、飛鳥はまたバニラアイスをスプーンですくい、頬張る…
そして、数分後…
飛鳥は苺パフェを完食、唯もコーヒーを飲み干し、またコーヒーをオーダーしていたのだが…
「…………」
「…………」
注文を終えてから、沈黙ばかりが流れ、飛鳥は気まずいのか俯くばかり、勇気を振り絞り、顔を上げてみるも、ニコッと笑う唯の表情に緊張してしまい、また俯く…
それが何回か繰り返され、飛鳥は意を決したように…
「あの…僕…帰ります…」
飛鳥はそれだけ言うと帰ろうと立ち上がる…
何せ、飛鳥にとってどうしたらいいのかわからず、気持ちが落ち着かない…故に居心地が悪く…
帰ろうと…逃げようと決めた…
だが…
「これだけ聞いてもらえますか?」
唯も飛鳥を引き止めるように立ち上がり、真剣な表情で飛鳥を見据える
さすがに、これを振り切って帰るほど飛鳥は度胸もなく、頑張って唯に視線を合わせる
すると…
「私と…チームを組んでいただけませんか?」
唯から聞こえて来たのは意外な言葉…
飛鳥自身予想もしない…この学校にいたところで聞かないであろう言葉…
自分自身の耳を疑うも、唯の表情から見て、真剣に言っているということは理解できる
それでもこれは何かの夢ではないだろうか?
それとも何かのドッキリで、何処かにクラスメイトでもいて影で笑っているのではないか?
そうだ…落ちこぼれの僕なんかと組んでも何もいいことはない…自分の品位を貶めるだけなのだから…
だが、周りを見てもそんな様子はない
そう水樹飛鳥の目の前にいる軌条唯は今真剣に飛鳥をチームに勧誘していた
答えないと失礼だ…と飛鳥は思い、戸惑いながらも唯の問いかけに口を開く