天界大戦−同盟−
やっと書けた。難産でしたorz
「僕たちと同盟を結ばない?第4の勢力として」
目の前の少年はなんでもないようにそう告げた。
「どういうことだ?」
リョウが訝しむのは当然のことだろう。
「どういうこともなにもそのままの意味だよ〜」
先程の真面目な雰囲気から一転。すぐにおどけた調子にもどってしまった。
「俺達はお前達が蔑んでる下民だぞ。
いくらなんでも突然すぎる」
天狼に認められるまであれほど大変な思いをしたのだ。それを鑑みるとどうにも不自然だ。
「むう〜もしこれですぐにOKしたら、そこまでのやつだったか〜まぁラッキーってことだったけど、そんなバカじゃないか〜」
可愛く唸る美少年に再び殺意を覚えたが、そこは鉄の自制心でなんとか抑えこむ。
「流石に怪し過ぎるんだよ。なにか裏があるんだろ?」
「裏?残念ながら、いや、残念かどうかはわからないけどそれはないんだよね〜
それにわざわざ人間を嵌めるようなことしないって。そこまで僕も意地悪じゃありませんー」
いーっと口を閉じたまま横に広げるあのポーズをする。見た目とんでもない美少年がやるとそれはもう可愛らしいものだが、その性格を知ってしまった今では、それすら計算のような気がしてならない。
「じゃあなんで同盟なんて」
「単純なことだよ。君達が天狼についたことで、拮抗していたパワーバランスが壊れちゃったんだよね」
まったくお騒がせなやつだよね、とぷんぷん怒るふりをするロキ。
「パワーバランス?」
ロキは頷く。
「そう。天界のパワーバランスについては知ってる?」
「ああ。大体は」
「なら、天龍に対抗するには天狐と天狼が協力しないといけないことも知ってるよね」
リョウは無言のまま頷く。
「僕達は近接戦闘が苦手だし、天狼は遠距離からの高火力戦闘が苦手だ。だからその両方ができるオールマイティな天龍に対抗するには、天狐と天狼の協力関係が必要なんだ。協力しているってことが天龍への抑止力になるんだよね。でもね、だからといって天狐と天狼が仲間同士ってことじゃないんだよ」
「………なるほどな」
話が見えはじめた。
「天狼と天狐の力は同等。だからこそ協力して天龍を抑えていた。でも今は」
「俺達がいる」
ロキの言葉を遮るようにして告げる。
「そう。さっき君は自分達は下民だって言ってたよね」
「それがどうかしたのか?」
呆れた顔をするロキ。
「天狼がただの下民と協力関係を結ぶわけないじゃないか。
この世界の人はみんな自尊心が強いからね。下等生物だと思っているやつらと対等な関係を結ぶなんて相当なことだよ」
ちょっと考えればわかるでしょ、といいたげなロキにまたしてもいいようのない感情が芽生えてくる。
子供に偉ぶられているようで、普通なら背伸びしている微笑ましい場面なのだろうが、それがロキだと殺意しか芽生えないのだから何とも不思議だ。
「天狼と協力関係を結んだ時点でそっちとしては合格だったってことか」
「拮抗していた関係だったのに君達っていつイレギュラーがきちゃったからね。それも一つの勢力と呼べるほどの力を備えた、ね。
そのせいでこっちとしては困ったものさ。
いくら今は同盟関係だっていっても、味方ではないんだから」
「それで俺達とも同盟を組んでパワーバランスを維持しようとしたってことか」
「そういうこと。それでどうなんだい?」
リョウは首をふる。縦ではなく横にだ。
だがそれは拒否の動作ではない。
「悪いけど俺一人じゃ決められないよ。仲間とも相談しないといけないからね」
「ふーん。まぁ僕は明日までいるつもりだから返事は明日まででいいよー」
ロキは笑顔を浮かべ
「じゃあ僕はそろそろ戻るよ。
君と話せてなかなか楽しかったよ!
