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エデン〜創造と破壊〜  作者: 近山 流
第2章 天界
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天狼の姫−VSアリオレス−

更新予定日から一週間も遅れてしまい本当に申し訳ありませんm(__)m



対峙するリョウとアリオレス。


「約束通りぶっ潰してやるよ」


最初に口を開いたのはリョウだった。


「約束通りか。ウガルドに勝ったくらいでいい気になるなよ」


酷くピリピリとしたその空間。


リョウもアリオレスも臨戦体制をとっていて、すぐにでも相手の首を切り落とせるようにお互いの武器に手をかける。


「始まりはさっきと同じだ」


レガルスはコインを取り出す。


「いくぞ。準備はいいな」

頷く両者。そして弾かれるコイン。


それが地面に落ちると共に両者は一気に加速する。

だが、それは異例のスタートとなった。正面からぶつかり合うと思われた両者だったが、その予想は外れていた。

アリオレスは前に加速したが、リョウの加速した方向は横。


それに気づいたアリオレスは忌ま忌ましそうに舌打ちする。この読み合いではリョウの方が一枚上手だったと悟ったからだ。


アリオレスはウガルドを瞬殺した謎の攻撃を警戒していた。その攻撃がどのようなものなのかアリオレスにはなにもわからない。もし使われてしまえばおそらく反応もできないだろう。それは悔しいが認めているのだ。

だからこそこの場ではあえて前に出る。考え無しの自棄の行動ではない。アリオレスの読みをこうだ。

おそらくあのスピードの中では急停止を行えないだろう。ウガルドの時も初めからあの場所に移動すると決めていたような気がしたのだ。だからリョウとの距離を常に縮めていくことによって、謎の技を封じることができるのではないか、と。


一方、リョウは《雷速の王》(ケラウノス)の弱点をよくわかっていた。

《雷速の王》の主な移動方法はは任意の場所までの距離を光速で移動するというものだ。もちろんそれ以外の移動方法もあるが、これが一番速い。ウガルド戦の時は、最初にウガルドの懐を目的地に定めていた。一度動いてしまえばいくら天狼といえども視認することは難しいだろう。ではそこにどんな弱点があるのか。それはアリオレスが考えていた通りのものだった。相手が動き回っている状態でも一瞬で狙いを定めればすぐに移動することができる。しかし、もちろんその速度によるのだが、相手が接近してきているとなると話は違くなってくる。懐に潜り込むにも、近すぎれば衝動してしまい、遠すぎればこちらの攻撃が届かない。側面に移動しても相手は前に進んでいるのだから、攻撃があたるかどうかはわからない。《雷速の王》の最大の弱点は超至近距離でのインファイトなのだ。

加えて、《雷速の王》は《鋼鉄の王》以上にリョウの体に多大な付加をかける。

ただの(まぁリョウをただのと言ってしまうのにはいささか無理があるだろうが)人間が光速で移動するなど、体に影響がないわけがない。全身から鈍い痛みが走り回り、それはそれは鬼のような痛みに数日間も悩まされることになりかねない。そのため長時間の使用はできないというわけではないが、なるべく控えているのだ。さらにいかに短時間だったとしても、一度使うとしばらくの間使えなくなってしまう。といっても無理矢理にでもやれば使えるのだが、その代償にピクリとも体が動かせなくなってしまう。


このようにいくらチートの権化のような≪覇装≫といっても万能ではない。そして今回リョウはそこを逆手にとったのだ。≪覇装≫は使えないが、相手はそのことを知らない。当然警戒し、対策をたててくるだろう。

対策、つまり《雷速の王》の弱点をつくには前にでるしかない。相手の行動がわかっているのなら話は簡単。

リョウは《加速》(アクセル)で横に跳ぶ。そしてアリオレスの魔力爪が空を切った瞬間、≪破壊≫で強化した足を地面にたたき付け無理矢理方向転換。足が悲鳴をあげるのを無視して、背中から大太刀を引き抜きアリオレスに側面から襲い掛かったのだ。


「くっ」


そのスピードに回避は無理と思ったのか、爪のそりで刃を受け流す。


「……ち」


キリキリと音をたてながら受け流されたことに舌打ちしたリョウはそのまま駆け抜けるように移動する。

一瞬遅れてそこにアリオレスの爪が突き刺さるが既にリョウの姿はない。


リョウは距離を離そうと魔法で牽制する。だが、アリオレスはそれをジャンプして避けると、空中で方向転換。まさに空気を蹴ったかのように鈍い音を立てながらリョウのもとへと飛来する。

リョウは距離を離すことは諦めたのか、地面を踏み締め太刀を構える。

甲高い音とともに初めて両者の獲物はぶつかり合う。

リョウは弾いて距離をあけようとするも、アリオレスはそれを許さない。超至近距離での高速戦闘。それはリョウにとってあらゆる意味で歩の悪いものだった。


まず一つはリョウが持つ武器が大太刀であること。大太刀の最大の武器はそのリーチだ。だが、それは取り回しずらいという弱点にも繋がる。今までは力とスピードでカバーしてきたが、今回はそれが難しい状況。

一方アリオレスの武器である両手の魔力爪は小回りが非常によくきき、超近距離戦闘でこそ、その真価を発揮するものだ。リョウも今ではかろうじて防ぎ続けているものの、いつ均衡が崩れてしまうかわからない。


