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エデン〜創造と破壊〜  作者: 近山 流
第2章 天界
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天狼の姫−天界大戦−



リオルガルドから発せられる気に息を呑む一同。その厳かな雰囲気の中、語りはじめる。


「天界にはな、俺達天狼を含めて三つの種族がある」


「天狼・天狐・天龍ですね」


エリアの言葉にリオルガルドは驚いた顔をする。


「ほう?よく知ってんな。リズにでも聞いたのか?」


だが、エリアは首を横に振る。


「いえ、これくらいはこっちの世界でも一般常識だと思います。伝説として語り継がれているくらいですから知らない人は少ないと思います」


「龍帝は天龍を倒したって話もあるしな」


眉をひそめてネルを見る。


「天龍を、か?」


「ああ、詳しいことはわからないがそう言われてる。龍帝は生ける伝説みたいな人だからな」


憧れの眼差しを宙に向けるネル。その瞳では未だ見たことのない龍帝の姿を思い描いているのだろう。


「まぁいい。とりあえずその話は今は置いておこう」


腑に落ちない顔をしかながらも考えても仕方ないと思ったのか話を続ける。


「遥か昔、天界は一人の天龍の男を頂点に結束していた。

その男、レオアリウス・フォン・ワードラゴンは恐ろしく強かった。天界ってのはな実力社会なんだ。自分より弱いやつには従わないってな。俺が今ここに座ってるのも天狼の中で一番強いのが俺だからってだけだ」


そう言いぽんぽんと玉座を叩く。


「そのレオアリウスを王としてしばらくしたころだな。突然レオアリウスは消えたんだ」


「「「「え??」」」」


急な展開についていけず目を丸くする一同。


「消えたって?」


「そのままの意味だ。突然いなくなってしまった。それも、なにも言わずにな」


沈黙。それはどう返せばわからなかったが故のものだ。


「身勝手だと思うだろうが、俺としてはわからないでもない」


その言葉に隣のレガルスが口を開く。


「こいつはほんとにしょっちゅういなくなるんだよ。今回だって何も言わずに行きやがって。誰が困ると思ってんだ。こっちのみにもなれこんちくしょう。ああ、まただんだんいらいらしてきた」


まぁまぁとレガルスを宥めるリオルガルド。


こほん、と咳ばらいを一つして


「争いも起きずそれまで均衡が保たれていたのはレオアリウスがいたからに他ならない。それが突然なくなったんだ。どうなったと思う?」


「次の王座を狙って戦いが起こる………」


「それまで抑圧されていた暴力的な衝動だ。爆発してもおかしくない」


呟くリョウとエリアに頷くリオルガルド。



「正解だ。案の定多くの闘争が起きた。最初は小さなものだったがな。それはどんどん大きくなっていった。

最初に仕掛けたのは天龍だった。

その時まで天界を支配していたのは天龍の男だ。当然ながら天龍のなかには自分達が特別な種族だと思っているばかなやつらがいた。だが、その男がいなくなった今、もしかしたら覇権を天狼か天狐に取られるかもしれないとでも思ったんだろうな」


「人間とやっていることはかわらないんですね………」


複雑な表情のレナに


「おいおい嬢ちゃん。なにか俺達を神聖視してねーか?

俺達だって生きてるんだぜ。生きているからには欲ってのはあるもんだ。欲のねぇやつなんてそんなの人形とかわんねぇよ」


「………すいません」


「いや、別にあやまることじゃねーよ。

まぁそんなこんなで天龍がおっぱじめやがったんだ。自分達の下につくか、戦争をするかって言ってな。で、当たり前のことだが天狼と天狐側は下につく事を拒んだんだ」


「それで戦争が始まったと」


「そういうことだ。でもな、俺達が本気で何度も戦争なんてしちまったら天変地異どころのさわぎじゃない。あつくなっていても冷静な奴らもいたみたいでな。だけど、もう戦争は止められる段階じゃなかった。だからそいつらは提案したんだ。たった一回、たった一回だけ戦争を行う。どのような勝敗になったとしても覆すことのできないたった一回の戦争にしようってな。一回勝負ってやつだ。で、それが−−−−」