いい返事を期待してるよ」
そう言われ、リョウは最後に意地悪をしたくなった。
「もし俺達が断ったらどうするんだい?」
するとロキはいつもと変わらぬ元気な声で
「ふふ。まったく人が気持ち良く別れようとしていたのに無粋な奴だなあ。
そうだね〜もし断ったら………」
ロキはいたずら気に笑い
「背中からブスッとやっちゃうかもね。
じゃ、またねー」
そう言い残して姿を消した。
リョウには気配すら掴むことはできなかった。
「なるほど〜同盟ですか〜」
リョウから一通り話を聞き最初に口を開いたのはアリシア。
「どう思う?俺は特に問題ないと思うけど」
あの場では保留にしていたが、その実リョウはうけてもいいと思っていた。
「確かに〜せっかくの申し出ですしね〜」
「その言い方だと何か問題があるのか?」
「問題というわけでは〜ないのですが〜」
「それにしては歯切れが悪いじゃないか」
問いただすエリア。
「その同盟は受けるしかないと思います」
それを遮るように言ったのはレナ。
「受けるしかない?」
リョウの問いに
「はい。もし断ったら恐らく向こうは暗殺を選ぶと思います」
「暗殺………
天狐の能力はまさに暗殺向けって感じだしな」
「ほかの天狐の方はどうかわかりませんが、ロキャーリアさんに関しては、私では見破ることはできませんでした」
「私もわからなかった」
「我もじゃ………」
悔しそうな顔をするレナ・ミーヤ・リズ。
リズは言わずもがな。ミーヤは気配察知に自信があったようだし、レナは暗殺魔法を得意としていることもあり、ロキの姿を見破ることができなかったのは相当悔しかったのだろう。
「つまり、誰も気づかなかったと。
確かにこれはまずいな」
ネルの言葉に皆顔を伏せる。
「ま、同盟を受けるとして
問題は天狼側がどう思うかだが」
そう言ってリズを見る。
「そこに関しては大丈夫じゃと思うがの。
表向きは天狼と天狐の関係は良好だ。そうしないと天龍にあっという間に喰われるからな。
じゃから表だって否定することはないと思うぞ」
「なるほど。問題はなさそうだな」
「そうだね。じゃあ同盟は受ける方向で問題ないかな?」
リョウの問いかけに皆頷く。
「じゃあ次は」
「我の番じゃな
我からは会議についての話じゃ。
今回話されたことは主に二つじゃな。
一つは天狼と天狐の同盟についてじゃったが、そこは我等とはさして関係はない」
「関係ないってリズも天狼じゃん。関係ないわけないでしょ」
リョウの言葉に
「確かに我は天狼じゃが、その前に主殿の勢力の一人じゃ。
我に命令できるのは主殿だけじゃからな」
恥ずかしそうにリョウを見つめるリズ。
そしてそんなふうに見つめられているのだから当然リョウも照れてしまう。
「はいはい。そこまでそこまで。まったく油断したらすぐこれだよ」
どことなく甘ったるい空気をだしていた二人を見兼ねたネルはその空気を断ち切る。
気まずそうに見つめ合う元凶二人。そうしていることが甘い空気をだすことに繋がっているとは気づいていないのだろうか。
「まぁそこは置いておきましょう。リズさん、もう一つの話はなんだったんですか?」
嫌な沈黙を断ち切るように話を本筋に戻す。
「そ、そうじゃな。
もう一つじゃ、もう一つ」
こほんと咳ばらいをして、
「もう一つは我等にとってもかなり重要なことじゃ」
一拍おいて
「決戦の日が決まった」
と宣った。
「おいおい。いきなりだな」
面食らったような一同。
「それで、いつなんですか?」
と、レナ
「ユストラシア歴で4月35日。天狼天狐連合軍で総攻撃をかける」
「4月35日…………今が確か32日だから………」
「うむ。三日後じゃな」
「三日後!?
随分と突然じゃないか?」
「天龍が開戦を宣言したのは一週間前だ。流石にもう待てないんじゃろう」
「総攻撃って………
それで俺達はどうすればいいんだ?」
「問題は〜私達が〜どのように〜天界大戦に関係していくか〜ですからね〜」
リョウの問いを引き継ぐようにアリシアが補足する。
「そうだな。私達も天狼と同じく天龍に総攻撃を仕掛けるか?」
「いえ〜それは〜よくないですね〜」
エリアの提案を否定したのはアリシア。
「私達は〜あくまで中立の立場に〜いなくてはいけませんからね〜」
「中立?どういうことだ?
天狼天狐と同盟を結んだ時点で私達と天龍は敵対しているはずだが?」
「確かに〜そうかもしれません〜ですが〜私達は私達だけ〜で一つの勢力たりえているのです〜
つまり〜私達が率先して〜動くことはないのですよ〜」
「要するに傍観の立場をとるということか?」
「簡単に〜言ってしまえばそうですね〜」
「だがそれでは同盟の意味がないぞ」
「いや、意味はあるな」
そう告げたのはネル。
「どういうことだ?」
「同盟を組まないってことはさ、どこかの勢力の支配下に入るか、全部の勢力と敵対することになるだろ?」
「なんでだ?