そこでリョウは決意する。


「《纏い》、大爆炎!」


ゼロ距離での大爆発。もはや自殺行為といっても過言ではない。

これには流石のアリオレスも後退しようとする。しかし、かろうじて直撃は免れたものの、爆風によって大きく吹き飛ばされる。

そして放った本人であるリョウはというと、咄嗟に風属性と水属性の障壁を多重に張り、炎は防いだもののその衝撃までは殺し切れず、太刀から手を離してしまう。と、同時に宙を舞う太刀。取りに行こうと思えば取りに行けるが、その間にアリオレスに襲われるかもしれないという微妙な距離。幸い外傷はなかったがその衝撃はかなりのダメージをリョウに与えた。さらに武器も手放してしまい、まさに自滅と言われても仕方ないくらいのありまさだが、あのままではいずれリョウはやられていた。

言わば肉を切らせて骨を断つようなものだ。


アリオレスはせっかく自分に向いて来ていた流れを手放すわけにはいかないと、すぐに体勢を立て直し、リョウへと飛び掛かる。それに対しリョウは


「≪創造≫」


生み出されたのは二本のダガー。それを両手に構え応戦する。


目の休まる暇のない剣撃。

少しでも気を抜いてしまえば首を刈り取られてしまいそうだ。

お互い一進一退の攻防を繰り広げていたが、流れはやはりしだいにアリオレスへと傾きはじめる。経験の差という絶対的な壁が立ち塞がったのだ。

少しずつだが、確かにおされていくリョウ。


「くそ…………」


何かこの状況を打開する方法はないか。思考を総動員させて考える。

その結果………


(そうだよ。俺の一番の武器はなんだ。それは魔法を創りあげることだろ!)


それはリョウだけに許された神のごとき能力。

思考はたった数秒だった。


ダガーを思い切りたたき付けるが、アリオレスは容易にそれを防いでしまう。

そこで生まれた数秒の硬直時間。もしかしたらコンマ何秒の世界かもしれない。だが、それこそがリョウの望んだものだった。ニヤリと口元を歪め、叫ぶ。


「《フレアドライブ》!」

リョウを囲むように地面から火柱が上がる。

即席の魔法だったため威力はほとんどないがアリオレスをひかせるには十分だった。


距離が離れたアリオレスに両の手に握るダガーを投げつける。矢のように突き進むダガー。

かなりの速度だというのに、流石と言うべきか、アリオレスは最小限の動作でいとも簡単に避けてしまう。

だがそれはリョウにとってはねらいどうり。



アリオレスはダガーを避ける瞬間、リョウの口が怪しく歪むのを見た。


しかし気づいたときにはもう遅い。


「爆!!」


その叫びとともにアリオレスとすれ違おうとしていたダガーが爆ぜる。


もし直撃していれば戦闘不能に追い込まれたかもしれないが、リョウの怪しげな表情を見て咄嗟に後ろへと回避したアリオレスはダメージはおったものの最小限に押さえることができた。

爆風に吹き飛ばされながらも空中で体勢を立て直し、地面を削りながら勢いを殺し、着地する。

やっとそれが止まった時、ふと左側から影がさす。


その正体はリョウ。爆風に隠れて回収したのか、大太刀を頭上からたたき付ける。


次々と起こる予想外な展開に混乱しつつも、その太刀を防御しようと魔力爪をふるう。しかし、混乱によってほんのすこしのタイムラグができてしまった。

中途半端な受けでは、リョウの攻撃を止めることはできない。軌道をそらすことには成功したが、左腕を切られてしまう。

切断とまではいかないが決して少なくはない量の血が傷口から流れ出す。


「ぐ………」


リョウは自らの攻撃に手応えを感じると、畳み掛けようとはせず、直ぐさまアリオレスとの距離を離す。


アリオレスの血は多いものの、傷はそれほど深いものではない。動きが鈍るといっても本来であればそれほど影響はない程度だ。

だが、均衡の保たれていた戦いの中ではそれが勝敗を分けることもある。


リョウは距離を開けた次の瞬間には、《加速》を使いアリオレスの左側面に潜り込んでいた。

薙ぎ払われる太刀を左の魔力爪で弾こうとするも傷がうずき一瞬動きが鈍る。

かろうじて太刀は弾いたものの思い切り体勢を崩す。


「もらった!!」


その隙を逃すリョウではない。弾かれた太刀では遅い。咄嗟にそう判断したリョウは左腕をたたき付ける。

ドスッという鈍い音。


「俺の勝ちだ」


相手の体に接触したことでリョウは勝ちを確信した。それはリョウが最もよく使う技。≪破壊≫による生命エネルギーの操作。


リョウの拳が接触した時から、アリオレスは自分の体から急速に力が抜けていくのを感じていた。


数秒たちリョウは手を離す。もうアリオレスには自分の体を支える力すら残っていないはず。


今もリョウの体に寄り掛かるような体制になっている。そしてその体には微塵も力が入っていないように感じられた。

リョウは用はすんだとばかりにアリオレスから体を離し、アリオレスが倒れる音をバックに歩きだそうとする。

だが、いつまでたってもその音は聞こえてこない。訝しみ後ろを振り向くと、そこにはぴくぴくと小刻みに震える両足を地面につけ、仁王立ちしているアリオレスの姿があった。


「まだだ………」


その言葉と共にリョウの腹部に突き刺さる爪。


「ぐふっ」


口から吐き出される血。



どこからか聞こえてきた悲鳴が悲しく鳴り響いた。





久しぶりのガチ戦闘回です。ちゃんと書けてますかね………


次回で天狼の姫編終了です。


では、

感想・評価・アドバイス・質問お待ちしております。



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