「天界大戦…………」


「そういうことだ」


「それでその時の勝敗はどうなったんですか?」


リョウが問う。


「ああ。今の俺達を見てわかるようにその時は最後まで決着がつかなかったんだ。

その当時の天龍の長は俺の先代と天狐の先代によって倒された。死ぬことはなかったが全盛期ほどの力はもう使えなくなり、天龍もそれ以上戦うのをやめた。そこで先代達は天龍に不可侵条約を持ち掛けた。自分達の種族をまとめることで手一杯だったんだ」


「だったらどうして今になって」


呟いたのはリズ。リオルガルドの語った歴史を知っているだけに疑問は尽きないようだった。


「ことが始まったのは天龍の長が変わってからだ」


「え?」


リズが絶句する。


「あのミラコスタ様が………ですか?」


「ああ、お前がどっかの誰かさんの手助けで下界に降りてから少したった頃だ」


そう言ってリズと、そして自分の隣に立っているレガルスを続けて見遣ると、レガルスはばつの悪そうな顔で顔を伏せる。


「ミラコスタ様って?」


エリアの問いに答えたのはリズ。


「レオアリウス様がいたころは優秀な右腕として、そしていなくなった後は天龍の長として皆を長年まとめてきた方じゃ。確かにかなりの高齢じゃが、長い間天龍最強を守ってきたんじゃそう簡単には……」


リズはそう言うがリオルガルドの言葉は非情なものだった。


「本当だ。その場面を見たわけじゃないがな。

そして新しく天龍の長となったものがオルガノス・フォン・ワードラゴン。かつて一回目の天界大戦を引き起こした先々代の息子だ」


「「「「「!!!」」」」」


「そういうことか」


ネルが納得したように呟く。それにエリアも頷いて


「父の意思を継いだということか」


「そのようだな。長となったオルガノスは開戦派を引き連れて非開戦派を説き伏せた」


「で、今に至ると」


「そういうことだ」


「戦争を回避することはできないんですか?」


レナの問いに


「それは無理だ。もうあいつらは止まる気はないみたいだからな。こっちは降伏するか、戦うしかねえ。もちろん降伏ってことはあいつらの支配下に入るってことだ。

俺達にも天狼としてのプライドがある。支配下に入るのと戦争をするのじゃ支配下に入る方が重いんだよ。俺らにとってはな」


なにも返すことができない。


「別にお前らが悩むことじゃねえ。もう決まっちまったことだ。覆すことはもう無理だな」


どこかおどけた口調で話すリオルガルドはしかし次の瞬間には真剣な表情をしていた。

まさにここからが本題だとでも言うような雰囲気で話しはじめる。


「でだ。お前らは本気で首を突っ込むつもりなんだな」


「それが私たちの意思ですからね」


アリシアの言葉に頷く一同。


「今の話を聞いてただろ?お前らが首を突っ込める次元の話しじゃねえ。

無駄死にするだけだぞ」


その言葉にリズの瞳が揺れるのを見たリョウはリズに笑いかける。


「そんなの。上等ですよ」


リズが驚きに目を見開く。


「じゃ、じゃが、父様の言う通りじゃ。確かに主殿達は強い。それは我が一番わかっている。じゃがそれでも今度ばかりは相手が悪すぎる。いったところで何もできずに死ぬだけじゃ。主殿だけじゃない。レナもエリアもアリシアもミーヤもネルも、初めてできた仲間なんじゃ!失いたくない!!」