同盟を組まず最初から中立の立場にいるってのじゃダメなのか?」
「始まりが天狼との繋がりだったからな。ようするに取り込まれるか、離れるか二つに一つだったってことだ。
で、もし取り込まれることになった場合。恐らく全員死んでいただろうな」
「どういうことだそれは!」
驚き声を荒げるエリア。
助け船を出したのはアリシアだった。
「流石に〜それは少し〜言い過ぎですよ〜」
「そうか?あながち間違ってないと思うんだが」
「それは〜最悪の場合の〜話ですよ〜」
「どういうことか説明してもらっていい?」
リョウの言葉に
「つまりだな。俺達人間は天狼にとっては下等生物だろ?」
「うむ。そう思っている奴は多いのう」
「だろ?だから奴らにとっては俺らは都合のいい捨てごまだったってこった。それで支配下になんか入っちまった日にはもうジ・エンドってことよ」
「なるほどな………
だからアリシアは対等な関係を求めたってことか。
アリシアには感謝しても仕切れないな」
アリシアは手をひらひらとふる。
「そんなにおだてても〜なにもでませんよ〜」
「だけどアリシアのおかげでかなり有利になったのは事実だ。
これで結構自由に動けるようになったな」
話が一段落したところを見計らってリョウが口を開く。
「そういえばさ」
「うん?なんじゃ主殿?」
「総攻撃を仕掛けるって言ってたよね」
頷くリズ。
「それってどうするの?」
「どうするとは?」
「うんと、何て言うかな…………そう。なんか作戦とか戦略みたいなのはないの?」
「戦略とな?戦略か…………
そんなこと考えたことがなかったな」
「「「「「え………」」」」」
リズの衝撃の一言に驚きを隠せない。
「戦略というのは弱いもの達が考えるものじゃろう?」
「弱いものって………」
戦略というのは少しでも戦場を有利に進めるためのものである。
だが、もし兵全員が一騎当千の力を持つものだったらどうだろう。
戦略うんぬんを考えるより力でのごり押しの方が遥かに楽なはずだ。
しかも何より戦争などの戦いの経験が決定的に少ない。
戦略というものは様々な試行錯誤を経て編み出されるものだろう。
たった一回の戦争でそれが身につくわけがない。
「流石は天界ですね。下界での常識が全く通用しません」
頭を悩ませるレナ。
それは仕方ない。戦争をするといっているのに作戦も何もなく、ただ総攻撃だ。など、呆れを通り越していっそ笑えて来てしまう。
「前回の天界大戦の時はどうだったの?」
「聞いた話じゃが。天狐天狐連合軍で攻め込んできた天龍軍を足止めしている間に天狼と天狐の長を含めた小数精鋭で天龍の城に乗り込み戦ったということじゃったな」
「なるほどね………」
なんともわかりやすい戦い方だ。
「今回も恐らくそうなるじゃろうが………」
「果たして同じ手が二度も通じるか」
エリアの言葉に頷くリズ。
「今回のは何かおかしい。嫌な予感がするのじゃ」
「いやな予感、ね
でも今の俺達には何もでなきないな」
「そうですね〜今はただ戦況を見守るしかないですかね〜」
「なんとも前途多難だな」
リョウは苦笑するのだった。
しかし、この時まだリョウ達は気づいていなかった。背後から忍び寄ってくる影と、その影の瞳に灯る憎しみの炎に。
明かりもともさず薄暗い部屋の中、その男はうずくまっていた。顔を憎悪の炎で彩らせながら。
天狼の長リオルガルドの娘リーズリットの婚約者候補として周囲を見下していたころの手入れのされた輝くような銀髪はもはや見る影もなくくすんでいる。
殺すとうわごとのように呟くその姿からは以前の彼を想像できない。
「殺したいほど憎いですか?彼が」
突如どこからか声が聞こえてくる。
だが、この部屋には自分以外誰もいないはずだ。
すぐさまあたりを見回す。第六感がけたたましい警報を鳴らしている。
「誰だ!!」
気配がした方向に一瞬で展開した魔力爪を構える。
「もう。物騒なやつだなぁ」
そう言って何もない影だったところから現れたのは金髪の美青年。
「何者だ?」
「そんな警戒しなくても………ってそんなの無理な話か」
青年はおどけたように笑う。
「おっと、自己紹介がまだだったね。
僕の名前はフェイト。これからよろしく」
握手を求めようと手を差し出すフェイト。
だが、男はその手をとろうとしない。
「フェイト?
それで貴様が何の用だ?」
「ふふ。君に面白い話を持ってきたんだよ」
「面白い話?」
「うん。そうだよ。面白い話。
ウガルド君、今殺したいほど憎い相手っていない?」
「殺し………たいほど……憎い相手……」
「ふふふ。いるみたいだね。
そんな君の助けになるようなお話だよ」
そうして青年は不敵に微笑むのだった。
感想やメッセージで応援の言葉を頂いてなんとか書き上げることができました。ありがとうございます!
話は変わるのですが、なろうに投稿してらっしゃる作品を見ていると、よく挿絵を入れている方がいまして………
それを見ながら、いいなぁなんて思ったりしてたわけなんですがw
そして一念発起。自分で描こうと思ったのですが、どうやら私には絵の才能が壊滅的にないようで………
普通に書いているのに、
「これ、タイ人書いたの?」
と言われる始末。(なにがタイ人やねん!)
そこで思ったのです。
絵のうまい人に書いてもらえばええじゃないかと。
ええ、そうです。他力本願です。
というわけで、エデンの挿絵を募集しちゃいます!
キャラやシーンなどなんでもOKです。
もし書いてくださる方がいたら感想欄に書いたりメッセージを送ってくれると嬉しいです。
では、長々となってしまいましたが。
感想・評価・アドバイス・質問お待ちしております。




