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村を滅ぼして欲しい

作者: 穀物 紙太郎

ある村に男が訪れた


なんでもその男ずいぶんな変わり者で


人の役に立ちたくてしょうがなかったそうな


その奇妙な男の話を聞きつけた村人達が男に色々なお願いをしたそうな


ある者は自分の息子が怪我をしたので治して欲しいと男に頼んだ


男は相分かったといいすぐさま息子の怪我を治して見せた


その者は大層喜んだそうな


またある者は井戸が渇いてしまったので雨を降らせて欲しいと男に頼んだ


男は相分かったといい瞬く間に雨雲を呼び寄せ雨を降らせて見せた


その者は大層喜んだそうな


そして、ある者は近くで起こっている戦を終らせて欲しいと男に頼んだ


男は相分かったといい 馬で戦場へ赴き両軍の大将と話し、戦を終わらせてしまった


その者は大層喜んだそうな


男の話は広く聴かれ 人々は英雄だの 救世主だの と男を褒め称えたそうな


だが、男はそれでも満足せず人々の役に立ちたがっていた そんな時、一人の少女が男の元に訪れた


少女は男にお願いがあります。とカタカタ震えながら呟いた




村を滅ぼして欲しいと




男は少女に何故と聞いた


少女は蝿の羽音より小さな声で話し始めた


彼女は、村の嫌われ者で村全体から酷い仕打ちを受けていた、ある者の息子は彼女を執拗に殴りつけた、彼女は抵抗した際に相手に怪我を負わせてしまった


怪我が治った翌日から暴力は更に熾烈になった 彼女の身体は痣だけではなく桑か何かで引っ掛かれたような切り傷もみてとることもできた 彼女はとても痛かったそうな


またある者は彼女に毎日井戸に水を汲みに行く事を強要したという

彼女は嫌だと拒んだのだが、行かないならば今住んでいる家から追い出すというのだ 雪の日は靴を履く事も許されず 夏の日は水を飲む事も許されなかった そこまでして水を汲みに行く必要が無いことは知っていた 近くには小川が流れており少女にそこまでさせる必要はないのだから


その者は笑っていた彼女が辛さに耐え、泣いている姿を見てただただ横で笑っていた だから、井戸がまた水で満たされた時、彼女はとても泣いたそうな


そして、ある者達は彼女を手込めにて辱しめたという もちろん彼女は激しく暴れ抗い 助けを求めたが、それは男達をより興奮させるだけだと理解するのにそう時間はかからなかった やがて、行為に及ぶとき彼女は糸の切れた人形になった そうすれば、事もすぐ終わるし 無駄な体力を使う事もない そんなが苦痛が彼女の日常だったが、


隣国との戦争が始まって、 男達は徴兵令に従い戦地に駆り出された 彼女は心の中でひどく喜んだのだろう もうあんなに辛い日々とはおさらばだと だが、その考えは早くも打ち砕かれる 休戦協定が結ばれたのだ 彼女は察したのだ男達が戻ってくると


彼女はとても絶望したそうな












男は村を滅ぼした


男の話は広く聴かれ 人々は魔王だの 破壊者だの と男を侮蔑したそうな


だが、一人の女はこう言った


「いいえ、彼は私に良くしてくださいました」と







男は もう役に立ちたいと言わなかった


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