リズの言葉についつい笑みがこぼれる。


「ありがとうリズさん。私たちのことをそんなにも思ってくれて」


「レナ…………」


「私もね。怖いよ。仲間を失うのは。だから、だからこそ私は戦うの。

もしここで私達が行かなかったとしてもリズさんは行くんでしょう?」


「我は天狼じゃ。行かねばならない」


「ついさっき言ったじゃないですか。あなたは私達の仲間です。あなたが私達を失うのが怖いように、私達もあなたを失うのが怖いんです」


レナは優しく笑いかける。


「だから私達は戦います。あなたを失う可能性を少しでも消せるように」


涙ぐむリズ。

リョウは右手をリズの目元までもっていき、その目尻にわずかにたまった涙を拭う。

そしてそのまま額に手を持っていき、軽くでこぴんする。

突然の攻撃にあうっと小さく呟き額をおさえる。

なんでそんなことをするんだとばかりに恨めしげな目でリョウを見る。


「誰が一番わかってるって?

少し俺のことなめてない?

今以上に強くなるつもりだし。そもそもこんなところで死ぬつもりもないしね。そしてなにより、まだ俺にはリズに見せてないとっておきのやつもあるしね」


おどけた調子で話す。再び頬に手を当て


「まったく。涙なんてリズらしくないよ。笑いながら俺とかネルを弄るいつものリズはどこいっちゃったの?」


リョウの言葉に軽く頬を染め顔を伏せる。そして顔を上げると同時に目をカァッと見開き、未だ頬き触れているリョウの手をはたく。顔を真っ赤に染め、


「なんじゃ!気障っぽいことをいいおって!主殿こそよっぽどおかしいぞ!!」


照れているリズを笑いながらみていると、なんなんじゃまったく、と言って今度は顔を背ける。

甘々とした雰囲気を発している二人を見て、白けた視線を送る仲間達。


リオルガルドはいつもでは決してみることができなかった娘の愛らしい姿にニヤニヤしている。


そして、問題のレガルスはというと……………


全身から殺気を出しながら、滝のように涙を流していた。


「リズちゃん。いい仲間を持ったね。でもそこの小僧はとりあえず殺してやる」


感情が高ぶりすぎて、言っていることがめちゃくちゃになっていた。


「そろそろいいか?」


放っておくといつまでもピンクピンクしてそうだった二人を呼び戻す。


「お前達の意思はわかった。もうこれ以上俺はとめない」


「なにかあるんですね」


リオルガルドの言い方に問いかけたのはアリシア。


「ああ、言っておくがな。俺を納得させたところ度終わりだとな思ってねーよな」


疑問符を浮かべるアリシア以外の6人。その頭からははてなマークがでてきそうだった。


「まぁじきにわかるさ」


勿体振るように言い、


「つっても混乱するだけだろうから少しヒントだ。

いくら俺が天狼の長だって言ってもな、この状況は前代未聞だ。下民が天界に足を踏み入れるなんてな。

たとえ俺が何か言ったところで熱くなっちまったやつらは聞く耳すらもたねーだろう。

だからまずはお前達自信の力で認めてもらえ。力を証明するのがこの世界で信頼を得る一番の方法だ」


「認めてもらう………」


「信頼…………」


呟くリョウにレガルスが食ってかかる。


「俺は絶対にてめぇを認めねえ。俺のかわいいリズちゃんを必ずお前の手から助け出して見せるからな」


「もう黙っててくださいよレガルスおじ様」


「いや、レガルスの言ってることはあながち間違いじゃねーぞ。お前もわかってるんだろ?」


黙るリズ。リョウ達はまた置いてけぼりとなっている。


結局その場では最後までその言葉の真意はわからなかった。後に嫌というほどわかることになるのだが…………





今回の話はがっつり説明回になってしまいました。名前だけですが、キャラも増えてしまったし………



さて、今回結構大事なお知らせがあります。


エデンの投稿についてです。


感想の方で一話一話が短く読みごたえがないため書き溜めてから投稿するのはどうだろうかという話をいただきました。

私は一話あたりだいたい4000文字以上を目安に書いているため、確かに短いかもと感じました。


そこで一度、書き溜めてから連続投稿というのをしてみようと思います。

執筆の進行状況は活動報告にて知らせていきたいと思っています。


それではこれからもエデンをよろしくお願いします^^



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